著者
下山 進 野田 裕子 勝原 伸也
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-100, 1998-02-05
被引用文献数
7 7

日本古来の浮世絵は, 最も広く世界に行き渡った絵画形式であり, 西洋文化に対する芸術的衝撃, 特に多くの印象派の画家たちに与えた影響は"ジャポニズム"と言われる文化現象として知られている. 1823年ごろに刷られた葛飾北斎の浮世絵"四日市"の赤色の着色料(R1〜R3)と黄色の着色料(Y1〜Y3), そして1821年ごろに刷られた五渡亭国貞の浮世絵"木母寺暮雪"の青色の着色料(B1〜B3)について, それらの非破壊分析を光ファイバーを用いる三次元スペクトル法によって実施した. 色刷り標準試料のそれぞれと三次元蛍光スペクトルの等高線図を比較した結果, 赤色の着色料はベニバナの花弁から得られた染料"サフラワー", 黄色の着色料はウコンの根から得られた染料"ターメリック", そして青色の染料は藍の葉から得られた染料"インジゴチン"であることが明らかとなった.
著者
溝田 隆之 中村 徹也 岩崎 廉
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.425-431, 1992-09-05
被引用文献数
9 7

グロー放電質量分析法により高純度モリブデン中のppb〜ppmレベルの微量37元素を迅速定量した.約3時間にわたる繰り返し測定の結果から, 王水で洗浄した試料について更に表面汚染を除くために約30分, 特に超微量の炭素, 酸素, 塩素の定量では2時間の予備放電が必要なこと, 大部分の元素についての再現性は相対標準偏差で3%以下であることが分かった.又ICP-AESなど他法による分析結果との比較ができたナトリウム, アルミニウム, 鉄など10元素については, 一方の分析結果が他方の2倍を超えることがなく, ここで使用したVG社推奨の相対感度係数が実用上満足すべきものであることが分かった.なお, チタンはモリブデンの二価イオンの妨害のため定量困難であり, 亜鉛, 銀についても何らかの妨害が予想された.
著者
岡田 往子 平井 昭司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.249-254, 1993-04-05
被引用文献数
6 3

半導体構成材料として広く利用されている高純度Al中のUとThを陰イオン交換分離法とLaF_3共沈分離法を伴う放射化学中性子放射化分析法(RNAA)を用いて定量した.次に試料溶液を陰イオン交換樹脂に流して, U及びThの分析目的核種である^<239>Np及び^<233>Paを吸着させ, 主な不純物を選択的に分離した.次に9MHCl-5MHFて^<239>Np及び^<233>Paを溶離した後, LaF_3共沈で^<239>Npと^<233>Paとを沈殿させ, わずかな不純物からの分離を行った.その後, 濾紙に捕集した沈殿物のγ線測定をした.より低レベルの分析を可能にするために, 試料重量の増加を現在放射化分析ではん用されている原子炉の中央実験管のカプセルに入る最大10g程度まで行い、それに伴う自己遮へい効果及び自己吸収効果の検討を行った.結果として, 試料重量の増加による照射時の自己遮へい効果はなかった.測定時の自己吸収効果は機器中性子放射化分析(INAA)では試料重量による補正が必要となった.10g程度の試料でRNAA法で定量し, Uで2〜9ppt, Thで9〜14ppt程度の分析が可能となった.
著者
村北 宏之 林 守正 三上 博久 石田 泰夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.236-240, 1986-03-05
被引用文献数
1 6

高速液体クロマトグラフィーによる血中薬物の分析において,カラムスイッチング法を用いた前処理の自動化を試みた.目的成分を前処理用カラムに保持させた後,流路切り換えにより分析用カラムに導入して定量する方法を採用した.前処理用カラムとしては,テトラメチロールメタントリアクリレート系樹脂を充てん剤とする逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた.分析用カラムには,オクタデシル基化学結合シリカを用いた.前処理用カラムに対する血清中のタンパク及び薬物の溶離挙動を調べ,前処理用移動相,前処理用カラム洗浄液,分析用移動相,更に流路切り換えのタイミングを設定した.抗けいれん薬,テオフィリン,リドカインを対象とし,血清直接注入により良好な再現性が得られた.相対標準偏差値は,保持時間に対し0.3%以下,ピーク面積に対し1.2%以下であった.
著者
渡辺 邦洋 六川 和宏 板垣 昌幸
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.933-938, 1995-11-05
被引用文献数
5 4

