著者
福嶋 聡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.71-77, 2008
参考文献数
4

配本された新刊書をジャンルに分け,しかるべき書棚に収める。購入した資料一点一点にコードを振り,配架する。書店員にとっても図書館員にとっても,「分類」は基本的な日常業務である。「本と読者を結びつける」という点では共通しながらも,書店と図書館には,「商品の販売」と「資料の貸し出し」という業務内容の大きな違いがある。その違いはそれぞれの書物の「分類」,具体的にはコード体系や作業工程の違いとなって現われてくる。そのことを検証するとともに,「分類」そのものの「困難」に触れながら,「困難」と表裏一体のものとして書物の「進化」をとらえ,近年の人文書の趨勢に,その実例を見いだしていく。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.339-339, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)

新聞やインターネットでは,毎日のように人工知能(AI:artificial intelligence)に関する記事が掲載されており,最近ではチェス・将棋だけでなく,より複雑といわれる囲碁で対局しても,名人に勝利できるほどに進化しているようです。日本国特許庁(JPO)でも,将来,人工知能を業務システムに組み込むことを検討していることについて,「特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」や,「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」などの資料にて公表しました。また,ここ数年の間には,人工知能を用いて特許情報を分析・解析するというシステムが,各情報提供事業者より発表され,業務の効率化やユーザの問題解決に利用する動きが始まりました。一方で,数年前に話題となったオックスフォード大学の論文で,コンピュータ(人工知能)によって「消える職業」「なくなる仕事」として,サーチャーが上位にランクされたこともあり,特許情報の検索者とその業務は,人工知能によって,少しずつ業務の範囲を狭められていくのか,それとも共存していくのかについても,興味のあるところだと思います。そこで,今号では特許情報と人工知能(AI)というテーマで,人工知能という技術を特許情報に対しどのように適合させていくのか,あるいは,特許情報を人工知能というフィルタに通した場合,どのような知見をえられるのかについて,参考となる特集を企画しました。はじめに,桐山勉氏と安藤俊幸氏の共著による総論によって,現状における特許情報と人工知能の全体動向について論じていただきました。つづいて,岩本圭介氏には人工知能を用いた情報処理システムの概念と株式会社NTTデータ数理システムにおける分析ツールへの取組みについて,鈴木祥子氏には特許文書解析へのアプローチ方法と課題について,藤田肇氏には独自開発の人工知能エンジンについて,その開発の経緯や実務への応用例など,太田貴久氏には,特許情報を人工知能に適用させる際の問題点について,田辺千夏氏には,サーチャーとシステムユーザーという複数の視点から,人工知能というツールをどのように利用するのかについて,それぞれ解説をいただきました。今回の特集が,「人工知能」というツールに興味をもたれている方の参考になるだけではなく,既に利用されている方にも新しい何かに気づくきっかけになっていただくことになれば幸いです。(パテントドキュメンテーション委員会)
著者
佐藤 匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.211-215, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

本稿の目的は,図書館のレファレンス調査における発想の技法に焦点を当て,その本質について考察することである。その手掛かりとして,G. ポリアによる,数学の問題を解く際に有用な発想のリストを利用した。これによって以下の2点が明らかになった。第一に,ポリアのリストがレファレンスの問題を考える上でも有効であること。第二に,レファレンス調査の技法はポリアのリストに還元可能であり,その調査技法の核は<類似性>と<変形>という発想の技法に帰着することである。最後に,ポリアのリストによって図書館レファレンスのみならず,広くインフォプロの調査技法の全体を包括的に理解できる可能性があることを示唆した。
著者
藤田 節子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第2回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.143-146, 2005 (Released:2005-10-19)
参考文献数
7

学術雑誌の体裁や記述のしかたを規定した投稿規定は、その学会誌や分野の特徴をよく表わしている。しかし、投稿規定は学会毎に独自に作成されているため、規定内容がそれぞれ異なり、研究者の論文作成に煩雑さを招いている。国内科学技術分野の学協会の投稿規定調査は、以前から行われてきたが、近年の電子ジャーナル化や電子投稿の増加などにより、その形態や内容が変化している。投稿規定や学術論文の書誌的構造等の標準化を推し進めるために、投稿規定を収集し、その記載項目やその内容の詳細を調査分析し、過去の調査結果と比較した。特に、参照文献の記述、電子投稿、著作権について詳細に考察し、SIST02(参照文献の書き方)の改訂や普及、投稿規定の標準化、著作権規定の必要性を考える。
著者
矢吹 命大
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.185-189, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

横浜国立大学は理工系,人文社会系,教育系及びその融合型の学部・大学院で構成される医学系部局を持たない中規模総合大学(学生数約1万人,教員数約600人)である。URAが設置されて以来,研究IRへの取り組みも活発に行われ,引用文献データベースを用いた大学の強み・特徴の分析が行われてきた。一方,横浜国立大学の研究活動には,引用文献データベースでは見えづらい分野も多々含まれているため,そういった分野も含めた分析を可能とする視点が求められていた。本稿では,この課題への取り組みとして,広い研究分野を網羅し,他機関の動向も知ることができる科研費の採択状況に着目した分析事例を紹介し,その有効性と限界を論じる。
著者
酒本 裕明 法宗 布美子 有賀 康裕 左右内 敏浩 丹 美幸 都築 泉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.194-201, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

