著者
中村 学 遠藤 聡 佐藤 恵 手島 雅人 久米 亮一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.272-276, 2019-04-18 (Released:2019-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

装具療法は脳卒中患者の立位・歩行獲得のために有効な手段であり,運動療法を合わせて実施することでその効果を高めることができる.セラピストの介入が少なくなる生活期においては,下肢の変形や異常運動を防ぐために下肢装具が重要な役割を担うが,その効果を発揮するためには,装具メンテナンスなどの患者指導も重要である.生活期でも多職種チームで連携してリハビリテーション診断と治療を行い,装具を装着したことによる歩行時の筋活動や下肢の運動を学習させる運動療法が重要である.さらに,介護保険サービスとの情報共有,地域の装具ユーザーやケアマネジャーへの相談窓口を設置するなど,地域連携も不可欠である.
著者
陳 隆明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.31-36, 2012-01-18 (Released:2012-02-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

Rehabilitation using myoelectric prosthesis for trans-radial amputees has become wide spread and well established in several developed countries. However, the clinical use of myoelectric prostheses for trans-radial amputees has not yet spread in Japan. It is well known that once amputees become accustomed to using their prosthesis efficiently through adequate rehabilitation, that various activities which the amputees had given up so far will become possible through enhanced bimanual activities. Although myoelectric prostheses have proved to be useful, the majority of amputees have not been satisfied with their function. As an amputee becomes a better user, they request not only simple tasks but also complicated ones. As a consequence, the amputee comes to know the limits of their myoelectric prosthesis, thus expectations for superior prostheses will arise. The recent remarkable development of engineering technology has enabled the progress of prosthetic limb technology, leading to the production of far superior functional prostheses which meet the user's expectations. However, there is a paradox in developing such superior prostheses. The more advanced the prosthesis we produce, the higher the cost. To achieve this end, it is absolutely imperative to secure the cooperation of both clinicians and engineers. Furthermore, a rehabilitation strategy for patients with a higher level of amputation(trans-humeral amputation, shoulder disarticulation)remains unsolved. In this paper, we propose a “Hybrid Myoelectric Prosthesis”, which consists of a myoelectric hand as a terminal device and a body-powered active elbow joint, as a realistic solution for higher level amputees. In addition, we introduce Targeted Reinnervation (TR) as a future strategy for reference.
著者
千田 益生 堅山 佳美 兼田 大輔
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.928-933, 2016-12-18 (Released:2017-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1

肩関節の運動では,肩甲上腕関節,肩鎖関節,胸鎖関節,肩甲胸郭関節などの関節および肩峰下滑液包などが関与している.正常の可動域の獲得には肩甲上腕関節のみならず,肩甲胸郭関節,および脊柱の動きが重要である.肩甲上腕関節を動かす筋群としては,内在筋として肩腱板を形成する棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋があり,外在筋としては三角筋,大胸筋,広背筋,大円筋などがある.肩関節のリハビリテーション(以下,リハ)の基本として,疼痛管理,肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節の自動・他動運動の行い方,肩腱板の筋力エクササイズについて記載した.また,日常よく遭遇する肩関節疾患について,疾患の概要とリハについても記載した
著者
宮澤 靖
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.121-126, 2017-02-18 (Released:2017-05-22)
参考文献数
7

経腸栄養法は,生理的な投与方法であり,経口摂取についで有用な栄養管理法である.近年は150種類を超える経腸栄養剤・濃厚流動食が上市され,疾患別での組成もラインナップされるようになった.また,投与に際するデバイス類も充実し,以前よりも患者によって快適に,確実に投与が可能となった.さらに手技に関しても正しい理解が広まり,合併症の低減や回避が可能になってきた.しかし,リハビリテーションの世界では,経腸栄養法に対して間違った認識やリハビリテーション施行中には投与をしてはいけないのではないかという誤解が散見される.今回は,リハビリテーションの観点から経腸栄養法の正しい認識と手技を概説する.
著者
木村 慎二
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.908-913, 2016-12-18 (Released:2017-02-14)
参考文献数
33

骨粗鬆症は閉経後の女性に高率に発症し,さらには骨折によるADL障害,寝たきりへと進行する可能性がある.骨粗鬆症に対する運動療法のシステマチックレビューもしくはメタアナリシスで,閉経後女性では骨密度を上昇させることが推奨グレードAで,また,骨折を抑制することは推奨グレードBであると骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版で述べられている.運動の種類としては,レジスタント(筋力増強を含む)運動,有酸素運動,歩行や太極拳などの軽い動的荷重運動や,ジョギング,ダンス,ジャンプなどの強い動的,および衝撃荷重運動単独,もしくは組み合わせが骨密度の上昇をもたらし,さらに水中訓練,およびダイナミックフラミンゴ療法などのバランス訓練はバランス機能の改善と転倒回数の減少が期待できる.
著者
小林 龍生
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.404-408, 2020-05-18 (Released:2020-06-13)
参考文献数
5

