著者
並木 美智子 広川 吉之助
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.213-217, 1979-04-05
被引用文献数
1 4

金属銅の定量は試料を窒素気流中又はアルゴン気流中硫酸セリウム(IV)溶液で処理して酸化銅のみを分解分離した後,金属銅を窒素又はアルゴン気流中塩化鉄(III)溶液に溶解し,還元により生じたFe^<2+>を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)滴定法によって定量した.酸化銅(I)の定量は試料を窒素気流中で塩化鉄(III)に溶解し,同じく還元により生じた鉄(II)を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)法で滴定し,酸化銅(I)と金属銅の合量を定量した後先に定量した金属銅量を差し引く.全銅の定量は試料を硝酸に溶解した後銅アコ錯イオンとして光度定量した.酸化銅(II)は全銅から金属銅と酸化銅(I)の合量を差し引いて算出した.以上の方法を混合試料及び実際試料に応用してほぼ満足できる結果を得た.
著者
林 謙次郎 佐々木 義明 田頭 昭二 伊藤 和晴
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T61-T64, 1981-06-05
被引用文献数
3

アルミニウム-アルミノンレーキの呈色は保護コロイドとしての分散剤の種類や濃度の影響を受ける.しかし,トリトンX-100のような非イオン性界面活性剤を分散剤として用いると安定な呈色が得られ,アルミニウムの弧光光度定量における従来法に比べ感度や精度の向上及び定量範囲の拡大をはかることができる.アルミニウムの定量について検討したところ,最大吸収波長537 nmにおけるモル吸光係数は2.2×10^4,感度は0.0012であり,(6.5×10^<-7>〜5.0×10^<-5>)mol dm^<-3> のアルミニウムの濃度範囲でベール則に従った.レーキ及びアルミノン中のフェニル基やカルボキシル基がトリトンX-100のポリエーテル部と水素結合してミセルの親水部分に吸着されて安定化され,その結果,スペクトルが変化し吸光度が増加すると考えられる.
著者
氏平 祐輔 大藪 又茂 村上 徹朗 堀江 強
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.631-636, 1978-10-05
被引用文献数
6

尿素の分解を利用した均質沈殿法によって鉄化合物を生成し,その化学状態をpH変化の追跡,メスバウアースペクトル及びX線回折パターンの解析から分析した.均質沈殿を行っている溶液のpH変化の様子,あるいは沈殿した鉄(III)化合物がpH 1.7〜1.8の鉄(III)塩溶液を加熱し,鉄(III)イオンを加水分解したときに生成する化合物と酷似していたことから,均質沈殿の過程は水酸化物イオンの均質的な供給下における鉄(III)イオンの加水分解の過程と同じであることが分かった.0.1M硝酸鉄(III)溶液からの均質沈殿ではゲータイト(α-FeOOH)及びヘマタイト(α-Fe_O_3)が生成し,0.1M塩化鉄(III)溶液からの均質沈殿ではアカガネイト(β-FeOOH)が生成し,0.1M硫酸鉄溶液の均質沈殿からは塩基性硫酸鉄〔NH_4Fe_3(OH)_6(SO_4)_2〕及びゲータイト(α-FeOOH)が生成した.沈殿時に共存する陰イオンの種類及び尿素の分解速度によって異なった化学状態の鉄(III)化合物が沈殿することも分かった.
著者
伊東 琢史
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.297-300, 1995-04-05

A flow-injection spectrofluorometric method was devised for the determination of gold (III) based on the fluorescent oxidized product of kojic acid. The maximum wavelengths of the excitation and emission spectra of the oxidized product are 375 and 495nm, respectively. The carrier solution (0.1 M sodium chloride) and buffer solution (pH 7.5) containing 8×10^<-3>M Kojic acid were each pumped at 1.5ml min^<-1>. The length of the reaction coil was 1 m. The present method allows the determination of 1〜10μg ml^<-1>of gold (III) based on 100μl injection volume. The relative standard deviation of 1.2% (n=9) was obtained at 3μg ml^<-1>of gold (III). The sample chroughput was about 20h^<-1>, Palladium does not interfere with up to 50-fold amounts under masking with nitrilotriacetic acid.
著者
松崎 浩司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.823-827, 1990-12-05
被引用文献数
3 4

