著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.103-107, 2006
参考文献数
29
被引用文献数
2

Wikipediaは,市販の百科事典を凌駕する巨大な百科事典である。従来の百科辞典と比較して,(1)300万に迫る項目が解説されている,(2)200種類を超える世界中のさまざまな言語の辞典が作られている,(3)日々改定が行われており時代に即した新規項目が充実している,(4)世界中のボランティアの手によって編集が行われていることが,大きな特徴である。本稿では,Wikipediaの概要を紹介し,レファレンスサービスでの利用の可能性について述べた後,関連するいくつかのプロジェクトとWikipediaの課題を解説する。
著者
武田 英明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.296-302, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

Webは1990年前後にティム・バーナーズ=リーによって発明されて以来,単なる情報共有・情報公開ツールとして社会で使われるのではなく,社会の仕組みを変えるツールとして機能してきた。本稿ではWebと社会との関わりをWebの本質であるエンティティとその繋がりという視点から現在までの発展を見ていく。2000年前後において,DOIやWikipediaといういくつかのエンティティの繋がりの世界が生まれた。これらは内部では秩序ある繋がりを作っていた。2010年前後においては,DBpediaやWikidataなどLinked Open Data(LOD)の仕組みに基づいて,明示的にエンティティとその関係を記述する活動が生まれきた。LODによるエンティティの世界は今後のWebの基盤となることが予想される。
著者
末田 真樹子 花﨑 佳代子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.462-466, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

神戸大学附属図書館デジタル版新聞記事文庫は,神戸大学経済経営研究所の所蔵する明治末~1970年の新聞記事切抜帳コレクション約3,200冊のうち,戦後までの記事約38万件の画像と本文テキストを対象に電子化公開を進めるデジタルアーカイブである。2000年のサービス開始以来コンテンツの公開を続け,現在約30万件を公開する。本稿では,新聞記事文庫の成り立ちとその独自の価値を再確認するとともに,デジタル版新聞記事文庫の利用傾向を,Google Analyticsでのアクセスログ調査や二次利用の具体例から分析する。最後に,今後のさらなる活用に向けた課題を述べる。
著者
片山 善博
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.168-173, 2007-04-01 (Released:2017-05-09)

図書館本来の機能,つまりミッションは,民主主義社会の国民・住民の「自立支援」を「知的インフラ」という側面で支えることである。真の民主主義社会の実現には,政府と国民との間でできるだけ広範な情報共有が必要であると同時に,政府が発信する情報だけでなく,いわば「対抗軸」ともいうべき客観的資料や政府案への問題点を論じた資料など,バランスの取れた情報環境が必要である。また,重要な政策決定を審議する際,失敗事例,諸外国事情を含め,基礎となる資料や情報は不可欠である。それらの情報環境を担うのが図書館であり,図書館のミッションといえる。そして,それらの情報へのアクセスを的確に行うのが司書の役割である。
著者
マスクド・アナライズ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.296-302, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)

昨今の第三次AIブームからコロナ禍でテレワークによるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進など,企業活動におけるIT(情報技術)の活用は急速な変化を遂げている。この流れは知財法務においても同様であり,様々な業務や周辺環境においてIT・デジタル化による変革が迫られている。本記事ではAIブームを含めたITによる失敗を踏まえながら,曖昧となっているDXの定義や本質について明確にすることが最初の目的となる。その上で知財法務部門おけるデジタル化による業務効率化,新規事業による利益創出,失敗を許容する文化醸成について,解説するものである。
著者
児玉 陽子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.432-435, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

近年,国内でも研究データ管理への様々な取組みが始まっているが,豪州では2007年にAustralian Code for the Responsible Conduct of Researchが策定されたこともあり,すでに多くの研究大学で行われている。著者は2017,2019年にシドニー大学図書館の研究データ管理担当者から話を伺う機会を得たので,ここに実際の運用について概要を報告する。またシドニー大学図書館のウェブサイトでの研究データ関連の情報提供の展開についても触れる。大学のポリシー,研究データ管理計画書,ストレージやツール,データの公開,広報や学内での協力体制,さらに学外の組織・ANDS(現在のARDC)との関わりや,現時点で抱えている課題についてもレポートする。
著者
佐藤 朝美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.402-405, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

企業にとって,自社の活動の足跡を示す資料は貴重な資産となる。将来,これらの資料に目を通した社員は,これから進む方向を判断する上での指針が得られるであろう。そこで当館では,自社の知的・感性的資産が将来にわたって有効活用されるように収集保存をしている。多岐にわたる収蔵品の中から化粧品と制服の保存について紹介する。化粧品は一社の歴史にとどまらず近代日本の技術開発や産業文化の歴史を伝えることができる。さらに外装デザインは時代の雰囲気や芸術性まで感じさせるものがある。その化粧品の価値と資生堂の美意識をお客さまに伝えるスタッフの制服も合わせて保存し,活用している。
著者
黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.521-526, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)

