著者
中野 和彦 辻 幸一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.427-432, 2006-06-05
被引用文献数
2 17

ポリキャピラリーX線レンズを用いた共焦点型蛍光X線分析装置の開発を行い,米試料中の非破壊三次元分析を行った.10μm厚のAu薄膜により評価した,共焦点型蛍光X線分析装置の深さ方向の分解能は約90μmであった.ポリキャピラリーハーフレンズを取り付けることで,バックグラウンドの軽減が確認された.開発した装置を用いることにより,米試料中の主元素の三次元元素マッピング像が,非破壊的に常圧下で得られた.米試料中の主元素であるK,Ca,Feの二次元マッピング像を試料表面から200,400,500μmの深さで取得したところ,異なる分析探さにおいてそれぞれ異なった元素分布を示した.
著者
松岡 育弘 内藤 哲義 山田 碩道
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.759-765, 2002-09-05
被引用文献数
1 7

数多くの溶媒について水を飽和した状態で,溶媒のアクセプタ性を示す E_T値と水の溶解度を測定した.水の溶解度は,カールフィッシャー法により電量滴定で測定した.用いた溶媒は,7 種類のアルカン,3 種類の芳香族溶媒,3 種類の塩素化炭化水素,4 種類のエステル,6 種類のケトンと5 種類のアルコールである.各溶媒のE_T値は 1,2- ジクロロエタンを除いて対応する水の溶解度とかなりよい直線関係が成立することが分かった.これらの溶媒の中でデカン酸による銅 (II) イオンの抽出に関して研究してきた溶媒に対して,水の溶解度とこれらの抽出系に含まれる種々の平衡定数との間にかなりよい直線関係があることを示した.このことは,これらの抽出平衡が水和の影響を受けていることを示唆している.本研究で用いた溶媒への水の溶解度は 2.36×10^-3から 4.74 mol dm^-3であり,E_T値と比べて広い範囲にわたっている.このことは,有機溶媒への水の溶解度は,溶媒抽出における溶媒効果を研究する際,有機溶媒の性質を示す高感度な尺度として有用となることを期待させる.
著者
松本 高利 田辺 和俊 佐伯 和光 天野 敏男 上板 博亨
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.483-489, 1999-05-05
被引用文献数
8 12

プラスチック廃棄物のリサイクルには不可欠なプラスチックの非破壊判別手法を開発するために, 近赤外分光測定とニューラルネットワーク解析を組み合わせた手法を検討した. 最近のリサイクル法の施行で必要になっている多種類のプラスチックを迅速に判別するために, 収集した51種類のプラスチックの約300点の試料について波長1.3〜2.3μm領域の近赤外反射スペクトルを測定し, 二次微分処理したデータを3層構造パーセプトロンモデルのニューラルネットワークに入力してバックプロパゲーション法で学習を行った. 10種類のプラスチックについて2〜4個のデータを入力して判別テストを行った. その結果, 極めて少数の学習データを用いたにもかかわらず平均的中率として80%近い結果が得られ, 多種類のプラスチックを迅速に判別する手法を開発することができた. 本研究の手法を用いればプラスチック廃棄物のリサイクルに実用可能なプラスチック判別装置を開発できる可能性があることが分かった.
著者
白上 房男 岡島 義昭 前小屋 千秋 高田 芳矩
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.413-418, 1989-09-05
被引用文献数
1 3

土壌中の水溶性及び交換性の無機態窒素を迅速に連続測定するFIA法を検討した.亜硝酸及び硝酸態窒素の測定ではジアゾ化-アゾ化合物生成に高温反応(90℃)を適用した.なお,硝酸態窒素の測定では還元カラム(Cu-Cd粒状,φ3×300mm)の活性寿命及び還元効率への流量依存性を評価した.アンモニウム態窒素の測定では多孔質膜分離-インドフェノール法の常温反応における最適条件を検討した.土壌2gを浸出液50mlで振り混ぜ抽出し,その40μlを各成分の測定に供する.本法の繰り返し測定の再現性は相対標準偏差で0.3〜0.5%であり,定量範囲は亜硝酸態窒素:0.1〜7ppm,硝酸態窒素:1〜20ppm,アンモニウム態窒素:1〜150ppmである.なお,3成分連続測定の所要時間は約10分間である.
著者
星 座 四ツ柳 隆夫 青村 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.592-597, 1977-09-05
被引用文献数
1 4