黒鉛炉AASによるインジウムの定量に対する共存塩化物の干渉の抑制及びインジウムの測定感度の向上について検討した.ニッケルとアルミニウムの硝酸塩の共存はインジウムの原子吸収感度を増加させる.一方EDTAはインジウムと共存陽イオンに対してマスキング剤として作用し, 塩化物は塩化アンモニウムとして乾燥・灰化過程で容易に除去されるので, 塩化物干渉が抑制される.マスキングの効果は酢酸塩の添加においても認められた.ニッケルとアルミニウムの硝酸塩及びEDTAアンモニウム塩の混合物をマトリックス修飾剤として試料溶液に添加する方法により, 未添加の場合に比ベインジウム感度は20倍上昇し, 塩化物の許容共存量は400〜1000倍に増加した.
著者
荻野 経子 扇内 秀樹 保母 敏行 荻野 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.476-480, 1988-09-05
被引用文献数
1

歯が象げ質中のアスパラギン酸(残基)のラセミ化反応を利用する年齢推定法において,一連の分析操作過程をより深く理解することはより正確な分析を行うために重要と考える.本実験では特にD/L比の測定に直接影響を及ぼすと思われる歯が象げ質の酸加水分解過程について検討した.実験には年齢既知のヒトの第三大きゅう歯(歯冠部象げ質)を用い,酸加水分解条件のうちの酸濃度,温度,時間について速度論的に,かつ分解条件の変動による推定年齢への影響について検討した.その結果,既報で設定した加水分解条件(6M HC1,100℃,6時間)を用いる場合,酸濃度,時間がそれぞれ±0.5M,±0.5時間変化してもほとんど影響しないことが明らかになった.
著者
保母 敏行 山田 正昭 鈴木 喬繁 荒木 峻 下山 晃 PONNAMPERUMA Cyril
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T71-T76, 1981-06-05

アミノ酸光学異性体の同定を信頼性高く行う方法として固定相が互いに光学異性体である2本のカラムを用いる方法について検討した.まず,固定相としてN-ラウロイル-D-バリン-Z-ブチルアミドあるいはN-ラウロイル-L-バリン-t-ブチルアミドをウィスカーウォール型毛管に塗布したカラムを作り,各種アミノ酸の保持指標とその再現性,D体とL体の分離係数などを調べた.更に,両カラムを使い,両固定相の光学活性度決定及び抗生物質グラミシジンJを構成する一部アミノ酸のキラリティー決定を試みた.キラリティーの異なる2本のカラムを使用することの有効性が確かめられた.
著者
堀江 正一 吉田 栄充 石井 里枝 小林 進 中澤 裕之
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.579-587, 1999-06-05
被引用文献数
20 39

高速液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)を用いた缶飲料中のビスフェノールA(BPA)の簡易かつ迅速な定量法を検討した. BPAは構造中にフェノール性の水酸基を有する弱酸性の化合物であることから, イオン化モードにはネガティブモードを採用した. LC条件は, カラムにZorbax XDB-C18 (150×2.1mm,i.d.), 移動相には0.01%酢酸-アセトニトリル(60:40)を用い, 流量は毎分0.2mlとした. 検出にはBPAの擬分子イオン[M-H]^-m/z227を用いた. 試料の前処理法は同相抽出法を採用し, カートリッジには無極性相, 陽イオン交換相及び陰イオン交換相が混合充填されたIsolute Multimodeカートリッジ(500mg)を用いた. 本法におけるコーヒー, 紅茶, 果実飲料などに対する添加回収率は5及び50ppbの添加で85%以上, 検出限界はコーヒー飲料を除き0.5ppbであった.
著者
今枝 一男 大沢 敬子 内山 一美
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.346-350, 1985-06-05
被引用文献数
1 3

薄層クロマトグラフプレート上に展開された試料を,かき取りや切り取りなどの操作を行うことなく定量する光掃引型光音響分析装置の改良を行った.光源の断続周波数は80 Hzとし,又簡単に自製できるロックインアンプを作製した.更に薄層プレート上に展開された物質の詳細な定量条件を検討した.スダンレッド7Bは50〜400 ngの範囲で光音響信号と直線関係となった.400 ng以上では信号の飽和傾向がみられた.スクアレンを展開後,硫酸:メタノール(1:3)を噴霧し加熱発色させたとき,光音響信号の平方根と試料量の対数との間に直線関係があった.正常なヒト前腕部から抽出した皮表脂質中のスクアレンの定量を行い良好な結果を得た.
著者
樋口 慶郎 井上 亜希子 坪井 知則 本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.253-259, 1999-02-05
参考文献数
15
被引用文献数
4 13