シンキングツールの活用が広まっている。これはアイデアを可視化して考えを生み出したり,共有して協働的に考えたりすることを助けるツールである。考えるためには,一定の制限が有効にはたらく。シンキングツール上の図式や視点がその制限となる。活用にあたっては,考えを生み出す手順として思考スキルをイメージすることが重要である。思考スキルは,小学校低学年から高等学校まで徐々に高度化しながら活用する。思考スキルとシンキングツールを対応させることによって,その手順が可視化できる。しかし,この対応は一様ではなく,シンキングツールを使う場面やトピックの対象となる事項の数・質,活用の目的によって変わる。
著者
西薗 由依 尾城 孝一 古川 雅子 南山 泰之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.187-193, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

研究データ管理(RDM)は,オープンサイエンスにおける研究データ共有や公開を支える重要なプロセスとして位置づけられる。機関リポジトリ推進委員会,及びその後継となるオープンアクセスリポジトリ推進協会は,国内でRDMを推進するための方策として,2015年から研究支援者向けのRDM教材開発に取り組んできた。本稿では,開発した2つの教材「RDMトレーニングツール」及び「研究データ管理サービスの設計と実践」の開発経緯について紹介する。また,開発した教材の活用事例として,国立情報学研究所と共同で作成した動画教材についても触れる。
著者
永崎 研宣
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.165-170, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

デジタルアーカイブシステムにおける標準化技術には様々なものがある。技術に対応する規格も存在し,それぞれに標準化団体が活動を継続している。本稿では,Unicode,IIIF,TEIを採り上げてそれらの特徴を概観した。国際標準はただ従うのみでなく,自らの固有性が消されてしまうことがないような検証が必要であり,場合によっては国際標準の側を修正すべきこともある。デジタルアーカイブの取り組みの全体の中では,国際標準化活動にそのような観点から積極的に関与することも重要である。
著者
桐山 勉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.360-365, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

AI時代のインフォプロには何が求められているのだろうか。経営層であるC-Suiteに直接語ることができる知性を磨くことが求められている。その知性は1日に成らず,それを支えるビジョン・信念と人格と訓練・習慣とスキルが必要となる。一人では自分を育て上げることが難しく,最適な各種の勉強会に属して教えを乞うことも必要である。最近のスキルとしてはIPランドスケープをC-Suiteに語れることが必要と思われる。事例研究として空飛ぶタクシーのeVTOL/Hybrid-eVTOL機の研究を取り上げた。仮説と検証を繰り返すというシンプルな王道に沿って研究を実践した。情報調査と分析をスピーディーに可能性が高い方向に,正しい方向に向かわせるための目利き力と直観力と最大限に具現化するために論理思考などとの融合を検討した。そのプロセス(ex. PSDS法)と空飛ぶタクシー技術の将来断片を論述する。
著者
ミラー ラッシュ・G ショットランダー ブライアン ジョーダン ジェイ 平原 禎子 廣瀬 絵里子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-39, 2012

紀伊國屋書店では,2007年より毎年海外から講師を招致し,大学図書館経営層の方々を対象とした国際ラウンドテーブルを開催している。5回目となる2011年はその規模を拡大し,OCLCとの共催で,広く図書館関係者に向けたセミナーを催すこととなった。ピッツバーグ大学図書館長のRush G.Miller氏,カリフォルニア大学サンディエゴ校図書館長のBrian E.C.Shottlaender氏,そしてOCLC会長兼CEOのJay Jordan氏を講師にお迎えし,早稲田大学図書館の後援を得て,同大学大隈記念講堂にて講師3名の講演およびパネルディスカッションが行われた。本稿は,講師3名の講演内容をそれぞれ和訳し要約したものである。
著者
日髙 杏子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.101-106, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

表色系とは,なんらかのルールに沿って配置された人間の色知覚,色刺激,または物体色による色彩の体系で,コミュニケーションのために編み出された。本稿では,歴史背景を踏まえた上で,表色系のしくみ,原色・純色,補色(反対色)を比較する。色相環は,虹の色を単純に丸く並べただけでなく,補色残像のような生理学的知覚現象を説明するのにも役立つ。また,マンセル表色系によって広まった3属性(色相・明度・彩度)と色立体,日本で使われる表色系も解説する。光,物体色,印刷,デザインなど,用途によって表色系は各種あり,その基準や論理はそれぞれ違っているのである。
著者
神崎 正英
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.399-405, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

