著者
番原 睦則 田村 直之 井上 克巳
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.75-86, 2007-07-26
被引用文献数
1

本論文では,PrologからJavaへのトランスレータ処理系Prolog Cafeについて述べる.本システムでは,Prologプログラムは,WAMを介して,Javaプログラムに変換され,既存のJava処理系を用いてコンパイル・実行される.つまりProlog Cafeでは,項,述語などPrologの構成要素のすべてがJavaに変換される.このため,PrologCafeはJavaとの連携,拡張性に優れたProlog処理系となっている.Prolog Cafeはマルチスレッドによる並列実行をサポートしており,スレッド間の通信は共有Javaオブジェクトにより実現される.また任意のJavaオブジェクトをPrologの項として取り扱う機能を有しており,Prologからメソッド呼び出し,フィールドへのアクセスも行える.最後にProlog Cafeの応用として,複数SATソルバの並列実行システムMultisatについて述べる.
著者
佐伯 胖
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.100-109, 1991-03-15

本チュートリアルでは,具体的な対象システムの如何にかかわらず成り立つと考えられる,ヒューマンインタフェース研究の一般的な枠組みを明らかにする.このような一般的な研究の枠組みを提唱している研究として,まず,Normanの「認知工学」の概念における「行為の7段階」に基づくインタフェース分析を解説した.ここで,Normanの分析が,ユーザの観点からのものに限られているという点を明らかにし,むしろ,インタフェース問題は,ユーザ,デザイナー,さらに外界世界の三つの世界の相互作用を最適化することをめざすべきであるとの観点にたち,そのための道具のあり方を探るため,それら相互の「接面構造」の分析を示し,道具(システム)と人間との,多様な相互作用の全体システムを吟味する研究の枠組みを提唱した.
著者
小野 諭 小川 瑞史
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-130, 1996-03-15
被引用文献数
2

抽象実行とは,プログラムの様々な性質を解析するために提案された理論的なフレームワークである.これは,プログラムのデータ領域や計算動作などの意味を抽象化した有限抽象領域を設計し,その上でプログラムを不動点計算と呼ばれる手法で「実行」することにより,プログラムの性質を求める. そこで,本チュートリアルでは,プログラム解析のごく初歩的な知識を持つ読者を対象にして,抽象実行の基本概念,分類,具体的設計法、仕様記述への展望などを説明する.対象言語としては,遅延評価型の関数型言語を取り上げる.ただし仕様記述への展望は,手続き型言語における様相論理や時相論理による仕様記述をベースに説明する.
著者
村田 真 川口 耕介
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.472-481, 2004-11-25

形式言語理論を用いて,XMLとスキーマ言語を解説する.また,スキーマに基づくXML技術(とくに検証と静的型検査)について概観する.
著者
稲葉 雅幸 岡田 慧 水内 郁夫 稲邑 哲也
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.45-61, 2006-04-26
被引用文献数
4

ロボットは身体ハードウェアが決まればその身体にとっての認識と行動のソフトウェアをプログラミングする対象である.近年のロボットは人間のような姿形に近づいたヒューマノイドロボットの研究が進んでいる.本稿では,幾何モデルを搭載したオブジェクト指向言語Euslispにより,人間型のロボットを対象に小型から等身大,筋駆動型ヒューマノイドのロボットプログラミング環境を実装している研究をとりあげ,身体ハードウェアが進化してもソフトウェアの継承を行いながら発展させてきている環境を紹介する.
著者
相場 亮
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.461-473, 1992-11-16
被引用文献数
1

本稿の目的は,制約論理プログラミングシステムに関して,概観を与えることにある.制約論理プログラミングは,新しいプログラミング・パラダイムとして,近年,注目を集めているものであり,問題のとらえかた,記述方法において,従来のパラダイムとは一線を画すると共に,論理プログラミングという土台の上に展開されていることで,問題解決における新しい展開を期待させるものである. 本稿においては,論理プログラミングの初歩的知識を前提として,制約論理プログラミングについて,実際の処理系を簡単に紹介しながら解説を行う.
著者
堀内 謙二
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-23, 1994-01-17
被引用文献数
1 1