ガス透過分離におけるガス透過の長期間の安定性と高効率化, 更にガス透過効率の長期間の再現性を向上させた, 新しいオンラインガス透過システムを構築した. このシステムでは新しく設計・製作したガス透過ユニットを組み込み, ユニット中を溶液が下方から上方に流れるようにし, 気泡の発生を防ぐ工夫がほどこされ, 更に測定後にガス透過ユニット内に滞留する溶液を排除するために2個の六方切り替えバルブを内蔵させている. ガスの安定的透過のために温度制御できる小型恒温槽を装着した. この装置中にガス透過ユニット, アンモニウムイオン定量用の反応コイルなどを組み入れ, 精密測定の向上を目指した. ガス透過ユニットは, 多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブとガラス管からなり, 接続には樹脂製フェラル及びO-リングを用い, 組み立てを容易にし, デッドボリュームも小さくした. ガス透過ユニット, 反応コイル及び試料注入器などを恒温槽の中で一定温度に保つことにより, 安定した再現性の良い測定が可能となった. ガス透過ユニット内に滞留する溶液を簡単かつ迅速に強制排除する機能も備えており, 測定後はガス透過ユニット中の溶液を除いておくことにより, 多孔質チューブの透過性能が長期間維持され, 再活性化の操作をすることなく, 高いガス透過効率を維持することができた. 本システムを用いると, 検量線は0〜10, 0〜1.0ppmの範囲で良好な直線性を示し, 1時間当たり80試料の分析が可能となった. 実際に, 河川水中のアンモニウムイオンの定量を行ったところ, インドフェノール誘導体/FIA/吸光光度法による定量値と良く一致し, 試料に対する相対標準偏差は0.51, 0.83%で, 回収率は97〜98%と良好であった.
著者
中村 栄子 石渡 孔実子 並木 博
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.845-847, 1990-12-05
被引用文献数
4 5

After removal of anionic surfactants by an ion-exchange technique, cationic surfactants were extracted as their chlorides into chloroform. Ion pairs of the cationic surfactants and Disulphine Blue formed in the chloroform phase were measured spectrophotometrically as follows : A 50 ml of a sample solution containing cationic surfactants (above 1μg as Zephiramine) is passed through an anion-exchange column (Amberlite IRA-401,15 ml) at a rate of 1 ml/ min and the column is washed with 50 ml of 50% methanol. Five milliliters of sodium chloride solution (10%) and l0 ml of chloroform are added to the eluate. The mixture is then shaken for 1 min to extract cationic surfactants into chloroform. The chloroform phase is shaken for 1 min with a mixture of 10 ml of citrate buffer solution (0.1 M, pH 5), 5 ml of sodium sulfate solution (0.4 M) and 1.5 ml of Disulphine Blue solution (1.17×10^<-4> M). The absorbance of the chloroform phase is measured at 628 nm. Cationlc surfactants in water above 20 μg/l could be determined by the proposed method.
著者
半戸 里江 安保 充 大久保 明
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.695-699, 2003-09-05
被引用文献数
1 5

本研究では,最適かつ詳細な分析手法の確立に加え,環境化学的視点から実試料の測定を実施し,分析値を解析することで,更に新たな知見を得ることを目的とした.海水中内分泌撹乱化学物質の定量に関して,簡便な方法でより正確な測定値を算出するために,固相抽出剤のコンディショニング法や溶出法の改良を行った.コンディショニング法に関して,実験に用いる水に由来する汚染を防ぐ目的で,水を使用しないコンディショニング法を考案した.この方法と従来法(精製水を使用するコンディショニング法)の回収率の差は1%以内であった.溶出法に関して,従来法よりも回収率が良く,ばらつきも少ないアセトン,ジクロロメタン,ヘキサンを順に通液する溶出法を提案した.実試料として,東京湾と千葉県沖の黒潮流域の海面表層水を測定した.東京湾ではノニルフェノール(mix)とビスフェノールAが数十〜百数十ng/lで検出された.千葉県沖での測定の結果,幾つかの測定対象物質が検出されたが,東京湾と比較して10分の1以下の濃度であった.
著者
山本 淳 橋本 清澄 畑中 久勝 金田 吉男 大路 正雄 日笠 譲
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.T5-T9, 1979-02-05
被引用文献数
1

