- 著者
-
髙橋 未来
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.12, pp.1213, 2017 (Released:2017-12-01)
- 参考文献数
- 3
実験器具・装置は「お金のかかるもの」である.特に,質量分析装置,核磁気共鳴装置,液体クロマトグラフなど,どれも数百万から数億円と高額となってしまい,維持費も莫大である.つまり,理化学機器を使用する実験とは「お金のかかるもの」と一般的に思われている.そのようななか,お金をかけない装置の開発が注目されてきている.理化学機器のなかで,遠心分離装置は実験室になくてはならないものであり,臨床検査の分野でも多く利用されている.ヘマトクリット値を求めるため全血から血漿を分離すること,病原体や寄生虫がどのくらい含まれているのか診断することのファーストステップとして利用されている.しかし,遠心分離機は値段が高く,電力を必要とする.そのため,電力の安定供給ができない環境(野外,災害時など)では,利用できない.そこで,「電力に頼らず,人力で遠心分離ができないのか?」という課題にたどり着く.最近では,紙で作った遠心分離装置が報告されたことから,遠心分離システムを安価で,簡単かつ電力のいらない技術開発のアプローチ,そしてその応用性を紹介したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Bhalma M. et al., Nature Biomed. Eng., 1, 0009(2017).2) Brown J. et al., Am. J. Trop. Med. Hyg., 85, 327-332(2011).3) Wong A. et al., Lab. Chip, 8, 2032-2037(2008).