著者
木村 優 後藤 千晴 谷 桃子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.529-534, 1989-10-05
被引用文献数
6 9

水中のモリブデン(VI)イオンについて活性炭の粒子表面での吸着特性を調べ,微量モリブデンの分離濃縮及び定量法について報告する.Mo(VI)を含む溶液200mlに活性炭50mgを添加して30分間かき混ぜてから〓過する.〓液中のモリブデン濃度をAAS装置を用いて測定した.モリブデン(VI)pPH3.3〜4.0において90%以上の吸着率を示した.この実験条件で吸着等温曲線を描き,Langmuirプロットをした.得られた最大吸着量は59mg g^<-1>であった.最大吸着量は,溶液にEDTAを加えると約8分の1に減じた.そのほか,シュウ酸ナトリウム,硫酸ナトリウム,塩化カリウム,塩化マグネシウム,塩化カルシウム,硝酸亜鉛などの共存する溶液中のMo(VI)イオンの活性炭への吸着率を求めた.これらいずれの塩類も共存量が増すに伴って吸着率は低下した.特に硝酸亜鉛の共存によってMo(VI)の吸着率は著しく低下したが,8-キノリノールの添加によって吸着率は90%以上に回復した.いったんMo(VI)を吸着させてから活性炭を取り出し,0.1M NaOHを加えるとMoは容易に脱離した.従って,水中のMo(VI)の分離濃縮を簡単に行うことができる.200mlの試料溶液中のMo(VI)を活性炭50mgに吸着し,分離及び脱離操作を経て最終的に1mlに濃縮した場合における試料中のMoのAASによる検出限界濃度は0.0011ng ml^<-1>の超微量である.本法を用いて,水道水,河川水及び海水中のモリブデンの分離濃縮及び定量を行った.その結果,水道水,河川水及び海水についてそれぞれ20回の操作(n=20)の平均値は,0.37(R.S.D.=14%),0.23(17%)及び7.9(8%)ng ml^<-1>であった.
著者
伊藤 醇一 岩附 正明 深沢 力
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.445-459, 1993-08-05
被引用文献数
3 3

炭化ケイ素には多数のポリタイプが存在し,通常の炭化ケイ素製品はこれらの混合物である.一方,JCPDSカードその他に記載されている炭化ケイ素の結晶学的データやX線回折データには必ずしも一貫性がなく,実際試料との不一致も見られ,各ポリタイプの同定を困難にしている.そこで本研究では,従来の炭化ケイ素の格子定数データをできるだけ多く集めて比較し,本来変わらないはずの六方格子のα軸長を,著者らの実験結果や文献値を参考に一定値(3.081Å)にして整理統一した.更に,代表的ポリタイプについて,この格子定数と原子配列データを用いて,面間隔とX線回折強度を計算して実験値とも比較した.これによりポリタイプ間の回折図形の差が明確になり,ポリタイプの同定が容易になった.
著者
天川 映子^[○!R] 平田 恵子 荻原 勉 大西 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.586-590, 1984-11-05
被引用文献数
1 5

高速液体クロマトグラフィーによる食品中の油溶性天然色素の迅速かつ高感度な定量法について検討した.試料からの色素の抽出にごま油を使用することと,高タンパク食品には酵素法を用いることで定量的な抽出が可能となった.簡易な後処理の後,クルクミン,ノルピキシン,ビキシン,β-カロチン及びパプリカ抽出色素の5種が高速液体クロマトグラフィーにより分離定量できた.市販食品20種への添加回収率は良好であった.
著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006-10-05
被引用文献数
1 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister^[○!R] (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode, Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
星加 安之 武藤 義一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.520-524, 1978-08-05
被引用文献数
1

試料空気を60/80メッシュのTenax-GCを充てんした試料捕集管(長さ3cm,内径8mmのガラス製)に吸引速度5.5l/minで吸引し,50l捕集した.次に,試料を捕集したTenax-GGをガスクロマトグラフ導入用試料管(長さ14cm,内径4mmのガラス製()以下試料管と略記)に移し替え,これを室温から280℃まで42秒で加熱昇温して捕集成分をガスクロマトグラフに導入した.分離カラムには80/100メッシュのクロモソルブW(AW,DMCS)にシリコンXE-60を1又は5%塗布した充てん剤を長さ3m,内径1又は3mmのガラスカラムに充てんしたものを用いた.これをカラム温度170℃,窒素キャリヤーガス流速35又は50ml/minで操作し,検出器に水素炎イオン化型検出器(以下FIDと略記)を用いて分析を行った結果,7種のインドール類のうち,2,3-及び2,5-ジメチルインドールの重複を除いて14分以内にテーリソグもなくほぼ完全に分離して定量することができた.本法による7種のインビール類の検出限界濃度は約0.05ppbであった.又,本法による無臭室内に調製された7種のインドール類の既知濃度{約(0.2〜0.4)ppb}の回収実験の繰り返し精度は,変動係数で約11%以下でありほぼ満足に測定できた.更に,ラット飼育室内空気中のインドール類の測定に本法を応用した.
著者
安部 巌 和泉 圭二 倉本 成史 武者 宗一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.427-431, 1982-08-05
被引用文献数
2

