著者
西田 豊明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.586-590, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

2011年ころから第3回目のブームとなった現代人工知能技術の特色は,社会を広く巻き込んでいる点である。本稿では,人工知能の本質について議論した上で,倫理的,法的,社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues, ELSI)への取り組みの現状を俯瞰し,その原則的な側面についての議論の概要をまとめ,利活用の視点からの検討を紹介する。さらに,ELSI問題のはっきりと捉えにくい側面についても触れ,今後の見通しを探る。
著者
田中 厚子 高井 史比古 西川 幸江 本田 孝行 川本 敦子 中島 勇 堀越 節子 小川 隆司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.269-275, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

日本EPI協議会のワーキング活動において,IPランドスケープをテーマに,知財関連の解析手法について研究を行った。テーマとしては炊飯器を題材に,3チームに分かれ,それぞれが異なる炊飯器メーカーを担当した。国内市場をターゲットに分析を行い,市場におけるポジションの確認や,事業戦略,経営層への提言を検討した。各チームでまずは市場における外部要因を確認し,ベンチマークを行った上で,SWOT分析,ファイブフォース分析,ポジショニング分析,特許分析,テキストマイニング,ワードクラウド等の手法を駆使し,それぞれの結論へと導いた。本稿では,研究活動を通して得られた分析手法の知見を紹介する。
著者
神崎 正英 佐藤 良
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.453-459, 2011-11-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
23

国立国会図書館(NDL)は,書誌データの開放性・利用可能性を向上させる取り組みの1つとして,書誌データ提供におけるセマンティックウェブ技術への対応を進めている。この一環として,2010年6月には「ウェブ版国立国会図書館件名標目表(Web NDLSH)」,2011年7月には提供範囲を全典拠レコードに拡大し,システムの機能を拡張した「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版をリリースした。「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」の開発版では,典拠データをRDFモデルにより表現し,Linked Dataのスキームに準拠する等,セマンティックウェブ技術に対応した形式により提供している。本稿では,当サービスの概要,提供する典拠データの内容,RDFモデルの設計等について紹介をする。
著者
木目沢 司 村山 泰啓
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.459-464, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)

インターネットの普及以降,ウェブサイトで多くのデータベースが公開されているが,内容やURLの変更,サイト閉鎖等により長期的なアクセスが保証されず,とくに調査研究において調査結果の根拠として用いる上で大きな課題となる。本稿では,2002-2014年に運用された国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)に収載されていたデータベース情報について,2017年時点でのアクセス可否を調査した結果を報告する。またデータベースの長期保存の方法について,国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)の利用や,電子情報の長期保存の規格であるOAIS参照モデルを参照した考察を行う。
著者
藤本 徹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.502-507, 2012-12-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
14

本稿では,「サービスとしてのゲーム」を一つの切り口として,ゲームの要素や枠組み,そしてその社会的利用における考え方を論した。ゲームの社会的利用に関連する概念を検討し,「サービスとしてのゲーム」の観点から,ゲーム産業におけるゲームのサービス化や情報サービス産業におけるサービスのゲーム化といった異なる角度から考察した。その上で,情報サービスにおいてゲームの要素を取り入れるアプローチを3つのレベルに整理して,それぞれの特徴について図書館におけるサービス開発の文脈で例示しながら,今後このような取り組みに向かう際に考慮すべき課題を検討した。
著者
数藤 雅彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.484-490, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

インターネット上で匿名の第三者に自分の肖像をアップロードされ,肖像権を侵害された場合に,加害者である第三者の氏名や住所等の情報を得るために,プロバイダを被告とする発信者情報開示請求訴訟を提起することが考えられる。この訴訟における肖像権侵害の判断には,関連する法律の規定や事案の特質等をふまえ,通常の損害賠償請求事件とは異なる特徴も見られる。本稿では,裁判例の分析をふまえ,発信者情報開示請求事件における肖像権侵害の判断の特徴を明らかにする。
著者
吉武 道子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.164-169, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

