著者
小野 雅之 吉田 哲郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.2, pp.234-239, 1981

ニオブ-チタン合金およびバナジウム-ニオブ合金の複合窒化物を作成する目的で60ニオブ-40チタン(wt%)合金粉末(粒径約80μ)ニオブ0チタン合金板(Nb:20,40,60,80wt%)および50バナジウム-50ニオブ(wt%)合金板を窒素中(1atm),700~1350℃で窒化し,断面の組織観察,EPMA解析ならびにX線解析により反応状況を調べ,合金組成の均一な複合窒化物合成の可能性を検討した。ニオブ0チタン合金ではまず高チタン濃度の針状窒化物を生成した。高チタン濃度の窒化物の析出した周辺は高ニオブ濃度の低級窒化物または合金相となった。さらに反応が進むと高チタン相と高ニオブ相が窒化増量にともない反応して表面から合金組成の複合窒化物を生成した。60Nb-40Ti合金粉末は1300℃,4時間で,またNb-Ti合金板(Nb:20,40,60,80wt%,厚さ約0.3mm)は1350℃,48時間でそれぞれ合金組成の複合窒化物となった。50バナジウム-50ニオブ合金では針状窒化物は奪成せ劣表面から合金組成の窒化物が層状に成長した。50バナジウム-50ニオブ合金板(厚さ約0.8mm)は.1350℃,48時間で合金組成の複合窒化物となった。
著者
山口 達明 長岡 伸郎 高橋 勝治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.7, pp.1164-1165, 1989-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

Kolbe-Schmitt type carboxylations of 1- and 2-na phthol by carbon dioxide in the homogeneous solution in aprotic solvents were found to proceed under ordinary pressure and ordinary temperature giving 1-hydroxy-2-naphthoic acid and 27hydroxy-1-naphthoic acid, respectively, in extremely high selectivities and yields, . The best yield (ca.80%) for the carboxylation of 1-naphthol was obtained by the reaction of its potassium salt in nitrobenzene at 80°C under 3.9 x 1O5 Pa of carbon dioxide within 30 min.
著者
尾中 篤 杉田 啓介 泉 有亮
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.3, pp.588-590, 1989-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Regioselective reductions of 2, 3-epoxy-1-alkanol and its derivatives are carried out by use of lithium borohydride supported on calcium ion-exchanged Y-type zeolite.2, 3-Epoxy-substituted ether is found to be reduced at the C-3 position with the above heterogeneous reducing reagent more regioselectively than 2, 3-epoxy-1-alkanol. High regioselection is attributable to the interaction between the organic substrate and the calcium ion in the zeolite since the reducing reagent supported on sodium ion-exchanged zeolite shows low selectivity.
著者
矢田 智 矢沢 直樹 山田 義和 助川 しのぶ 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.641-647, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4

白金族金属触媒による 4-t-ブチルシクロヘキサノン (1) の還元アミノ化反応と立体化学について検討した。反応生成物は第一級アミンの 4-t-ブチルシクロヘキシルアミン (2) と第二級アミンのビス (4-t-ブチルシクロヘキシル) アミン (3) などであった。(2) の生成は Pt<Os<h<Pd<Rh<Ruの順で収率59~97%の間であった。(3)はPtでは収率34%に対し, Ruではまったく生成しなかった。触媒によって(2)と(3)の生成量は異なる。これは反応中, 一時的に生成する4-t-ブチルシクロヘキサンイミン(6)やシップ塩基, 4-t-ブチル-N-(4-t-ブチルシクロヘキシリデン) シクロヘキシクルアミン(5)に対する水素付加の速度の違いと(5)の反応性の違いによる。たとえば, 別途に合成した(5)を用いてRu上, アンモニア存在下での水素付加反応では1分子の(5)から2分子の(2)が定量的に生成し, (3)は得られない。しかし, Ptではこ(5)から(2)と(3)が同時に得られた。(1)の還元アミノ化における立体化学ではいずれの触媒とも(2)のtrans-体よりも cis-体を多く生成した。また, (5)の立体構造を1H-NMRによって調べ, C-N結合がアキシアル(ax)結合とエクアトリアル(eq)結合をもつ2種類の立体異性体の存在を確認した。さらに(5)が水素付加されて得られた(3)では C-N-C 結合が ax-ax, ax-eq, eq-eq 結合した3種類の立体異性体が存在した。
著者
中沢 利勝 塩沢 佳幸 説田 和洋 板橋 国夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.7, pp.1103-1110, 1989-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

