- 著者
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千葉 篤彦
飯郷 雅之
- 出版者
- 上智大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
1.時計遺伝子のcDNAクローニングを縮重プライマーを用いたPCR法により試み、イモリからPer2、アユからPer2,Per3,Clock, BmallをコードするcDNA断片の塩基配列決定に成功した。両生類や魚類の脳における時計遺伝子の発現部位やリズムを調べることは脳内概日時計の所在の検索に有力な手段となることが期待される。2.イモリでは毎日定時刻のメラトニン投与は行動の概日リズムだけでなく、松果体自身の概日リズムも同調させることが松果体光受容細胞のシナプスリボンの数の概日リズムを指標とした実験で明らかになった。3.イモリの血中メラトニン濃度は夜間に上昇するが最大でも100pg/ml以下とかなり低いレベルであること、また、眼あるいは松果体のどちらかを摘出した個体では血中メラトニンは顕著に減少し日周リズムが消失することがわかった。イモリのメラトニン受容体は視床下部、中脳など脳内に広く分布していた。4.アユとニジマスの血中メラトニン濃度は明暗条件下で暗期に高く明期に低い明瞭な日周リズムを示した。このリズムはアユでは恒暗条件下でも存続し概日リズムを示したが、ニジマスでは常に高値を示し、概日リズムは観察されなかった。恒明条件下では両種とも低値を示した。5.明暗サイクル下でイモリの頭蓋にアルミホイル片を貼って松果体を遮光し、その直後に明暗サイクルを逆転させた。その結果、シナプスリボンの数のリズムを指標とする松果体の時計の位相は大きく変化しなかったが、行動リズムは数日の移行期を経て新しい明暗サイクルに同調した。このことは明暗サイクル下では脳内概日時計が松果体を介さずに直接明暗サイクルに同調できることが示唆された。6.ニジマスの自発摂餌活動を指標として検討した結果,松果体除去はニジマス脳内概日時計に影響を与えないことが判明した。