著者
住田 弘祐 國府田 由紀 岡本 謙治 高藤 勝 重津 雅彦 小松 一也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.10, pp.697-703, 1998-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

酸化セリウムを酸素貯蔵材として使用したパラジウム担持触媒の二酸化硫黄 (SO2) ガスによる被毒現象を検討した. 還元雰囲気下において, 酸化セリウムに担持したパラジウムに吸着した硫黄の脱離温度は, 酸化アルミニウムに比較して高温化しており, 被毒状態からの触媒活性の回復に影響を与えていることが判明した. この高温化は, 吸着した硫黄量と触媒の状態変化の解析から, 還元されたパラジウムと酸化セリウム間における酸化セリウムの還元性に基づく栢互作用が原因であると推察された. また, 573Kにおける, パラジウム担持酸化セリウムのSO2被毒に対する酸化, 還元雰囲気の影響を検討した結果, 酸化雰囲気では, SO2の吸着が酸化セリウムの酸素貯蔵を阻害し, 還元雰囲気では, パラジウム表面を不活性化しているものと推論した.
著者
乃口 哲朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.294-297, 2019-07-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
2

香川県立観音寺第一高等学校における理数系課題研究の実践について報告する。先行して課題研究を実施していた理数科での指導・評価の方法,およびそれを応用しながら普通科へも拡大した過程,指導・評価方法の応用と改善,普通科で課題研究を実施した成果を報告する。
著者
平松 茂樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.396-399, 2017-08-20 (Released:2018-02-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

中学校理科および高等学校化学で扱われる「色の変化を伴う反応」の一つに,酸塩基指示薬の変色がある。本稿では,種々の酸塩基指示薬とそのpH変化に伴う色の変化,その際に起こっている構造の変化などについて解説する。あわせて,酸塩基指示薬と同じメカニズムで発色するキレート指示薬や,酸塩基指示薬として実験に使われることが多いアントシアニンをはじめとする天然色素についても,発色団の構造の変化について解説を試みた。
著者
大野 誠
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.56-59, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)

重力の法則,ニュートン・リングなどの光学,微分積分学で有名なニュートンは,学者として最も脂がのっていたケンブリッジ大学教授時代に,実験を含めてかなりの時間を化学・錬金術に費やしていた。本稿では最新の研究成果を基礎として「ニュートン錬金術」の土台をなすニュートンの手稿に焦点をあわせ,まず,このテーマがどのようにして発見されたかを明らかにする。次に,ニュートンの錬金術手稿の来歴や概要について述べ,この研究分野の第一人者ですら犯した誤りを取り上げて,手稿を扱うことの難しさについても論じる。
著者
大河原 信
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.131-135, 1989

まさに日本人には物あまりの時代のようである。身の周りには, これでもかこれでもかと, あらゆるぜいたく品が満ちあふれでいる。お金が豊かな人たちは気楽にそれらを買いあさる。それはそれなりに, まあ, よしとしよう。ささやかなぜいたくが欲望を満たしてくれるのなら。しかし, ろくに使いもせずにぽいと捨ててしまうのはよくない。特に筆者のように戦争を体験した人間には, 捨てるために造られた一枚のポリ袋でも, これを手にすると万感の思いがつのるのである。いまここで, 資源, 物を大切にしようと教訓をたれようというのではない。なにげない一本の糸, 一枚の布に秘められた科学, 技術の奥深さに接するならば, 少なくとも化学を学ぼうとする若い人たちには, 百言をつらねる教訓よりも, "物"の持つ素晴しさ, 貴重さに感動し, さらに将来に向っで無限の楽しみと夢が生まれてくるはずである。
著者
佐々木 伸大
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.4-7, 2021-01-20 (Released:2022-01-01)
参考文献数
6

食や生活様式が多様化している現代において,加工食品に用いられる食品添加物は必要不可欠なものとなっている。本稿では,食品添加物が,どのような目的で用いられているか,それらの使用についてどのように制御されているか,また,その安全性がどのように担保されているかに焦点を絞って概説する。
著者
高橋 幸奈
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.444-445, 2016-09-20 (Released:2017-03-01)
参考文献数
2
著者
佐藤 和也 西久保 忠臣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.11, pp.1514-1520, 1991-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4

触媒として第四級オニウム塩やクラウンエーテル錯体を用いて種々の環状エ一テルとエステル類との付加反応の検討を行った。この結果,エポキシ化合物と酢酸p-置換フェニルエステル類との付加反応はよく進行し,置換基定数-0.268≦ σ≦+0.227の間でHammett則が成立することが明らかとなったが,エポキシ化合物と酢酸ベンジルや安息香酸メチルとの反応はあまり進行しなかった。また,エポキシ化合物とチオ酢酸S-ベンジルおよびチオ酢酸S-ドデシルとの付加反応はチオ酢酸S-フェニルの場合と同様に温和な条件下でも定量的に進行することが判明した。さらに,触媒としてクラウンエーテル錯体や第四級ホスホニウム塩を用いるとオキセタン化合物とチオ酢酸S-フェニルとの付加反応もよく進行することも明らかとなった。
著者
西久保 忠臣 杉本 頼厚 佐藤 和也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.11, pp.1506-1513, 1991-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2

