著者
中村 哲 佐々木 裕 菊井 玄一郎 清水 徹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.345-350, 2005
参考文献数
8
被引用文献数
2

音声翻訳は, 日本語を喋ると英語やその他の外国語に翻訳して喋ってくれる, あるいは外国語を喋ると日本語に翻訳して喋ってくれるという技術である。音声翻訳を実際の生活のあらゆる場面で使えるものにするためにはまだ多くの課題が山積している。個別の技術で言えば, 音声認識, 翻訳, 音声合成といった要素技術を, 話し言葉を対象にいかにしてロバストで高精度にするか, そして, それらをいかに効果的に統合するかという音声翻訳特有の課題の解決が不可欠である。そこで, 本稿では, ATRが現在研究開発を進めている旅行会話を対象とした音声翻訳システムの解説を中心に, 音声翻訳研究の現状を紹介する。
著者
森 大二郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.9-14, 2013
参考文献数
17

検索エンジンが次の数十年で社会にもたらす変革について予想する。情報端末とヒューマンインタフェースの進歩は,検索エンジンの利便性を飛躍的に高め,人間の記憶と意志決定を強力に支援するようになる。検索サービスを利用する契機が拡大することにより,より多くのユーザデータのフィードバックが得られるようになり,検索精度の大幅な向上も期待できる。一方で,情報取得に対する能動的な態度が損なわれ,類型的で偏向した情報にユーザが満足する危険性についても指摘する。
著者
徳原 直子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.323-330, 2006
参考文献数
28
被引用文献数
1

図書館評価に関する国際規格には,図書館パフォーマンス指標(ISO11620, ISO/TR20983)と図書館統計(ISO2789)がある。それぞれの国際規格の特徴を示すとともに,最新動向について紹介する。具体的には,図書館パフォーマンス指標については,ISO11620第2版となる委員会原案(CD)の内容について説明する。CDは,従来型図書館サービスの指標(ISO11620)と電子図書館サービスの指標(ISO/TR20983)とを統合した規格となっている。図書館統計(ISO2789)については,2003年に大幅に改訂された第3版を中心に説明する。第3版では,ISO11620に必要な統計データが新たに規定されており,附属書Aにおいては電子図書館サービス利用統計についての考察が盛り込まれている。また,現在改定中のISO2789第4版の内容についても触れる。最後に,これらの規格の活用方法について概説する。
著者
林 衛
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.311-316, 2004
参考文献数
14

研究者コミュニティのなかで日々みられるインフォーマル・コミュニケーションに加えて,いま,研究者コミュニティと社会全体とのインフォーマル・コミュニケーションが求められるようになってきているのはなぜだろう。それは,基礎研究(科学)はやがてその応用である技術を通して社会に還元されると考える「リニアモデル」優位の時代が終焉を迎え,また,市民の無知を前提とした「欠如モデル」が見直されているからだ。両者に代わる双方向コミュニケーションとして,産学連携および狭義の科学コミュニケーションの充実が必要となる。たんにわかりやすいだけでなく,科学を広く深く魅力的に表現するサイエンス・ライティングの理論化も進んでいる。
著者
風間 一洋
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.28-33, 2013
参考文献数
16

近年のブログ,Facebook,Twitterなどのソーシャルメディアの普及により,ソーシャルネットワークを介した口コミで情報を収集できるようになった。このようなソーシャルネットワークによる情報収集は,Webサーチエンジンを用いた情報検索と比較すると受動的であるが,情報源や仲介者となる隣接ユーザを適切に選択することで,自分が興味を持っような情報を効率的に入手することができる。本稿では,ソーシャルネットワークにおけるユーザ間の繋がりが,情報探索行動に対して果たす意義と役割,さらにサービスによる違いについて解説する。
著者
桜井 醇児
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.519-521, 1990

最近私はフランスに旅行し,フランスの電話を用いた通信情報網ミニテル(minitel)が家庭で使われている様子を見てきた。大変興味を覚えたのでこれについて報告しよう。情報網の役割りと使い方を考える上で参考にするところが多いと思う。
著者
西川 康男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.440-444, 2012
参考文献数
4

資生堂企業資料館は企業博物館としての新しい方向性を示している。すなわち,従来からの展示中心の一般的企業博物館ではなく,社会に対し,企業文化のあり方を示すと同時に自社の組織内部に対し,企業活動を支援するさまざまな役割を果たしている。収蔵する膨大な企業資料や収蔵物を活用し,商品開発やマーケテイング担当など様々な部門に対し,戦略上のヒントを与え,方向性を指し示し,「本物」にこだわる資生堂の企業文化の形成と継承に役立っている。本稿ではこうした資生堂企業資料館の戦略的な企業アーカイブズの姿を紹介する。
著者
桐山 勉 川島 順 藤城 享 栗原 健一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第19回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.55-60, 2022 (Released:2022-07-01)