銅化カドミウムカラム還元法を用いて,水道水及び原水中の硝酸塩の日常分析を行うには,まず還元操作の迅速化が要求される.エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA,0.08%)及び塩酸(試薬特級の0.125mlを水でうすめて1lとしたもの)を含む溶液50mlで1日1回活性化すれば,繰り返し5回の試行で(96〜110)%の還元効率が得られた.この条件での硝酸態窒素(以後NO_3-Nと略記)の4及び20μgの添加回収率は(88〜105)%と良好であり,又定量精度のよいサリチル酸ナトリウム法に匹敵する精度を示した.この改良で,10本のカラムを用いると,1日50件の検査が可能となった.一方,カドミウム及び銅のみを含む実験排水の処理は,硫酸第一鉄七水和物30g/l1を用いて鉄共沈法でよい結果を得た.EDTA-重金属キレート含有排水処理には,硫化ナトリウム法及び過マンガン酸カリウム酸化-鉄共沈法を工夫して適用してみたところ,後者はより簡便であるうえ,カドミウム,銅,マンガン及び鉄の残存濃度が排水基準をはるかに下回る濃度にまで処理できた.
著者
石井 幹太 山田 正昭 鈴木 繁喬
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.373-378, 1986-04-05
被引用文献数
17 17

化学発光法を利用する銅(II)のサブピコグラムレベルの超微量分析法を確立した.化学発光系には銅(II)に極めて特異性の高い1,10-フェナントロリン-過酸化水素-水酸化ナトリウム-ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムブロミドミセル系を選び,フローインジェクション系に組み込んだ.化学発光反応は陽イオン界面活性剤ミセル溶液中で著しく促進される.応答は20μl注入の場合8.0×10^<-14>〜2.0×10^<-9>g,キャリヤー液として連続的に試料を流す場合(導入速度5.0ml min^<-1>)1.6×10^<-13>〜1.0×10^<-9>Mの間で直線を示した.選択性は極めて高く,銅(II)の次に最も大きな化学発光応答を与えるのは鉛(II)であるが,銅(II)に対する相対モル応答は約3/10000で無視できるほど小さい.他成分の干渉も無視できた.繰り返し精度は良く,4.0×10^<-10>M銅(II)溶液連続10回注入の相対標準偏差は1.7%であった.試料処理速度は毎時180試料であった.
著者
影島 一己 武井 尊也 杉谷 嘉則
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.237-243, 2006-04-05
参考文献数
18

高周波分光法を用いてエマルションの安定性評価を試みた.油/水(O/W)型エマルションに対する測定結果から,かくはん速度や保存温度が共振周波数の経時的な変化に影響を与えることが分かった.また共振周波数の高周波側へのシフトの挙動は,光学顕微鏡を用いた粒子径観察の結果とよい相関を示し,本法がエマルションの分離進行によって生じるクリーミングを鋭敏に検出していることが明らかになった.一方,W/O型エマルションや市販のエマルション製品に対する測定においても経時にともなう共振周波数の変化が観測された.このことから本法はO/W型エマルションだけではなく,W/O型エマルションや多成分系エマルションの安定性評価においても適用可能であることが明らかになった.
著者
西岡 利勝 寺前 紀夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.723-726, 1991-11-05
被引用文献数
2 1

異種高分子同士による塗装界面付近におけるデプスプロフィルを顕微赤外分光法により観測する方法を開発し, 塗装界面の接着機構を明らかにした.この方法は, 塗装試料からウルトラミクロトームで厚さ10μmの切片を切り出し, 顕微赤外装置により塗装界面付近のデプスプロフィルを測定するものである.測定にはオートマップステージ付き顕微赤外装置を用い, 塗装界面付近を5×70μmのアパーチャーサイズで, 2μmステップにて測定を行った.本法により, ポリウレタンとポリプロピレン/エチレンプロピレンゴム(PP組成物)との塗装界面付近のデプスプロフィルを調べた.ポリウレタンとPP組成物との塗装界面付近で数十μmにわたる混合相が観測された.混合相の形成が塗膜の接着に寄与していると推定した.PP組成物表面の洗浄方法の違いにより, 混合相の厚さが異なることが分かった.
著者
善木 道雄 中北 吉彦 小松 愛可 横山 崇
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.121-124, 2000-02-05
被引用文献数
8 9