種々の溶媒中でフェニルグリシジルエーテル(PGE)とチオ酢酸S-フェニル(PTA)との付加反応について検討を行った。その結果,この付加反応はトルエン中で無触媒条件下ではまったく進行しなかったが,DMF中では無触媒条件下でも進行した。また,この付加反応の触媒として種々のアルカリ金属化合物や金属塩化物が有効であることが見いだされた。これらの化合物のうち,特にKOCN,KF,CoCl2,カリウムフェノレート,酢酸カリウムなどが高い触媒活性を示した。またクラウンエーテルとアルカリ金属塩の錯体は高い触媒活性を示し,これを用いるとトルエンなどの非極性溶媒中でも反応はよく進行した。以上の結果から,エポキシ化合物と活性エステルとの付加反応においては反応溶媒および触媒の選択と,その組み合わせが重要であることが明らかとなった。
著者
巣山 隆之 坂田 忠 内田 芳明 大久 文一 吉田 壮大郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.9, pp.1204-1208, 1991-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

3-シアノ-2-エチルイソ尿素を水酸化カリウム存在下で二硫化炭素と反応させ,ついでメチル化してdimethyl N-[(cyanoimino)ethoxymethy1]carbonimidodithioate3を合成した。3は活性であり,第二級アミンとの反応では3-cyano-1-[(disubstitutedamino)methylthiomethylene]-2-ethylisourea8を,また第一級アミンとの反応では1-substituted4-ethoxy-6-methylthio-1,3,5-triazin-2(1H)-imine9を生成した。9はアミン塩酸塩と室温で反応して,立体障害の小さい場合,1-substituted6-(substitutedimino)-4-ethoxy-3,6-dihydro-1,3,5-triazin-2(1H)-imine10塩酸塩を,また立体障害の大きい場合は,1-substituted4-(substitutedimino)-6-methylthio-3,4-dihydro-1,3,5-triazin-2(1H)-imine11塩酸塩を主に生成した。さらに3,9または10塩酸塩とアミン塩酸塩またはアミンとの反応により1-substituted4,6-bis(substitutedimino)-3,4,5,6-tetrahydro-1,3,5-triazin-2(1H)-iminehydrochloride(前報と同じように便宜的に1,2,4-三置換イソメラミンと呼ぶことにする)12塩酸塩を合成した。
著者
長尾 幸徳 佐藤 裕樹 阿部 芳首 御園 生尭久
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.8, pp.1088-1093, 1991-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

8-プロモメチル-1-メチルイソキノリン臭化水素酸塩1と水酸化ナトリウムおよびナトリウムアルコキシド(アルコキシド=メトキシド,エトキシド,プロポキシド,およびイソプロポキシド)の反応により8-ヒドロキシメチルおよび各8-アルコキシメチル置換の1-メチルイソキノリン類(3aおよび3b-e)を合成した。また,1,8-ビス(プロモメチル)イソキノリン臭化水素酸塩2とナトリウムアルコキシドとの反応では1,8-ビス(アルコキシメチル)イソキノリン類4a-dが得られた。一方,化合物1とアンモニアおよびアルキルアミン類(アルキル=メチル,エチル,プロピル,およびイソプロピル)との反応では8-アミノメチルおよび8-アルキルアミノメチル置換の1-メチルイソキノリン類(5aおよび5b-e)がそれぞれ合成されたが,化合物2とアミン類との反応では閉環が起こり1H-ベンゾ[de][1,7]ナフチリジン誘導体6a-eが得られた。
著者
青山 安宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.8, pp.1041-1049, 1991-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
3

