著者
齋藤 歩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.153-159, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本論の目的はアーキビストが書誌情報検索システムをどのように活用しているかを明らかにすることである。そのためにアーカイブズ学における「記述標準」の考え方を整理して検索手段を分析した。はじめに記述標準を三つのレベルに分類してそれぞれの役割を確認した。ここでは1989年にリサ・ウェーバーが提示した分類を用いた。次にその記述標準の活用例を観察した。対象をスミソニアン協会のアメリカ美術アーカイブズの検索手段として,MARCとEADをどのように使い分けているかを整理した。最後に二種類の検索手段の構成要素を比較して,アーキビストによる記述の実践を明らかにした。
著者
時実 象一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.383-388, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)

欧米における民間の新聞デジタル・アーカイブについて調査・解説した。米国ではルーツ探しのため新聞アーカイブが商用として成り立っている。また大学向けにいくつかの新聞アーカイブが提供されている。Googleも一時挑戦したが途中で中止している。大英図書館は公的機関であるが,民間にデジタル化とサービスを委託している。これらの収録範囲,特徴などについて述べた
著者
水野 翔彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-1, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)

今月号の特集は「拡散する『図書館』」です。図書館の建物,所蔵資料,職員を指して「図書館の三要素」とすることは広く知られています。しかし,一方で巡回文庫,家庭文庫,移動図書館,緑陰図書館といった,必ずしも三要素すべてを前提としない取り組みも古くから実践されてきています。図書館を取り巻く社会や制度・政策の変化,情報技術の発展,利用者の生活や研究スタイルの変化など,変わりゆく環境の中で,どのように図書館を運営し,利用者へサービスを届けるのか。三要素すべてを前提としない「図書館」を実践する取り組みは現在もなお進化し続けています。企画の検討開始時には,移動図書館や分館など主に空間的な意味での「拡散」という観点で検討をしていましたが,エンベディッド・ライブラリアンやヒューマンライブラリーなど様々な事例を検討する中で,「図書館」という概念自体が伝統的な図書館の手から離れ,自発的に変化しつつある状況が見えてきました。本特集では,社会の中で自発的に広がり変容する「図書館」の姿を「拡散」という語であらわし,「どのように,また誰によって『図書館』は実践されうるのか」という観点の特集としました。総論では,議論のための前提として,慶應義塾大学の松本直樹先生に図書館の基本的機能や要素に関わる新たな状況について,国内外の制度上の動向とサービスの観点から整理していただきました。つづいて,十文字学園女子大学の石川敬史先生には,公立図書館による移動図書館や各種の「はたらく自動車」に関する豊富な事例から「移動する活動」の特質と可能性について論じていただきました。京都ノートルダム女子大学の鎌田均先生には北米の図書館界で活躍するエンベディッド・ライブラリアンを題材として,その背景となっている図書館環境の変化や既存の図書館サービスへの影響について述べていただきました。最後に明治大学の横田雅弘先生からは,人間が図書館資料として扱われ利用者へ貸し出されるヒューマンライブラリーの事例からその意味と効果について,またヒューマンライブラリーでの経験から「人と歴史の記憶装置」としての図書館について論じていただきました。図書館の最前線,あるいはその外側で起こりつつある様々な「図書館」の事例を通じて,読者のみなさまの考える図書館像について見つめなおすきっかけとしていただければと思います。(会誌編集担当委員:水野翔彦(主査),久松薫子,古橋英枝,長屋俊)
著者
山﨑 美和
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.619-622, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)

IT技術の加速度的な進歩とともに,インフォプロを取り巻く環境と役割は大きく変化し続けている。その変化にいつでも対応できるよう,スキルアップやブラッシュアップ,人的ネットワークを広げる機会として,また人材教育として,活用してほしいINFOSTA研修事業を紹介する。
著者
杉田 正幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.378-384, 2009
参考文献数
20

視覚と聴覚の両方に障害のある重度の人(盲ろう者)は,「移動」,「コミュニケーション」,「情報」の3つの障害がある。盲ろうとはどういう障害か,盲ろう者のパソコン環境とはどういうものかを概説した上で,大阪府立中央図書館などでの筆者のパソコン利用支援の経験やそれらを支援する人たちの養成を紹介する。また,2009年3月に筆者がアメリカでの盲ろう者の情報機器の状況や支援の状況を視察した。米国での盲ろう者の状況を紹介した上で,日本で今後,必要な支援や求められていることについて考える。
著者
時実 象一 神谷 枝里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第12回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.119-122, 2015 (Released:2015-12-04)
参考文献数
5

