- 著者
-
安田 昭仁
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1, pp.75, 2018 (Released:2018-01-01)
- 参考文献数
- 3
医薬品には錠剤やカプセル剤,注射剤といった様々な剤形が存在する.その中でも錠剤は,取り扱い性,服用性,携帯性に優れ,最も市場に出ている剤形である.しかし,一般に錠剤は嚥下能力の劣る小児や高齢者には服用が困難とされる.錠剤は7〜8 mmが飲みやすいといわれているが,7 mmの錠剤でも半数以上の小児(米国の6〜11歳,患児を含む)は服用できないというデータもある.また,錠剤を服用できない,あるいは服用できるか分からない場合,医療現場ではしばしば錠剤を粉砕して投与される.しかし,錠剤粉砕後の有効性の同等性や安定性は保証されていない.近年では,小児用製剤に関する取組が活発化し,「嚥下困難な患者にも飲みやすい製剤」や「年齢による用量調節のしやすい製剤」が強く求められるようになった.そうした背景の中,嚥下困難な患者でも飲みやすい剤形として,直径1〜4 mm程度の小さな錠剤であるミニタブレットが注目されている.近年では,幼児を含む小児にとってはグルコースシロップと比較してもミニタブレットの方が受け入れられやすいという報告もある.一方,ミニタブレットには製造上の課題が存在する.1錠当たりの質量が小さいため,従来の錠剤よりも製剤工程の影響を受けやすい.例えば,質量が2 mg変動した場合,200 mgの錠剤では全質量の1%程度の影響になるが,15 mgのミニタブレットにおいては10%以上に相当する.そのため,ミニタブレットでは質量の変動が製剤中の有効成分の含量に与える影響が通常の錠剤よりも大きい.また,ミニタブレットは打錠機の臼への顆粒充填量も少ないため,顆粒中における有効成分の偏析(偏りが生じ,不均一な状態)は含量均一性に大きく影響する.そのような背景のもと,本稿ではミニタブレット製造の実現可能性について,詳細に検討を行った研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Meltzer E. O. et al., Clin. Pediatr., 45, 725-723(2006).2) Kilingmann V. et al., J. Pediatrics, 163, 1728-1732(2013).3) Mitra B. et al., Int. J. Pharm., 525, 149-159(2017).