著者
門脇 敬 阿部 浩明 辻本 直秀
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.183-189, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
23

【目的】発症後6 ヵ月経過した時点で歩行が全介助であった重度片麻痺者に対し,長下肢装具を用いて積極的な歩行練習を実施したところ,屋内監視歩行を獲得したため報告する。【対象】脳出血発症から6 ヵ月が経過したものの歩行に全介助を要する重度左片麻痺と高次脳機能障害および視野障害を呈した50 歳代の女性である。【方法】当院転院後,足部に可動性を有す長下肢装具(以下,KAFO)を用いて行う前型歩行練習を中心とした理学療法を実施した。【結果】麻痺側下肢筋力の一部は改善し,380 病日に四脚杖と短下肢装具を使用して屋内監視歩行が可能となった。【結論】重度片麻痺例に対してKAFO を用いた前型歩行練習は,下肢の支持性を向上させ,より高い歩行能力を獲得することに貢献できる可能性がある。発症から長期間経過した症例に対しても,必要に応じて下肢装具を積極的に使用し,機能の改善を図る視点をもつことが重要であると思われた。
著者
徳田 光紀 唄 大輔 藤森 由貴 山田 祐嘉 杉森 信吾 奥田 博之 池本 大輝 森川 雄生 庄本 康治
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.10-19, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
45

【目的】大腿骨近位部骨折術後症例を対象に,神経筋電気刺激療法(以下,NMES)を併用した膝伸展筋力増強運動を実施し,下肢機能および動作能力に与える影響を検討すること。【方法】大腿骨近位部骨折術後症例82 名を術式別に層別化してNMES 群とコントロール群(NMES なしでの筋力増強運動)に無作為に割り付け,術後翌日から各介入を実施した。評価は膝伸展筋力と日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下,股関節JOA スコア)を測定し,日常生活動作と歩行の獲得日数を記録した。【結果】NMES 群はコントロール群よりも膝伸展筋力と股関節JOA スコアの有意な向上を認め,日常生活動作や歩行の獲得が有意に早かった。また,NMES 群の方が退院時の歩行レベルが高かった。【結論】大腿骨近位部骨折術後症例に対する術後翌日からのNMES を併用した膝伸展筋力増強運動は,膝伸展筋力の早期改善および日常生活動作や歩行の早期獲得に寄与し,退院時歩行能力を向上させる。
著者
門脇 敬 阿部 浩明 辻本 直秀
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.38-46, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】片麻痺を呈した2 症例に対し,下肢装具を用いて倒立振子モデルの形成をめざした歩行練習を施行し,歩行能力と歩容の改善を認めたため報告する。【対象と方法】麻痺側下肢の支持性が低下し歩行が全介助であった重度片麻痺例に対し,足部に可動性を有す長下肢装具(以下,KAFO)を用いて前型歩行練習を施行した。また,無装具で独歩可能だが歩容異常を呈した生活期片麻痺例に対し,あえて下肢装具を用いて歩行練習を実施した。【結果】重度片麻痺例は下肢の支持性が向上し,倒立振子を形成した歩容での歩行を獲得した。生活期片麻痺例においても歩行能力と歩容が改善した。【結論】重度片麻痺例に対するKAFO を用いた前型歩行練習は,下肢の支持性を向上させ,より高い歩行能力を獲得することに貢献できる可能性がある。また,無装具でも歩行可能な片麻痺例の歩行能力や歩容の改善においても下肢装具を用いて倒立振子を再現する歩行練習を応用できる可能性があると思われた。
著者
荒川 武士 上原 信太郎 山口 智史 伊藤 克浩
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.378-383, 2014-10-20 (Released:2017-06-13)