Open Science & Citizen Science時代において、IP Patent Information Scientistとして社会的なニーズテーマにて何かしらの社会貢献をしたい。具体的には国連が定めたSDGsテーマに沿う社会的テーマとして、「台風の制御技術の特許分析」を通して、社会貢献をしたい。更に具体的には、台風の制御技術を10個の詳細技術領域に分けて特許分析を行い、新たな社会的な知恵を纏めて提言を捻りだし、アイディア的ではあるが改善技術の進歩的な効果を狙う新規特許出願ができないか検討した。予稿集の配布前までに特許出願したい。先ずは、過去の学びの王道に沿って、官庁関連から報道・公開されている資料を学び、実際に関連する特許情報を調べて、その分析を試みた。そして、INFOSTA-SIG-PDG部会としてCitizen Scienceとして何かお役に立つことができないか、研究してみた。「台風の制御技術の特許分析」に対して、台風の膨大な自然エネルギーから1~3%のエネルギーを吸収し、それを社会に役立つ電気エネルギーに変換し、二次電池に蓄電する電気船の技術に的を絞り、研究を行った。これからのIP Landscape研究会にては、SDGsに沿った具体的な社会的ニーズテーマに沿って市民技術者勉強会を運営し、何らかの提案型・ビジネスモデル型提言を行うことこそ、IP Patent Information ScientistとしてCitizen Scienceを実践することだと、実感できた。当PDG部会の活動報告も兼ねて、発表する。研究成果として、Backcast-IPL法にて将来を先読みした台風のビジネスモデルに関する提言を行う。
著者
長谷川 幸代
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.96-101, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)

近年は,図書館の業務でも様々なデータを利用して利用者のニーズに応えることが期待されている。本稿では,ウェブを通したアンケ―ト調査の結果を分析した。公共図書館の利用頻度と他の公共施設及び他の図書館の利用頻度の間には,正の相関関係が確認された。しかし,公共図書館利用とインターネット閲覧時間との間には関連性が見られなかった。また,回答者の個人特性のうち,「外的没入」の度合は図書館利用とは関連が無いが,尺度の一部では有意な正の相関が確認された。公共図書館の高頻度利用者は15歳から24歳の年齢層に多く見られ,読書冊数が多いという結果が得られた。非利用層は,70歳以上に多く,読書をしない傾向が見られた。
著者
上田 修一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.226-232, 2007-05-01 (Released:2017-05-09)
参考文献数
30
被引用文献数
3

BMからEBP,そしてEBL/EBLIPへという流れの中で,新しく始めた共同研究「エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立」では,研究におけるエビデンスとは何かの解明を目標に,図書館情報学研究における研究方法の再検討のためのワークショップの開催,EBL/EBLIPの導入などの活動を行っている。EBMに始まる根拠に基づいた進め方は広い支持を得ている。けれども,実際の場になると,検討すべき課題は多く,またエビデンスに対する考え方も多様である。
著者
小林 由佳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.345-351, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

本稿ではウェルビーイングをメンタルヘルスの観点から解説する。メンタルヘルスに影響するワークエンゲージメントと仕事の資源との関係を説明するモデルとして近年注目されている「仕事の要求度-資源モデル」について解説し,ワークエンゲージメントを高める循環をつくりだすジョブクラフティングを例示やチェックリストとともに紹介する。また,コロナ禍における就業環境の変化によるメンタルヘルスへの影響や,ストレスチェック制度の最近の動向,職場単位での仕事の資源の高め方について,事例を交えて考察する。最後に,ストレス反応を増大させる循環に陥るのを防ぐためのセルフケアについても触れる。
著者
齋藤 敦子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.338-344, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

働く人にとって職場環境は重要だが,昨今,テレワークが常態化し働く場所は多様化し,マネジメントにも刷新が求められる。一方,知的生産性と身体の関係は深く,物理空間が無くなるわけではない。本稿では物理的なオフィス環境と人間関係や知識創造などのソフトが関係していることに着目し,職場環境の重要なキーワードである「ウェルビーイング」とワークプレイスについて解説する。そして,具体的な企業の事例からウェルビーイング・オフィスを俯瞰し,そのポイントを述べる。また,今後の働き方の変化を踏まえて,働く人と企業経営にとって望ましいワークプレイスとはどのようなものかを展望する。
著者
一般財団法人日本特許情報機構
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.455-458, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)

近年,日本への特許出願件数に対する海外への出願件数の比率は増加傾向にあり,海外の特許文献を調査することの重要性が増している。本稿では,世界主要地域の特許公報全文を「日本語」で一括して検索可能なサービスである「Japio世界特許情報全文検索サービス(Japio-GPG/FX)」の特徴を紹介する。Japioでは,特許に特化した高精度な機械翻訳,効率的なスクリーニングのための各種支援機能の提供に加え,脱炭素・SDGs技術の「見える化」といった独自データの提供も行っている。
著者
森口 歩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.361, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)