運動器疾患の診療にもロボットが導入されつつある.人工関節手術ロボットは術者の技量によらず術前計画通りの手術を可能にする.リハビリテーションにおいても療法士の技量にかかわらずよいリハビリテーションを可能にするロボットが期待される.Honda歩行アシストは歩行練習に際し,療法士の技量にかかわらず,微妙な股関節の可動域の変化を数値として表示し,微妙なアシストを加え,動きの悪い患側の股関節の動きを健側とほぼ同じ動きに誘導する歩行練習が可能で有用性が期待できる.また,慢性期歩行障害患者の歩行速度,歩幅の改善にも有効であり,ロコモティブシンドロームやサルコペニアのリハビリテーションへの応用も期待される.
著者
松元 秀次 小林 美香
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.751-756, 2018-09-18 (Released:2018-10-29)
参考文献数
16
被引用文献数
4

電気刺激は,治療的電気刺激(TES)と機能的電気刺激(FES)に大きく分類される.神経筋電気刺激(NMES)はTESに含まれ,運動機能障害に対して神経支配筋の筋収縮を目的とした電気刺激を指す.電気刺激装置には,TES・FESの両方のモード設定ができるものがあるため,医療承認機器の名称も含めて十分理解しておく必要がある.中枢神経障害による麻痺や痙縮の改善,末梢神経損傷による神経原性筋萎縮などがNMESの適応であり,いずれにしても運動療法を併用することで治療効果を促進することができる.機器の特徴を知っていれば,下肢機能回復を図る電気刺激療法として,また歩行障害に対する電気刺激療法として装具の代行効果だけでなく,運動機能改善効果が期待できる.
著者
小木津 武樹
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.149-153, 2020-02-18 (Released:2020-03-25)

本稿は,近年の自動車分野の中でも特に注目されている4つの分野CASE(Connected,Automation,Shared & Services,Electric)のうち,Automationに属する自動運転技術の動向について論じる.現在自動車分野を取り巻く社会的背景を説明し自動運転研究に対する潜在的なニーズを論じたうえで,現在の研究開発のアプローチが大きく3つに分類できることを説明する.そして,3つの分類の特徴をそれぞれ示したうえで,現在特に国内で活発に取り組まれている限定地域での無人移動サービスの実現に向けた活動について,群馬大学の取り組みとその特徴を交えながら説明する.
著者
樫本 修
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.130-135, 2013 (Released:2013-03-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

According to statistics from the Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare for the last ten years, the number of people with physically disabled persons' certificates increased from about 4,370,000 in 2001 to more than 5 million in 2008 and reached about 5,110,000 in 2010. The incidence of stroke and various internal diseases are increasing following an increase in lifestyle-related diseases and the development of Japan's rapidly aging society. In this social background, the physiatrist has many chances to write a physically disabled persons' medical certificate during the patients' care-planning. The most important point to consider is to understand the reason why the patient wants to get a physically disabled persons' certificate. Patients have several needs in their care-plan requiring a physically disabled persons' certificate such as financial aid for medical bills and travel expenses, and also for the cost or supply for orthosis, prosthesis and other technical aids for the disabled. The degree of invalidity must correlate with the medical findings and impairment in the medical certificate. For example the medical findings are the grade of paralysis, joint range of motion and muscle weakness, etc. Activities of daily living (ADL) provide the evidence of those findings and the degree of invalidity. The best practice when writing a medical certificate for physically disabled is that there must be no discrepancy between the medical opinion for the degree of invalidity and the medical findings, impairment and ADL of the patients.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.771-793, 2014 (Released:2015-01-29)

概説:高次脳機能障害の定義—病巣と症候の整理—…石合 純夫 771脳出血による高次脳機能障害…前島伸一郎,岡本さやか,岡崎 英人,園田 茂 774脳梗塞による高次脳機能障害とその対応…平岡 崇 778くも膜下出血による高次脳機能障害…大沢 愛子 782脳炎・脳症による高次脳機能障害…岡﨑 哲也 787頭部外傷による高次脳機能障害…渡邉 修 790
著者
白井 利明 伊藤 淳 伊藤 真紀
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.212-217, 2011-03-18 (Released:2011-04-19)
参考文献数
8

人工膝関節全置換術 (TKA) 後の歩行能力の獲得時期と手術時年齢,性別,BMI,罹患関節 (片側・両側),手術アプローチ,日本整形外科学会変形性膝関節症治療判定基準 (以下JOA score) を調査し,歩行能力の回復に影響する予測因子を検討した.当院でTKAを施行した67 例 (男性7 例,女性60 例),88 膝を対象とした.原因疾患は変形性膝関節症80 膝,特発性骨壊死症8 膝であった.術後歩行能力の獲得時期として平行棒歩行,T字杖歩行,手すりによる階段昇降が可能となるまでの期間を調査した.平行棒歩行が可能となった時期は平均5.7 日,T字杖歩行16.1 日,階段昇降23.0 日であった.術後の歩行能力に影響した予測因子は罹患関節(片側・両側),手術時年齢,術前JOA score,手術アプローチであった.
著者
加藤 太郎 板東 杏太 有明 陽佑 勝田 若奈 近藤 夕騎 小笠原 悠 西田 大輔 髙橋 祐二 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20022, (Released:2020-11-30)
参考文献数
18