3-(2-ナフチルチオ)プロピオンアルデヒド〔1a〕およびそのメチル置換体〔1b,c〕を50%硫酸存在下,エーテル中で反応させると容易に閉環が起こり2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン-1-オール〔2a〕および対応するメチル置換体〔2b,c〕がほぼ定量的に生成する。〔2a〕をクPtpaホルム溶液中塩酸とともに加熱すると,3H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔3a〕がほぼ定量的に,ポリリン酸(PPA)中で加熱すると2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン〔4a〕のみが70%得られた。また〔2b,c〕を同様に処理すると対応するメチル置換体〔3b,c〕,〔4b,c〕がそれぞれ高収率で得られた。〔2a〕を硫酸触媒存在下アルコール,チオールおよびチオカルボン酸などの求核剤と反応させるとまもの〔2a〕のヒドロキシル基は反応試剤によって容易に置換され,対応するエーテル,チオエーテル,チオカルボン酸エステルが,ほぼ定量的に生成した。さらに硫化水素とはチオールが,N,N-ジメチルチオホルムアミドとはチオギ酸エステルが,塩化テオニルとは塩化物が,それぞれ得られた。また,〔2a〕と臭化アヤをルとの反応では臭化物が,トリエチルアミン触媒存在下での臭化アセチルとの反応ではア竜トキシ体がそれぞれ得られた。1-ナフタレンチオールから得た3,4-ジヒドロ-2H-ナフト[1,2-b]チオピラン-4-オール〔7a〕も〔2a〕とほぼ同様の結果を示した。以上,〔2〕のヒドロキシル基は酸触媒存在下で,種々の求核剤により容易に置換されたが,アミン類による置換は,酸塩基触媒ともいずれも進行しなからた。
著者
砂本 順三 佐藤 智典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.2, pp.161-173, 1989-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
70
被引用文献数
4

卵黄レシチンリポソームの構造強化と標的指向性を達成するために, 本研究では疎水性アンカーとしてパルミトイル基やコレステリル基で一部修飾した天然由来多糖でリボソーム表面を被覆した。多糖被覆リボソームの構造安定性は, 内包蛍光ブローブの流出抑制およびリボソームの酵素的分解抑剃により確認された。また多糖の構造に依存した標的指向性も発現した。すなわち, アミロペクチンやマンナン誘導体で被覆したリボソームは貧食細胞との親和性に優れ, 動物に静脈投与したのち肺への特異的な集積がみられた。この特異性を利用して, 抗菌剤 (アンホテリシンB, ミノサイクリンおよびシソマイシンなど) や免疫賦活剤 (ポリアニオンポリマー) をこれらの多糖被覆レポソームにカプセル化することで, それぞれ, 細胞内増殖菌に感染した動物モデルでの抗菌活性およびマクロファージの活性化を顕薯に向上することに成功した。つぎに, がん細牌への特異牲を付与するために, プルラン被覆リポソームへ抗体を化学的に結合した immunoliposomeを作製した。認識素子として CSLEX1 のサブユニット IgMs を結合したリボソームは, 特異がん細胞との高い結合性および, PC-9 肺がん移植マウスでの腫瘍指向性を示した。また, 抗がん剤アドリアマィシンを immunolipasame にカプセル化することで, 動物モデルでの顕著な腫瘍増殖抑制効果も観察された。
著者
進藤 昭男 相馬 勲 山口 宗明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.658-661, 1968-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ケイ素フタロシアニンの炭化について調べるために, シリコクロロホルムとフタロニトリルから合成されたケイ素フタロシアニンを一度加水分解処理( 濃硫酸にいったん溶解し, 純水中に析出させて行なった) し, 得られた粉末を窒素気流中1000℃ まで9段階に加熱処理して, 重量熱解析, 元素組成, X 線回折, 赤外吸収スペクトル, および電気抵抗の測定を行なった。その結果,800℃ までの重量減少は加水分解処理前のもので25%であったが,加水分解処理したものではわずか15%であった。また500℃ までは顕著な変化は見られず, 500℃ から水素の急激な減少とともに, 赤外吸収スペクトルや電気比抵抗が急に変化する。しかし銅フタロシアニンのような急激な重量減少は見られず, 800℃ 近くまでフタロシアニン結晶としての規則性の一部を残す。1000℃ に熱処理した試料においてまだ窒素が7.5%,ケイ素が7.3%の割合で残っており,X線回折図形からも,かなり難黒鉛化性炭素の傾向を示すことなどがわかった。なお,ケイ素フタロシアニンの加水分解処理による耐熱性の向上は,熱処理の過程でシロキサン結合が形成されるためと考えられた。
著者
肥田 宗政 三井 利幸 藤村 義和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.6, pp.972-976, 1989-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

