著者
佐藤 利夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.985-988, 1967-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

イチョウイモ粘質物には3~4%のリンが含まれているが, このリンの大部分がフィチン酸として存在することがペーパークロマトグラフィー, ロ紙電気泳動, ガスクロマトグラフィーなどの結果から推定され, ジクロヘキシルアミン塩として確認された。フィチン酸は粘質物の一部として水可溶性の状態で存在することも明らかになった。またこのフィチン酸は粘質物のタンパク質と単純な塩結合によって結合しているのではなく, 配位または弱い共有結合をしているものと考えられた。
著者
永瀬 喜助 神谷 幸男 穂積 賢吾 宮腰 哲雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.377-384, 2002 (Released:2004-03-05)
参考文献数
14
被引用文献数
9

低湿度環境で自然乾燥性を持つ重合漆液の調製を目的として,反応容器中で生漆の反復「くろめ」1)を行った.すなわち簡易な実験用漆液重合装置を試作し,「くろめ」処理の繰り返しによって生漆1)を重合させ,漆液中のウルシオールの変化と低湿度環境(20–25 °C,45–55%RH)での乾燥性を調べた. 生漆は反復「くろめ」によって酵素酸化が進行し,この中に含まれるウルシオール単量体が減少する.また,この反応における反応容器の底面積と処理量および処理時間には,相関関係があることがわかり,その関係式を推測した.さらに,これらの変化に伴い,ヒドロキシ基価と抗酸化力が低下して側鎖の自動酸化が起こりやすくなり,低湿度環境での自然乾燥性が発現することを見いだした.
著者
赤堀 四郎 桃谷 嘉橘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.608-611, 1943-05-28 (Released:2009-12-22)
参考文献数
13
被引用文献数
3

著者等は芳香族アルデヒドとアミノ酸との混合物を加熱するときは一般に次の如く反應してアルカミンを生ずることを認めた.〓R, R′はH或はCH3この反應によつてエフェドリン,ノルエフェドリン, 1-フェニル-1-オキシ-2-メチルアミノエタン, 1-アニシル-1-オキシ-2-メチルアミノエタン及びメチレンアドレナリンを合成することが出來た.
著者
五月女 宜裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.402-405, 2015-08-20 (Released:2017-06-16)

光学分割とは,2つのエナンチオマー(鏡像異性体)が1:1の比で混在するラセミ体から,一方のエナンチオマーを分離する方法である。19世紀中旬に,ルイ・パスツール(Louis Pasteur)が初めての光学分割を報告して以来,結晶法,HPLC法,速度論法に代表される様々な光学分割法が開発されてきた。これにより,医薬,農薬,香料や機能性材料の開発に欠かすことのできないキラル化合物のエナンチオマーを入手することが可能となった。本稿では,これらの光学分割法の歴史的な開発背景,光学分割法の原理,さらには特徴についても紹介する。
著者
長瀬 裕 小松 利幸 角谷 嘉和 池田 幸治 関根 吉郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.11, pp.1560-1568, 1979-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
11

合成ポリアミドと天然ポリアミドの熱分解機構の相違と有毒ガス(-酸化炭素,シアン化水素)の発生との関連性を明らかにするため,ナイPtン6,ジスルフィド橋かけナイロン6,ナイロン6,6,絹および羊毛を試料として,ヘリウム気流中,真空中におけるTG, DTA測定およびGC, IR, MSを用いた熱分解生成物の分析を行なった。合成ポリアミドでは320~350。Cで分解が開始し, TG曲線が1段階となった。ナイロン6ではε-カプロラクタムを生じる解重合反応が主反応となり,シアン化水素は生成せず-酸化炭素もごく微量しか生成しなかった。ナイロン6にジスルフィド橋かけを施すとS-S結合の切断が分解開始点となり,同時に主鎖のN位がラジカル化されて解重合されやすくなることがわかった。また,ナイロン6,6ではアミド結合の加水分解にともない末端の脱炭酸および脱アンモニア反応が起きて主生成物は二酸化炭素,水,アンモニアであった。一方,絹および羊毛では分解開始温度は200~250。Cで合成ポリアミドにくらべ低く,二酸化炭素,水,アンモニアが熱分解主生成物であった。さらに容易に橋かけ反応が進行してTG曲線が3段階となり,その過程でシアン化水素,-酸化炭素が合成ポリアミドとくらべ多く発生することがわかった。
著者
後藤 克己 四ツ柳 隆夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.49-53, 1968-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6
被引用文献数
5