屋久杉をその年輪に沿って紬かく裂き,外皮側より1084年から1474年内での8箇所でそれぞれ,アミノ酸を分離し,光学活性固定相を用いたガラスキャピラリーガスクロマトグラフィーでその挙動を観察すると,アラニン(Ala),バリン(Val),アスパラギン酸(Asp),フェニルアラニン(Phe)の4種がラセミ化しており,特にAspでは年輪の増加に伴うD/L比の規則的な増大がみられた.屋久杉年輪の年代はAsp D/L比よりの次の2方式すなわち(I)1本の年代を既知として作成した検量線,及び(II)2本の年代を既知として作成した検量線,により求め,年輪年代との比較を行った.推定値標準誤差は,それぞれ(I)39.8年,(II)29.6年となり,方式(II)は年輪年代により接近した測定年代を示した.
著者
竹内 由美 若林 信一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.T99-T106, 1990-07-05
被引用文献数
1

タングステンメタライズ-アルミナ界面のガラス相の選択分析法について検討した.試料のタングステンメタライズをはく離し, ガラス相を露出させた後, (1+5)硫酸により200℃, 1.5時間の加圧酸分解を行うことによりガラス相のみの選択溶解が可能であった.そこで試料と同一濃度の硫酸及び標準的な試料に含まれるAl, Si, Mg, Caを加えた標準液を用いてICP-AESで分析を行った.その結果溶出量としてサンプル当たり±0.1mg, 組成比としてAl_2O_3,SiO_2が±1wt%, MgO, CaOが±0.5wt%の精度でメタライズ中に浸透したガラス量及び組成の評価が可能となった.
著者
青木 伊豆男 渡辺 邦洋 斎藤 隆
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.250-255, 1987-04-05

シッフ塩基[N-(アルキル)サリチリデン-1-ブチルアミン]とそのZn及びBe錯体の蛍光及びりん光特性に及ぼすアルキル置換基の効果を検討した.錯体の吸収スペクトルはシッフ塩基の中性分子ではなく,その陰イオンに類似していた.シッフ塩基の中性分子は低温においても蛍光を示さず,陰イオンは室温(296K)では微弱であるが蛍光を示し,低温では強い蛍光を示した.錯体は室温でも強い蛍光を示し,そのスペクトルは77Kにおけるシッフ塩基陰イオンのスペクトルに類似していた.又,錯体は77Kにおいて強いりん光を示すがシッフ塩基陰イオンのりん光性は小さい.錯体の蛍光及びりん光はシッフ塩基イオンが金属イオンに配位することにより固定され,イオンの振動が抑制された結果と考えられる.又,シッフ塩基のフェニル環中のアルキル置換基は鈴体の蛍光及びりん光に大きな影響を及ぼす.アゾメチン基に対して5位のアルキル基はシッフ塩基のπ電子を非局在化させることにより,錯体の蛍光を増大させ,4位のアルキル基は局在化させることにより,りん光を増大させると考えられる.
著者
向井 人史 安部 喜也
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.177-182, 1990-03-05
被引用文献数
6 11

大気粉じん中の鉛の安定同位体比を誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定するに当たり基礎的な測定条件や装置特性, 及びマトリックス元素からの影響などを調べ, 測定精度などについて議論した.その結果, 適当な操作条件のもとでは100μg/lレベルの鉛溶液において^<206>Pb/^<207>Pb, ^<206>Pb/^<208>Pb比で0.3%程度, 又^<206>Pb/^<204>Pb比でも0.6%程度の精度で同位体比の測定が可能であることが分かった.マトリックス元素の各200mg/lは同位体比の測定に影響を及ぼさず, 大気粉じんの試料の場合試料から鉛だけを分離精製したりせずに測定可能であることが確認された.ただし^<206>Pb/^<208>Pb, ^<206>Pb/^<204>Pb比の測定値は鉛濃度に影響され, 正確な比を求める場合は試料中の鉛濃度に近い標準を用いて補正する必要があった.
著者
馬場 嘉信 富崎 理代 角田 ちぬよ 田中 淳子 秀 佳余子 津波古 充朝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.853-857, 1993-12-05
被引用文献数
4 1