商品開発ではニーズの把握が非常に重要である。そのため,将来のニーズ(例えば次のブーム)を予測する手法が今後益々必要とされる。そこで,本研究では,次世代商品ニーズの予測手法を確立することを目的とした。題材には身近な商品であるシャンプーを選択し,次に来るシャンプーブームを予測した。今回,各年代に発生したブームについて,出願件数の経年変化の数値に対して統計処理を行なう手法を試みた。その結果,いずれのブームにもブーム発生以前に前兆となるシグナルが確認された。この手法を用いて,種々の手法により抽出したニーズ候補を評価し,次世代商品ニーズ群の選定を試みた。
著者
稲木 竜
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.14-18, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)

慶應義塾大学メディアセンターでは2016年2月にディスカバリーサービスである,Primo Centralを導入した。本稿では,ディスカバリーサービス導入までの過程と運用開始後の電子書籍検索への活用事例について述べる。本学の資料検索システムであるKOSMOSにて大規模電子書籍コレクションの収録タイトルを検索できるようにすることを目的にディスカバリーの導入を進めてきた。サービス開始後はディスカバリーを用いた資料検索により,DDA(Demand-Driven Acquisitions)による資料購入や試読のアクセス状況に基づいた選書などの新しい業務の流れも生まれている状況である。今後,業務面では新たな資料購入フローに伴う購入決定判断の変化,システム面ではディスカバリーに搭載されるメタデータの質や新刊タイトル搭載の即時性やソート順などが課題となる。
著者
高橋 克巳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.585-590, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)

個人情報の活用と保護の技術に関して,個人情報の取り扱いの原則を解説し,個人情報の定義を述べた上で,原則に基づいたデータ収集,データ処理,データ保管の技術的観点からの解説を行う。個人情報取り扱いの原則はOECD8原則やISO/IECプライバシーフレームワークを参照しながら,利用目的,データ最小化などという独特の概念を説明し,個人情報保護法が求める保護の技術的意味に迫る。さらにこれらに対してデータ最小化に貢献する匿名化技術や情報セキュリティに貢献する暗号技術の概要を解説する。
著者
石田 喜美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.531-537, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)

近年,大学図書館において積極的に,情報リテラシーに関わる教育活動が行われるようになってきた。一方,1990年代後半から,さまざまな「新しい能力」に関する概念が提案されてきており,情報リテラシーという概念もその拡張を余儀なくされている。本稿では,「新しい能力」の視点から,大学図書館において求められる情報リテラシー教育とはどうあるべきかを検討し,その展望を描きだすことを目的とした。具体的には,「つながる学習(Connected Learning)」の学習論に着目し,本学習論から導きだされる情報リテラシー学習のための学習原理および学習環境のデザイン原理について考察する。
著者
岡本 耕太 清水 裕史 津田 英隆 仲 美津子 伏見 祥子 堀口 泰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.345-351, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

近年,企業活動における情報分析の重要性が大きくなっている。本稿は,筆者らは空気清浄機を開発,製造,販売する電機メーカA社の経営企画担当者であると仮定して,公開情報(製品,特許,論文など)を分析して新事業創出のための提案を作成する手法の検討を行った。手法の検討にあたっては,以下(1)~(3)の観点からのアプローチを行った。(1)A社空気清浄機技術の強み,(2)空気清浄機技術と既存技術の組み合わせ,(3)社会ニーズに対応する次世代技術
著者
重田 暁彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.312-317, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

知的財産の中でも技術関係の情報が中心となる特許関係の特許庁の審査・審判,更には訴訟に見る最近の動きを把握し,特許調査や発明を捉える際の影響などで考慮すべきことを述べる。特許庁の判断と裁判所の判例には微妙な違いが見られる。特許庁の審査は,ある程度の技術内容の開示があれば,比較的広い範囲での請求項が認められる。しかし,権利解釈などの裁判になると具体的な実施態様に限定される傾向が見られる。特許調査や発明を捉える際の影響を考えると,技術的内容を何処まで細かく,必要十分な範囲または観点で取り組むべきかが重要になる。調査であれば技術用語による全文検索を,発明開示であれば出来得る限りの下位概念をしっかりと実施態様に述べることが求められる。
著者
西願 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.2-7, 2012
参考文献数
42

本稿の前半では,インドの出版事情をめぐって,電子書籍/印刷書籍,多言語出版,政府系出版者/民間出版者,書籍流通,書籍小売業などのトピックを取り上げ説明する。あわせて,出版者が組み込まれている法定納本制度,納本図書館の一つであるインド国立図書館にも言及する。本稿の後半では,情報源の利用という観点から,国立国会図書館(NDL)が所蔵するインド刊行資料の概要を述べる。特に政府系刊行物については,ウェブ上でのアクセス方法にも触れる。最後に,NDL利用者と資料・情報の結びつきを下支えしている,NDL関西館アジア情報課の選書業務,コンテンツ作成業務を紹介する。
著者
林 和弘 餌取 直子 武内 八重子 中原 由美子 伊勢 幸恵 新岡 美咲 直江 千寿子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第11回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.155-158, 2014 (Released:2014-11-17)
参考文献数
7

学術電子ジャーナルの進展は、従来の出版者と図書館の関係にも大きな影響を与え始めており、図書館が機関リポジトリ構築を推進することによって、これまで情報の受け入れを主としていた図書館の関係者が積極的に情報発信に関わるようになった。「三大学連携機関リポジトリ研修」の成果として、お茶の水女子大学、千葉大学、横浜国立大学の三大学に加えて筑波大学の機関リポジトリから発信される学術情報を分析した結果、大学ごとの特徴が現れた。