多量の多核アルミニウムイオンの存在する試料に,既報の8-キノリノ一ル塩抽出法を適用すると,多核イオンの解重合による誤差とクロロホルム層の乳濁化とを生じ,単核イオンの正確な定量は不可能となることがわかった。この乳濁状態は,ドデシル硫酸ナトリウム溶液の添加によりただちに破壊できることを見いだした。また定量条件における解重合反応は,多核イオンとして存在するアルミニウム濃度を[A1]Pとすると,その速度を[A1]P[CH3COO-]2および[A1]P[8-キノリノールイオン]2の項の和として表示され,並発形と推定される。その初期反応は見かけ上,時間に対して直線的に進行するので,作図による補外によって試料の単核イオンを定量できる。定量に対する各種陰イオンの影響を調べ,この方法によって定量される錯体は,配位子交換速度の大きな単核アルミニウム錯体(A1(aq)3+,A1(OH)2+,A1(SO4)+,A1(CH3COO)n(3-2n)+,A1(C2O4)n(3-2n)+など)であることを明らかにした。本法のアルミニウムイオンの加水分解に関する研究への応用について論じた。
著者
川端 克彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.286-290, 1995
参考文献数
5

パソコンやワープロの普及により筆記具の需要が減るのではと危惧されたが, 顔料の微分散化技術が進み耐水性や耐光性の強い顔料インキが水性ボールペンにも使えるようになり, またカラフルな外観を持つボールペンやラインマーカーが開発され新しい需要層が増え, 逆に販売量も増えている。パソコンやワープロでは味わえない書くことの楽しさをユーザーがこれらの筆記具に感じているのではないか。またどこでも手軽にコピーできることから, ちょっと間違った箇所を簡単に修正できる修正液が大ヒットしている。これらのインキについて, 材料, 分散技術中心に紹介する。
著者
津越 敬寿
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.596-599, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1

質量分析と一口にいっても,実に多岐にわたる。検出器としての質量分析計でも大きく数種類挙げられるが,イオン化手法は10種を軽く超える。それぞれにユニークな特徴があり,様々な分析のニーズに応えることができる分析法といえる。
著者
石井 正樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.270-271, 2012-06-20 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1

夏の暑い環境をより快適に過ごすために,冷涼感性や,皮膚からの汗をすばやく吸って,そして急速に乾燥させる吸汗速乾性を有する衣料は,近年夏物衣料としては必須アイテムになりつつある。本稿では人体から発生する水蒸気や汗の移動により,人体をより快適な状態に保つことを目的とした衣服における繊維素材の実例を紹介する。
著者
瀧本 真徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.30-33, 2014-01-20 (Released:2017-06-16)

硫黄(S)は火山周辺などの自然界から,単体としてほぼ純粋な形で得ることのできる元素の一つである。単体の硫黄は,古くより火薬の原料,マッチの着火燃焼剤,燻煙殺菌や皮膚軟膏の原料として用いられてきた。また,含硫黄有機化合物として,植物や我々の体内にも存在する。この,含硫黄有機化合物は現在の抗生物質が登場する以前には感染病の化学療法にも用いられていた。本稿では,硫黄の用途や,身の回りに存在する硫黄化合物について化学的な視点から紹介と解説を行う。
著者
臼田 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.220-223, 2019-05-20 (Released:2020-05-01)
参考文献数
4

計測はあらゆる通商,産業,科学の基盤である。計測の同等性を時代,地域によらず確保するためには単位の基準が不変であることが不可欠である。単位はかつて人間の体の部位にちなんだものを定義として,石や金属を使って形作られた。やがて計測精度への要求と科学技術の進歩に伴い,自然界の法則を定義にするなどの見直しが進んできた。2018年11月に開催された国際度量衡総会において,国際単位系(SI)の基本7単位のうち,4単位を改定することが決議された。そして2019年5月20日をもって定義改定が実施された。本稿では単位および単位系について基本と全体像を概説する。新旧の定義を対比し,その意図と利点,および改定がもたらす将来像について述べる。