過酸化水素存在下での2,3-ジヒドロキシナフタレンの酸化反応は超微量マンガン(II)により促進され, その生成物とエチレンジアミンの脱水縮合反応により, 発蛍光性の中間体を経てキノキサリン誘導体を生成する.この反応を利用する接触分析法を検討し, 10ppt以上のマンガンの定量法を確立した.本法は溶存酸素の影響を受けず再現性に優れていた.蛍光強度測定は過酸化水素添加後30℃で5分間放置し, 励起波長400nm, 蛍光波長500nmで行った.指示反応試薬であるエチレンジアミンはマスキング剤としても働き, 選択性は極めて優れていた.2,3-ナフトキノンとエチレンジアミンからなる中間体は400nmと450nmにピークを有する2成分であることが明らかになり, これらの中間体を経て最終生成物に至る反応スキームが検討された.
著者
井上 嘉則 伊達 由紀子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.365-370, 1994-05-05
被引用文献数
5 5

1-(サリチリデンアミノ)-8-ヒドロキシナフタレン-3,6-ジスルホン酸(アゾメチンH)をポストカラム誘導体化試薬として用いた水試料中のホウ素の定量法について検討を行った.イオン排除クロマトグラフィー(IEC)で分離後, アゾメチンH溶液と混合・反応させ420nmで検出を行った.反応溶液のpH, 反応温度, 反応コイル, 反応溶液の流量, アゾメチンH濃度等の反応条件の最適化を行った.分離カラムにH^+型のスルホン化ポリスチレンゲル(イオン交換容量 : 3.5 meq g^<-1>・dry)を充てんしたIECカラム(150mm×7.8mm i.d.)を, 移動相に1×10^<-3>mol dm^<-3>の硫酸を1.0cm^3 min^<-1>で用いた場合, 反応コイルは5m×0.5mm i.d., アゾメチンH濃度は0.5%, 反応溶液のpHは6.6,流量は0.8cm^3 min^<-1>, 反応温度は40℃で最適な検出が可能であった.本法の検出限界(S/N=3)は7.9×10^<-3>mg dm^<-3>(ホウ素換算)であった.直線性は10^3以上あり, 0.01〜10 mg dm^<-3>(ホウ素換算)の範囲で定量可能であった.0.02 mg dm^<-3>のホウ素溶液で求めた再現性は5.5%(n=10)であった.本法を用いて河川水, 地下水及び水道水中のホウ素の定量を行い, 誘導結合プラズマ質量分析法による定量値と比較したところ, 相関係数で0.921(n=50)と良好な相関を示した.
著者
石井 恵一郎 岩本 武治 山西 一彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.140-142, 1975-02-10
被引用文献数
1

The spectrophotometric determination of pyruvic acid with cinnamaldehyde derivatives, such as ρ-diethylaminocinnamaldehyde (DEAC), ρ-morpholhocinnamaldehyde (MC), ρ-nitrocinnamaldehyde, 3,4-dimethoxycinnamaldehyde, and 2-franacrolein, was studied. Pyruvic acid was found to react with DEAC and MC to give a red color in aqueoous ethanol solution in the presence of strong alkali. It was noticed that DEAC gave higher sensitivity and deeper coloration. The colored product with pyruvic acid showed a bathochromic shift with increasing sodium hydroxide concentration and reaction time, and a hypsochromic shift with increasing reaction temperaturre. The calibration curve followed Beer's law in the range of (0〜0.4)mM pyruvic acid. The coefficient of variation is about 2.2% at 0.2 mM pyruvic acid. To 1 ml of sample, 1 ml of 10 N sodium hydroxide solution and 3 ml of 0.4w/v% DEAC-ethanol solution were added. The mixture was kept for 25minutes in a water bath at 40℃. After cooling in water, the absorbance was measured at 495nm agaist a reagent blank. The effects of α-ketoglutaric acid and dl-alanine on the absorbance were examined. The procedure is useful for the assay of enzymes which are concerned with pyruvic acid.
著者
池竹 英人 山田 明文
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1123-1127, 1999-12-05
参考文献数
7
被引用文献数
5 10

