著者
岡野 裕行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.513-517, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)

ビブリオバトルは複数の人で読書を分かち合い,共有できるという機能を有している。読書のプロセスは,①本に出会う,②本を読む,③本を語る,④本を伝える,と細分して考えることができるが,ビブリオバトルは読書についてのそれらのさまざまな段階を言語化し,読書体験を共有する仕組みであると言える。本を読んでその面白さを語るということは,どこかの誰かのために知的好奇心の種をまく行為であり,ビブリオバトルによって,読書という概念は自分一人だけの静的なものから,複数の人同士の動的なコミュニケーションツールへと変わっていくことになる。
著者
田中 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.390-394, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

PISA型読解力は,社会の多様な資料やデータを比較して既有知識を活用しながら深く読み取り,読み取った結果を自分なりに解釈・評価してわかりやすく表現するという総合的な学力を意味している。21世紀社会に求められる新しいリテラシーとしてのPISA型読解力は,すべての国の子どもたちの基礎学力になることが求められるとともに,これからますますその育成方法や評価方法の研究を推進することが,OECD的な意味で国の経済発展の根幹になるものと考えられる。
著者
大瀬 佳之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.187-191, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

近年ChatGPTを代表とする,AIツールの様々な業務への適用が注目を浴びている。本稿では,競合調査においてAIツールと特許情報解析ツールを上手に組み合わせて活用することにより,高価な情報サービスを利用することなしに,効率的に充実した競合調査を実現する方法を提案する。競合調査は,知財戦略の立案や,企業の競争優位性の確保にとって重要である。従来,特定の大企業のみが実行可能であった大規模な情報収集,情報調査といったものが,AIツールや特許情報解析ツールを組み合わせて活用することにより,中小企業,スタートアップ等でも実行可能になりつつあると考える。
著者
坂東 慶太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.189-195, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)

研究者SNSは,誕生当初は他研究者とのネットワーキングや自身のオンラインプロファイルとして活用されることが主流であったが,近年は論文共有の場として使われていることが幾つかの調査より明らかとなっている。これに伴い,新たな問題-研究者SNSで共有されている論文には,本来公開してはならない出版社版が多数アップされていること-が顕著化しており,学術出版業界が牽引して学術コミュニケーションの改善に取り組んでいる。図書館員は,研究ワークフローの各フェーズを支えている研究者SNSの機能・使われ方・問題などを理解し,研究者SNSが適切に利用されるよう支援活動に組み込む必要がある。本稿では,研究者SNSの概要と機能を確認した後,様々な調査報告に基づいて研究者SNSの利用実態・問題点を整理する。その上で,図書館は,研究者SNSに対してどのような取り組みが出来るのか・期待されるのかを考察する。
著者
関谷 直也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.372-377, 2012
参考文献数
18

東日本大震災において,人々は物理的な被害を受けていなくとも,直接的な地震・余震,津波の映像の視聴,放射性物質の飛散に関する情報などを原因として不安を強く感じた。また被災者への支援について不安を感じ,そのような状況にも関わらず情報が手に入らないことに不安を感じた。そしてそれらの不安を解消するために,情報を過剰に発信・受信しようとしたり,支援・団結を求めたり,他者への攻撃へと転嫁したりした。ある程度,時間が経過してからはさまざまな活動を自粛し,時間が経つにつれ,不安や震災について考えることなどは忘却され,平時の心理に戻っていった。
著者
和田 玲子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.16-21, 2019-01-01 (Released:2019-01-01)

経営層からの要望やビッグデータ解析ツールの高度化により,知財業界で「IPランドスケープ」が盛り上がりを見せている。IPランドスケープは,知財解析を経営判断に活かすものであり,知財解析を実行する人材としての知財アナリストの育成は急務である。本稿では,IPランドスケープ実施に際し,知財アナリストの育成に直面した筆者が,特許サーチャーのキャリアパスを参考にしながら検討した,知財アナリストのキャリアパスについて述べる。具体的には,見習い,一人前,熟達者の3段階にわけ,各レベルで必要となるスキル,その獲得時期や方法について言及する。
著者
孫 媛
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.179-184, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)
被引用文献数
1

研究開発や資金獲得における世界的な競争激化を背景に,国,研究機関,研究者個人等さまざまなレベルで,研究成果の定量的な評価が行われている。そのためにインパクトファクター,h-index,分野標準化した指標など多様なビブリオメトリックス指標が開発され,世界中で広く利用されている。一方,ICTの著しい発展により情報流通形態が大きく変化し,論文のダウンロード数やソーシャルメディアでの取り上げられ方等によって研究の影響度を指標化するオルトメトリックスへの注目と期待が高まっている。本稿では,いくつかのビブリオメトリックス指標と利用時の注意点を紹介した後,オルトメトリックスとその問題点について考察する。
著者
赤木 かん子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.555-558, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

