著者
渡辺 悠樹 村山 斉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.200-208, 2013
参考文献数
19

自発的対称性の破れは素粒子物理から原子核,物性,冷却原子,天体,更には初期宇宙論,化学,生物まで幅広く適用される重要な考え方である.特に連続的な対称性の場合はギャップのない励起,南部・ゴールドストーンボソンが現れ,長波長・低エネルギーの現象を決めている.しかし,何種類の南部・ゴールドストーンボソンがあるのか,エネルギーが運動量の何次で振る舞うか,という非常に基本的な問題に対して今まではケースバイケースで調べられていて,一般論がなかった.最近筆者らは南部・ゴールドストーンボソンを統一的に理解する一般論を提唱した.これはローレンツ不変な系で知られていた南部・ゴールドストーン定理を拡張したものになっている.今まで何がはっきりしていなかったのか,これで何が分かったのかを,磁性体,結晶等を例にできるだけ具体的に解説する.
著者
Yang Chen Ning 服部 哲弥 向後 久美子
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.214-220, 1982-03-05 (Released:2008-04-14)

今世紀の前半に物理学的世界像に関する人類の認識に三つの大きな革命的進歩がありました. それは特殊相対性理論, 一般相対性理論, および量子力学です. 最初の二つはEinsteinが提唱したものであり, また彼は量子力学にも大きく貢献しています. しかし今日はこれらのことについてお話するのではありません. (皆さんよくご存知でしょうから.)私がお話したいのは, 理論物理学とは何であるかの理解に対してEinsteinのなした貢献についててす. それは今日の物理学の発展に大きな影響を及ぼしました. 私の話の構成は次の通りです. 1. 「対称性が相互作用を規定する」という原理 2. 場の理論の統一の必要性 3. 物理学の幾何学化 4. 「理論物理学の方法」に対するコメント
著者
梶田 隆章
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.783-784, 1998

スーパーカミオカンデ共同実験グループは, 本来6月岐阜県高山市で開催された第18回ニュートリノ物理学と天体物理学国際会議("ニュートリノ98")において「ニュートリノ振動の証拠」を発表した. 本稿ではこの発表の要点を報告する. なお, 紙面の関係上物理的背景等について触れないので, そちらは参考文献を参照していただきたい.
著者
柴田 徳思
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.579-586, 2000-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1

東海村JCO臨界事故はわが国初めての臨界事故であり,その事故調査のために原子力安全委員会の下にウラン加工工場臨界事故調査委員会が設けられ,1999年12月に報告書が出されている.事故の経緯,被ばく,放射線量,安全対策と今後の課題などについては詳細に示されているが,そこで発生した現象の物理的内容については述べられていない.臨界を起こすのに必要な量の考え方,連鎖反応を引き起こす中性子源等,臨界事故に関連した物理現象について事故の実態とともに示した