DNAの高分解能分離を達成するために, キャピラリーゲル電気泳動におけるゲル組成が, DNAの分解能に与える影響について検討した.1本鎖DNAの分離においては, 非架橋ポリアクリルアミドのゲル濃度について検討し, 最適条件下では, オリゴマーから250塩基までの1本鎖DNAが60分以内に1塩基の違いのみでベースライン分離された.又, 2本鎖DNAの分離においては, 架橋ポリアクリルアミドゲルのゲル濃度及び架橋度を検討し, 最適条件下では, PCR生成物を含む100から12000塩基対の2本鎖DNAが, 40分以内に10塩基程度の違いで分離された.その際の理論段数は, 1m当たり数百万段であった.
著者
本水 昌二 大島 光子 胡 焔
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.667-672, 1993-11-05
被引用文献数
1

2,3,4位にアルキル基を持つN-アルキルピリジニウム塩(アルキル基 : CH_3-, C_2H_5-, C_3H_7-)26種を合成し, イオン会合抽出性について検討した.水-クロロホルム抽出系で, 対イオンとしてエチルオレンジのジクロロ誘導体(Cl_2-EO^-)を用いて抽出定数(log K_<ex>)を求めた.アルキル基の炭素数が増すと抽出性も増し, 抽出定数への寄与分は2,3,4位の置換基では平均0.59,N-置換基では平均0.54であった.アルキル基が同じ場合には, 抽出定数は4位>3位>2位置換体の順に小さくなる.2位置換体は隣接のN-置換基との重なり効果の結果, 3,4位置換体よりも小さくなる.基本骨格(C_5H_5N^+-)の抽出性の尺度(C : >N^+<を基準C=0とする)は約2.2となり, メチレン基の数から単純計算した値(0.59×5=2.95)よりも0.75小さい.これはベンゼン環(-C_6H_5)の単純計算値と実測値との差(0.64)とほぼ一致しており, 閉環効果による抽出性(疎水性)の減少分と見なされる.
著者
篠原 亮太 堀 悌二 古賀 実
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.400-405, 1978-07-05
被引用文献数
2

環境中に残留する微量のo-,m-, p-ターフェニルの分析法を抽出,クリーンナップ,マスフラグメントグラフィー(MF)による分離について検討し,この分析法が実際試料に適用しうることを確認した.水からの抽出はn-ヘキサンによる液-液抽出法を用い,底質からはn-ヘキサンを抽出溶媒とした連続抽出法を用い,それぞれ定量的な回収率を得た.妨害物質の除去はn-ヘキサン;ベンゼン(4:1)を溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行った.微量のターフェニル異性体のMFにおける分離は,1%OV-101に0.1% Bentone 34を混合したもの,2%OV-101に1% BMBTを混合した2種の液相が満足できる結果を与えた.MFにおける検出限界は,水(200ml)の場合o-, m-, p-はそれぞれ0.007ppb,0.025ppb,0.05ppbであり,底質(10g)の場合はそれぞれ0.14ppb,0.5ppb,1.0ppbであった.これらの分析法を用いて北九州地方の海水,河川水とその底質について検察した結果,水はすべて不検出,底質からはo-, m-, p-はそれぞれ(0.8〜390)ppb, (1.1〜210)ppb, (1.7〜180)ppbの範囲で検出された.
著者
森 定雄 西村 泰彦 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 清田 光晴 高田 かな子 森 佳代 杉本 剛 葛谷 孝史 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 中野 治夫 杉谷 初雄 太田 恵理子 大関 博 加々美 菜穂美 上山 明美 中橋 計治 日比 清勝 佐々木 圭子 大谷 肇 石田 康行 中村 茂夫 杉浦 健児 福井 明美 田中 鍛 江尻 優子 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.497-504, 1995-06-05
被引用文献数
9 9

サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定において, 異なる測定機関における分子量測定値がどれくらい異なるかを知る目的で, 傘下26測定機関で共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)3種, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種で, 被検試料の測定条件と較正曲線作成条件は各測定機関で用いている要領で行った.その結果, 各測定機関での相対標準偏差は1〜3%と良好であったが、26測定機関による全平均値の相対標準偏差は13〜32%となった.測定データを吟味し, 望ましい測定条件からかけ離れているデータを除外した場合, PSのRSDは数平均分子量で13.6〜15.5%, 重量平均分子量で6.0〜9.4%となり.又PMMAではそれぞれ14.3〜16.0%, 7.8〜12.2%であった.
著者
山崎 裕康 桑田 一弘 宮本 弘子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.317-321, 1978-06-05
被引用文献数
6 9

