著者
三橋 武司
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.984-989, 2019-12-18 (Released:2020-01-27)
参考文献数
1

心臓ペースメーカーのレートレスポンス機能は,主に運動時に心拍数が上昇しない症例に用いられる.しかし,その特異性や感度は洞結節にはかなわない.心不全を合併した患者ではレートレスポンスにより運動耐容能が上昇することもあるが,不用意に心拍数を増加させると心室性不整脈の発生や心不全の増悪をきたす可能性もある.心臓リハビリテーション時には運動の種類により心拍数の十分な増加が得られない場合があり,患者の症状やペースメーカーから得られるレートヒストグラムなどを参考に設定を考える必要がある.
著者
谷川 広樹 土山 和大 山田 純也 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.135-142, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
19
被引用文献数
3

観察による歩行分析は全体像が捉えやすくパターン認識に優れ,簡便で低コストである.また即時性に優れ,場所や条件を選ばない評価が可能である.観察による関節角度判定や時間因子判定は正確性に欠けるが,異常歩行パターンを同定・分類し,重症度の相対評価としては有用である.定性的評価と定期的な定量的歩行分析を併用することで,臨床に役立つ歩行分析ができると考える.精度の高い定性的歩行分析をするためには,正常歩行を理解し,ビデオカメラを活用するなどの工夫をするとともに,観察による歩行分析結果と定量的な歩行分析結果を照合させる,歩行障害の典型例の動画を観察することが有効な方法である.
著者
小倉 久幸 久保 峰鳴 武内 孝太郎
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.159-165, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
7

脳卒中後片麻痺患者の歩行機能の改善はリハビリテーション治療の重要な目標の1つであり,歩行評価に基づいた治療や訓練を展開する必要がある.しかし,観察による歩行分析は評価者の経験などによる評価のばらつきがあるために客観的指標が求められる.麻痺側立脚期の矢状面における膝関節制御に影響する床反力作用線のモーメントアームを,傾きによる成分と足圧中心と膝関節軸との距離による成分に分けて考えることにより,膝関節制御の面から短下肢装具の効果を明確化し,歩行訓練の治療戦略を具体化することができる.今後,客観的な評価方法によって片麻痺歩行を類型化し,適切な治療方法を導くシステムの確立が望まれる.
著者
橋本 学
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.283-288, 2017-04-18 (Released:2017-06-16)
参考文献数
10
被引用文献数
2

改正障害者雇用促進法により2018年4月から精神障害者も法定雇用率算定式に加えられることになり,精神障害者雇用義務化が行われることになった.精神障害者の就労については従来の職業リハビリテーションの「保護的環境で職業訓練してから就労する(train-then-place)」方法では訓練内容が汎化せず,「早く就労の現場に出て仕事に慣れながら訓練する(place-then-train)」方法のほうが就労アウトカムを改善させるという考え方が有力となった.このような援助付き雇用プログラムの1つがindividual placement and support(IPS)である.IPSは多くのrandomized controlled trial(RCT)によって有効性が示されている.今日では,IPSに認知リハビリテーションを併用することでさらに効果を高めようとする試みが行われている.
著者
角田 亘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.952-956, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
3

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの神経筋疾患は,呼吸筋力の低下から拘束性換気障害を呈する.このような疾患に対して,近年では,身体に侵襲を加えることなく導入可能な非侵襲的陽圧換気(NPPV)が用いられている.NPPVの導入は,特にALSの場合では自覚症状,肺活量,動脈血酸素飽和度,血中二酸化炭素分圧などに基づいて決定される.しかしながら,呼吸障害が増悪した場合には,NPPVから気管切開下陽圧換気療法への移行が必要となる.さらには,気道クリアランスを目的とした体位排痰法,徒手的咳介助,カフアシストを用いた機械的咳介助なども行うのがよい.
著者
井樋 栄二
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.182-185, 2017-03-18 (Released:2017-06-09)
参考文献数
13
被引用文献数
2

日本にもようやく反転型人工肩関節が2014年に導入され,これまでの肩疾患に対する人工肩関節の役割が大きく変わることになった.従来の解剖学的人工肩関節は,腱板が正常な変形性肩関節症に適応があるため,全国調査でも肩関節手術全体の1%未満にすぎなかった.反転型人工肩関節は腱板断裂性関節症によい適応があり,この人工関節の導入を待ち望んでいた医師,患者は数多い.2015年には全人工肩関節のうち解剖学的人工肩関節は25%であり,反転型人工肩関節が導入2年目ですでに75%を占めるようになった.解剖学的人工肩関節および反転型人工肩関節の特徴と術後のリハビリテーションについて要点を解説した.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.704-725, 2012-10-18 (Released:2012-10-25)

BMIによる障害者自立支援…神作 憲司 704BMIによる脳卒中片麻痺のリハビリテーション…牛場 潤一 710BMIと運動制御…小池 康晴,川瀬 利弘,辛 徳,神原 裕行,吉村奈津江 715皮質脳波法による視覚情報の解読…長谷川 功 720
著者
岩本 紘樹 田村 俊太郎 小林 壮太 武田 廉 宮田 一弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.1169-1180, 2021-10-18 (Released:2021-11-29)
参考文献数
25