ジメチルホルムアミド(DMF)及び60%(v/v)DMF-水混合溶媒中におけるグリオキサールジチオセミカルバゾン(GDS)のニッケル,銅,亜鉛,カドミウム及びパラジウム錯体について,その組成(M:GDS=1:1),吸収スペクトル及び錯形成pH条件などを明らかにし,GDSの吸光分析試薬としての可能性を論じた.更に,これらの検討に基づき,極めて選択的なパラジウムの吸光光度法を提案した.
著者
片岡 正光 阿部 浩久 梅澤 喜夫 保田 立二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.697-703, 1991-11-05
被引用文献数
2 2

リポソームを用いた免疫測定にフローインジェクション/接触分析法を適用し, 抗アシアロGM_1(GA1)抗体を定量する方法を開発した.リポソームは, 糖脂質であるGA1抗原.ジバルミトイルホスファチジルコリンとコレステロールを用い, 内水層にマーカーイオンとしてモリブデン酸ナトリウムを封入して調製した.リポソーム表面で抗原/抗体/補体反応が起きるとリポソームが損傷を受けチャンネル状の穴が生じ, モリブデン酸イオンが外液に流出する.モリブデン酸イオンは過酸化水素/ヨウ化物イオン酸化還元反応の触媒として働き, その反応速度はモリブデン酸イオン濃度に比例する.反応速度はフローインジェクション法により一定時間後の反応混液中のヨウ化物イオン濃度減少に基づくイオン選択性電極の電位ピークの高さとして求めた.本法により10^3〜10^4倍希釈の抗GA1抗体を定量することが可能である.
著者
久保田 敏夫 内田 圭一 植田 俊夫 奥谷 忠雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.381-383, 1988-07-05
被引用文献数
3

Simple and rapid determination of phosphorus in sediment was studied by graphite furnace (GF) AAS using a phosphorus hollow cathode lamp (P-HCL). A Zr-treated graphite tube was used for GF. For each analytical procedure a 20 mm^3 of 1% Zr solution was injected into the graphite tube and then a 10 mm^3 of sample solution containing P was injected. Digestion procedure was as follows : The sediment sample of 0.2 g was decomposed with HNO_3-HClO_4-HF, then the digest was evaporated to dryness. The residue was dissolved with 3 cm^3 6 M HCl, and diluted to 50 cm^3, and P was determined by GF-AAS. All the values obtained by the proposed method agree well with the reference value (Pond sediment, NIES No. 2) and those by Molybdenum Blue spectrometry (River sediment and Submarine sediment).
著者
田口 正 戸田 昭三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.T89-T93, 1989-06-05
被引用文献数
1 2

キャピラリー超臨界流体クロマトグラフィーを極性化合物分析へ応用した。移動相には高純度C02、カラムにはポリジメチルシロキサンを固定相とした溶融シリカキ十ヒラリーを用いた。カラム温度は100℃、水素フレームイオン化検出器(FID)の温度は350℃、そしてカラム圧力を150から400気圧に変化させ条件設定を行った。ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル(TrittonX-100)について昇圧条件を一定にし、カラム温度を変化させると、保持時間が溶媒と試料とで相反した挙動を示し、試料のピーク形状も大きく変化することが分かった。Tritin X-100について5回測定したときの測定精度を相対標準偏差で表すと、保持時間が0.5%以下、ピーク高さが6.3%となり良い再現性が得られた。極性物質であるメタクレゾールノボラックオリゴマーについてトリメチルケイ素化剤を用いて誘導体化を行い超臨界流体クロマトグラフ分析したところ、誘導体化前に見られたピークは更に幾つかに分離し、分子の立体構造を推定するうえで貴重なデータが得られた。
著者
功刀 正行 藤森 一男 中野 武 原島 省
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1375-1387, 2004-12-05
被引用文献数
4 4

商船に搭載するための連続濃縮捕集システムを開発し,同システムを用いて同一海域を頻繁に航行するフェリーを観測プラットフォームとする有害化学物質による海洋汚染観測態勢を確立した.観測は,大阪港と那覇新港管を航行するフェリー「くろしお」において1996年12月から1998年2月に,またフェリー「さんふらわああいぼり」において1998年12月から2000年3月に実施した.観測結果から,海洋における有害化学物質による海洋汚染の動態の把握には高頻度の観測が不可欠であること,ヘキサクロロシクロヘキサン類,クロルデン頻を観測することにより観測地点・時点で支配的な起源推定が可能であることが明らかとなった.
著者
上澤 和也 上原 伸夫 伊藤 清孝 清水 得夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.867-872, 2001-12-05
被引用文献数
2 9

