著者
稲富 雄一郎
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-7, 2018 (Released:2018-06-26)
参考文献数
14

【要旨】神経心理学的所見と画像検査上の病巣とが、既知の対応関係と照合して一致しない5例の症候-病巣不一致例を提示した。症例1は超皮質性感覚失語で発症したが、脳梗塞は左後大脳動脈閉塞による左側頭葉内側面のみに限局していた。SPECTではさらに側頭-頭頂-後頭葉境界領域に集積低下を認め、同領域のmisery perfusionによる症候と考えられた。症例2、左内包後脚梗塞により右片麻痺を来した。入院後に呼称障害、失書も発覚したが、病歴を再聴取し以前からの神経症候であり、認知症の併存が考えられた。症例3、流暢性失語を来したが、MRIでは新規病変を認めず、SPECTでは左側頭葉に集積増加を認めた。1年後にも同様のエピソードを右大脳に来した。前回の病巣は萎縮しており、いずれも不完全脳梗塞と考えられた。症例4、右大脳半球を焦点とする部分てんかん発作の重積状態により、連合型視覚性失認を呈したと考えられた。症例5、コルサコフ症候群で発症した。MRIでは新病巣はなかったが、門脈内血栓が確認され肝性脳症と診断された。症例6、Wernicke失語と考えられたが、梗塞は右上小脳動脈領域と中脳右傍正中部に認めた。SPECTでは左側頭葉から頭頂葉に集積低下を認めた。対側大脳半球への遠隔効果の可能性が考えられた。症候-病巣不一致症例では、 1. 他の症候で説明できないか、 2. 非梗塞化虚血領域が潜在してないか、 3. 遠隔効果で機能低下が生じてないか、 4. 別の疾患が潜在していないかの問いに答えた上で、はじめて5. 未発見の症候-病巣対応ではないかを議論する。
著者
稲富 雄一郎 中島 誠 米原 敏郎 安東 由喜雄
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
pp.17007, (Released:2017-08-25)
参考文献数
21

55歳,男性.1年前に脊髄症と診断されていた.言動異常が出現した1カ月半後の初診時に,左同名半盲,記銘力低下,超皮質性感覚失語を認めた.また医師の面接時に,自身の症状,心配事について,毎回ほぼ同じ語句で一通り話してから診察に応じる反復性発話を認めた.スケジュールへの固執もあり,予定変更に際してしばしば激怒した.MRIでは右下前頭回,上~下側頭回,角回,側頭後頭境界,左縁上回から上側頭回の深部白質に病変を認めた.多発性硬化症の再燃と診断された.急性期以後は,症候は徐々に改善した.本例の反復性発話は,オルゴール時計症状に該当すると考えられた.
著者
鈴木 由希子 稲富 雄一郎 米原 敏郎 平野 照之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-12, 2015 (Released:2015-01-19)
参考文献数
5
被引用文献数
2 5

症例は77歳の女性である.パソコンのキーボード入力操作においてタッチタイピング(ブラインドタッチ)を獲得していたが,左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した.右前頭葉には陳旧性脳梗塞をみとめた.軽度の右麻痺,喚語困難,仮名・漢字・アルファベット1文字の読み書き障害は急速に改善したが,キーボード入力が困難になった.失行や視知覚障害はなく,ローマ字の読み書き障害をみとめた.アルファベットをみて確認しながらであればキーボード入力ができるまで改善したが,タッチタイピングは再獲得できなかった.本例のキーボード入力操作に選択的な行為障害には,ローマ字の読み書き障害がもっとも影響していると考えた.
著者
橋本 洋一郎 米村 公伸 寺崎 修司 稲富 雄一郎 米原 敏郎 Teruyuki HIRANO 平野 照之 内野 誠
出版者
一般社団法人日本脳神経超音波学会
雑誌
Neurosonology:神経超音波医学 (ISSN:0917074X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.55-61, 2004 (Released:2007-09-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