フローインジェクション分析用の固体電極セルを試作し, 残留塩素を電気化学的に測定する方法の検討を行った. 固体電極セルは, 交換可能な作用極, 対極 (白金線) 及び参照極 (飽和カロメル電極) からなるものを作製した. セルの評価はヘキサシアノ鉄(II) 酸カリウムで行った. 作用極に金電極を用いたとき, ヘキサシアノ鉄(II) 酸カリウム2×10^<-7>〜2×10^<-4>Mで検量線が直線となり, 各濃度での相対標準偏差 (n=10) はいずれも 1%以下であった. 次亜塩素酸の電気化学的挙動は, サイクリックポルタンメトリーで測定した. 種々の固体電極の中で金電極が最も単純な波を示し, 作用極として適当であった. フローインジェクション分析における次亜塩素酸の検量線は, 0.05〜2.5 mg l^<-1>で直線性を示し, 1mg l^<-1>での相対標準偏差 (n=10) は2.1%であった. 本法を水道水中の残留塩素の定量に適用したところ, オルトトリジン吸光光度法と良い一致を示した.
著者
宗森 信 山本 勇麓 日色 和夫 田中 孝 熊丸 尚宏 林 康久 都甲 仁
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.T19-T23, 1978-05-05

2種類の合成試料水中のヒ素の分析に関する共同実験を行った.参加分析所は12箇所,分析方法はJISK0102-1974に規定されたジエチルジチオカルパミン酸銀-吸光光度法を用い,各分析所では1口2回ずつ3日間で計6回の分析を実施した.試料Aではヒ素含有量の標準値0.0220ppmに対し定量値の総平均値が0.0222ppm,試料Bでは0.0250ppmに対し0.0255ppmであった.試料Aでは定量結果は正確であったが,分析所間のばらつきが比較的大きく,又3箇所の分析所では分析所内平均値が管理限界を越えていた.一方,共存物質が存在する試料Bでは分析所内及び所間のばらつきは小さかったが,量結果に偏りがあった.
著者
日色 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.T9-T12, 1979-02-05
被引用文献数
4 2

環境分析技術協議会会員42分析機関による工場排水中の全クロム定量の共同実験を行った.合成排水試料は3種,分析法はJIS K 0102-1974に示されているジフェニルカルバジド吸光光度法によった.まず試料Iを分析機関に配布して74個のデータを集めた.その結果,クロムの平均定量値は1.92mg/l,標準偏差パーセントは14.0%であった.次に試料IIを分析した.この場合は硝酸-硫酸又は硝酸-過塩素酸による有機物の分解操作及びクベロン-クロロホルム抽出法による除鉄操作を採用することにした.試料中に多くの共存物質を含んでいたために,結果の標準偏差パーセントは22.2%であった.試料吸光度が0.4より高い場合には底値が得られた.更に試料IIIを分析した.この場合,分析操作法を詳細に定めたところ,標準偏差パーセントは19.5%であった.以上の結果から,JIS K 0102-1974で示されているジフェニルカルバジド吸光光度法で排水中の全クロムを分析する場合,組成の複雑な試料では標準偏差パーセントを20%以下にすることはかなり困難であるという結論を得た.
著者
杉山 雅人
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.667-675, 1996-07-05
被引用文献数
6 14

自然水中の懸濁物質に含まれる主要から微量に至るまでの各種元素の同時分析法を検討した.懸濁物質を捕集したニュクリボアーフィルターをねじふた付きのテフロン瓶に入れ, 濃アンモニア水を加え一定時間放置後, 加熱して乾固した.残留物に過塩素酸・硝酸・フッ化水素酸の混合物を加えて加熱分解した.分解物を蒸発乾固した後, 過塩素酸及び硝酸を加え再び乾固した.残留物を硝酸溶液に溶解し, ICP-AESに供試した.本法によって4種類の標準物質を分析し, Al, Ba, Ca, Cr, Cu, Fe, Mg, Mn, Ni, P, Sr, Ti, V, Znの14元素について, 良好な結果を得た.原子吸光法を用いると, 同一の試料でKとNaが定量できた.本法は水中懸濁物質に限らず, たい積物, 岩石, 生物試料, エアロゾルの分析にも広く有用である.
著者
小沢 昭夫 高柳 香都子 藤田 孝夫 平井 愛山 浜崎 智仁 寺野 隆 田村 泰 熊谷 朗
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.87-91, 1982-02-05
被引用文献数
8 25