研究室で充填した自作カラム(4.6mm i.d.× 50mm)を用いるイオン対逆相分配高速液体クロマトグラフィーにより, 鉄及び鋼中の微量ホウ素を直接定量した.自作カラムはスラリー法によりHPLC用ODS(C_<18>)充填剤(粒径5μm)0.7gを充填して作製した.鉄鋼試料を塩酸-硝酸で分解し, リン酸と硫酸を加えて蒸発乾固した後, 希塩酸に溶解した.この分解溶液から適量を分取し, 7.5×10^<-3>mol dm^<-3> 1, 8-ジヒドロキシナフタレン-3, 6-ジスルホン酸(クロモトロープ酸)溶液2.5cm^3, 0.275mol dm^<-3>エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム溶液2.5cm^3及び0.5mol dm^<-3>臭化オクチルトリメチルアンモニウム溶液を含む1.0mol dm^<-3>酢酸緩衝液(pH4.8)2.5cm^3を加えてから水で25cm^3に定容とする.この溶液から200mm^3を自作カラムを装着した高速液体クロマトグラフに注入する.溶離液には5.0×10^<-2>mol kg^<-1>臭化オクチルトリメチルアンモニウム, 5.0×10^<-3>mol kg^<-1>リン酸緩衝液(pH8.0)を含む水-メタノールの混合溶液(45 : 55w/w)を用いた.検出波長を350nm, 流量を1.0cm^3 min^<-1>としてHPLC測定を行った.ピーク高さに基づく検量線はホウ素濃度が10^<-8>mol dm^<-3>レベルにおいて直線性を示し, 空試験値(n=5)の標準偏差の3倍と定義した検出限界(3σ)は1.3×10^<-9>mol dm^<-3>であった.本法を鉄鋼認証標準物質(日本鉄鋼連盟)等に適用し, 保証値あるいは参考値(0.2〜50ppm)とよく一致する定量値を得た.
著者
小川 禎一郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.201-207, 1993-04-05
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

レーザー多光子イオン化法により吸光性分子を選択的にイオン化し, 電気電導度測定により高感度に検出することができる.溶液中や固体表面の吸光性試料にレーザーを集光照射して多光子イオン化の機構を調べ, それをもとに分析手法の最適化を行った.無極性溶媒中の吸光性分子の超高感度分析ではpptレベルの検出感度を得た.固体表面での光イオン化では単分子層の1%程度の検出感度を得た.液表面を利用すれば極性溶媒についてもpptレベルの検出感度が得られる.この手法は高速液体クロマトグラフ検出器としても利用できることを示した.これらの結果よりレーザー多光子イオン化法が有用な機器分析法であると結論した.
著者
吉村 長蔵 藤野 隆由^[○!R]
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.48-53, 1984-01-05
被引用文献数
1 2

ヘキサフルオロケイ酸とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)との固体付加物を標準試薬として用い,モリブデンの非水雷緯度滴定を検討した.DMF中における滴定曲線には,モリブデン(VI):H_2SiF_6=2:1と1:1のイオン対生成反応と考えられる結合比に明りょうな屈折点が得られ,モリブデン(VI)の直接滴定が可能である.併せて,弧光光度法でも2:1の結合比の反応点が得られた.又,実際分析への応用として二硫化モリブデンを合む潤滑油を対象にして,電導度滴定を行った結果,迅速にモリブデンの定量ができた.
著者
鈴木 雅登 安川 智之 珠玖 仁 末永 智一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1189-1195, 2005-12-05
被引用文献数
2 10