非極性有機溶媒中での多点水素結合に基づくホストーゲスト相互作用について検討した。用いたホストは2-ヒドロキシ-1-ナフチル基をもつポルフィリン誘導体および四つのアルキリデン基で橋かけした環状テトラキス(レゾルシノール)誘導体であるが,これらはいずれもフェノール性ヒドロキシル基(対)を単位水素結合部位としてもっている。ゲストはアミノ酸,キノン,ジカルボン酸,ジオール,糖,ヌクレオチドなどの生体関連物質である。多点相互作用に組み込まれた「分子内」水素結合は最適ゲストの捕捉に大きな選択性を与えるのみならず,いちじるしい鎖長選択性・立体選択性をもたらす。また,「分子内」水素結合の分子間水素結合に対する優i位性は約1 .5kcal/molである。このような相互作用を利用して糖類を有機溶媒に可溶化することができる。この場合,アノマー位に関して大きな立体選択性が認められる。一方,どのような糖が有効に抽出されるかについての選択性は糖分子全体の疎水性(脂溶性)に支配されている。多点相互作用の応用についてもいくつかの例で検討を加えた。最も重要なのは,非共有結合に基づくホスト-ゲスト相互作用が,機能性分子錯体の自発的な構築や光学活性ゲストの立体化学の決定に利用できる点である。その他,糖の合成化学にユニークな方法論をもたらし,多官能性有機触媒の開発にも新たなみちを拓いた。
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.316-320, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ホウレソソウを水中で煮沸して含まれているシュウ酸カルシウム結晶の量,形態および結晶構造の変化を検討した。ホウレンソウを水で20分間煮沸して非結合性シュウ酸を抽出し0.1M塩酸中に一夜浸漬して全シュウ酸を抽出してそれぞれイオンクロマトグラフ分析して定量し,単位重量当たりの両者の含有量の差からシュウ酸カルシウムの含有量を求めた。実験に使用したホウレンソウ100g中に非結合性シュウ酸は730mg,全シュウ酸は912mgと実測され,シュウ酸カルシウムは二水和物として339mgとなった。さらにホウレンソウを長時間煮沸して抽出されるシュウ酸を定量し,全シュウ酸との差から煮沸後残存するシュウ酸カルシウム量を求めた。シュウ酸カルシウムは煮沸1時間後からわずかずつ減少し,約4時間後から減少速度が増加し,8時間煮沸すると約26%が消失した。ホウレソソウを煮沸する間に葉の中に存在するシュウ酸カルシウム結晶は表面からわずかずつ溶解し,まず微細な穴が生じ小さなき裂が現れ,数時間以上煮沸すると凝集体の構成粒子の結合部分が溶解し始め,別に再結晶と転移により小さなシュウ酸カルシウム一水和物の結晶が元の結晶表面に現れた。X線回折分析によれば,煮沸前ほとんど二水和物であったシュウ酸カルシウム結晶は8時間煮沸した後にはその約50%が一水称物に転移していた。
著者
村本 慶博 朝倉 英行 鈴木 仁美
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.312-315, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25

HPLCの標品を得るためにエチルベソゼン-3-スルホン酸8をつぎの方法で調製した。2-アミノエチルベンゼン9から,アセチル化,ニトロ化,加水分解,脱アミノ化および還元を経て,3-アミノエチルベンゼン14を得た。ジアゾ化後 SO2 と銅で処理してスルフィン酸15に導き,壇素でスルポニルクロリド16に変換し,さらに加水分解して8を得た。エチルベソゼンスルホン酸の 2-2,4-3 および3-異性体8は,0.1M KH2PO4-MeOH系のHPLCでこの順序で溶出した。エチルベンゼン1を98%硫酸を用いて20~120℃のいくつかの温度でスルホン化し,得られるスルホン酸混合物をHPLCで分析した。その結果,生成物2と3のほか,0.3~3.8%の8とジスルホン酸の存在を認めた。
著者
山下 隆治 児玉 光博 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.6, pp.774-776, 1991-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

Deithyl 2, 3-pryridine dicarboxylates 3 were easily prepared in one pot synthesis by the reaction of a-chlorooxaloacetate 1, a, p-unsaturated aldehydes 2 and ammonia. Especially, diethyl 5-ethyl-2, 3-pyridine dicarboxylate 3a was obta i ned in a good yield (81%) by the reaction of 1, 2-ethyl-2-prop enal 2a and ammonia in chloroform using an autoclave. In the reaction in an autoclave, the yield of 3 a in chlorobenzene or toluene was similar to that of chloroform. But under atmospheric pressure, the yield of 3a was lower in toluene, benzene, and ethanol than in chlorobenzene.
著者
安田 伍朗 堀 卓也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.240-243, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

N-Benzylation of phenanthro[9, 10-d]triazole gave the mixture of 1-benzyl-1H- and 2-benzyl-2H-phenanthro[9, 10-d]triazole (1c and 2c) such as N-Alkylation. The mass specctrometry can be used to distinguish clearly between the 1-alkyl-1H- and 2-alkyl-2Hphenanthro-[9, 10-d]-triazole. The 1-alkyl compound releases more N2H, which is further split with the (R-H) elimination to give base peak m/z 190, than do the 2-isomer, and so on the mass spectrun of 2-alkyl compound a base peak is parent peak. However the fragmenta tion patterns of the two benzyl compounds show similarities so structures are proposed for these fragment ions by consideration of rearrangement fragment C14H8N+(m/z 190) and C6H5CH2+ (m/z 91).