著者
宮木 美典 吉岡 濶江 長谷川 圀彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.T163-T167, 1990-12-05

放射平衡にある^<125>Sb(V)-^<125m>Te塩酸溶液系からの^<125m>Teの分離を検討した.分離法にはマイクロスケールによるイオン交換樹脂バッチ法を用いた.基礎実験の結果を基にトレーサー用^<125m>Teのマイクロスケール調製法を試みた.共栓付きマイクロチューブ(1.5ml用, ポリプロピレン製)に濃塩酸で処理したCl^-形の陰イオン交換樹脂100μl(約0.03g)を入れる.これに試料溶液[(^<125>Sb(V)-^<125m>Te)/9M塩酸溶液(5%vol.臭素水を含む)]100μlを加え10分間振り混ぜる.遠心分離後, ^<125m>Te(VI)を含む上澄み液を採取し, 再び5%vol.臭素水を含む9M塩酸溶液を加え上記の操作を繰り返し, ^<125m>Te(VI)を採取する.次に希塩酸又は脱イオン水1mlを加え, 溶離液の塩酸濃度を1Mとし, 再び10分間振り混ぜる.遠心分離後, ^<125m>Te(IV)を含む上澄み液を採取する.^<125m>Te(IV)の収率は, 最初の溶離液1mlで75%, 2回繰り返し溶離で97%, 3回の繰り返しで約100%であった.又^<125>Sh(V)の溶離率(汚染率)は0.5〜1%であった.本法の特徴を従来のマクロスケールのカラム法と比較した.その結果, 本法は溶離液が少量ですむために, 放射能濃度の高い溶液を得ることができるということが分かった.
著者
平田 静子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.T64-T68, 1984-08-05
被引用文献数
4 2

誘導結合プラズマ発光分析法による標準岩石試料(地質調査所JG-1,TB-1,JA-1,JB-2)及び標準たい積物試料(NBS SRM 1645, 1646)中の13元素の同時定量法を検討した.高周波電力1.6kW,プラズマ内測光位置をコイル上16mmとし,ネブライザーはガラス同軸型噴霧器を用いた.検出限界は鉄0.004,マンガン 0.002,リン0.090,銅0.002,ニッケル0.007,クロム0.004,モリブデン0.004,チタン0.001,バナジウム0.003,アルミュウム0.005,コバルト0.001,マグネシウム0.009,亜鉛0.004 ppmであった.分析精度は標準岩石及び標準たい積物試料中の鉄,マンガン,チタン,アルミニウム,マグネシウムについては±1%以下,リン,銅,ニッケル,クロム,モリブデン,バナジウム,コバルト,亜鉛のほとんどについては±5%以下の分析精度で定量できたが,一部JG-1の銅,ニッケル,モリブデンについては存在量が微量であるために分析精度は悪くなった.正確さは共存する主要成分の分光干渉,溶液の粘性の影響を受け,JB-1,JA-1,JB-2では補正を行ってもモリブデンの定量は困難であった.
著者
武者 宗一郎 高橋 芳久
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.365-370, 1975-06-10
被引用文献数
1 7

大豆たんぱく質がカルシウムやマグネシウムなどの塩類もしくは、酸類などの添加により凝固すること、及び一般にたんぱく質が重金属イオンと錯体形成する性質を利用し、水中の微量金属を捕集濃縮することを目的として発光分光分析の技法を用いて検討した。試料水に捕集剤として一定量の豆乳及び凝固剤として所定量の δ-グルコノラクトンを加えて加熱したんぱく質を凝固させた。この凝固物 (豆腐) に捕集濃縮された金属を発光分光分析した。その結果、用いた大豆中に検出されない金属元素のうち、金、銀、水銀、白金、ベリリウム、バリウム、カドミウム、ガリウム、セリウム、イットリウム、ランタン、インジウム、パラジウム、アンチモン、トリウム、ジルコニウムなどの捕集濃縮に応用しうることを明らかにした。
著者
善木 道雄 伊藤 利之 桐栄 恭二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.T89-T92, 1990-06-05
被引用文献数
1 5

市販のリンゴ酸及びアップル飲料中に含まれるフマル酸についてUV検出器を使用したHPLCで定量する方法について検討した.分離カラムとしてTSK-gel, ODS120Aを使用し, 移動相としては0.1M過塩素酸ナトリウム, 0.01Mリン酸二水素メトリウム(pH2.6)を用い, 210nmで検出した.フマル酸5.0×10^-7〜2.0×10^-5Mの範囲で検量線は直線を示し, 4.0×10^-6,1.0×10^-5Mの5回繰り返しによる相対標準偏差は, それぞれ0.35,0.19%であった.又この方法によるフマル酸の定量限界(S/N=2)は2.0×10^-7M程度であり, リンゴ酸及びアップル飲料の回収率は98.2〜104.5%であった.本法を市販リンゴ酸及びアップル飲料18種の定量に応用した.
著者
高山 透 村田 勝夫 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.781-785, 1985-12-05
被引用文献数
2 2

減圧下誘電放電による窒素アフターグロー生成法を用いた発光分析装置を試作した.タンタル板製の加熱型アトマイザー上で減圧乾燥した溶液試料を加熱によって5Torrの気相に放出し,誘電放電路を流れてきた窒素と混合する.このとき,試料は三重項準安定励起窒素分子N_2(A^3Σ^+_u)からエネルギーを受け取り発光する.この装置を用いて,亜鉛,カドミウム,水銀の各溶液についてそれぞれの元素の中性原子線の発光を観測したが,その検出限界はそれぞれ5ng (472.2 nm), 0.1ng (326.1 nm), 0.03ng (253.7nm)であった.陰イオンの影響を調べるために,塩化物,硝酸塩,硫酸塩の各溶液について検量線を比較し,又,酸の濃度変化による金属の発光強度変化についても検討した.
著者
鷹野 浩之 板橋 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.437-442, 2002-06-05
被引用文献数
3 14