Ocular ischemic syndrome can be of either the acute type (amaurosis fugax, retinal artery occlusion and ischemic optic neuropathy) or the chronic type (venous stasis retinopathy and ischemic oculopathy). We carried out etiological studies on 35patients (19men, 16women, aged 62±16years) with retinal artery occlusion and 21patients (13men, 8women, aged 47±19 years) with amaurosis fugax. In all patients, carotid ultrasonography was performed to clarify the extent of carotid artery disease ipsilateral to the retinal artery occlusion and amaurosis fugax. All the patients underwent electrocardiography and transesophageal echocardiography. Arterial stenosis exceeding 50% of the diameter of the internal carotid artery ipsilateral to the symptomatic eye was more frequent in patients with retinal artery occlusion than in those with amaurosis fugax. Patent foramen ovale more frequent in the latter than in the former. Patients with venous stasis retinopathy and ischemic oculopathy (neovascular glaucoma) had occlusion of the ipsilateral carotid artery with reversed ophthalmic artery or severe stenosis of the ipilateral carotid artery with stenosis of the ipsilateral ophthalmic artery. Neurosonologic studies can provide valuable clinical data on ocular ischemic syndrome.
著者
稲富 雄一 井上 弘士
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.201-202, 2016 (Released:2016-01-31)
参考文献数
2

Power is the most important resource on the next-generation supercomputers, and they will be operated under power constraint. Therefore, there is a need to maximize performance of HPC application under power constraint. To do such optimization, we've developed and reported a method to improve performance by power allocation for each processor, which is called the variation-aware power budgeting. In this study, we carried out large-scale performance evaluation of a proposed method for two mini-applications related to molecular science, Modylas-mini and NTChem-mini. As a result, our method can improve their performance under power constraint up to 1.99 times speedup compared to conventional power constraint.
著者
幸崎 弥之助 稲富 雄一郎 米原 敏郎 橋本 洋一郎 平野 照之 内野 誠
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.79-85, 2009 (Released:2009-04-20)
参考文献数
16

目的:発作性心房細動に対する電気的除細動直後の脳梗塞発症について,その背景因子と臨床像を検討した. 対象と方法:1995年4月から2003年11月の期間に,当院で発作性心房細動に対し電気的除細動を実施した連続768例.除細動後の脳梗塞発症群,非発症群とで比較を行った. 結果:9例(1.2%)で除細動後10日以内に脳梗塞が発症した.同期間中に脳梗塞を来さなかった759例から無作為に抽出した45例と比較した結果,除細動までの心房細動持続時間(OR 1.26,95%CI 1.03∼1.53)が,有意かつ独立した脳梗塞発症因子であった. 結論:脳梗塞合併予防のために,発作性心房細動に対する発症後早期の電気的除細動の必要性が示唆された.
著者
林 徹生 本田 宏明 稲富雄一 井上 弘士 村上 和彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.87, pp.103-108, 2006-07-31
被引用文献数
2

今日に至るまで種々のプロセッサ・アーキテクチャが提案され,プロセッサの計算性能は著しく向上している.現在では1個のチップに複数のプロセッサコアを搭載することで性能向上を図るチップマルチプロセッサ(CMP)が数多く提案されるに至っているが,高い計算性能を誇るCellプロセッサもその一つである.また,CMPチップの用途として主にメディア処理が想定されているが,その高い計算能力を生かすことで分子軌道法計算等の科学技術計算にも利用可能と考えられる.そこで本研究ではCellプロセッサに分子軌道法計算の主たる計算部分である二電子積分計算を実装し,その性能を評価する.また,分子軌道法計算のような科学技術計算へ対する今後のCMPチップの利用可能性を考察する.As various architectures of processor are proposed until today, the processor performance improves remarkably. Now many chip multiprocessors that planed to improve performance by implementing some processor cores on a chip are proposed, and processor ``Cell'' is one of them. Though the media processing is mainly assumed as a usage of the chip, we think that we can apply their high performance to Science and Technology calculation like Molecular Orbital(MO) calculation. In this paper, we implement Two Electron Integral calculation that is core of MO calculation on Cell processor, and evaluate performance. And we consider the use possibility of chip multiprocessor for Science and Technology calculation like MO calculation.