エスキモー人の疫学調査により魚脂中に多く含まれるω-3の高級多価不飽和脂肪酸の抗血栓,抗動脈硬化作用が注目されている.ヒト血しょう総譜質中の高級脂肪酸を精度よく測定するためにキャピラリーカラムを装着したガスクロマトグラフを用い血しょうよりFolchらの方法で抽出しBF_<-3>メタノールでエステル化した試料を分離分析したところ良好な成績が得られた.本法での抽出操作を含めた再現性はアラキドン酸,エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸のいずれについても5%以下と良好で各各のメチルエステルを用いて得られた添加回収率もほぽ100%と良好な値を示した.又検量線もいずれの脂肪酸について良好な成績が得られ,又実際の実験食投与の健常人においても有意の脂肪酸の変動が認められたことから本法は血しょう総脂質中の高級脂肪酸の定量法の一つとして有用と考えられる.
著者
斎藤 寛 田中 順 尾堂 順一 田中 善正
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.385-389, 1980-06-05
被引用文献数
3

従来,アルミニウムの定量のみに用いられていたAl^<3+>-クロムアズロールS-界面活性剤系と類似の三成分系を高級脂肪族アミンの定量に利用することを試みた.その結果,三成分系の沈殿をエタノールを用いて可溶化すれば,試薬空試験液を対照に極大吸収波長640nmにおいて測定することによって,感度よく簡便にオクタデシルアミソなどの高級脂肪族アミンを定量できることが分かった.オクタデシルアミンの場合検量線は(2.5〜10)μg/mlまで原点を通る良好な直線となり,10回繰り返しによる変動係数は0.86%であった.本法は陰イオンの影響を比較的強く受けるが,酢酸酸性下高級脂肪族アミンを抽出すれば妨害を受けない.
著者
渡辺 邦洋 小川 裕作 板垣 昌幸 常盤 和靖
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.163-169, 2006-03-05

必要試料量がnlレベルであるキャピラリー電気泳動法により,高温酸化物超伝導体中のTlの価数分析法を開発した.四ホウ酸ナトリウム十水和物を泳動液に用い,アコイオン自体に紫外吸収を示すTl(I)はTl^+として印加電圧25.0kVで泳動させ,波長215nmでUV法により直接検出した.塩酸に溶解させているTl(III)はTlCl_6^<3->として印加電圧-30.0kVで泳動させ,波長242nmで直接検出した.共存イオンはイミダゾールを用い,間接紫外吸光法により定量した.実試料は,Tl系高温酸化物超伝導体0.20mgを0.01MのHClに溶解させて用いた.測定した2種類の試料はともに97%がTl(III)という結果になった.本法を用いることで従来の方法よりも必要とする試料量を約20分の1に下げることができた.
著者
網田 孝司 岩本 一優 一瀬 光之尉 小島 次雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.389-394, 1988-08-05

流れ分析系においてマルチチャンネルで連続測定された紫外吸収スペクトルの有効利用を目的にして,スペクトルのデータ圧縮の効果と,圧縮データの,高速検索,及びスペクトルの重なった多成分系の連続リアルタイム同時分析への利用の可能性とについて検討した.アダマール変換による圧縮を行い256点の原スペクトルデータに対して圧縮比0.08〜0.16程度が最良の識別確度を与えることを示すと共に,達成した検索速度により,リアルタイム検索の可能性について検討した.又圧縮データの,多成分同時分析への利用については最小二乗法による方法を示すと共に,この方法で0.08s間隔でのリアルタイム出力が可能になることを明らかにした.
著者
山崎 幸治
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.309-314, 1982-06-05
被引用文献数
3

これまでの平衡型つり下げ静止水銀滴電極(BHMDE)をガス圧縮形式のBHMDEに改造した.水銀滴下間隔(τ)が138秒,水銀流出量(m))0.1922mg/s のキャピラリーを用い,窒素の圧力490mmHgで30秒間水銀を押し出したときの電極面積は0.0274cm^2であった.この電極の水銀滴再現性をカドミウム{5×10^<-5>M Cd(II)ion in 0.1 M HCl}のカソーデイック・オッシロポーラログラムの繰り返し測定(10回)から求めた.水銀滴つり下げ直後に測定した波高の偏差値は0.76及び水銀滴を30分間平衡状態に放置した後の測定からは0.78が得られた.前報の0.40と0.62及び0.60よりわずかに増加した.本電極を用い.数種のビール,酒,ワイン,ブランデーを低温灰化又は酸分解した後,アノーディック・ストリッピング法により微量の重金属を測定した結果,これら酒類中に合まれる金属の濃度範囲は銅(0.009〜1.6)ppm,鉛(0.008〜0.13)ppm,カドミウム(0.0013〜0.0018)ppm,亜鉛(0.019〜1.13)ppmで低温灰化時における鉛,カドミウムの損失は認められなかった.
著者
多賀 光彦 田中 俊逸 吉田 仁志
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.400-405, 1980-06-05
被引用文献数
3