目的:潜在変数の順序性を検討できる潜在ランク理論(latent rank theory:LRT)を用いて,大腿骨近位部骨折患者のバランス能力ステージを明らかにすること.方法:対象は3施設の回復期リハビリテーション病棟へ入院した高齢の大腿骨近位部骨折患者252名から得られた延べ475データとした.バランス評価には,Berg Balance Scale(BBS)を用いた.解析は,LRTを実施し適合度指標と情報量規準の結果から潜在ランク数を決定し,各ランクと歩行自立度と歩行補助具の関連性を検討した.結果:LRTの結果,BBSは5ランク数に分類したモデルが最も良好であった.各ランクの平均値は,ランク1が17.1点,2が24.6点,3が34.8点,4が42.9点,5が47.3点であり,単調増加していたためLRTの仮定は満たされていた.各ランクと歩行自立度,歩行補助具には有意な関連が認められ,ランク3以上で歩行器などを用いて歩行自立できる者が出現し,ランク5以外では階段や不整地を自立している者はいなかった.結論:大腿骨近位部骨折患者において,BBSは5つのステージに分類でき,バランス能力ステージ別に異なる特徴を有していた.これにより,BBSの得点に応じたバランス能力の把握が容易となる可能性が示唆された.
著者
熊本 水頼
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.631-639, 2012-09-18 (Released:2012-10-19)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Recently the unique functional characteristics of bi-articular muscles have been revealed by means of EMG kinesiological analysis and control engineering analysis. A two-joint limb link mechanism provided with one antagonistic pair of bi-articular muscles passing over two adjacent joints as well as two antagonistic pairs of mono-articular muscles at both end joints could control output forces exerted at the end point of the link mechanism in an arbitral direction with only a single input command signal informing the desired direction. The output force distribution of the limb link mechanism with three pairs of six muscles showed a hexagonal shape, whereas the link mechanism without the paired bi-articular muscles and only with the two pairs of mono-articular muscles showed a tetragonal shape. Configurational characteristics of the hexagonal output force distribution indicated that an individual functionally different effective muscular strength can be evaluated from the output force values of four designated points on the output force distribution line. Such a limb link mechanism could also dissolve contact tasks in order to maintain postural stability. Clinical applications utilizing the unique control properties of bi- articular muscles may shed light on future rehabilitation medicine therapies.
著者
岡本 隆嗣
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.482-489, 2021-05-18 (Released:2021-07-15)
参考文献数
16

2000年に介護保険と同期して制度化された回復期リハビリテーション病棟は,安静による廃用を防ぎ,ADL能力を向上させ,住み慣れた地域への在宅復帰が目的である.病棟配属されたスタッフの「生活」を重視したチーム医療が最大の特徴である.病棟では,医療・ケア・リハビリテーション・ソーシャルワークの情報やチームの目標がすぐに共有できる環境にあり,多職種合同のカンファレンスが日々開催され,毎日高密度の集中的リハビリテーション・ケアが行われる.これらの質を高めるためには,診療報酬で求められている指標以外に,情報共有,カンファレンス,リハビリテーション時間・職種間協業,退院調整,教育など,さまざまな面での病棟システムが必要である.
著者
木村 浩彰 三上 幸夫 牛尾 会 澤 衣利子 上田 健人
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.590-595, 2017-08-18 (Released:2017-10-03)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

リハビリテーション医学は物理療法(physical therapy)とともに発展してきた.電気刺激療法は物理療法の1つである.電気刺激療法は骨格筋に対して最初に臨床応用され,治療と機能回復に用いられている.治療を目的とした治療的電気刺激(therapeutic electrical stimulation:TES)と,機能回復を目的とした機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)は厳密に区別される.電気刺激療法は,筋力増強や鎮痛,麻痺筋の機能制御などに使用されるが,運動障害以外にも創傷治癒促進や排尿機能改善,嚥下機能改善に用いられる.また,筋肉を刺激することで疑似的に運動した効果が得られ,糖や脂質代謝を活性化し,肥満や糖尿病,サルコペニア,寝たきり患者にも適応が拡大されている.
著者
小林 章郎
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.501-505, 2020-06-18 (Released:2020-08-12)
参考文献数
3

障害者の競技スポーツには,impairmentの内容・程度を判定し公平に競えるようクラス分けというシステムが存在する.パラリンピックに出場するために国際パラリンピック委員会公認のクラス分けを受ける必要があり,その準備としてクラス分けに精通した担当医がMedical Diagnostics Form(診断書)を書かなければならず,詳細な病歴・現症・画像資料が求められる.さらに,クラス分けが完了するまでに障害を客観的に証明する筋電図やMRIなどの追加検査を行う場合があり,医師の関与・判断がきわめて重要である.また今後,クラス分けの根拠となるevidenceを構築するため医科学的アプローチが欠かせない.
著者
青木 隆明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.525-529, 2020-06-18 (Released:2020-08-12)

東京2020パラリンピックが開催されるにあたり,パラリンピック独特のスポーツを紹介する.近年パラリンピックの競技性も向上し,世界の強豪と戦うのは大変である.それだけ選手の層も厚く,日本でもさまざまな競技に対する研究や指導が進んできている.実際の競技をみる前に,スポーツ観戦の見どころを紹介する.例えば,陸上や水泳は種目としては同じだが,クラス分けや障害に応じて道具や義足などが異なり,投げ方や泳ぎ方など,さまざまな工夫がなされている.練習に対してもコーチの指導の工夫が必要で,医療従事者とのかかわりが大切である.
著者
草野 修輔
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.497-500, 2020-06-18 (Released:2020-08-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

ドーピングは,スポーツ活動において競技能力を高める目的で不正に薬物を使用するか,不正な方法を用いることを指し,世界アンチ・ドーピング規程で,アンチ・ドーピング規則違反として10個の項目が定義されている.パラアスリートにおいても同じ規程が適応される.過去の国際大会での薬物使用者は約70%と高率であり,パラリンピック前に行った参加選手の使用薬物調査では,禁止薬物使用割合は,アテネ大会30.2%,北京大会16.7%,ロンドン大会5.7%であった.パラアスリートにおいては,視覚障害者,知的障害者,未成年者も多いため,禁止物質使用がある場合には,対象選手に通知文書を郵送し,対処方法の指導を行っている.