抗肥満作用を有する 1,3-ジアシルグリセロール (1,3-DG) の分子種を正確に求める方法を確立した.食用油(エコナクッキングオイル)中の 1,3-DG を 3,5-ジニトロフェニルウレタン (DNPU) 誘導体に変換した後,高速液体クロマトグラフィー (HPLC) と質量分析法 (MS) を用いて分析した.その結果,C30 カラム (25 cm×4.6 mm i.d.) を装備した逆相 HPLC により 1,3-DG を構成する種々の分子種が 60 分以内に明りょうに分離された.また,HPLC/エレクトロスプレーイオン化 (ESI)-MS 分析では,分離された各成分について顕著な [M-H]^-イオンが得られた.このイオンを利用して,各分子種を同定した.本法は,種々の食用油に存在する 1,3-DG の分子種分析に適用できる.
著者
伊藤 彰英 岩田 浩介 紀 杉 薮谷 智規 木全 千泉 猿渡 英之 原口 紘〓
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.109-117, 1998-02-05
被引用文献数
21 28

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を, 日本分析化学会より頒布されている河川水標準物質(JAC 0031, JAC 0032)中の微量元素の多元素定量に適用した. ICP-MS及びICP-AESによる多元素分析においては, 河川水試料の直接導入法とともに微量元素に対してキレート樹脂濃縮法を併用することにより, 河川水標準物質中の37元素の定量を行うことができた. Caの12300からTmの0.00012μgl^<-1>まで9けたに及ぶ広い濃度範囲の定量値が得られた. 認証値が求められている元素については, おおむね認証値と一致した結果であった. 又, 希土類元素についても, すべて定量することができ, 頁岩中濃度で規格化した希土パターンでは重希土類元素の相対存在度が高く, Ceの負の異常がある天然水特有のパターンが得られた.
著者
鈴木 孝範 森永 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.712-714, 1976-10-10
被引用文献数
1

A simple and sensitive method was investigated for determination of zinc in copper alloy. The method is based on the combination of anion exchange separation by batch operation and EDTA titration. Sample is dissolved in 15 ml of HN0_3(1+1) by heating, and resultant diluted to 200 ml with water. A 20 ml aliquot of this solution and 2 ml of H_2SO_4 (1+1) are taken into a beaker, and are evaporated to dryness. After cooling, the residue is dissolved in 2 N HCl by heating. The solution is transfered into the separatory funnel with a filter containing anion exchange resin Amberlite IRA-400, RCl form, (60〜80) mesh. The separatory funnel is shaken for 4 minutes to adsorb zinc ion. The solution in the funnel is sucked off. Resin is washed by shaking for 20 seconds with 25 ml of 2 N HCI (containing 0.01% Pb) and this operation is repeated (5〜7) times. The adsorbed zinc ion is eluted with 20 ml of 2 N NH_40H (containing 40 g/I NH_4Cl) by shaking for 2 minutes, and the eluent is filtered into an Erlenmeyer flask with suction, and this operation is repeated 5 times. The eluted solution is diluted to 200 ml with water, and mixed with 2 ml of potassium cyanide solution (10%) and 3 ml of formaldehyde solution (2+8) to mask the other metal ions. The solution is titrated with 0.02 M EDTA solution by using EBT as indicator. The time required for this test was about half of a usual column method.
著者
大倉 与三郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.477-480, 1978-08-05
被引用文献数
1 4

これまで主として全鉄の定量に用いられていた1,10-フェナントロリン吸光光度法を,多量の鉄(III)と共存したままで,微量の鉄(II)の定量に適用する方法を確立した.鉄(II)と共存する鉄(III)を,あらかじめEDTA滴定法で定量しておき,必要に応じて適宜希釈した試料溶液に0.2% 1,10-フェナントロリン10ml,次いで5%クエン酸水素二アンモニウム緩衝液10mlを加え,水を加えて全量を100mlとしてから,(20〜90)分後に,ほぼ同量の鉄(III)を含む空試験液を対照として,510nmで吸光測定する.本法によれば2000 μg(20 ppm)鉄(III)と共存する50μg(0.5 ppm)の鉄(II)を定量できた.又100μg程度のマンガン,カドミウム,銅,マグネシウム,スズ,鉛,亜鉛が共存しても,EDTAなどでマクスしないでも妨害なく鉄(II)を定量できた.定量下限は0.2 ppm,又鉄(III)1500μgを含有する実試料中の200μg前後の鉄(II)の定量における変動係数は約5%であった.
著者
竹田 一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.686-691, 1975-11-10
被引用文献数
1

ガスクロマトグラフィーの保持値のデータを収集しておき、定性分析に有効に利用する方法を確立した。本法による定性分析は、保持値のデータを対数尺によりグラフ用紙上に転載後、未知試料と既知試料との横座標軸上の位置を比較することにより行われる。叉、等間隔尺及び対数尺を使用することにより、保持指数、保持時間、保持比などを任意に使用して、データの書き込み、読み出しが可能であり、更にピークの有効理論段数が分かれば、用紙上に記載されている、任意の2成分のピークの分離の程度の推定も可能である。ガスクロマトグラフィーによる日常分析に本法を使用すれば、本質的に保持指数システムによるデータ処理が、容易に機械的に行える。