データには,数値・表・画像・動画・音・文字列・数式・関係性データなど,見た目の異なる様々な種類のデータがある。従来のレファレンスは,探したい情報(=データ)を記載している情報源を見つけるものであったが,昨今のデジタル化の進展によりデータ量は爆発的に増え,探したい情報そのものを見つけるレファレンスも求められる。データの多様化・量の増加に対し,効率的なデータ検索と利活用が追い付いていないのが現状と思われる。本稿では,主に材料科学分野を例にとって,データの種類ごとにデータの利活用の現状と,利活用するために必要な処理=データキュレーションについて概観する。
著者
立田 慶裕
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.400-405, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

急激な技術の発展や国際化社会の到来の中,確かな学力に加えて,新たな技術を活用する思考力や知識の探求力,創造力を含む高度な読解力(メタ認知やデジタル読解力)が求められている。本稿は,学校図書館の利用を通じて,学校の段階的な教育課程に対応しながら,新たな読解力を形成するためのプログラムの構成表(ルーブリック)にはどのようなものがあるかを明らかにする研究の成果である。高度な読解力とは何か,そして,実際にどのようなルーブリックが作成されてきているかを,米国学校図書館協議会やコロラド州,ルイジアナ州の資料から明らかにし,司書教諭や学校司書に求められる職務やコンピテンシーを紹介した。
著者
野村 恭彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.500-506, 2004-10-01 (Released:2017-05-25)

ナレッジ・マネジメントは,組織内の知識を共有・活用するレベルから,企業の競争力の源泉として明確に位置づけられるようになってきた。その好例は,プロフェッショナル・サービス・ファームの情報サービス部門で,ライブラリアンの未来の姿をそこに見ることができる。一方で,暗黙知の重要性認識はますます高まっており,図書館の果たす「暗黙知共有の場]としての役割について考えたい。そして最後に,知的競争力やイノベーション能力を可視化するアプローチを示し,知識企業として,組織の持つイノベーション能力に焦点を当て,企業価値の極大化を実現する経営アプローチについて考える。
著者
佐渡島 紗織
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.22-28, 2014-01-01 (Released:2017-04-13)
被引用文献数
1

本稿の目的は,アカデミック・ライティング教育において情報リテラシーに関する問題はどのような点にあるかを検討し,今後,求められる指導の方向を示すことである。国語科教科書や小論文演習教材などをみると,日本の小・中・高・大学と受験塾では,情報を自分の文章にどのように取り込むかの,十分な指導,一貫した指導がなされていないことがわかる。引用・参考文献明記の学習を通して,《情報を再定義させる》学習をさせることが必要である。それによって,多様な立場・意見を検討した上で自身の立場を確立し,明確な意見を発信できる学生を育成したい。
著者
篠田 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.94-100, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

主に光学と心理物理学,測色学の観点から色彩の基礎知識を述べる。はじめに色発現の三要素を取り上げて色とは光を媒介に分光情報を反映した知覚であるとし,照明や観察者によって知覚する色が変化することを確認する。次に色覚の三色性を取り上げて分光分布と三属性の関係や三色性に基づく表色系や測色値を紹介する。さらに条件等色という概念を通して三原色を用いた色再現機器の原理と問題点を指摘する。後半は様々な色覚現象を紹介して,そのメカニズムと機能を述べる。最後に色覚分類を説明し,色覚特性や色覚多様性に関連したいくつかのアイディアや応用技術を紹介する。
著者
渡邊 由紀子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-17, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)

COVID-19の感染拡大に伴い,日本では多くの大学図書館が来館型サービスを休止・制限せざるを得なくなった。本稿では,そのような特殊状況下において大学図書館がレファレンスサービスを拡充する方法について,九州大学の実践例を基に検討した。九州大学附属図書館は,図書館TA(ティーチング・アシスタント)と協働しながら,既存の質問回答サービス,Web学習ガイド,学部1年生向け講習会,図書館TA企画イベントを非来館型に進化させ,サービスを強化した。それらの実践から得られた知見をまとめ,今後は非来館型サービスを来館型サービスと統合して,ハイブリッドなレファレンスサービスを展開していく必要があることを示した。