著者
加茂 智彦 荻原 啓文 田中 亮造 遠藤 まゆみ 角田 玲子 伏木 宏彰
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.242-249, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

【目的】本研究では日本におけるめまい症に対する理学療法士による個別リハビリの効果を検証した。【方法】本研究は,後ろ向きのコホート研究である。対象はめまい患者20 例とした。介入群には個別リハを週1 回,1 回40 分,4 週間実施に加え,自宅における自主的な前庭リハビリを指導した。対照群には自主トレのみを指導した。測定項目はDizziness Handicap Inventory(以下,DHI),Dynamic Gait Index(以下,DGI),Functional Gait Assessment(以下,FGA)とした。【結果】介入前後の変化率はDHI_Emotional,DHI_Total,DGI,FGA において介入群とコントロール群間に有意差が認められた。【結論】本研究の結果より,理学療法士による個別リハビリはめまい患者におけるバランス・歩行能力,めまいに関連した日常生活活動を改善させることが明らかとなった。
著者
草野 凌 吉川 憲一 宮田 一弘 Neil David Parry 石本 立 古関 一則 冨田 洋介 佐野 歩 矢吹 惇 水上 昌文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12304, (Released:2022-12-09)
参考文献数
23

【目的】Spinal Cord Injury Functional Ambulation Inventory(以下,SCI-FAI)を翻訳し,信頼性を検討した。【方法】国際基準に準じてSCI-FAIを日本語へ翻訳した。不全脊髄損傷者34名を対象とした。評価者2名が動画上でSCI-FAI評価を2回実施した。級内相関係数,Cronbachのα係数,Weighted K係数,Bland-Altman分析を用いて信頼性を確認した。【結果】検者内信頼性Intraclass Correlation Coefficients(以下,ICC)(1, 1)は0.928~0.973,α係数0.967~0.986,K係数は0.713~1.00,1名の評価者に固定誤差・比例誤差が確認された。検者間信頼性ICC(2, 1)は0848,α係数は0.916,K係数は0.349~0.899,固定誤差,比例誤差は確認されなかった。【結論】日本語版SCI-FAIは本邦の臨床設定において信頼性を有する評価であることが確認された。
著者
滝澤 恵美 小林 育斗 川村 紗世 岩井 浩一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11546, (Released:2019-06-05)
参考文献数
40
被引用文献数
5

【目的】本研究は,運動器検診の項目であるしゃがみ動作の可不可,さらに下肢の関節間協調性に関連する要因を調べた。【方法】小学生47 名を対象に,踵接地でしゃがみ動作の可不可を確認した。動作中の膝関節に対する股関節の屈曲角度の変化率が一定であることを表す直線からの偏差を二乗平均平方根で計算し,この値を関節間協調性の指標とした。独立変数として,年齢,性,疼痛・傷害歴,スポーツ活動,生活様式(寝具の種類),身体特性(下肢長,肥満度,足関節背屈の角度および筋力,長座体前屈距離)を調べ,ロジスティック回帰分析または重回帰分析を行った。【結果】しゃがみ動作が不可であった児童は12 名(25.5%)であり,疼痛・傷害歴,肥満度,長座体前屈距離が有意に影響した。膝関節と股関節の関節間協調性は年齢のみが関連した。【結論】児童において,しゃがみ動作の可不可は身体構造の状態を反映し,下肢の関節間協調性には発達による変化が現れる。
著者
野々垣 政志 阪井 裕一 山本 満
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11764, (Released:2020-09-03)
参考文献数
15

【目的】重症熱傷受傷後に早期から理学療法を行い,退院できた幼児を経験したので報告する。【症例】2 歳の男児,重症熱傷に対し人工呼吸管理下に治療を開始した。熱傷面積は体表の72% で,頸部・体幹・右上腕は全周性にⅢ度熱傷であった。入院後5 日目より理学療法を開始し,気管挿管中は鎮痛下で関節可動域練習を行った。抜管後,関節可動域練習や歩行練習を実施したが,本人が痛いと拒否するため介入に難渋した。また,筋力低下により基本動作には重度の介助を要した。入院後103 日目以降,熱傷の軽快とともに歩行練習等を行えるようになり,運動機能は急速に回復し,152 日目に退院した。関節可動域は全周性にⅢ度熱傷であった部位以外には制限を認めず,運動機能は屋外歩行が可能となった。【結語】2 歳の重症熱傷児でも人工呼吸管理中の鎮痛下より関節可動域練習を行い,熱傷の時期に応じた運動療法を施行することで,屋外歩行が可能となるまで回復した。
著者
三枝 信吾 加茂 亜里沙 稲本 あさみ 久保 宏紀 山崎 允 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12208, (Released:2022-02-21)
参考文献数
43

