著者
遠藤 辰雄 岩渕 武士 孫野 長治
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.389-400, 1972
被引用文献数
4

1968年,旭川にて冬霧の中での地上電位傾度の観測を行った.汚染された空気と水霧が来ると電位傾度が晴天値の数倍になった.この増加は主に大気の電気伝導度の減少によるものと説明された.<br>また,この水霧が氷化する際に,すでに正に高まった電位傾度が減少し晴天値から更に負電場にまで達するのがみられた.この減少のメカニズムとして,まつ氷晶が選択的に負電荷を帯びることによるためと更に氷晶の成長によりエーロゾル粒子が除かれるため(Facy効果)大気の電気伝導度が水霧時より増加するためと考えた.<br>たまたま観測された降雪に際し,降雪が止み雲がなくなると電位傾度が急に正の高い値へ増加するのがみられた.これは負に帯電した雪が重力的に降下し分離して残った正の空間電荷が雲の切れ間では自由になり下降流により地上へ運び込まれることによるものと説明した.
著者
太田 盛三
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.142-150, 1983

筆者は以前,1974年暖候期の資料を用い,広島県沿岸部 Ox 濃度と低層大気における気象状態との関係について若干の統計的調査を行い,その結果を発表した(1976)。すなわち,米子と福岡の実測による 950mb の推定ベクトル平均風地上から 850mb までの広島上空の早朝低層大気安定度示数の推定値,広島の日中最高気温などを説明変量として,広島県内の当日最高 Ox 濃度値の推算を試みた(以下,これを単に Ox 濃度とよぶ)。その方法は散布図方式により各種の Ox 濃度空間平均等値線図を求め,これらの組み合わせを利用し,遂次段階的に当日 Ox 濃度の推算精度を上げるという方法である。<br>今回,1976,1977,1978年暖候期における筆者の予報当番日の資料により,広島における当日の日中前半(6時~12時)の降水量,当日9時における広島県内最高濃度値を新しい説明変量として追加し,1975 年暖候期の全資料によって検証を行った。その結果,新しい説明変量の追加が実用的に有効であることが認められた。なお,1976年以前の濃度測定値は政令の改正前であったので,0.8倍して修正したものが用いられている。
著者
Murakami Takio Wang Bin Lyons Steven W.
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.191-210, 1992
被引用文献数
1 29

風、地上気圧、海面水温(SST)、外向長波放射(OLR)データを用いて、90°Eと110°Wに沿った7月平均の地域的なハドレー循環の構造を調べた。本論文の目的は、2種類のモンスーン-大陸と海洋との対照で生じるモンスーン(インドモンスーン)とSST傾度で生ずるモンスーン(北東太平洋夏季モンスーン)-を比較することである。<br>7月、90°Eに沿って大規模なハドレー循環が存在する。さらにこれに重なって、両半球側にはっきりと分かれた地域的なハドレー循環が存在している。北半球のハドレー循環は、赤道からモンスーントラフに吹き込む下層の南風、上昇域に対応するベンガル湾北端での大量の雨、200mbの北風、を伴っている。この北のセルは、赤道ベンガル湾上で弱い南の発散南風となっている。高い山岳を伴った大陸の存在が、ベンガル湾でのモンスーンの発達には重要であるが、SSTの影響は非常に小さい。南半球側のハドレーセルは、中緯度高気圧からの下層の南風流入によって維持されており、この南風は20°Sから10°Sにかけての強いSST傾度によって暖められ、気団変質を起こしている。変質した気塊は赤道近くのトラフに収束し、2°S-8°Sで冬の雨をもたらす。この領域では南半球ハドレーセルの上昇域が存在する。南北両半球側のハドレーセルは、夏冬半球の熱的差異によって生じた赤道を横切る下層の南風によって相互に関係し合っている。<br>110°Wにおいては、大陸の影響は小さいと思われる。東太平洋域は、赤道上を東西に伸びる冷たいSSTで特徴付けられる。この非常に強いSSTの南北傾度によって、顕著な北向きの気圧傾き度が生じ、赤道北側で南風を加速する。赤道から10°Nにかけて急激にSSTが上昇するために、この南風に多量のエネルギーが供給される。対流活動は12°N付近で最も強く、ここはSST最大(28.3°)である熱赤道より、2°~3°南に対応する。熱帯南太平洋では、低水温(25℃以下)のために、対流活動は不活発である。年間を通じて、熱帯収束帯(ITCZ)は熱帯北太平洋に停滞している。夏季モンスーンは、7月にITCZ(ハドレー循環の上昇域)が最も北の14°Nに位置する時に起きる。東部赤道太平洋の地上風の年変化は、東西風(下層ウォーカー循環)よりも、南北風(下層ハドレー循環)の方が一段と大きい。このことによって東部北太平洋の夏季モンスーンの発達が促進される。
著者
NGUYEN T. Hanh ISHIJIMA Kentaro SUGAWARA Satoshi HASEBE Fumio
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
2021