抽象解釈は,プログラムの様々な特性を解析するための手法を統一するものとして提案された理論的な枠組である.1977年にCousot達によって提案されて以来,様々な言語に対する解析の応用例が研究されている.論理プログラムに限ってみても,そのバックグラウンドにあたる意味論や抽象化される領域などによって様々な分類ができる.しかし,ほとんどすべてのアプローチを「プログラムの意味を不動点で与え,それを抽象化する」という同じ範疇に入るものと見ることができる. 本稿では,論理プログラムを対象とした様々な抽象解釈の手法について,簡単な例をまじえて解説する.なお,論理プログラムの基礎的な用語に関しても,unificationなどのような基本的操作を除いて,簡単に説明してある.
著者
松本 裕治 杉村 領一
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.308-315, 1986-10-15
被引用文献数
8 1

構文解析システムSAXは,DCG (Definite Clause Grammars)で記述された文法を対象とする自然言語処理用のシステムで,DCGをPrologのプログラムに変換するトランスレータより成る.変換の手法自体は,DCGで記述された文法規則から並列論理型言語への変換を目的として考えられたものであるが,逐次型言語の上で実現されても効率のよい構文解析システムとして利用することができる.SAX (Sequential Analyzer for syntaX and semantiCS)は,特に逐次型言語の上で開発されたシステムの呼び名である.並列論理型言語の上で実現されたシステムは,PAX (Parallel AX)と呼ばれる.変換によって得られたPrologプログラムは,Prologに完全にコンパイルされたものになっており,副作用を用いないことやプログラムの動作が決定的になっていることなどの特徴がある.本システムは,特に,コンパイラを有するPrologに向いた構文解析システムである.
著者
赤間 清 野村 祐士 宮本 衛市
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.447-464, 1995-09-18
被引用文献数
25

文の意味は,それが発話された状況や,話題の領域の背景知識などを柔軟に用いて適切に解釈する必要がある.しかし,多様な状況を適切に分類して,正しいアルゴリズムを書き下すことは多くの場合非常にコストがかかる.また,文の意味を解釈する場合に,あらかじめ定めた計算順序にしたがって処理を進めると,無駄な計算をたくさん行なうことになり高速な処理が期待できない.これらの問題を解決するために本論文では,いろいろな場合にわけてアルゴリズムを書くことを避け,対象領域の基本的な知識や状況を宣言的なプログラムとしてモジュール性高く記述し,正当性の証明された変換ルール群を用いてプログラム変換によって意味解釈を行なう方法を提案する.この方法は,計算の正当性,対象とルールの表現力,計算順序の柔軟性などの点で著しい特長を備えており,自然言語の意味解釈を正当性を保証しながら効率的に実現するために有用であると考えられる.
著者
浜田穂積
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.241-249, 1984
被引用文献数
3

電子計算機の内部で実数値を表現するための新しい表現法URR (Universal Representation of Real numbers)を先に提案した.これは実数値の区間に適用する2分法に共づいており,1から∞に向って,あるいは0に向って分割点が二重指数的に増大あるいは減少するように選ぶものである.ここではそのURRについて更に広い視野からの位置づけをし,かつより詳しく検討した. URRの特徴は次のものである.(i)オーバフロー,アンダフローが事実上起こらない.(ii)データ形式はデータの長さに依存しない.(iii)同じ長さの固定小数点表現と比べて,分解能に関して1ビットの不利に止まる.これらの点から,ディジタル装置に用いる数値表現として最適のものといえよう. 高次代数方程式のGraeffeの解法に適用して妥当な結果を得た.URRの演算論理は特に複雑ではなく,容易に構成可能である.
著者
栗原 一貴 五十嵐 健夫 伊東 乾
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.14-25, 2006-10-26
被引用文献数
10