多様なデータの共通点やつながりを見つけ,それを用いて狙いのデータを取り出し,分析や視覚化などによって付加価値を生むためには,複数ソースのデータを集約しても共通点が得られる語彙やモデルの設計,つながりを見出すための値の正規化やリンク,そしてそれを適切に利用できるクエリが必要になる。RDFの導入期から行なわれてきたデータ設計やリンクの工夫を,図書館を始めとするGLAMやポータルの具体例を用いて紹介する。またそれらを利用するSPARQLクエリ例を示し,他のケースに応用するヒントにもなるように解説する。
著者
マクヴェイ山田 久仁子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.28-33, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

2020年3月にパンデミックとなった新型肺炎の影響で,ハーバード大学では3月23日から全ての授業がオンラインに切り替わり,図書館の全職員が自宅勤務となった。春学期途上の突然の移行を経て,9月の新学期はオンライン授業のみとなったが,大学図書館は,この新たな教育形態の支援を最優先として取り組んできた。本稿では,ハーバードのオンライン教育における電子資料活用の実際を,日本語資料専任ライブラリアンである筆者の職務を交えながら,報告,考察する。
著者
平井 克之 岡崎 麻紀子 奥津 佐恵子 久保 琢也 矢吹 命大 渡邉 優香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.80-86, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

リサーチ・アドミニストレーター(URA)による研究力分析の効率化・高度化を進めるには,実務担当者間の連携が不可欠である。近年,データ分析の現場では,プログラミング技術を用いた分析手法が,広く利用されるようになってきた。分析作業の効率化と高度化を目的に,Code for Research Administration (C4RA)が発足した。本稿では,論文書誌情報や科研費を用いた研究力分析において,PythonやR等により作業の効率化を図った事例を紹介する。最後に,C4RAの今後の活動の方向性及びURAの普及定着への貢献の可能性を探る。
著者
設樂 成実 天野 絵里子 神谷 俊郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.510-515, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

紀要編集者ネットワークは,紀要の編集関係者や,公開や流通を支える図書館関係者,印刷関係者等をつなぎ,意見や情報を交換できる場を提供し,紀要の発展に向けた支援につなげることを目指す活動である。本稿では,筆者の紀要編集者としての実務経験および本ネットワークを通し得た紀要編集者らの声をもとに,紀要が電子ジャーナル出版を進めてゆく上で,個別の編集委員会では対応が難しく関係部署や図書館等との連携が望まれる事項について検討した。その結果,法律知識を必要とする業務のサポート,編集や運営のノウハウの継承のための情報共有,最新の学術情報流通技術への対応のための情報共有,出版プラットフォームとしての機関リポジトリとの協働を提案する。
著者
長崎 洋
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.55-59, 2012
参考文献数
45

政治・法律・行政分野の文献には,内容的に公開しても差し支えないものが多い。また,その作成のお金の出所から考えて広く公開されるべきものが多いと思われる。それにもかかわらず,入手しにくいものが少なくないように感じられる。本稿では,まず,そのような文献を類型化し,次に,インターネット情報の発達によってそれらの入手可能性が高まっていることを述べる。最後に,今後の更なる文献の公開とその保存について,概観する。その際,これまで灰色文献に取り上げられることがあまりなかったと思われる,通達を収録した資料および国会の資料にも言及している。
著者
長塚 隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.571-575, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

現在多くの人に関心を持たれている書籍「FACTFULNESS」の翻訳者である関美和氏による特別講演「実録FACTFULNESS 大ヒットの舞台裏」がオンライン開催された。講演者はハンス・ロスリングらによる「FACTFULNESS」がどのようにして生まれたのか。さらに,日本語版への翻訳と出版がどのようなプロセスを経て実現されたのか講演者の経験を踏まえて紹介された。日本語版への翻訳と出版の舞台裏ではどのような工夫と努力がなされていたのかを,講演者の豊富な経験を踏まえて語られたので,多くの参加者は講演に引き付けられた。
著者
大場 郁子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.490-494, 2006
参考文献数
8

研究者のための学術情報ナビゲーションツールScopus(スコーパス)は,科学・技術・医学・社会科学分野における4,000以上の出版社の15,000誌以上のタイトルを収録する書誌・引用データベースである。Scopusは,検索結果のデータをいろいろな方法で分析し,より深い洞察を得たいと考えている研究者のニーズにこたえるための機能拡張を継続的に行ってきた。ここでは,特定著者の文献収集をより正確かつ簡単にする著者識別機能と,利用者が自由に評価対象文献を選択して分析できる引用分析ツールの2つの新機能を通して,評価ツールとしてのScopusの特性を紹介する。