微生物の膜損傷に起因した生死状態に基づき分離が可能なチップデバイスを作製した.微生物に作用する誘電泳動力の差を利用し, 生菌の捕捉(そく)と膜損傷を与えた菌の排出を行った.微生物分離チップは凹凸を有するバンドを配列させたcastellated型の透明電極(ITO)基板, 直線流路パターン(幅2mm, 長さ35mm)を有したシリコンスペーサ, 入口と出口を備えたアクリル板から構成されている.無処理の大腸菌と熱処理した大腸菌をLive/Dead蛍光染色し, 200mMスクロース水溶液中に混合させた.大腸菌を流量440μm/sでチップへ導入し, 挙動を蛍光顕微鏡で観察した.ITO基板に正弦波(100kHz, 20 Vpeak-peak)を印加すると, 大腸菌に正の誘電泳動が作用し電極間に捕捉された.周波数を7MHzに切り替えると, 死んでいる大腸菌への正の誘電泳動力が弱まり, 電極から解放されチップから排出された.このチップを利用すると簡便で迅速な大腸菌の生死分離ができる.
著者
森 定雄 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 高田 かな子 杉本 剛 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 杉谷 初雄 大関 博 中橋 計治 日比 清勝 大谷 肇 中村 茂夫 杉浦 健児 田中 鍛 荻原 誠司 勝野 保夫 大久保 哲雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.95-101, 1996-01-05
被引用文献数
10 6

SEC専門部会傘下26測定機関でサイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の分子量の共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)4種類, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種類である.較正曲線作成用標準試料を配布し, 試料溶液の濃度, 注入量を規定するとともに, クロマトグラムベ-スラインの引き方を統一し, 又較正曲線は3次近似とした.その結果, かけ離れた数値を棄却した場合の相対標準偏差(RSD)はPSでは数平均分子量で13.7〜15.8%, 重量平均分子量で5.0〜5.8%.PMMAではそれぞれ11.9〜13.3%, 10.9〜11.3%であった.前回のラウンド口ビンテストと比較し, RSDが改善された様子は認められなかったが, 測定条件の不備による, 大きくかけ離れたデータがなくなった意義は大きい.RSDが改善されなかった理由の一つはベースラインに引き方の統一が完全でなかったことである.異なる検出器を使用した場合, 又異なるメーカーの標準試料を用いた場合, RSDが大きくなるようである.
著者
藤野 治 松井 正和
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.241-246, 1982-05-05
被引用文献数
1

炭素チューブをアトマイザーに用いたときのイッテルビウムのフレームレス原子吸光分析について基礎的検討を行いリン酸塩鉱物へ適用した.本法により検量線を作成した結果(10〜40)ppbの範囲で直線となった.一酸化二窒素-アセチレン炎に比較し,感度は約150倍高いことを示した.又共存塩類はイッテルビウム(35ppb)の(10^2〜10^3)倍にかけてほとんどの元素が干渉を示さなかった.しかし高濃度のカルシウムとリンが同時に共存すると,イッテルビウムの原子化速度は速くなり.ピーク吸光度が増大した.ゼノタイムやモナズ石試料は硫酸に溶解,希釈し,そのまま炭素チューブアトマイザーに入れて直接定量を行った.得られた含有値は誘導結合高周波プラズマ(ICP)発光分光分析による結果と極めてよく一致した.又アパタイト鉱物は硝酸に溶解後,10M過塩素酸において,0.1M ジ-2-エチルヘキシルリン酸-シクロヘキサン系で抽出分離し,有機相中のイッテルビウムを測定,定量した.
著者
原 茂樹 松尾 博 熊丸 尚宏
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.503-507, 1986-06-05
被引用文献数
2 3

金,白金をクロロ錯イオンとした試料溶液にヨウ化カリウム溶液並びにテトラデシルジメチルベンジルアンモニウム(ゼフィラミン)溶液を加えると,金(III),白金(IV)はそれぞれヨード錯イオンとしてゼフィラミンとイオン対を形成し,クロロホルムによって定量的に抽出される.この溶媒抽出系を利用する金,白金の同時黒鉛炉原子吸光定量法について検討した.水相/有機相の体積比(V_w/V_o)が15ml/2mlの場合,水相中のヨウ化カリウム濃度を0.06〜0.25M,又,ゼフィラミン濃度を5×10^<-4>〜4×10^<-3>Mに保てば,金(III)又は白金(IV)は4M塩酸酸性からpH11付近までの検討範囲において定量的に抽出される.検量線は水相中の金(III)の濃度が1.0μg/15ml(67ng/ml),白金(IV)の濃度が20μg/15ml(1.3μg/ml)までの簡囲で直線性を示し,1%吸収感度は金について0.21ng/ml,白金については7.9ng/mlであった.金(III)を0.25μg,白金(IV)を10μg含む水相について10回の繰り返し実験によって求めた相対標準偏差は金について2.3%,白金については2.4%であった.金(III)に対する銅(II)の干渉は抽出時に水相中に1,10-フェナントロリンを添加することにより,又,白金(IV)に対するクロム(VI),マンガン(VII),ヨウ素酸,過ヨウ素酸の各イオンの干渉はヒドロキシルアンモニウムの添加により,それぞれ除去することができた.本法を銀-白金-金合金試料中の金,白金の定量に応用し,満足な結果を得た.
著者
高尾 雄二 李 虎哲 有薗 幸司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.589-593, 1999-06-05
被引用文献数
6 12

