著者
鈴木 健治 髙橋 啓治 芳賀 みのり 久保田 美央
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.266-272, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

優れた知的資産を持つ日本企業が,世界に新たな市場を創り出すイノベーションを起こすために,何ができるだろうか。本研究では,イノベーションを持続的に生み出す海外企業の市場情報と同社の知的財産の因果関係が分析的に調べられた。その結果,まず,市場シェアに知財情報を関連づけて,5つの図に描く市場情報駆動型の新しい分析方法が確立された。この5つの図は,企業の市場シェア構築への知的財産の影響を明確にするため,経営デザインシート作成の補助ツールとしても有用である。続いて,この市場情報駆動型の分析方法により,日本企業がイノベーティブな組織に変わるための6つの質問が提案された。
著者
南雲 修司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.343, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

2021年8月号の特集は「図書館とゲームのいま」です。欧米の図書館では,ゲームを図書館資料として扱う取り組みが一般的に行われていますが,国内でも,公共図書館を中心として,同様の取り組みを行う図書館が増えてきています。一言でゲームと言っても様々ですが,囲碁・将棋などの「伝統ゲーム」だけでなく,「ボードゲーム」や「デジタルゲーム」,「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)」なども対象としているのが近年の取り組みの特徴です。取り組みの内容も,館内利用や体験イベントの開催に留まらず,図書館の情報資源としてゲームを収集・整理して館外貸出を行っている事例など幅広くなってきています。一方,図書館でゲームを扱うことについては,その目的・意義が,一般の図書館利用者はもとより,図書館関係者にも十分に浸透しているとは言い難い状況かと思います。そこで今回の特集では,図書館とゲームの関わりについて,様々な視点でご執筆いただきました。まず,日向良和氏より,図書館とゲームの関わりについて,海外の事例も交えた近年の動向,情報資源としてのゲームの位置付け,図書館でゲームを扱うことの意義や効果,今後の展望についてご解説いただきました。高倉暁大氏にはイベント開催の豊富なご経験から,公共図書館における事例を中心に,イベントの目的や効果,開催にあたっての課題についてご紹介いただきました。実際にボードゲームの館外貸出を行われている中札内村図書館の小山洋子氏,杉浦慶美氏には,ボードゲームの館外貸出を始めた経緯や狙い,実際の利用状況や反響,運用上の課題についてご紹介いただきました。井上奈智氏には,実際に図書館でアナログゲームを導入する際の,情報収集や選定,購入手続きを進めるにあたって,どのような情報やツールを用いることができるか,ご解説いただきました。福田一史氏には,ビデオゲームを収集・保存するために必要不可欠となる目録について,立命館大学ゲーム研究センターのゲーム保存の事例を通じて,そのデータモデルやデータ公開の手法についてご詳説いただきました。本特集が,図書館でゲームを扱う意義やサービス上の位置付けを考える参考資料として,また実際の導入を検討する際の足掛かりとなれば幸いです。さらにこうした新しい取り組みを通して,これからの図書館のあり方を再考するきっかけとなりましたら望外の喜びです。(会誌編集担当委員:南雲修司(主査),今満亨崇,大橋拓真,中川紗央里)
著者
時実 象一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.206-210, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

全米デジタル新聞プログラム(National Digital Newspaper Program: NDNP)は米国議会図書館(Library of Congress: LC)と全米人文科学基金(National Endowment for the Humanities: NEH)との共同プロジェクトで,1836から1922年までに発行された米国の新聞1070万ページをデジタル化し,Chronicling Americaという検索サイトから提供している。全米40州と自治区が参加している。NDNPの仕組み,記述,Chronicling Americaの検索例,活用例について述べた。またオーストラリア国立図書館が構築したAutralian Newspapers Onineについても述べた。
著者
高倉 暁大
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.350-356, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

全米図書館協会(ALA)の取り組みに始まり,全世界の図書館では様々なゲームを提供するようになってきた。近年,日本でも公共図書館を中心にゲームを活用した企画が数多く開催されている。賑わい創出,資料の利用促進,コミュニティの確立など様々な目的の元に行われ,効果を上げている一方,騒音問題,ゲーム知識や技術のある司書が必要というハードルの高さなど,課題も多く見られる。本稿では,図書館でのゲーム企画事例を紹介し,その目的や狙い,効果などを述べる。
著者
藤田 節子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.82-88, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)

わが国の料理本の索引の実態を調査するため,2014,2015年の「料理レシピ本大賞in Japan」で一次選考を通過した,27冊の巻末索引を詳細に分析調査した。その結果,レシピ名と材料を索引対象として,体系順に配列された材料の分類の下に,レシピ名が50音順あるいは頁順に配列されている索引が多いことがわかった。相互参照や凡例はなく,見出し語の選択,副見出しの記述,配列のしかたなどに課題が見られ,料理本の索引が不十分であることが明らかになった。今後,料理本の著者や編集者,出版社に,索引に関する知識や索引作成技術の普及が必要であろう。
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.160-163, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