大量の大気を吸引できるポリウレタンフォームプラグ(PUFP)法を,ガラスファイバーフィルター(GF)を通過する環境大気中の多環芳香族炭化水素(PAH)の捕集に応用した.ハイボリュームエアーサンプラーにGF(20.3×25.4cm)と2個のPUFP(直径10cm × 5cm)を取り付けた.大気を(0.75〜0.8)m^3/min.24時間吸引し,GFとPUFP上に抽集されたPAHを水素炎イオン化検出器(FID)付きガスクロマトグラフで定量した.本方法の回収率はフェナントレンでフ9.2%,フェナントレン以外のPAHで90%以上であった.4環より少ない環を持つPAHはGFでは完全には捕集できず,これらのPAHを捕集するにはGFの後ろにPUFPを取り付ける必要がある.
著者
受田 浩之 中田 勇二 松本 清 筬島 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.723-727, 1990-11-05
被引用文献数
7 7

単一の酸素電極でワイン中のL-リンゴ酸とエタノールを同時定量するフロー型酵素センサーを開発した.L-リンゴ酸の定量にはリンゴ酸脱水素酵素(MDH), ジアホラーゼ(DI)及びメディエーターとしてビタミンK_3を, 又エタノールの定量にはアルコール酸化酵素(AOD)を用いて, 各反応で消費される酸素量を酸素電極で測定することにより, 各成分濃度を間接的に求めた.試料は並列に配置したMDH, DI固定化リアクター及びAOD固定化リアクターに同時に注入され, 各リアクターを通過した後, 合流され, 酸素電極を装着したフローセルに送液された.L-リンゴ酸定量用流路{ビタミンK_3飽和0.05Mピロリン酸塩緩衝液(pH9)}及びエタノール定量用流路{0.05Mリン酸塩緩衝液(pH8)}の流量を各々0.5及び1.0ml min^<-1>に設定したところ, 二つのピークが重なりなしに得られ, 定量範囲は各々0.09〜0.9mM, 18〜50mM, 分析速度は15検体/時であった.本法をワインの分析に適用したところ, F-Kit法及びHPLC法との良好な一致が認められた.
著者
森 定雄 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 高田 かな子 清水 優 大島 伸光 杉谷 初雄 大関 博 中橋 計治 日比 清勝 中村 茂夫 杉浦 健児 田中 鍛 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.447-453, 1996-05-05
被引用文献数
7 2

較正曲線作成用標準試料の相違が平均分子量計算値にどのような影響を与えるかを比較し検討した.ここではポリスチレン(PS)試料の重量平均分子量(M_w)で, 示差屈折計で得られた値のみについて比較した.較正曲線作成に同一供給会社の標準試料を用いた場合(9測定機関)の第1回ラウンドロビンテスト(RR-1)(分子)と第2回テスト(RR-2)(分母)のM_wの比は平均値で1.03〜1.04となった.このうち最も大きい比は1.17,最も小さい比は0.95であった.高分子領域の標準試料濃度を低くし, 1溶液中の標準試料混合数は3〜4点とし, 同じけた数の分子量領域では標準試料使用数は少なくとも2点用い, 適切なカラム組み合わせのもとで測定することによりこの比は1.01〜1.03とすることができた.較正曲線作成用標準試料の供給元が異なっても, 測定点を通るスムーズな直線ないし三次式が求められる限り, 試料の分子量測定値に大きな差が認められないことが分かった.いいかえると, 同一標準試料を用いても, 測定点をスムーズに通らない較正曲線では分子量測定値に大きな差が認められた.比較検討の結果, 不適切なデータを除いたRR-1とRR-2の全平均値のRSDは約3.9%となり, このときの三つのPS試料のM_wは次のようになった.PS-1 3.98×10^5,PS-2 2.40×10^5,PS-3 1.66×10^5.これらの数値は標準試料の供給元の相違によらず, 現時点における適切な測定条件を考慮して得ることができる平均分子量値とRSDであると結論付けられる.
著者
西川 雅高 安部 喜也 溝口 次夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.659-664, 1985-11-05
被引用文献数
6 5