全国の公共図書館のうち、デジタル・アーカイブを提供していると思われる図書館167館を調査し、85図書館、523件のアーカイブ・コレクションを見出した。情報資源点数は63,508件であった。図書館数では書籍をデジタル化した図書館が多く、続いて写真、地図、絵図、絵画、古文書などを手掛けた図書館が多かった。資源点数では、圧倒的に写真が多かった。続いて絵画、書籍であった。提供されている情報タイプについては、図書館単位で見ると画像と電子書籍が多かった。
著者
柴野 京子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.310-314, 2013
参考文献数
20

ここ10年ほどの間に,日本の新刊書店数は7割程度まで減少した。とくに著しいのは個人経営の小規模書店の閉店だが,郊外化や都市部への大型出店をすすめてきたチェーン書店や大書店もまた,ブックオフやアマゾンなど,既存の枠組みの外からもたらされた環境の変化に直面している。ここではそれらの状況を概観したうえで,インターネット書店のデザインが現実の書店にもたらした影響や,バーチャルとの対比で新たに発見される「リアル」書店のありようなどについて,代表的な事例を用いながら,実験的に言及していく。
著者
河塚 幸子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.177-182, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

公共図書館,大学図書館,専門図書館はDXが加速する社会において印刷体の資料とともにデジタルデータの活用が期待されている。図書館で利用可能な電子書籍,電子ジャーナル,デジタルアーカイブ,web情報資源等について現状を紹介する。これらの普及により実現したオープンアクセス,機関リポジトリなど流通の仕組み,およびそれらを支えるウエブスケールディスカバリーサービスなどの情報技術についても触れる。また,SNSの活用,企業図書室のユニークな情報サービスを紹介する。デジタルデータ活用に向けて図書館がどのように対応すべきかその役割と課題について考察する。

9 0 0 0 OA 学術雑誌

著者
伊藤 憲二
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-14, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)

本稿は学術情報流通の重要な媒体である学術雑誌の歴史と,その質担保の重要な仕組みである査読制度の発展について述べたものである。学術雑誌,より一般には科学を歴史的に検討することの意義を科学史研究の観点から説明したうえで,現時点における比較的最近の研究に基づいて学術雑誌の歴史と査読制度の発展を概観し,最後に学術雑誌にかかわる現在の課題のいくつかと,それらの問題を乗り越える可能性について論じた。とくに最近出版されたAileen Fyfeらによるロイヤル・ソサイエティにおける学術出版についての大部の研究書の紹介に大きな重点を置いた。
著者
出口 弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.122-132, 2014-04-01 (Released:2017-04-13)

本稿では日本の漫画を広く絵物語のコンテクストの中で位置づけ,その文化史的な意義と可能性を明らかにする。日本の絵巻や浮世絵,絵草紙,漫画などの諸コンテンツは社会階級に依存せず創作され,また複製や二次創作を積極的に是認する文化を持つ。これは欧州型の,オリジナル作品にオーラがあるとみなし二次創作を是認せず,権威による作品の評価を基軸とするアートの文化とは大きく異なる。本稿では,絵物語の歴史を概観しながら,あらゆる社会の場から表出され,異なる立ち位置の人々の世界観を混淆循環させる力と多様性を持つメディアとしての絵物語空間に着目する。その上で,漫画の様な絵物語を日本のサブカルチャーではなくメインカルチャーとして位置づけその可能性を論じる。
著者
佐藤 翔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-8, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)

現代の学術情報流通は,「登録」,「保存」,「認証」,「報知」の4つの機能を担う査読誌を中心に成り立っている。学術情報流通の多様化とはこの4機能の実現方法の多様化にほかならない。より詳細には,従来とは異なる対象を4機能で扱う,一部の機能の実行方法を変える,一部の機能を独立させる・実施順序を入れ替える,と言った試みが行われるようになってきている。一方で,4機能自体の見直しを図ることは,提案はされても普及はしていない。本稿ではそれぞれ具体例を見つつ,学術情報流通の多様化の現状を捉えることを試みる。
著者
西山 絵里子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.572-578, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
被引用文献数
1