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)後の膝関節周囲の皮膚可動性の特徴をあきらかにするとともに,術後に獲得される膝関節屈曲可動域との関係性を検証した。【方法】対象はTKA術後患者20名(平均78.1±7.4歳),健常高齢者10名(平均71.8±8.7歳)とした。皮膚可動性を評価するため,膝関節前面の皮膚上にマークし,膝関節を他動的に60度,90度,最終屈曲位にしたときのマーク間距離(縦方向,横方向)を測定した。膝関節屈曲角度120度を基準にTKA術後患者を2群に分類し,健常高齢者を含めた3群間の皮膚可動性を比較した。【結果】TKA術後患者は,膝蓋骨上部付近の縦方向の皮膚可動性が健常高齢者に比べて有意に低下していた。一方で,屈曲120度未満群と以上群との間に有意差を認めなかった。【結論】TKA術後の術創部周囲の皮膚は,健常高齢者に比べて可動性が顕著に低下していた。しかし,皮膚可動性はTKA術後に獲得できる屈曲可動域に対する強い制限因子ではないことが示唆された。
著者
桑原 大輔 梅原 拓也 岡田 泰河 木藤 伸宏
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.186-194, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
40

【目的】これまでに,高齢心不全患者の運動耐容能と下肢筋力の改善に適した運動療法について知見は乏しい。本研究の目的は,高齢心不全患者に対する運動療法が運動耐容能と下肢筋力の改善に有効か検証することとした。【方法】本研究のデザインは,システマティックレビューとメタアナリシスとした。2023年1月以前の臨床論文から,5つの電子データベースより,運動耐容能と下肢筋力に対する運動療法の効果を検証したランダム化比較試験を検索した。【結果】8編が対象となった。統合の結果,有意な効果を示したのは,最高酸素摂取量と6分間歩行距離および筋持久力であった。有意な効果を示した論文では,慢性期の心不全患者に中強度以上の有酸素運動とレジスタンストレーニングまたはバランス運動による複数の運動療法を実施していた。【結論】高齢心不全患者の運動耐容能の改善には,複数の運動療法を組み合わせることが有効である可能性が示唆された。
著者
山本 康貴 高山 マミ 野々山 忠芳 近 裕介 北川 孝
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12359, (Released:2023-05-29)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,慢性閉塞性肺疾患急性増悪(acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease:以下,AECOPD)患者における運動療法およびセルフマネジメント教育の身体活動性(physical activity:以下,PA)改善に対する有効性を検討することである。【方法】本研究はシステマティックレビューおよびメタアナリシスであり,2022年3月に5つのデータベースを検索し,AECOPD患者に対し運動療法およびセルフマネジメント教育またはどちらかの介入が単独で行われたランダム化比較試験(randomized controlled trials:以下,RCT)を収集した。コクランが推奨する方法でバイアスリスクやデータの統合,エビデンスの確実性の評価を実施した。【結果】13件のRCTが特定され,メタアナリスの結果,運動療法のみ歩数の有意な改善を認めた。各介入の歩数に対するエビデンスの確実性は「非常に低い」であった。【結論】AECOPD患者を対象とした運動療法はPAの改善をもたらす。セルフマネジメント教育を併用した介入については今後の解明が必要である。
著者
佐藤 佑太郎 太田 経介 松田 涼 濵田 恭子 髙松 泰行
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12356, (Released:2023-06-09)
参考文献数
46

【目的】進行性核上性麻痺患者の病棟内歩行の自立度と歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能との関連性を検討し,抽出された項目のカットオフ値を算出することを目的とした。【方法】進行性核上性麻痺患者86名を対象とした。歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能が病棟内歩行自立と関連するかを多重ロジスティック回帰分析で検討し,抽出された項目をreceiver operating characteristic curve(ROC)にてカットオフ値を算出した。【結果】歩行自立に対してバランス機能評価である,姿勢安定性テストとBerg Balance Scale(以下,BBS)が関連し(p<0.01),カットオフ値は姿勢安定性テストで2点,BBSで45点であった。【結論】進行性核上性麻痺患者における病棟内歩行自立可否には姿勢安定性テストやBBSの包括的なバランス機能が関連することが示唆された。
著者
辻本 直秀 阿部 浩明 大鹿糠 徹 神 将文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11443, (Released:2018-10-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3