本論文では,資料の作成から発表までを電子ペンによって統一的に行うことのできるプレゼンテーションツールを提案し,実用システムの開発と教育現場における長期ユーザスタディによりその有効性を検証する.まず事前調査を行い,従来のツールでは満たせないプレゼンテーションに対する現場ニーズを分析した.その結果,資料の作成・編集をIT初心者でも簡便に行うことができる機能と,発表中であっても資料を動的に編集できる機能が重要であるという知見が得られた.これに基づき,電子ペンの持つ直感的操作が可能な特性と,絵画的表現および言語的表現を自由に空間に配置・操作できる特性を活かした電子プレゼンテーションツール「ことだま」を開発した.そして小中高校の教員を被験者とする2年間にわたる長期のユーザスタディを行った.その結果ことだまの有効性が実証され,教育現場への応用で必要となるプレゼンテーションツールデザインのための知見が得られた.
著者
原尾 政輝 岩沼 宏治
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.41-53, 1991-01-14
被引用文献数
6

ある言語におけるユニフィケーション問題とは,その言語の任意の項t_1,t_2が与えられたとき,σ(t_1)=σ(t_2)となる置換(ユニファイア)σが存在するか判定する問題である.ユニフィケーションは,定理証明の機械化や記号処理等と関連して重要である.本稿では,高階論理における項のユニフィケーションについてアルゴリズム論的立場から考察する.一般に,2階以上の項のユニフィケーション問題は決定不能であるが,いくつかの制限付き導出規則の下でユニフィケーション問題が可解となることを示す.また,実用上有用な2階のクラスについて,計算の複雑さがNP-完全となるものが存在することを示す.
著者
丸山 宏
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.262-271, 1990-07-16

自然言語における組合せ的な数の構文的曖昧さを一つの制約充足問題として表現するため,我々は制約依存文法を開発した.本論文では,制約依存文法の定義と,その弱生成力について論じる.我々は,arity=2,degree=2の制約依存文法が,その弱生成力において文脈自由文法を真に含むことを示す.
著者
千葉 滋
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.438-443, 1993-09-16

私は初めて海外の学会に参加した際,親切な先輩から,入国審査のときに入国目的は"business"ではなく"sight seeing"と答えた方がよいと教わった.学生風の格好で"business"と答えると,あれこれ聞かれるから,というのが理由である。そういうわけで今回カナダのバンクーバーで開催された1992年度のOOPSLAに参加した際も,私はバンクーバーの入国審査で"sight seeing"と答えた.すると入国審査官はじろりと私を見て,「00PSLAじゃないの?」と言ってきた.仕方がないので,そうだ,と答えると,その女性の審査官はぴしゃりと「OOPSLAはbusinessよ」と言ってスタンプを押してくれた.
著者
伊藤 孝行
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.20-32, 2008-10-28
参考文献数
63
被引用文献数
3

計算論的メカニズムデザインは,分散された個人情報を持つ自律的意思決定主体(エージェント)の社会的決定と,計算量や通信コストといった計算機科学の概念を同時に扱う新しい分野である.ミクロ経済学やゲーム理論の概念及び知識と,マルチエージェントシステムや計算機科学の概念及び知識が必要となる.さらに,計算論的メカニズムデザインは,理論からダイレクトに応用が可能な分野の一つである.本解説では,古典的メカニズムデザインの基本概念を概説した後,組合せオークションなどの計算論的メカニズムデザインの基本問題を解説する.その後,現在,計算論的メカニズムデザインの分野で注目されている課題やテーマについて紹介する.
著者
平賀 正樹
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.170-178, 1989-04-14
被引用文献数
1

近年,情報処理分野で日本語プログラミング言語が話題になっているが,その中の代表的なものにMindがある.Mindは,もともとForthから派生したパソコン用コンパイラ言語である.そして,その日本語記述能力による初心者用言語というイメージに反して,最近では開発用言語として使用されている場合が増えてきている. 本稿では,このMindの概要を述べるとともにそのプログラム記述能力などについても言及する.またMindによるアプリケーションの開発事例を紹介し,今後の課題も含めて考察する.