つり下げ式水銀滴電極中に電解された銅が2.5×10^<-5>mol dm^<-3>のヨウ化物イオンを含む溶液中に溶出されるとき,銅の溶出波は約4倍に増大し,ヨウ化物イオンによる増感効果が認められた.波高は電位掃引速度によって影響を受け2mVs^<-1>のとき最大値を示した.検量線は前電解時間を5minとしたとき(5×10^<-8>〜7×10^<-7>)mol dm^<-3>の範囲で直線となり,1×10^<-7>mol dm^<-3>のときの5回の測定による相対標準偏差値は約3%であった.検出限界は前電解時間を10minとしたとき0.2ppbであった.ヨウ化物イオンによる増感効果を利用する本法は,塩化物イオン中の銅の定量を容易にした.銅の溶出波は1×10^<-2>mol dm^<-3>の塩化物イオンの共存により不明りょうとなり,波高と濃度との比例性も悪くなるが,ヨウ化物イオンの添加によって溶出波は明りょうとなり,比例性も回復した.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 1984-01-05
被引用文献数
9 16

ホークロロホルム系でのイオン会合抽出におけるイオンの抽出性の相対的尺度として,陽イオンに対しC直,陰イオンに対しA直を割り当てた.これらの値の算出の際の基準にはアルキル鎖及び水素原子を全く持たない仮想的な陽イオン[-N-]^^^<|+>___|をとった.C直,A値と抽出定数(1ogD_<ex>)の関係は,logK_<ex>=C+Aで表される.陽イオンとして14種の第四級アンモニウムイオン,テトラフェニルホスホニウム(アルンニウム)イオン,5種のアゾ系染料陽イオン,7種のトリフェニルメタン系染料陽イオン及びメチレンブルーのC直を決めた.又π値(置換基の寄与)を用いるC値の計算方法についても考察した.C値を用い,無機,有機陰イオンのA値も決定した.得られたC値及びA値を用いて約150種のイオン会合体の抽出定数を推定し,既報の実測値との比較をしたところ,±0.3log単位程度の誤差であった.又著者以外により報告されている抽出定数との一致も良好であった.
著者
東海林 敦 柳田 顕郎 神藤 平三郎 渋沢 庸一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.953-958, 2004-09-05
被引用文献数
1 4

11種類のカテキン類について,オクタデシルシリル化シリカ(ODS)モノリスカラムを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と,1-ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(2:2:3)の二相溶媒系を用いる高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)による逆相分配クロマトグラフィー分離をそれぞれ行った.実験に供したカテキン類の中でも,エピカテキンの三量体であるプロシアニジンC1(PC1)は,オクタノール/水二相溶媒系における分配係数P及びlog P値が最も小さな親水性化合物であるにもかかわらず,逆相HPLCのODSカラムに強く保持された.一方,逆相HSCCCにおけるカテキン類の溶出順序は,各化合物のlog P値によく対応し,log P値が減少するほどクロマトグラム上の保持時間も短くなった.すなわち,PC1のような最も親水的なオリゴマー成分は,逆相HSCCCのカラムから一番最初に溶出することが確認できた.
著者
西山 尚秀 陳 子林 中釜 達朗 内山 一美 保母 敏行
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1005-1009, 2003-11-05
被引用文献数
3 5

L-リシンアミドをキラルセレクターとし,配位子交換原理を利用した光学異性体分離用のモノリスカラムを開発したL-リシンアミドは2つのアミノ基を有するアミノ酸アミドであり,従来配位子交換のキラルセレクターとして用いられていない.本研究では分析対象試料にダンシルアミノ酸を用い,キャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)及びマイクロHPLC(μ-HPLC)での分離を検討した.CEC分離では,電気浸透流(EOF)が陰極から陽極に流れ,移動相のpHを小さくすると,従来のフェニルアラニンアミド等のキラルセレクターで修飾したカラムよりもEOFの速度が速くなることを見いだした.CECではμ-HPLCの約5倍の理論段数が得られ,その特性から高分離能であった.一方,μ-HPLCでは低圧力負荷で分離することが可能であった.本研究で開発したL-リシンアミドキラルモノリスカラムは光学異性体の分離において既報告のセレクターとは異なるEOFの性能を示すことを明らかにした.