【目的】二次性サルコペニアを呈したTrousseau 症候群患者に対する理学療法について報告する。【対象と方法】卵巣癌の精査中に小脳梗塞を発症した50 代女性である。初期評価では,握力は右8.5 kg/左11.5 kg,快適歩行速度は0.73 m/ 秒,Skeletal Muscle mass Index(以下,SMI)は4.4 kg/m2 であり,重症サルコペニアを呈していた。分岐鎖アミノ酸を含む栄養療法でタンパク質の摂取量を漸増させ,運動療法は低負荷高頻度Resistance Training と有酸素運動を中心に実施した。【結果】最終評価では,握力は右18.9 kg/ 左19.3 kg,快適歩行速度は1.17 m/ 秒,SMI は5.6 kg/m2 と各指標で改善を認め,歩行自立で自宅退院となった。【結論】二次性サルコペニアを合併したTrousseau 症候群に対して,適切な栄養管理下の運動療法は効果的である可能性が示唆された。
著者
佐藤 佑太郎 松田 涼 石川 直人 山田 尚幸 松田 直樹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12370, (Released:2023-07-21)
参考文献数
25

【目的】橋出血による感覚機能と注意機能に低下を認めた1症例に対し,注意の内的焦点化(Internal focus of attention:以下,IFA)と外的焦点化(External focus of attention:以下,EFA)に着目した理学療法の有効性を確認することとした。【症例紹介】橋出血により重度の感覚機能と注意機能低下を認めた1例とした。回復期入棟時(30病日)~84病日までは臥位での右下肢筋出力向上トレーニング,EFAによる教示を意識した立位荷重練習,歩行練習を主体に実施した。84~124病日では,IFAによる教示を意識したバランス練習や課題特異的な動作練習を主体に実施した。感覚・注意機能,バランス・歩行機能は改善し,屋外歩行自立を獲得し自宅退院となった。【結論】感覚・注意機能低下を認める症例に対しては,介入初期はEFAによる教示を中心に行い,注意・感覚機能の改善に伴いIFAによる教示を用いた介入の実施が有効である可能性が示された。
著者
金子 文成 大西 秀明 大畑 光司 高橋 容子 松田 雅弘 森岡 周
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.95-98, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
10

経頭蓋磁気刺激(以下,TMS)に関して,Baker らの報告以来,これまでに多くの研究が報告されてきた。 非観血的な方法であることから理学療法に関連する学術大会や学術誌においてこの方法を用いた研究が報告される例は多く,患者を対象とする臨床研究も散見されるようになってきた。このような状況を鑑み,当該刺激方法に関する安全性を検討する委員会を有する国内学会や,国際的な指針からの情報を簡潔にまとめ,理学療法領域の研究に従事する方々に情報共有することが肝要との判断から,声明を発出するに至った。TMS を用いた研究にかかわる場合には,必要な知識の習得と十分なトレーニングが重要であり,今後,大学院カリキュラムのレベル,あるいは卒後教育のレベルで,トレーニングの標準化を検討するべきであろう。現時点では個々人の技術と知識の習熟状況,および実施環境などから慎重に行われつつ,さらに知見が蓄積されていくことを望む。
著者
浅野 大喜 森岡 周
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-367, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
30

【目的】脳室周囲白質軟化症(以下,PVL)児,知的障害(以下,MR)児の行動について調査し,健常児と比較した。【方法】PVL児15名(平均月齢55.2 ヵ月;PVL 群),MR児15名(平均月齢53.3 ヵ月;MR 群),定型発達児14 名(平均月齢52.3 ヵ月;Normal 群)を対象とした。行動評価はChild Behavior Checklist(以下,CBCL)を使用し,子どもの行動を母親に評価してもらい,3 群間で比較した。また母親の養育態度についても調査し,CBCL の結果との関連を調べた。【結果】PVL 群は依存分離尺度,MR 群は引きこもり,攻撃,注意集中尺度と内向,外向尺度,総得点でNormal 群よりも有意に高い得点であった。[内向/外向]の値はPVL 群が他の2 群より有意に高い値であった。PVL 群の依存傾向は養育態度や歩行能力とは関係がなかった。【結語】PVL 児は外在化行動よりも内在化行動が高いという特徴を示した。
著者
山本 宏茂 市橋 則明 吉田 正樹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.270-273, 1997-07-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は,大腿筋膜張筋において最大の筋活動が得られる股関節の角度を探り,また,訓練で用いられる動作の筋活動を調べることである。被験者は男性6名,女性4名とした。各股関節角度における股関節外転時の最大等尺性収縮及び4つの動作(椅子からの立ち座り,フルスクワット,膝屈曲60度での片脚起立,両足および片足のブリッジ)を行なったときの整流平滑筋電図を求めた。最大等尺性収縮においては,仰臥位および側臥位において,股関節屈曲0度・45度と股関節外転0度・15度のそれぞれにおいて調べた。その結果,同じ肢位,股関節外転角度において股関節屈曲45度よりも0度の方の筋活動が有意に大きかった。一方,動作の中でもっとも大きな筋活動を示したのは,片足ブリッジ(79%)であった。
著者
浅野 智也 伊藤 慎英 大島 埴生 山岡 未奈 池田 直樹 米廣 幸平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.396-403, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
18