文字がまだ読めない子どもも含めた利用者を対象とした学校・公共図書館の改装を長年続けてきた。ランガナータンがいう通り「お客さまの時間を節約せよ」そして「図書館は有機体」であり,時代が変わるにつれ,新しいジャンルを作るなど小さい図書館の分類は動き,変わり続ける。子どもの暮らしが変われば,役立つ場所であり続けるために子どものための図書館も変わり続ける必要がある。図書館作りにおけるこどもとの対話の中で得た気づきから棚づくり,本の分類方法を考え,図書館づくりを行ってきた。そこで得た考え方やノウハウを紹介する。
著者
三輪 哲 佐藤 香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.489-494, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)

欧米諸国では多くの社会科学データアーカイブが1960年代に設立されたが,日本ではその設立が20年近く遅れた。日本の最初の組織的なデータアーカイブであるSSJデータアーカイブは,現在,2,000を超えるデータを公開・提供しており,社会調査データの散逸を防ぐとともに二次分析の普及を図り,社会科学教育にも貢献している。ただしSSJDAは,現在,いくつかの課題に直面している。寄託され公開するデータをより増加させることや,セルフアーカイブを実現すること,調査時点でのインフォームドコンセントに二次利用まで含めるよう啓発すること,多様化する利用者へと対応すること,などである。
著者
江上 敏哲
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.284-289, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)

本稿では,海外における日本研究と図書館について概説する。前半では,海外における日本研究,図書館とその周辺について,それらがどのような意味を持つかを概観する。後半では,特に近年の動向と事例・文献を追いながら,現状と課題,今後の展望を考える。そのキーワードは,在外資料,デジタルアーカイブ,ポータル,ウェブ・スケール・ディスカバリー,デジタルヒューマニティーズ,和本,コラボレーション,研修,アジア,英語/ローマ字であり,それらは「日本研究とは何か」という問いにつながる。
著者
難波 英嗣
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.277-281, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)

近年,人工知能はコンピュータ囲碁や将棋,自動車の自動運転など,様々な分野で目覚ましい発展を遂げており,その成果をインターネット,新聞,テレビなどで目にする機会も少なくない。自然言語処理(NLP)は人工知能の一分野であり,人間が日常的に使っている言葉(自然言語)をコンピュータに処理させる技術のことを指す。人間が文書を分類する作業を,コンピュータで自動化することは,自然言語処理における代表的な研究課題のひとつである。本稿では,コンピュータによる文書分類に焦点を当て,様々な研究事例やその仕組みを紹介する。

7 0 0 0 OA ウェブの功罪

著者
笹原 和俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.309-314, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

多様な情報と人々をつなぐはずのソーシャルメディアが,社会的分断や情報のタコツボ化を助長しているという問題が顕在化している。特に,エコーチェンバーやフィルターバブルといった閉じた情報環境は,自分の好みに合致した情報のみが来やすく,自分とは異なる観点からの情報が来にくいため,フェイク(偽)ニュースやヘイト(憎悪)の温床となる危険性を孕んでいる。本稿では,計算社会科学の観点から,偽ニュースが拡散する仕組みについて解説し,ウェブの負の側面について論じる。また,今後のウェブの技術が克服すべき問題について議論する。
著者
関 乃里子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.22-27, 2019-01-01 (Released:2019-01-01)

図書館システムの専門メーカーである株式会社ブレインテックでは,社員の4割が司書有資格者であり,30年以上にわたりシステム・ライブラリアンのいない多くの小規模図書館に対して「外付けシステム・ライブライアン」のような役割を果たしてきた。しかしそこに求められる専門性は,図書館を取り巻く情勢の変化に伴い変わってきている。我々が,「外付けシステム・ライブラリアン」としてこれからも図書館を支援し続けていくために必要とされるスキルや知識は,以前より多様で広範なものである。そうした力をもった人材を育成するための,当社における組織や役職制度,働き方,研修制度の改革を紹介する。
著者
矢野 正隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.160-165, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本稿では,デジタル・メディアの保存に関する課題を踏まえて,メディア一般を対象とする保存の在り方を再検討する。まず,一般にメディアは,それが伝える意味内容(メッセージ)とこれを載せるモノ(キャリヤー)の二つの側面からなること,また,そのメッセージには,その内容に当たる側面だけでなく,発信・受信という伝達行為そのものに関わる側面も含まれることを指摘する。次に,メッセージをメディアのどこに見出すかは,受信者によって異なるが,その相異が,博物館・図書館・文書館が収集の対象とするメディアにおいてそれぞれどのように現れるかを考察する。これを通じて,メディア保存の現状に一石を投ずることを目的とする。