合成樹脂の構造推定を行なう一手段として, パーソナルコンピューターを使用した多変量解析法の適用を試みた。まず, 14個の構造のわかった既知の合成樹脂と, 3個の構造のわからない未知の合成樹脂について, それぞれに熱分解ガスクロマトグラフィーを行なった。つぎに, 個々のパイログラムをピーク高と保持時間をもとに数値化し, 多変量解析のためのデータとした。多変量解析において, クラスタ憎分析では, ウォード法, 主成分分析では, 合成変量の分散を最大にする方法, 因子分析では, 規準パリマックス法を使用して, 距離, 主成分得点, 因子得点を計算した。得られた数値を総合的に判断して, 未知の合成樹脂の構造推定を行なった。その結果, 未知試料は, 高圧ポリエチレンあるいは, ポリ-1, 2-ブタジエン, 未知試料2は, 既知試料中に特に類似したものはなく, 未知試料3は, 天然ゴムとの類似盤が高いことがわかった。
著者
野平 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.6, pp.903-914, 1989-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
67
被引用文献数
4

優先晶出法およびジアステレオマー塩法など, 主として選択的な結晶化現象を利用した光学活性体の効率的な取得方法の研究を行なった。優先晶出法においては, 自然分晶する化合物の検索方法を提示し, この方法により新たに多数の自然分晶する化合物を見いだした。また, 優先晶出法において, 分割効率をいちじるしく向上させることができる共存塩法を開発した。さらに, ラセミアミンとラセミカルボン酸の組合せにおいて, その難溶性ジアステレオマー塩が自然分晶する例をいくつか見いだし, これによりラセミ体同士の組合せから4種類の活性体を一挙に得る方法を提示した。ジアステレオマー塩法においては, できるかぎり効率の高い分割剤の検索方法を提示し, この方法を用いて種々の生理活性をもつ化合物をはじめ, 多数のアミン, カルボン酸, アルコール類の光学分割を行なった。さらに, 新しい合成光学分割剤として, trans-およびcis-2-ベンズアミドシクロヘキサンカルポン酸 ([1]および[4])とcis-2-(ベンジルアミノ)シクロヘキサンメタノール[23]を提案し, これらが合成光学分割剤として有用であるとを示した。
著者
玉野 美智子 中林 幹夫 纐纈 銃吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.891-894, 1989-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

9-(Acyloxy)anthracenes were synthesized by the reactions of anthrone (9(10 H)-anthracenone) with acyl chlorides.Treatment of these substances with various metal halides in benzene under reflux gave the corresponding 10-acylanthrones and anthrone.
著者
巣山 隆之 曽我 卓生 宮内 一憲
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.5, pp.884-887, 1989-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
10

It was found that amines added to the N-cyano group on cyanoguanidines in the presence of FeCl3 or ZnCl2 under mild conditions. For example, the reaction of cyanoguanidine [2a] with butylamine, proceeded at room temperature in the presence of FeCl3 to give butylbiguanide [1a] in 99% yield. Similarly, [2a] or N-cyano-N'-phenylguanidine [2b] reacted with diethylamine, benzylamine, hexadecylamine, octadecylamine and aniline at room temperature or under reflux in dioxane or tetrahydrofuran to give the corresponding biguanides [1].In the presence of ZnCl2, [2] and two equivalents of amines were heated in refluxing dioxane. The initial products, biguanides [1]-ZnCl2 complexes, were readily hydrolyzed by aqueous ammonia or amines to give hydropchlorides of [1].When N-substituted-N'-cyano-S-methylisothioureas [3] reacted with primary amines in the presence of FeCl3 or ZnCl2 the addition to the cyano group and the substitution of the methylthio group with amines occurred at the same time to yield the corresponding [1].
著者
山本 忠 漆間 貴史 幸本 重男 山田 和俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.760-763, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