誘導結合プラズマ発光分析法により,降水中の諸元素の分析を行う場合,直接測定できる元素は限られる.より多くの元素種を測定するためには試水の濃縮が必要である.試水の汚染と容器への吸着を防ぎ,しかも効率よく濃縮する方法として,ロータリーエバポレーターにテフロン製(FEP)容器を組み込んだ蒸発濃縮装置を開発し,従来のガラス製容器による方法と比較した.その結果,器壁からの元素の溶出や吸着などの誤差要因は無視してよいことが分かり,従来のガラス製容器を用いた方法では分析が困難であった降水中のホウ素,ケイ素も同時に分析が可能になった.実試料への応用として雨水及び南極の表層雪中の24元素の分析を行った.
著者
本水 昌二 桐栄 恭二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.213-218, 1978
被引用文献数
5 9

第4級アンモニウムイオンと金属錯陰イオンとのイオン対の溶媒抽出系に適当な1価陰イオンを加えることにより,過剰の試薬を有機相から水相に移し,目的とする金属錯陰イオンのみを選択的に抽出することができる.これにより,今まで不可能であった波長での吸光光度定量も可能となり,又感度,再現性もよくなる.この原理により,2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸(ニトロソーNW酸)を用いる銅の吸光光度定量法を確立し,鉄鋼試料中の銅の定量に応用した.<BR>すなわち,鉄鋼試料を王水で溶解し,過剰の酸を加熱除去した後定容とし試料溶液とする.この一定量を抽出管に取り,アスコルビン酸で銅を還元し,塩化物イオンの存在下,ゼフィラミンークロロホルム溶液と振り混ぜて銅(I)-クロロ錯体を抽出する.有機相に希過酸化水素水とニトロソ-NW酸溶液を加え振り混ぜて銅(II)-ニトロソ-NW酸錯体を抽出する。有機相を0.35M塩化ナトウリム溶液(pH9)と振り混ぜ過剰の試薬を除去した後,307.5nmで吸光度を測定する.この波長におけるモル吸光係数は4.5×10<SUP>4</SUP>1mol<SUP>-1</SUP>cm<SUP>-1</SUP>である.この方法により,NBS鉄鋼標準試料中の(0.06~0.35)%程度の銅が定量された.
著者
太田 一徳 原田 浩幸 中嶋 重旗 田中 一彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.141-146, 1992-03-05
被引用文献数
6 1

市販のイオンクロマトグラフィー(IC)用陰イオン交換体より大きな交換容量を有するはん用のイオン交換体(シリカ系強塩基性陰イオン交換体)と大きな溶出力を有する芳香族トリカルポン酸(トリメリト酸)系溶離液の組み合わせから成る無機陰イオンの導電率検出ICを開発し, 酸性雨に関連する実際試料に対して適用した.その結果, 1.25mMトリメリト酸溶離液(pH 4.65)と内径4.6mm, 長さ100mmの分離カラムを用いることにより8種の陰イオン(PO_4^<3->, Cl^-, NO_2^-, NO_3^-, I^-, SO_4^<2->, SCN^-及びS_2O_3^<2->)を25分以内で良好に分離, 導電率を検出することが可能であった.最適IC条件下の検量線は, 一価陰イオンにおいて, 0.3mMまで, 二価陰イオンにおいて0.2mMまで各々直線であり, これらの検出限界(S/N=3)は, 10ng/mlオーダー(Cl^- 10ng/ml, NO_3^- 25ng/ml及びSO_4^<2-> 28ng/ml)であった.本法を酸性雨及び酸性雨による土壌(黒ぼく土及び赤ぼく土)溶出(抽出)水中の無機陰イオン分析に適用したところ, その中に含まれるCl^-, NO_3^-及びSO_4^<2->を良好に分離定量することが可能であった.その結果, 土壌のSO_4^<2->吸着量は, 雨水中の全陰イオン濃度及びpHに依存することが明らかとなった.
著者
佐々木 与志実
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.237-241, 1978-04-05
被引用文献数
2

鉛(II)のエチルキサントゲン酸錯体{Pb(EtX)_2と略記}を作成し,これのクロロホルム溶液を滴定剤とする銀(I)と銅(II)の抽出滴定法を作成した.銀(I){(0.2〜8.8)mg}と銅(II){(0.1〜2.2)mg}を含む水溶液を分液漏斗に採り,酢酸塩緩衝溶液を加えてpHを3〜5にする.滴定剤を加えて振り混ぜ,有機相を捨てる.この操作を,有機相が黄白色{Ag(EtX)の色}から,かっ色{Cu(EtX)_2}になるまで繰り返す{銅(II)の終点}.更に抽出滴定を続け,かっ色から無色{Pb(Etx)_2}になるまで繰り返す{銅(II)の終点}.初めの振り混ぜで抽出定数の大きい銀(I)が鉛(II)と交換抽出され,次に銅(II)が鉛(II)と交換抽出される.銀ろう及び合金中の銀と銅を本法で定量できた.