著者
南 茂夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.639-652, 2001-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
53

分光計測を実用計測技術としてとらえ,過去1世紀以上にわたって続けられてきた種々の分光的手法が,機器化されて一つの市場を形成するに至った背景と今後の発展の方向を,ニーズとの関連を明確にしながら展望した.まず,光と物質の相互作用で現れる光スペクトルの種類について,基本事項のテユートリアルな概説を行い,それぞれのスペクトル分野で実用されつつある特徴的な分光計測機器の現状を紹介した.続いて,これから分光計測実験や機器開発を試みる方々への指針として,構成要素の有機的結合を目標としたシステム設計の季法にっいて言及した.
著者
白鳥 世明
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.553-557, 2000-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

高分子電解質の交互累積膜の吸着過程を水晶振動子微量天びん (QCM) を用いて,吸着質量をその場でモニターしながらロボットアームの動作をフィードバック制御することにより,有機超薄膜の構造制御を行った.これにより,ナノメートルオーダーで構造制御された秩序層構造の超薄膜を常温常圧で得ることができた.また,この手法はポリマーだけでなくモノマーであっても,有機材料だけでなく無機材料であっても,さらに水溶液のみならず有機溶媒でも幅広く適応できることが明らかになった.このヘテロ構造超薄膜を用いた煙センサー,フィルター,有機EL素子,オプティカルデバイスなどへの応用について紹介する.
著者
勝山 俊夫 細見 和彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.664-670, 2002-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
19

半導体中で励起子(電子・正孔対)と光が結合した励起子ポラリトンの素子応用について報告する.このポラリトンは,電界などに鋭敏に応答する電子(正孔)とコヒーレンスがよい光の両者の性質をあわせもつ特長があり,これらの利用によって,従来の電子素子や光素子とは違った新しい極微細光・電子融合デバイスの実現が期待される.ここでは,ポラリトンの電界による位相変調効果,ポラリトンの安定化について議論するとともに,光素子の低動作電圧化と極微細化の試みを中心に最近の進展を報告する.
著者
木下 實
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.994-1005, 1992-10-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
31
被引用文献数
2

最近,金属元素を含まない有機化合物(p-NPNN, TDAE-C60)の結晶で強磁性体への転移が見いだされた.分子間に強磁性相互作用を持ち込む指針を得るための前段階の研究から,p-NPNNで強磁性を発見するに至った研究経過を振り返ってみる.また,関連する有機強磁性体を探索する研究の最近の動きを,簡単な有機化合物と高分子化合物にわけて紹介する.
著者
田中 健一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.485-490, 1996-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

計測のばらつきを評価する方法である,「計測における不確かさの表現方法のガイド」が, 1993年にISOなどの7つの国際機関の連名で出版された.不確かさについてはすでにいくつもの解説が書かれているが,本文は,不確かさを求めようとする人のための入門書として,事例を入れて分かりやすくすることを心掛けて解説したものである. まず,最初の導入につづき,不確かさという用語のもつ意味と,このガイドの特徴を述べた.このガイドは,単に表記の方法や用語の定義を定めたものではなく,評価方法を細かく取り決めたものであるので,この評価方法の手順に沿って,手順のバリエーションを分類しながら,事例を入れて解説した. 不確かさには大きく2種類の異なった評価の方法があり,世の中に混乱を招いている.しかし,国際的にこのISOのガイドに書かれた方法に統一されつつある.論文などでも計測の結果には,この不確かさを表記するように求められつつあり,このガイドに沿ったものであることが必要となろう.
著者
藤井 政俊 川合 知二 河合 七雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.916-933, 1984-11-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
118
被引用文献数
2

半導体の電子と正孔の挙動は,単にエレクトロニクス外野において重要性をもつにとどまらず,光と組み合わせることによって,優れた化学機能を発揮する.この研究は,1970年代の後半クリーンエネルギー源であるH2発生のための光触媒の開発に端を発している.現在,この化学機能は,光エネルギー変換,無機化合物や挙導体のプロセッシングと表面処理,新しい有機合成法,細胞工学への応用などの諸労野に生かされつつある.さらに,微生物のみが成し得たグルコースからのアミノ酸の合成が,光と半導体によっても可能になっている.このように,半導体光触媒は広い応用分野をもつと同時に,生命の起源の解明にも光を投げかけるであろう.
著者
戸井田 昌宏 稲場 文男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.10-17, 1993-01-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
41

顕著な光散乱や拡散を生じる生体の光画像計測,特に光断層画像(光GT)計測は,困難な問題があるものの魅力的なテーマであるため,最近大きな関心がもたれ活発に研究が行われている.本稿ではレーザーを中心とした光エレクトロニクス関連技術の進展に基づき,光GTの実現を目指して進められているいくつかの方法を紹介し,これら光画像計測技術の現状について述べる.さらに,今後の研究の動向と課題にっいても記述する.
著者
宮原 諄二 加藤 久豊
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.884-890, 1984-10-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
21
被引用文献数
8

