著者
矢野 正隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.160-165, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本稿では,デジタル・メディアの保存に関する課題を踏まえて,メディア一般を対象とする保存の在り方を再検討する。まず,一般にメディアは,それが伝える意味内容(メッセージ)とこれを載せるモノ(キャリヤー)の二つの側面からなること,また,そのメッセージには,その内容に当たる側面だけでなく,発信・受信という伝達行為そのものに関わる側面も含まれることを指摘する。次に,メッセージをメディアのどこに見出すかは,受信者によって異なるが,その相異が,博物館・図書館・文書館が収集の対象とするメディアにおいてそれぞれどのように現れるかを考察する。これを通じて,メディア保存の現状に一石を投ずることを目的とする。
著者
矢野 正隆
出版者
東京大学大学院経済学研究科
巻号頁・発行日
2012-11 (Released:2013-07-04)

第38回全国歴史資料保存利用機関連絡協議会全国大会, 2012年11月8日~9日, 広島県民文化センター 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B)「文化資産としてのマイクロフィルム保存に関する基礎研究:実態調査からの実証的分析」(課題番号:24300094)研究代表者:小島浩之(東京大学大学院経済学研究科)
著者
小島 浩之 矢野 正隆
出版者
京都大学東南アジア地域研究研究所
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.17-39, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
64

In this article, we provide an initial examination of 104 samples of writing paper from the 98 items of the Sino-Nom collection archived by a Vietnamese temple in Bangkok (Canh Phuoc Temple) and held by the Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University. We attempt to gather various forms of quantitative and qualitative information by means of external and surface observation, shape measurement, as well as optical observation and measurement.In this collection the main fibers used to fabricate writing paper are wood pulp, bamboo, and mulberry. Items containing wood pulp (about 45 percent) can be dated to the end of the nineteenth century or later, while items made of bamboo and mulberry fibers may date back to earlier. Bamboo paper, which in China tends to be used for printed books, is also widely used for manuscripts. Such facts cannot be obtained solely through literary analysis of the documents’ contents; they were collected by expanding the range of information that could be obtained from a historical document. The study of material culture, namely, accumulating and utilizing information on these documents as objects, not only contributes to more concrete and detailed regional and historical research but also provides crucial evidence for the conservation and management of Southeast Asian materials.
著者
小島 浩之 上田 修一 佐野 千絵 安形 麻理 矢野 正隆 吉田 成 内田 麻里奈 森脇 優紀 冨善 一敏 設楽 舞 野中 治 木部 徹 島田 要
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、記録媒体として紙に次ぐ歴史を有するにもかかわらず、これまで学術的な観点から調査・研究がなされてこなかったマイクロフィルムについて、図書館等への訪問実態調査(33機関)、および図書館と文書館への質問紙調査(大学図書館:1,378、都道府県立図書館:58、国立国会図書館:1、公文書館:75、大学文書館:88、専門図書館:380)を基軸とし、生産・出版・保存・活用・管理等の諸側面から総合的に分析した。
著者
矢野 正隆
出版者
日本画像情報マネジメント協会
雑誌
月刊IM (ISSN:09132708)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.12-16, 2008-02

東京大学経済学部図書館に所蔵される企業資料群の由来を辿ると、法科大学時代、大正2(1913)年に設置された商業資料文庫に遡る。以来、数多のコレクションが収集整理され、これらは当館蔵書の重要な一角を占めている。このたび、この企業資料群の中でも一二の規模を誇る『山一證券資料』が、本学部、伊藤正直教授の監修のもと、マイクロフィルムとして公開されることになった。隠蔽体質が命取りとなった山一證券の、平成9年11月の自主廃業から10年という節目の年に、こうした形で内部資料を公開するというのも、何かの縁であろう。以下、ごく簡単ではあるが、当館に資料が寄贈された経緯と、マイクロフィルムの内容を紹介する。
著者
安形 麻理 小島 浩之 上田 修一 佐野 千絵 矢野 正隆
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.129-147, 2014-12-31

本稿の目的は,4年生大学図書館,大学院大学図書館,国立国会図書館,都道府県立図書館に悉皆質問紙調査を行うことにより,日本の図書館におけるマイクロ資料の保存の現状を把握することである。902件(回収率62.8%)の有効回答と予備調査4件の合計906件を分析した結果,回答館の52.3%にあたる474館がマイクロ資料を所蔵していた。マイクロ資料を所蔵している回答館のうち,47.5%がマイクロ資料を長期保存の媒体と位置付け,30.0%が1年に1回程度以上の頻度で受け入れを続けていること,11.4%の図書館で所蔵数が把握できていないこと,44.3%の図書館で代表的な劣化であるビネガーシンドロームが発生しているが,24時間の空調管理は31.6%,湿度設定は22.7%のみで可能であることなどが明らかになった。ビネガーシンドロームは加水分解により発生,進行するため,湿度の管理が非常に重要となるが,根本的な対策である環境改善が進んでいない現状が確認された。
著者
矢野 正隆
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.92-115, 2014

<p>本稿は、近年盛んに議論されている「MLA 連携」「資料保存」を、メディアへの「共時的アクセス」「通時的アクセス」を保証する営みである、と読み替え、両者が密接な関係を有することを、東京大学経済学部資料室が収蔵する資料の例を踏まえて、示そうとするものである。その際、まず、メディアへのアクセスが様々な水準で行われること、そして、そのアクセスの在り方が、メディア自体の構造と機能によって規定されることを明らかにする。このように、各種メディアの特性を捉え直すことにより、博物館(M)、図書館(L)、文書館(A)という既存の枠組みを自明の前提としない、取り扱うメディアそのものを基盤に置いた、収蔵機関の在り方の可能性を提示する。</p>