AIの活用を含むデータ駆動型社会の実現や,より包括的なオープンサイエンスが目指す科学,社会,科学と社会の変容に向けて,UNESCO,G7,OECD等の国際的な動きが活発化しており,また,欧州を筆頭に日本でも研究データ基盤整備などが進んでいる。本稿では,オープンサイエンス政策の現状と学術情報流通を中心とした研究データ利活用の国内外の動向について解説し,レファレンスサービス関連を含む学術情報流通サービスの展望を述べる。
著者
是住 久美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.615-618, 2016

<p>職場内自主学習グループ「ししょまろはん」は,業務では出来ないメンバーのアイデアをいくつか実現させてきた。「ししょまろはん」は,司書としての専門性を活かしつつ,みんなの役に立ち,自分たちも楽しんで取り組めるアイデアを出し合い,それを試すことが出来る場であり,正職員や非常勤職員の関係を越えて対等に意見を出し合える職場内のサードプレイスにもなっている。また,ウィキペディアタウンなどの外部のコミュニティ活動に司書として参加し,役割を果たすことで新たな図書館の可能性に気付くこともある。取り組みの一部は,外からの評価や中の理解を得て,業務として取り組むことができるものも出始めている。ボトムアップでやりたいことを仕事に近づける一つの方法として事例を紹介する。</p>
著者
高橋 匡 倉持 俊克 安田 麻衣子 下田 直嗣 平尾 啓
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第12回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.97-102, 2015 (Released:2015-12-04)
参考文献数
11

近年、企業を取り巻く環境変化はめまぐるしく、顧客ニーズは多様化している。このような市場環境下、顧客ニーズに対応したイノベーションを継続的に創出するために、社外の技術やアイデアを社内に取り入れるオープンイノベーションを活用し、技術開発を行う企業が増えている。このような背景を受け、2014年度PAT-LIST研究会で顧客ニーズに対応した技術開発を自社で行うか他者と提携して行う(オープンイノベーション)ことが得策かを検証する手法を開発し、消臭技術を対象に実践したので紹介する。
著者
山本 泰智
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.392-398, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

コンピューターで知識を処理しやすく,そしてインターネット上でデータを共有しやすいようにセマンティックウェブの関連技術であるRDFとその問い合わせ言語SPARQLが開発された。世界的に広く普及しているウェブ技術は,インターネット上で膨大な知識を共有する場として重要な社会基盤となっている。主に自然言語でウェブページに書かれているこれらの知識を,RDF技術はコンピューターにも処理しやすくするとともに,ウェブ技術と共存共栄を図れるように設計されている。本稿ではこれらの概要を紹介し,そして実際に試せるような例を挙げて解説する。
著者
中林 雅士
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.317-323, 2011-08-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
5

大学財政規模が縮小する中,図書館運営予算も削減を余儀なくされている。加えて,大学間の競争は激しさを増しており,図書館はこのような環境変化の中で,自らのミッションを堅持しつつも,新たな環境に適応する必要に迫られている。直近の課題の1つは,図書館運営費の安定確保である。図書館を取り巻く多くのステークホルダーに対する社会的責務を果たすためには,財政問題を避けては通れない。本稿では,図書館運営費の安定確保について,図書館と国庫助成,図書費,業務委託費を取り上げつつ考察する。
著者
池内 淳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.25-29, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)

2011年に「図書館法」が改正された際,公共図書館が収集するべき資料の種別に電子的資料を含めることが明記された。しかしながら,平成27年度の文部科学省委託調査によれば,電子化資料を利用者に提供している図書館は日本全国で約16%であった。さらに,米国では90%以上の図書館が実施している電子書籍サービスについては,日本では,54自治体の図書館が提供するに止まっている。そこで本稿では,(1)出版界と図書館界との関係,(2)都道府県立図書館の役割という二つの観点から,公共図書館に電子書籍サービスを導入することの意義と効果について論じた。
著者
後藤 敏行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.68-74, 2010-02-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
34

コンピュータゲームは一大産業化し,現代文化の要素になっているため,保存して後世に残す必要があると考えられる。保存に対する課題には,メディアの短命さや技術の陳腐化がある。対策にはマイグレーション,エミュレーション等があり,特にエミュレーションに期待が集まる。だが,完成された技術ではまだなく,著作権や特許権を侵害する可能性もある。複数のコンピュータゲームアーカイブがすでに設立され,運用を開始している。それらは,世界のすべてのコンピュータゲームを収集するには至っていない。今後の施策として,ゲーム会社とコンピュータゲームアーカイブの連携協力や,図書館界の一層のコミットメントを提言する。