<p> Stratospheric profiles of the mean age of air estimated from cryogenic air samples acquired during a field campaign over Indonesia, the Coordinated Upper-Troposphere-to-Stratosphere Balloon Experiment in Biak (CUBE/Biak), are investigated by employing the boundary impulse evolving response (BIER) method and Lagrangian backward trajectories, with the aid of an atmospheric general circulation model-based chemistry transport model (ACTM). The ACTM provides realistic meteorological fields at one-hour intervals by nudging toward the European Centre for Medium-Range Weather Forecasts Reanalysis-Interim (ERA-Interim). Since the BIER method is capable of taking unresolved diffusive processes into account, while the Lagrangian method can distinguish the pathways the air parcels took before reaching the sample site, the application of the two methods to the common transport field simulated by the ACTM is useful in assessing the CO<sub>2</sub>- and SF<sub>6</sub>-derived mean ages. The reliability of the simulated transport field has been verified by the reproducibility of the observed CO<sub>2</sub>, SF<sub>6</sub>, and water vapor profiles using the Lagrangian method. The profile of CO<sub>2</sub> age is reproduced reasonably well by the Lagrangian method with a small young bias being consistent with the termination of trajectories in finite length of time, whereas the BIER method overestimates the CO<sub>2</sub> age above 25 km altitude possibly due to high diffusivity in the transport model. In contrast, the SF<sub>6</sub> age is only reproducible in the lower stratosphere, and far exceeds the estimates from the Lagrangian method above 25 km altitude. As air parcels of mesospheric origin are excluded in the Lagrangian age estimation, this discrepancy, together with the fact that the observed SF<sub>6</sub> mole fractions are much lower than the trajectory-derived values in this height region, supports the idea that the stratospheric air samples are mixed with SF<sub>6</sub>-depleted mesospheric air, leading to overestimation of the mean age.</p>
著者
Syono S. Hamuro M.
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-12, 1962
被引用文献数
5

この覚書ではオブコフ・モーニンの一般関数望に関する山本・パノフスキーの方程式&phi;4+&xi;&phi;3-1=0を厳密に解いた。弱非断熱的,非常に不安定,非常に安定な三つの場合について,厳密解より近似解を導いたところ,第一次近似においてカザンスキー・モーニンおよび山本の解と一致することがわかつた。これらの解を用いて熱および水蒸気の流束を求める式を出した。これはソーンスウエイト・ホルツマンの公式を特別の場合として含んでいる。不安定大気の減率はモーニンやプリストリーの式と一致する。
著者
井上 長太郎
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
氣象集誌. 第1輯
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.154-174, 1897
著者
LI Zhenghui LUO Yali DU Yu CHAN Johnny C. L.
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.213-233, 2020
被引用文献数
36

<p>In this study, the climatological characteristics of pre-summer (April to June) rainfall over South China (SC) and the associated synoptic conditions are examined using 1980–2017 hourly rainfall observations and reanalysis data. The amount, frequency, and intensity of rainfall show pronounced regional variations and substantial changes between pre- and post-monsoon-onset periods. Owing to the more favorable thermodynamic conditions after monsoon onset over the South China Sea (SCS), rainfall intensifies generally over SC irrespective of the rainfall-event durations. Increased rainfall amounts in longer-duration (> 6 h) events were found over a designated west-inland region (west of 111°E), which are partially attributed to enhanced dynamic instability. In addition, rainfall events occur more frequently over the west-inland region, as well as coastal regions to the west of 118°E, but less over a designated east-inland region. Inland-region rainfall is closely linked to dynamic lifting driven by subtropical synoptic systems (low pressure and an associated front or shearline). The westward extension of the western North Pacific high and the eastward extension/movement of the front or shearline, interacting with the intra-period intensification of the southwesterly monsoonal flows, play important roles in providing high-<i>θ</i><sub>e</sub> (equivalent potential temperature) air to the west- and east-inland regions, respectively. Warm-sector coastal rainfall is closely related to the deceleration of the southerly boundary layer (BL) air flow over the northern SCS and associated convergence of BL high-<i>θ</i><sub>e</sub> air near the coast. Meanwhile, the southwesterly synoptic-system-related low-level jet in the lower-to-middle troposphere to the south of the inland cold front can contribute to the coastal rainfall occurrence by providing divergence above the BL convergence near the coast. The BL flow often simultaneously strengthens with the lower-troposphere horizontal winds, suggesting a close association between the BL flow and the synoptic systems. The quantitative statistics provided in this study complement previous case studies or qualitative results and, thus, advance our understanding about pre-summer rainfall over SC.</p>
著者
伊藤 耕介 WU Chun-Chieh CHAN Kelvin T. F. TOUMI Ralf DAVIS Chris
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.5-17, 2020
被引用文献数
13