【目的】拡散テンソル画像所見で皮質脊髄路(以下,CST)が描出されず,一方で皮質網様体路(以下,CRT)の残存が確認された脳卒中重度片麻痺者の歩行再建に向けた理学療法経過について報告する。【対象】動静脈奇形破裂による脳出血発症から約1 ヵ月後に当院へ入院された10 歳代後半の男性であった。麻痺側立脚相における下肢支持性はきわめて乏しく歩行に全介助を要した。【方法】CST の損傷程度から運動機能の予後は不良であると予測されたが,CRT が残存しており,麻痺側下肢近位筋の回復を予測し,歩行再建できる可能性が高いと判断し,長下肢装具を使用した2 動作前型歩行練習を積極的に試みた。【結果】発症から約4 ヵ月後,遠位筋の回復は不良であったが近位筋優位の運動機能の回復が得られ歩行能力が改善した。【結論】重度片麻痺者の歩行練習に際し,CST の損傷の評価のみならずCRT の損傷も評価することでより効果的な治療が提供できる可能性がある。
著者
芳野 純 二渡 玉江 大谷 健 臼田 滋
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.410-416, 2010-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
10

【目的】資格取得後の理学療法士が,自立して理学療法業務を行うために必要な能力を明確にする。【方法】職員指導経験がある理学療法士15名に対して,指導している理学療法士がどのような能力を獲得したときに,理学療法士として自立したと感じるか等の質問をインタビューにより聴取した。インタビュー結果を,質的研究である内容分析を用い分析した。【結果】分析の結果,50のサブカテゴリーと,「理学療法実施上の必要な知識」,「臨床思考能力」,「医療職としての理学療法士の技術」,「コミュニケーション技術」,「専門職社会人としての態度」,「自己教育力」,「自己管理能力」の7つのカテゴリーが形成された。【結論】職員指導経験がある理学療法士は幅広い能力の獲得を望んでいることが分かった。7つのカテゴリーは教育目標分類学による3つの領域を満たしており,理学療法士が自立して業務を行うための到達目標について,一つの目安を示すことができた。
著者
北地 雄 原 辰成 佐藤 優史 重國 宏次 清藤 恭貴 古川 広明 原島 宏明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.481-488, 2011-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
54
被引用文献数
15

【目的】歩行は日常生活でもっとも使用される移動手段であり,高齢者では歩行能力と日常生活範囲に関係がある。歩行が自立することにより様々な利点があるため歩行自立の判断は根拠をもっておこなうことが必要である。本研究の目的は,初発の脳血管疾患後片麻痺を対象とし,歩行自立判断のためのカットオフ値を得ることである。【方法】回復期病棟に入院していた初発脳血管疾患後片麻痺者に対し,Timed Up and Go test(以下,TUG),麻痺側下肢荷重率(以下,荷重率),Functional Balance Scale(以下,FBS)を測定した。そして,これらの評価指標における歩行の自立を判断するカットオフ値を検討した。【結果】歩行自立のためのカットオフ値はTUG快適速度条件,TUG最大速度条件,荷重率,FBSでそれぞれ,21.6秒,15.6秒,0.70,45.5点であった。【結論】初発の脳血管疾患後片麻痺者の歩行自立を判断する際には,今回のカットオフ値により良好な判断が可能となる。
著者
藤本 修平 小林 資英 小向 佳奈子 杉田 翔
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11548, (Released:2019-02-12)
参考文献数
28

【目的】リハビリがかかわる医療機関Web サイトにおける医療広告ガイドラインの遵守実態を検証することとした。【方法】リハビリがかかわる医療機関のWeb サイトを抽出するため,国土数値情報(国土交通省)から東京都23 区内の医療機関を抽出し,医療機関名と住所を組み合わせWeb サイトの検索を行った(database: Google)。Web サイトの質を評価するために,医療広告ガイドラインを参考に6 項目評価した。【結果】診療科目で本来使用すべき「リハビリテーション科」という標榜以外の記載をしているWeb サイトは993 件中461 件(46.4%)であった。医療機関の名称の語尾に“センター”と標榜するもののうち,名称として認められていないものは47 件中38 件(80.9%)であった。【結論】本来医療機関の名称として認められていない標榜を採用している医療機関が多く,情報提供者は,医療機関に関する情報をより正確に説明する必要がある。