沖縄県は,戦後から本土復帰前までの米軍統治下における琉球政府時代(1952年-1972年)の公文書約16万簿冊のデジタル化を平成25年度より進めており,デジタル化した資料画像をインターネット公開する事業を進めている。膨大な量の近現代公文書をデジタル化し,デジタル・アーカイブズシステムによりインターネットで公開する事例は日本国内で類を見ない。近現代の歴史資料のネット公開における課題は,個人情報や著作物等が含まれる資料をどのように取り扱うかという点であり,資料年度が新しい近現代の資料であるからこそその特徴は顕著に表れる。本稿では,平成27年度の資料公開で直面した課題整理とその対応方針,及び平成28年度の展望について記述する。
著者
倉増 一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.331-337, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

米国では連邦巡回控訴裁判所に毎年100件を超える特許権侵害を巡る争いが控訴され,半数以上に特許侵害を認める判決が下る。判例主義の米国では,特許訴訟の判決も整理され,専門のウェブページで検索することができる。典型的な判決は専門書にまとめられており,当事者名が分かっている場合は,インターネットで直接検索して判決全文が入手できる。判決文に基づいて,明細書の記載を拘束する種々の自主規制(風説または都市伝説)が産まれている。しかし,判決全文を丁寧に読むと必ずしもそれらの風説が正しいとは言えない。代表的な判決例を参考にして,判決の読み方と企業が有効な権利をとるための方策を提示する。
著者
小林 潤平
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.525-530, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)

文章を読み進める目の動きを効率化すべく,非効率な目の動きを改善する様々な仕組みを検討し,効果の検証を重ねた。その結果,文節にもとづく改行位置の調整や,文節単位で文字ベースラインを階段状にずらす表示方式,文節単位で左右に微振動させる表示方式によって,日本語文章を読み進める際の非効率な視点移動を改善できることがわかった。そして,それらの仕組みを電子リーダーに組み込むことで,理解度や読み心地を維持したまま,読み速度を向上できることがわかった。
著者
横田 カーター 啓子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.28-33, 2019-01-01 (Released:2019-01-01)

ITの発達によりあらゆる人が情報を発信することが容易になった。事実,フェイク,実物と識別が困難なディープフェイクが混在し,事実誤認も「違う形の事実alternative fact」とされ,また公文書の改竄が公然と行われる。自分の好む情報のみを取り入れる傾向が強まっている社会において,事実の記録・保存・提供という情報に携わる人々の仕事の重要性と社会責任はこれまでになく増しており,人文学司書の存在意義と役割は極めて重要になっている。
著者
坂東 慶太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.189-195, 2018

<p>研究者SNSは,誕生当初は他研究者とのネットワーキングや自身のオンラインプロファイルとして活用されることが主流であったが,近年は論文共有の場として使われていることが幾つかの調査より明らかとなっている。これに伴い,新たな問題-研究者SNSで共有されている論文には,本来公開してはならない出版社版が多数アップされていること-が顕著化しており,学術出版業界が牽引して学術コミュニケーションの改善に取り組んでいる。図書館員は,研究ワークフローの各フェーズを支えている研究者SNSの機能・使われ方・問題などを理解し,研究者SNSが適切に利用されるよう支援活動に組み込む必要がある。本稿では,研究者SNSの概要と機能を確認した後,様々な調査報告に基づいて研究者SNSの利用実態・問題点を整理する。その上で,図書館は,研究者SNSに対してどのような取り組みが出来るのか・期待されるのかを考察する。</p>
著者
濱崎 好治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.447-451, 2010
参考文献数
7

1988年に開館した川崎市市民ミュージアムにおいて,映像の収集,保存からデジタルアーカイブまでの事例を報告する。低予算で最大効果をあげるベストプラクティスをめざし,映像のデジタルアーカイブ化のプロセスを示し,動画から抽出した静止画像の検索と,映像に関連する情報のマネージメントをFileMaker Proで構築したプロトタイプを提示する。博物館として初めてテレビドキュメンタリー番組の収集と保存に取り組み,牛山純一テレビドキュメンタリーアーカイブの構築に着手し,現在は地域のニュース映画のデジタルアーカイブを構想している。