図書館システムは,ほぼ全ての業務をカバーする基幹システムであり,利用者との重要なタッチポイントでもあります。図書館を取り巻く状況が多様化・複雑化する中で,システムリプレイスは時代に合わせたアップデートはもちろん,従来システムにおける課題の解決や,実験的な機能の実現等,抜本的な改善ができる数少ない機会です。しかし実際には,システムリプレイス自体が図書館職員にとって非常に難易度の高い業務といえます。システム専任の職員がいない,前回の移行を経験した職員がいない,図書館として別システムへの移行経験が少ない等,手探りの状況にある図書館も多いのではないでしょうか。そこで本特集では,システムの課題に直面する図書館職員の皆様の道標とすべく,図書館システムの移行を主題としました。特に難しい,別ベンダー・別パッケージへの移行を実現した事例紹介を中心としています。まず,渡辺哲成氏(日本事務器株式会社)に,図書館システムベンダーの視点から,システムリプレイスにおいて影響が大きい仕様書とデータ移行を中心に、トラブルが起きやすいポイントを概説していただきました。考慮すべき点,トラブル回避方法,システム停止期間やコストを抑える工夫等を紹介していただいています。続いて,異なるベンダーへの移行を担当された図書館職員の方々に,移行に至った背景,仕様書作成や予算要求における検討,移行時の問題とその対処,業務の変化,今後の課題等,各館の経験をご紹介いただきました。上野友稔氏(電気通信大学)には,大学図書館での事例をご執筆いただきました。2022年3月,約30年間同じベンダーより提供されていたシステムから,ExLibrisの「Alma」へ移行した事例について,電子書籍・電子ジャーナルの管理と提供,検索インターフェイスのディスカバリーサービスへの集約,学外クラウドサーバの利用,図書館職員への研修に触れながら紹介していただきました。奥野吉宏氏(京都府立図書館)には,公立図書館での事例をご執筆いただきました。2016年に京セラ丸善システムインテグレーション(当時)のシステムへ移行し,広域横断検索に「カーリルUnitrad API」を導入した事例について,企画提案方式による選定,独自開発に近かったシステムの仕様書作成に係る苦労,運用中の環境変化に対応したシステム改修等に触れながら紹介していただきました。また,委員として携わった,日本図書館協会「図書館システムのデータ移行問題検討会報告書」の内容や今後の課題も概説していただいています。上岡真土氏(高知県立図書館)には,公立図書館における共同運営の事例をご執筆いただきました。高知県立図書館と高知市民図書館の合築に伴い,2015年に2館の図書館システムを富士通の「iLisfiera」に統合した事例について,設計や稼働までの経緯,両館のデータ移行・統合作業,調達に係る費用,稼働以降の変化に触れながら紹介していただきました。また,詳細なネットワーク概要図によって,図書館システムの関わる範囲の広さ,機器構成やネットワークの切り分けが,一目でわかるように示されています。藤崎美奈氏(みどりの図書館東京グリーンアーカイブス)には,専門図書館での事例をご執筆いただきました。2021年に独自開発システムから,ブレインテックの「情報館」に移行した事例として,旧システムの課題解決に向けた検討,新型コロナウイルス感染症流行の影響による予算確保の問題,画像データの保管,デジタルアーカイブやホームページとしてのOPAC活用,現場職員の作業負担に触れながら紹介していただきました。埼玉県高等学校図書館研究会図書館協力研究委員会の皆様には,学校図書館の事例をご紹介いただきました。2020年に県内高校図書館の横断検索システムを,独自開発のISBN目録から,カーリルとの協働による書誌情報検索へ移行した事例として,連携協定に至った経緯,加盟する学校図書館における作業の変化,小規模グループごとの機能開発,物流や費用に係る今後の課題に触れながら紹介していただきました。今後,システムに求められる機能や範囲はますます拡大し,その重要性が高まる中で,システムリプレイスはより良いサービスを提供するために有効な手段のひとつです。本特集がシステムリプレイスに対する不安を解消し,自館のシステムを発展させるうえでの一助となれば幸いです。(会誌担当編集委員:森口歩(主査),今満亨崇,小川ゆい,鈴木遼香)
著者
中井 将人
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.341-345, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

海外特許情報とその関連情報は以前よりも地理的,時間的に広く集めることができるようになってきている。大量に集められた情報はAI技術などを利用して整理されることにより検索データベースとして多様な目的に利用できるため,特許調査のプロフェッショナルだけでなく,研究開発部門や経営企画部門などにも広く利用されるようになってきている。AI技術によって実現した機能を提供する検索データベースOrbit Intelligenceを使うことによって,特許検索に慣れていないエンドユーザーであっても目的とする特許の抽出や,多種多様な関連情報の確認,新たな洞察を得ることが可能になっている。