A new method for the preparation of (Z)-4-alkylidenebutenolides is described. Coupling reaction of acetylenic stannanes with enol triflates of β-keto esters gave the corres ponding (Z)-2-alken-4-ynoates which were hydrolyzed and then subjected to cyclization in the presence of HgO to give moderate yields of (Z)-4-alkylidenebutenolides.
著者
増田 泰大 今野 貴幸 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.434-437, 2020-10-20 (Released:2021-10-01)
参考文献数
21

高等学校「化学」の教科書に記述されているフェーリング液の還元とベネジクト反応について,モデル化合物および単糖を用いて還元性の原因となる構造を調べた。その結果,グルコース,マンノースおよびフルクトースにおいてα-ヒドロ-α-ヒドロキシカルボニル構造-CH(OH)CO-がこれらの試薬との反応の原因となる構造であることを示す結果が得られた。
著者
飯塚 英昭 矢島 毅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.208-211, 2007-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

アミノ酸の吸収および代謝は,他のアミノ酸や生体成分に影響される。トリプトファンも例外ではない。トリプトファンは,血液中でアルブミンと結合して存在するアミノ酸で多くの代謝産物を生じる。これらの多くが生理的に重要であり,疾病の原因物質と考えられているものもある。ここでは,主にトリプトファンとセロトニン経路の代謝産物について述べ,疾病などとの関連についても述べる。
著者
伊藤 美千穂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.616-619, 2016

<p>日本古来の奥ゆかしい伝統に,沈香<sup>*1</sup>などの香木を穏やかに暖めて立ち上がる芳香を"聞く"香道がある。また,西洋でアロマセラピーが提唱されるより以前に,北宋の詩人である黄庭堅により香の精神的・身体的効能を謳った漢詩「香十徳」<sup>*2</sup>が書かれており,日本でも広く知られていた経緯がある。しかし,現代の薬学分野では,主に再現性や定量性の問題からにおい自体やにおい成分の薬理効果などは研究対象になりにくいものとされ,これらについての研究は精力的には進められてこなかった。</p><p>他方,においの効果に興味を持った著者らはマウスを使ったにおい成分の経鼻吸収モデルを構築し,香道で用いられる沈香の芳香成分に強い鎮静作用があることを明らかにした。さらに沈香等の薫香生薬類やハーブ類の精油等からのにおい成分の摂取がマウスの行動に与える効果を行動薬理的に解析することにより,これらのにおいの中の活性成分の詳細な検討や,薬としての応用の可能性について研究を行っている。</p>
著者
栗原 良枝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.69-71, 1997-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

味覚は生活の中では, 食物のおいしさに関係する大切な感覚である。ここでは, 甘味を中心にして, 味覚を化学の目で眺めることにする。甘味に関しては, 昔から数多くの研究がなされてきたが, 甘味のメカニズムは甘味受容体の実体を含めて依然として不明な点が多い。ここで紹介するミラクリンやクルクリンは味を変えるという特異な作用をもっているタンパク質である。これらの物質は新しい甘味物質として期待されるばかりでなく, その活性部位が解明できれば, 新しい甘味剤をデザインすることも可能になるかもしれない。
著者
杉岡 正敏 青村 和夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.3, pp.471-476, 1973
被引用文献数
2

いろいろの固体触媒によるエタンチオール(ET)の接触分解をパルス反応器を用いて行なった。この結果,エタンチオールの分解に活性を有している触媒はB酸点を有しているNHY-ゼオライト,固体リン酸(SPA),シリカ-アルミナ(SA)ばかりではなく, Al,08およびアルカリ金属ゼナライト,MeY(Me=Li, Na, K, Rb, Cs)のようにB酸点を有していない触媒もまた分解活性を示すことがわかった。しかしながら,CaO, MgOのような固体塩基は不活性であった。エタソチオールの分解生成物はNH,Y, SPA, SAおよびMeYではエチレンと硫化水素のみであったが, A130,ではエチレンと硫化水素とともにかなりの量のジエチルスルフィドが生成した。<BR>NH,Y, SPA, SAおよびA1203によるETの分解はピリジンで被毒されたが, MeYでは被毒されなかった。さらに,NH,YとSPAのエタンチオール分解活性は触媒の焼成温度の上昇とともに低下し,その活性低下はクメン分解の活性低下とよく対応していた。<BR>以上の結果から,エタンチオールの分解に対するNH,Y, SPA:およびSAの活性点はB酸点であるが,A1203とMeYではB酸点とは異なると考えられたので,その活性点に関して考察を加えた。