【目的】慢性期脳卒中患者を対象に,運動療法と歩行練習ロボットGait Exercise Assist Robot(以下,GEAR)を併用した低頻度練習による効果を検証した。【方法】対象は,47 歳男性で発症後13 ヵ月の脳卒中右片麻痺患者1 名とした。研究はABAB 型シングルケースデザインを用いた。A 期を運動療法と通常歩行練習を行う従来練習期とし,B 期を運動療法とGEAR を用いた歩行練習を行うGEAR 練習期とした。両期ともに週2 回の練習頻度で4 週間の練習期間とした。介入期間は計16 週間とした。評価は歩行速度・歩幅・歩行率,身体・認知機能と歩容とした。【結果】歩行速度は初回GEAR 練習期・2 回目GEAR 練習期に向上し,歩行率は2 回目GEAR 練習期に増加し,歩容は介入期間の前後で改善した。【結論】低頻度条件の運動療法とGEAR 練習の併用によって,慢性期脳卒中患者一例の歩行能力は改善した。
著者
小林 琢 岩崎 孝俊 倉田 裕子 二階堂 暁 幡 芳樹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12196, (Released:2022-08-09)
参考文献数
36

【目的】後期高齢心疾患患者の基本チェックリスト(以下,KCL)によるフレイル評価と30-Second Chair Stand Test(以下,CS30)の関連性を明らかにする。【方法】対象は当院の生活習慣病外来を受診した75歳以上の心疾患患者141名(男104例,79.6±3.4歳)とした。KCL総合点と体組成,身体機能(握力,CS30),片脚立位保持時間),運動習慣,運動耐容能を測定して,その関連性を解析した。【結果】KCL総合点による分類では,対象者のうち約2割がフレイルを有していた。また,CS30とフレイルは有意に関連していた(オッズ比:0.795, 95%信頼区間:0.663–0.952, p=0.013)。【結論】後期高齢心疾患患者におけるCS30の低値は,フレイル患者の特徴を表す重要な指標のひとつである。
著者
多田 周平 木村 佳記 向井 公一 里田 由美子 中江 徳彦 近藤 さや花 小柳 磨毅
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.233-241, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
28

【目的】前後に開脚して片側の殿部を着座したHalf sitting にて,体幹を前傾する運動(以下,HSE)の運動力学的特性を,スクワット(以下,SQ)との比較から明らかにすることを目的とした。【方法】健常成人10 名を対象に,右下肢を前方に接地して体重の1/2 を負荷するHSE とSQ を実施した。三次元動作解析装置と床反力計,表面筋電計を用いて運動計測を行い,右下肢の関節角度,床反力,関節モーメント,筋活動電位(%MVC)を算出し,両課題間で比較した。【結果】HSE はSQ に比較して股関節の屈曲角度と伸展モーメント,床反力後方成分,内側広筋と半腱様筋の筋活動が有意に高値を示した。一方,膝関節の伸展モーメントと外部内反モーメント,床反力内方成分は有意に低値を示した。【結論】HSE は膝関節運動がなく,SQ に比較して外部内反モーメントも有意に小さく安全である一方,膝伸展モーメントは小さいながらも,内側広筋と半腱様筋の活動が有意に高まる。
著者
阿部 広和 岡田 洋一 花町 芽生 平良 勝章 栗原 淳
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12210, (Released:2022-05-26)
参考文献数
21

【目的】近年,感覚運動経験を重視する発達理論に基づいたアプローチへの変化が求められているが,本邦では定義がまだ明確ではない。今回,ダウン症候群を併存した脳性麻痺痙直型両側性麻痺GMFCSレベルIVの男児に対して選択的脊髄後根切断術(以下,SDR)後に感覚運動経験アプローチを行ったことで,両親の目標設定項目と粗大運動能力の改善を認めたため報告する。【症例と経過】6歳2ヶ月時にSDRを行い,その後,子どもにとって意味のある課題(遊び)で,探索に焦点を当てた能動的な問題解決,試行錯誤学習をサポートする,感覚運動経験アプローチを行った。術前の2点間では変化は見られなかったが,術後2~6ヶ月で目標設定項目と粗大運動能力で改善がみられた。また,遊び方にも変化がみられた。【結論】SDR後の感覚運動経験アプローチが,両親の目標と粗大運動能力の改善につながったと考える。
著者
川端 悠士 木村 光浩
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.37-45, 2021 (Released:2021-02-19)
参考文献数
29

【目的】人工股関節全置換術例の術後3 週における靴下着脱動作獲得に影響を与える要因を明らかにすること。【方法】対象は後方アプローチによる人工股関節全置換術を施行した115 例とした。調査項目は性別,年齢,関節可動域(股関節屈曲・伸展・内転・外転・外旋,膝関節屈曲,胸椎屈曲,腰椎屈曲),股関節屈曲・開排位における靴下着脱動作の可否とした。従属変数を靴下着脱動作の可否,独立変数を関節可動域として,決定木分析を行った。【結果】決定木分析の結果,靴下着脱動作獲得に影響を与える要因として,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域が抽出された。また股関節屈曲可動域が不良であっても,股関節外旋可動域および胸椎屈曲可動域が良好であれば,高い確率で靴下着脱動作が可能となることが明らかとなった。【結論】人工股関節全置換術後早期の靴下着脱動作獲得には,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域の改善が重要である。