水中の内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)を簡便かつ高感度に分析することを目的とし, 同相マイクロ抽出(SPME)法とオンカラムシリル化法を組み合わせた手法を試みた. 水中のビスフェノールA(BPA)をSPMEファイバーに吸着させた後, GCの気化室内でBPAを脱離させカラム先端部に濃縮した. 続いて, ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)をマイクロシリンジで注入し, BPAをシリル化し, MS検出器で検出した. オンカラムシリル化した場合には通常のSPME法と比較して, 目的物質のシリル化体のピーク面積は20倍程度に増大し, 高感度に検出できることが分かった. 但し, 測定の度にSPMEファイバー固定用のエポキシ樹脂からBPAが極微量脱離するため, 定量限界は1ppbと以前報告した通常のSPME法と同レベルであった.
著者
長尾 誠也 鈴木 康弘 中口 譲 妹尾 宗明 平木 敬三
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.335-342, 1997-05-05
被引用文献数
22 18

天然水の腐植物質は微量元素及び疎水性有害有機物のキャリヤー又はトリハロメタンの前駆物質と考えられている.天然水をグラスファイバーフィルターで濾過後, 三次元分光蛍光光度計により腐植物質の蛍光特性を測定する方法の妥当性を検討した.天然水の化学特性のうち, 腐植物質の蛍光スペクトルに影響を及ぼす腐植物質濃度, pH及びイオン強度について検討した結果, 陸水(腐植物質濃度0.5〜10mgl^<-1>, pH6〜9,イオン強度0.04M以下)及び海水(イオン強度0.75M)に適用可能であることが分かった.本測定法を河川水, 湖水, 湖底及び海底たい積物間げき水に適用した結果, これらの天然水腐植物質の三次元励起-蛍光スペクトルには, 土壌フルボ酸に相当するピークが検出された.
著者
高 雲華 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1065-1082, 1996-12-05
被引用文献数
16 11

水溶液でのイオン性界面活性剤の定量について研究した.発色反応試薬系としては, 酸性染料のテトラブロモフェノールフタレインエチルエステル(TBPE), 陰イオン性アゾ染料のメチルオレンジ系及びフェニルアゾフェノール系試薬について検討した.これらの試薬陰イオンを用いて陽イオン界面活性剤とのイオン会合定数及び陽, 陰イオン界面活性剤間のイオン会合定数を求め, 反応性について考察した.これらのイオン会合反応に基づき, バッチ法による吸光光度定量, フローインジェクション吸光光度定量, 光度滴定について検討した.特に新しい試みとして, イオン会合滴定法について詳細な検討を行った.イオン会合滴定における滴定曲線を, 試料イオンと滴定イオン間のイオン会合定数, 指示薬とのイオン会合定数を用いてシミュレーションし, 微分による滴定終点と当量点との整合性について考察した.本滴定法では, 10^<-6>Mまでの陽イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤が定量できる.又, 実際試料の滴定結果は二相滴定法のJIS法及び溶媒抽出吸光光度法とよく一致した.
著者
芳本 有史 西本 ゆかり 石原 千津子 川崎 英也 荒川 隆一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.95-100, 2009-02-05

高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いて分析を行う際に,様々な汚染物質のイオンが検出される場合がある.このことは,LC/MSの高精度な定性・定量分析を困難にする.汚染物質の混入を防ぐには,汚染物質の同定とそのイオンの出所を知っておく必要がある.今回,著者らはLC/MSで使用するバイアルとセプタム,そして濾過用膜フィルターに着目した.LC/MS及びMS^n分析により,幾つかの汚染物質を同定し,その原因を特定した.