従来のレントゲン写真は(蛍光スクリーン/フィルム)システムでX線像を可視化したものである.このシステムに代る新しいデジタルラジオグラフィーシステムの開発が各国で進んでいる,輝尽性蛍光材料をX線像の検出とメモリーの二つの機能に用い,デジタル画像処理システムと組合せたコシピューテッドラジオグラフィーシステムもその一つであり,多くの臨床上の有用な効果が明らかになってきている.このシステムは,古くから知られている固体結晶中のカラーセンターとルミネッセンスを,最新のエレクトロニクスとコンピューター技術に結びつけ,古きものの中に新らしい血を注いだ「温故知新」の技術開発の一つの例としてあげられよう.
著者
浅川 賢一 田幸 敏治 平田 照二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.519-525, 1979-06-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

A 50 meter modified Michelson interferometer has been installed in an underground tunnel in the Nagatsuta campus of Tokyo Institute of Technology. It is enclosed by vacuum pipes and illuminated by a frequency stabilized 633 nm He-Ne laser. The displacement of the interference fringes is converted to voltage with an accuracy of about 1×10-10. From the spectral analysis of the fluctuations of the interference fringes, it is found that the power spectral densityof the microtremor at the quiet time has peakes at 1 cycle/day and its har-monics, also at 0.3, 0.6, and 3 Hz, and that the values at around 10 Hzincrease when cars pass by on the road near the tunnel.
著者
加藤 誠 鈴木 達朗
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.903-907, 1967 (Released:2009-02-09)
参考文献数
7

The process of producing the hologram of an incoherently illuminated object and that of obtaining the reconstructed image from the hologram are described mathematically based on the Fresnel-Kirchhoff diffraction integral. Formulas are given which represent the magnification, posi-tion and separation of the reconstructed images. Distortion term does not appear in the case of incoherent holography. The condition for obtaining Fourier transform holograms is outlined. A system consisting of two spherical mirrors and a beam splitter is proposed.
著者
中島 俊典
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.560-573, 1972-06-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
100

Various methods of vibration analysis using holography, that is, time average method, stroboscopic method and other modified methods are reviewed. Characteristic features and practical problems of each method are discussed and several reconstructed images of vibrating objects with interference fringes which are the contour lines of the amplitude of vibration are shown. Holographic technique enables us to visualize vibration pattern on a rough surface of any shape without touching it. The distribution of vibration amplitudes from a fraction of one wavelength to more than 25 wavelengths of the light can be obtained. Relative phases of vibration between various object points can also be measured by some modified methods. These unique advantages over conventional methods of vibration analysis make holography an indispensable technique for practical vibration analysis.
著者
外村 彰
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.222-231, 1994-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
63

電子は光の10万分の1という短1い波長をもっている.その位相情報を活用すれば,まさに極微の物体の観察.計測が可能になる.筆者らの20年以上にわたる開発によって,従来とは比較にならぬほど明るく干渉性のよい電子線が得られるようになった.このため,電子線ホログラフィーを使って電子の位相変化を1/100波長という高精度で測定したり,さらにピントをはずした電子顕微鏡像の形で,極微の位相物体を動的に観察することが可能になった.これらの手法を使って,これまで不可能だった超伝導体中の個々の磁束量子の磁場分布や,磁束量子の動的挙動の観察が初めて可能になり,高温超伝導体のミクロな磁気的挙動などの未解の問題を明らかにする有力なツールとして期待がかけられている.
著者
外村 彰 松田 強 遠藤 潤二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1094-1100, 1979-11-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
28
被引用文献数
1

Electron holography has recently made a remarkable progress due to the high coherence of an electron beam generated in a newly developed field emission electron microscope and almost reached the stage of practical reality. This review describes firstly the objectives of electron holography: the improvement of electron microscope resolution and the development of new functions that have never been possible with conventional electron microscopes. Secondly three technical advances of electron holography are also described: generation of the electron beam with high coherence, improvement of the electron hologram formation method and compensation of the spherical aberration of electron lens. Furthermore interference microscopy was realized which gives information on thickness and magnetization distribution of specimen.
著者
菅田 栄治 文 道平
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1024-1031, 1969-11-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The FEM W-tip which initially has the shape of a needle (the radii of curvature 5×10-6_??_1.510-5 cm) was inserted into a special specimen chamber of an electron microscope and the changes of shape by heating were observed over a wide range of temperatures (1600°K_??_2800°K) either continuously or intermittently. The receding rate by the blunting of the tip was determined by an application of Herring's theory on transport phenomena in solid to field emission cathode. It was found from the experimental results that the receding rate of the tip depended on the cone angle. Furthermore, the process of typical changes in the shape of the tip was established, and why a neck formed in the region near the tip could be explained.
著者
板谷 謹悟
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.844-848, 2000-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

表面科学の研究は,これまで超高真空装置 (UHV) を用いるのが常識であり,清浄かつ原子スケールで規定された金属あるいは半導体表面の幾何学的構造,表面電子状態などの研究が行われてきた.しかし,電気化学走査型トンネル顕微鏡 (STM) の開発とそれを用いた実験法は,水溶液中でも原子的に規定された表面が存在することを実証し,しかも原子のスケールで直接観察できる非常に強力な手段となった.液体中では表面上でさまざまな物理,化学反応が起こる.これらの諸過程を個々の分子,原子レベルで解析可能となった.この画期的な装置と,それによって明らかにされた興味ある結果の数例を解説する.