目的:脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)に対する短期集中リハビリテーション治療(SCD短期集中リハビリテーション)の効果が,先行研究により示されている.しかし,SCD短期集中リハビリテーションの効果検証は,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)の総得点により報告されており,SARAの下位項目による詳細な検証はなされていない.本研究は,歩行可能なSCD患者の運動失調に対するSCD短期集中リハビリテーションの効果を,SARAの総得点と下位項目得点から検証することを目的とした.方法:対象は,SARAの歩行項目3点以下に該当し,4週間のSCD集中リハビリテーション治療プログラム(SCD集中リハビリテーション)に参加したSCD患者23名(男15名,女8名)とした.評価項目はSARAとし,SCD集中リハビリテーション実施前後に評価を実施した.対象者のSCD集中リハビリテーション実施前後のSARAの総得点および各下位項目得点を,後方視的に解析した.統計はWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした.結果:SCD集中リハビリテーション実施前後において,総得点および下位項目得点のうち,歩行,立位,踵-すね試験に有意な点数の改善を認めた(p<0.05).一方,下位項目得点で座位,言語障害,指追い試験,鼻-指試験,手の回内・回外運動は有意な点数の改善を認めなかった.結論:本研究の結果は,SCD集中リハビリテーションはSCD患者のSARAにおける総得点と,特に体幹と下肢の運動失調を有意に改善させることを示した.
著者
小山 哲男 道免 和久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20031, (Released:2020-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
2

目的:中枢神経系疾患(脳卒中,頭部外傷,神経変性疾患)は,リハビリテーション科の診療対象として患者数が多い.脳卒中,頭部外傷,神経変性疾患はすべて脳疾患の範疇であるが,そのリハビリテーション診療はそれぞれ異なる.今回,計量テキスト分析を用いて年次学術集会の抄録を解析し,これらのリハビリテーション診療の特徴を調査した.対象および方法:第56回日本リハビリテーション医学会学術集会(2019年)の公募演題1,424題を解析対象とした.脳卒中,頭部外傷,神経変性疾患の疾患群別にコーディングを行った.類似度の指標であるJaccard係数に基づき,それぞれの疾患群について関連語抽出を行った.結果:脳卒中群402題について,関連語の上位10個は「麻痺,回復期,入院,発症,病棟,機能,FIM,障害,改善,退院」(係数0.36~0.23)であった.頭部外傷群36題について,関連語の上位10個は「外傷,交通,高次,事故,転落,脳,就労,脳症,血腫,機関」であった(係数0.15~0.08).神経変性疾患群96題について,関連語の上位10個は「認知,MMSE,高齢,介護,在宅,施設,骨折,障害,Yahr,疾患」(係数0.18~0.09)であった.考察:年次学会抄録集を計量テキスト分析により解析することで,それぞれの疾患群のリハビリテーション診療の体系化が可能であった.
著者
渡邉 修
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.110-116, 2020-02-18 (Released:2020-03-25)
参考文献数
13

自動車運転は障害者の社会参加にとってきわめて有用な手段であるが,重大な社会的責任を伴うことから,リハビリテーション科医は,その安全性を見極める必要がある.自動車運転に際し,全身状態が安定していること,服薬状況を確認し,ついで,①視覚系では,視力が保たれ,視野欠損,半側空間無視がないこと,②感覚・運動系では運転操作能力があること,③認知系では,注意,遂行機能,記憶機能,情報処理速度,メタ認知能力が保持されていることを確認する.
著者
正門 由久
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.428-433, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
6

臨床神経生理学は,ヒトの中枢神経系,末梢神経系の機能をさまざまな方法で診断,評価し,治療に役立てる学問であり,この分野の発展は目覚ましい.脳波・筋電図ばかりではなく,誘発電位,機能画像なども近年それに含められており,中枢神経系・末梢神経系の区分を超えた学問へと発展し,リハビリテーション(以下,リハ)医学の関連分野の1つとして,診断,評価,治療などさまざまな臨床場面で“役に立つ”学問である.さらには神経生理を用いることは患者の病態生理,治療手段の客観的評価に有用であり,また生体の信号や機能画像を治療手段に用いることも可能である. リハ医学・医療の分野でさらに用いられることが望まれる.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.781-806, 2008-12-18 (Released:2009-10-02)
被引用文献数
1 1

キーノートレクチャー:高次脳機能障害患者への実践的リハビリテーションアプローチ…本田 哲三 781感情失禁と依存退行性が著明であった脳外傷一例…山里 道彦 784社会的行動障害に対するリハビリテーションチームアプローチ…浦上 裕子 789偽性てんかん発作を生じた高次脳機能障害の1 例…岡崎 哲也,白石純一郎,牧野健一郎,蜂須賀研二,岩井 泰俊 793高次脳機能障害相談窓口を経て受診した慢性期頭部外傷例に対する支援…原 寛美 796相方との画像/神経心理学的検査所見の比較解釈に難渋した外傷性脳損傷後高次脳機能障害一卵性双生児の1 例…大賀 優,吉永 勝訓 800