<p>台風の移動の基礎的な理解はかなり成熟しているが、注目に値する研究の進展が近年も見られる。本論文では、単純化された順圧モデル・精緻な物理モデル・データ解析によって、主に2014年以降に得られた台風の移動に関する新しい概念や既存の概念に関する新たな知見を集約する。これには、台風の移動に関する環境場と台風の相互作用、および、予測可能性の研究を含んでいる。指向流・βジャイア・非断熱加熱といった従来の概念は依然として重要であるが、台風の進路を説明するメカニズムをより正確に理解することは、さらなる進路予報の精度向上に向けて、重要な基礎をなすであろう。</p>
著者
岩崎 俊樹 中野 尚 杉 正人
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.555-570, 1987
被引用文献数
39

本論文では新しく開発中の台風進路予報モデルの概要とその予報性能について述べる。この実験モデルは北半球モデルに1-way で接続された局地モデルである。間隔50kmの一様な水平格子と8層の鉛直格子によって構成され,その予報領域は4000km&times;4000kmである。積雲対流スキームには Kuo 方式を採用している。各計算スキームは台風が良く維持されるように調整されている。初期場には適切なモデル台風が客観解析に重ね合わされている。<br>このモデルは1985年に観測された台風の中心示度や移動を精度よく予報した。また,衛星による雲画像と比較すると,台風と梅雨前線の間に強い相互作用があるケースでも,複雑な降水分布の振舞を良く予報できた。<br>インパクトテストによれば,主観解析の精度や北半球モデルの性能は実験モデルの予報精度に大きな影響を及ぼすので,それらにも十分配慮する必要があることが示唆された。
著者
新野 宏
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.33-51, 1980
被引用文献数
2

非圧縮で粘性がなく,密度一様な回転流体中で,回転軸に平行な体積力によって作り出された層流ジェットの振舞を線形論によって調べた。体積力はある有限の領域(以下領Aと呼ぶ)に軸対称に分布している。この力は,ある時刻(t*=0)に急に働き始め,その後の変化として<br>1) 無限に続く場合(連続的な力)<br>2) 時刻t*=T*に止む場合(継続時間T*の力)の2通りを考えるものとする。<br>連続的な力に対しては,流れの場は時間と共に回転軸方向に一様になるが,領域A内ではテイラー&bull;プラウドマンの定理が成り立たない為に圧力と接線速度は軸方向に一様にはならない。特に圧力場には,体積力に逆らうような軸方向の圧力傾度が次第に形成される。この圧力傾度は体積力が働き始めてからt*=10.90/fでほとんど定常になることがわかった。(ここでfはコリオリ係数である。)そして,定常状態では圧力傾度力は軸方向には体積力と,半径方向にはコリオリカとつりあっている。<br>継続時間T*の力に対しては,もしT*が10.90/fよりも大きいならば,力が止んだ後の領域A内の運動はT*によらないことがわかった。このような大きな値のT*に対しては,力が止んでからt*'=3.4/fと6.5/fとの間に領域A内に逆流が生ずる。(ここで,t*'=t*-T*である。)この逆流は,体積力が止むまでそれとつり合っていた逆向きの圧力傾度力によって生ずる。やがて,逆流が弱くなった後は,領域A内に周期約2&pi;/fの減衰振動が残る。この論文のモデルは,回転流体中の乱流ジェットの室内実験で見つかった逆流を説明する為に作られた線形論(新野,1978)をより洗練した形にしたものである。
著者
新田 勍 水野 孝則 高橋 清利
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.447-466, 1992
被引用文献数
43

1986/87エルニーニョ発生期に起きた、様々な対流活動と流れの場に関する、時間・空間変動の特徴について調べた。この時期、インド洋から太平洋にかけての熱帯域では、季節内変動(ISV)、超雲集団(SCC)、双子低気圧、西風バーストが発生、発達、消滅を繰り返した。<br>多くの季節内変動は、インド洋で発生し、超雲集団、双子低気圧、西風バーストを伴って、西部熱帯太平洋へと伝わって行く。1986年に発生した季節内変動の中で、エルニーニョの発達に重要な役割を果たしたと思われる、(1)5月の双子低気圧、(2)8月に発達したITCZ、(3)本格的なエルニーニョの発達と関係した11月の超雲集団、の3例について詳しい時間変化と水平-垂直構造を調べた。<br>超雲集団が赤道上をインド洋から西部太平洋に東進する過程で、下層の西風バーストが海洋大陸上、特にスマトラの地形によって大きく影響を受けることが明らかになった。
著者
菊地 勝弘 堀江 成人 播磨屋 敏生 近野 好文
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.125-139, 1988
被引用文献数
11

一般に北海道における年平均降雨量や年間の大雨日数は、本州方面に比較して少ない。しかし、北海道胆振支庁管内のオロフレ山系南東斜面では、4月から10月までの7ケ月間の平均降雨量は2,000mm近くにも達し、日降雨量90mm以上の大雨の日も年間4~51回発生し、しばしば災害をもたらし、大雨地域として知られている。近野&bull;菊地(1981)による観測から、この地域の大雨は、その最大降雨量の位置から、山岳型、海岸型、平野型、北西斜面型、その他の5つに分類される。これらのことを更に詳細に調らべるために、この地域にAMeDASその他7ケ所の雨量計に更に独自に16ケ所の雨量計のメソスケールネットワークを設け、1980、81年の2年間、6月から10月にかけて集中観測を行った。雨量計の間隔は約5kmであった。<br>山岳型降雨の場合に限ってみると、最大降雨量は、オロフレ峠(海抜930m)と、白老の滝(海抜380m)付近に現われた。海抜高度が付近の山々に比べて、比較的低い白老の滝付近に最大降雨量が現われる原因を、地形を考慮して考察した。その結果、この斜面の南東側の太平洋からの暖湿気の南東風による移流では、比較的弱い降雨が緩斜面や平坦部で観測されるが、急斜面になる山岳部では強い降雨が観測された。このことから、海岸部から山岳部にいたる沢の形状が水平収束による降雨の増幅をうながしていることが推定された。<br>これらのことを確かめるために数値実験を行った。その結果、単なる上昇流だけでは観測値に達しなかった降雨量は、水平収束の効果を加えることによって、観測値とよい一致を示した。また、山岳部の降雨強度、風速、上層の雲からの降水強度の関係が議論された。その結果、上層の雲からの降水強度が強いほど、また風速が強いほど山岳部の降雨強度が強かった。これらの結果を、数値実験と比較した。山岳部の計算による降雨強度は、上層の雲からの降水強度と風速によって増加した。したがって、もし上層の雲からの降水強度と地上での風速が、かなり正確に得られれば、オロフレ山系南東斜面での山岳部の降雨強度を推定できることが示唆された。
著者
巽 保夫
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.269-288, 1983
被引用文献数
30

経済的な時間差分スキームを開発し,プリミティブモデルに使用した。本スキームでは重力波項以外の低周波項はリープフロッグ法で積分し,その時間積分間隔(&Delta;ta)はモデルの最大風速から決まる。振動数の高い重力波に対しては安定な数値解を得るため&Delta;taをM個の短いステップに分割(&Delta;ta/M=&Delta;tb)して時間積分を行う。分割数Mは重力波速の最大値と最大風速の比から決まる。すなわち時間積分は&Delta;tb間隔で計算する重力波項と&Delta;ta間隔で計算する低周波項(リープフロッグ法の時間外挿に当る2&Delta;ta内は一定とみなす)を加えたものを用いて&Delta;tbで積分し,2Mステップで時間積分1サイクルが完了する。本スキームはMarchuk(1965)が提案したsplittingとは全く異なるスキームであり,低周波項に対しては3-levelスキームである特徴を持つ。<br>本スキームの利点は,エクスプリシット法であるためにセミ&bull;インプリシット法と比較してプログラミングが大幅に簡略化される点と,低周波項の時間積分にリープフロッグ法を採用したことにより,2次の差分精度が得られる点である。<br>本スキームを気象庁の1981年のルーチンモデル(4L-NHM)に適用して比較実験を行ない,通常のエクスプリシット積分結果と本質的に差がないことを確認した。本スキームによる計算時間短縮率は Kudoh (1978)が開発したセミ&bull;インプリシットスキームによるものと同等(2.6~3.8)である。本スキームは気象庁の1982年現在のルーチンモデル(8L-NHM及び10L-FLM)に採用され,計算時間の短縮に大いに貢献した。