ゼロエミッションを志向した分析法の開発の一環として, 使用した試薬溶液を再度繰り返し利用できる, 強酸, 強塩基を定量する循環式フローインジェクションシステムを構築した. メチルオレンジ(MO) (1.5×10^<-4> M)を含む酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 (濃度0.01, 0.1 あるいは 1 M, 容積 100 ml)をポンプでサンプルインジェクター, フローセルを通して循環させた. 注入された試料 (2 μl)は, 中和反応によりMOを変色 (530 nmの吸光度を検出記録) させるが, すぐに拡散, 緩衝され試薬だめに戻る. 検量線は, 緩衝液の濃度の50倍の濃度まで酸・塩基とも直線となった. また, 緩衝液濃度の10倍の濃度の試料を用いて, 連続試料注入回数について調べたところ, ベースラインが徐々に増大するのでなんらかの補正が必要だが, 500回程度の連続定量は可能なことが分かった.
著者
呉 尚謙 君島 哲也 増崎 宏 久世 宏明 竹内 延夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.99-104, 2000-02-05
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

近赤外波長域で発振するInGaAsP分布帰還型半導体レーザーを光源とし, 耐食性を有する多重反射サンプルセルを用いて窒素及び塩化水素ガス中微量水分の定量を試みた. 一般に, 可干渉距離が長い半導体レーザーと多重反射セルと組み合わせた場合, 多重反射により大きな干渉ノイズが生じ, 分析システムとしての測定感度を低下させる問題がある. 本研究では, 測定感度を高めるため, 半導体レーザーの特性や測定条件に合わせて多重反射セルの鏡間距離を調整した. これにより, 干渉ノイズの波長周期を吸収信号の線幅から分離させる. その上で, 多段移動平均処理によって光干渉ノイズの影響を除去し, 高感度な定量測定を実現した. 多重反射セルの吸収光路長を20mに設定した場合, 窒素ガス中の水分をppbオーダーまで実測することが可能となり, 検出下限は2.3 ppbであった.
著者
辰巳 賢司 小川 信明 渡辺 巌 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.154-158, 1983-03-05

溶液中の溶存酸素を酸化剤として用いたときの化学溶出クロノポテンショメトリーによる,カドミウム(II)及び銅(II)の定量について検討した. この方法の最大の利点は,実験装置が非常に簡単なことである. カドミウム(II)の場合には,(1O^<-6>〜1O^<-4>)Mの範囲で直線的な検量線が得られたが,銅(II)の場合には,溶液中の銅(II)白身が酸化剤として働き1O^<-5>M以上の高濃度域において検量線が直線からずれる傾向が見られた. 銅(II)が1O^<-4>M共存しても,(lO^<-5>〜2×1O^<-4>)Mの範囲でカドミウム(II)の定量には問題がなかった. しかし,(1O^<-5>〜3×1O^<-4>)Mの範囲における銅(II)の定量時にはlO^<-4>Mカドミウム(II)の共存は妨害となり直線的な検量線は得られず,カドミウム(II)共存下の銅(II)の定量には,析出電位を変え,銅のみを析出させ定量することが必要であった.
著者
松島 肇 半谷 高久
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.505-511, 1975
被引用文献数
1 4

河川水を加圧型濾過器で濾過水と浮遊物質とに分離して水中の多環芳香族炭化水素の分析法を検討した.まず,濾過水についてはクロロホルム抽出し,又浮遊物質はシクロヘキサン-エタノールの混合溶媒によりソックスレー抽出し,各抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した.次に,フロリジルカラムを用いてベンゼン溶離でクリーンアップし,流出液を減圧下で1ml以下に濃縮した後,シリカゲルカラムを使用してイソオクタンで脂肪族炭化水素を,イソオクタン-ベンゼン(1:1)で多環芳香族炭化水素を溶離分画した.更に,多環芳香族炭化水素分画を減圧下で蒸発乾固し,それに一定量のベンゼンを加えて溶解し,マスフラグメントグラフィーにより11種の多環芳香族炭化水素を定量した.<BR>本分析法は従来の方法に比較して,薄層クロマトグラフィーなどの前処理による各多環芳香族炭化水素の単離という煩雑な操作が必要ない上に,濾過水・浮遊物質ともに数ppt以上存在すれば定量が可能であるなどの利点がある.本法の適用例として多摩川河川水を分析した結果,濾過過水・浮遊物質ともフルオランセン,ピレン,3,4-ベンゾピレン,1,12-ベンゾペリレンなどを数pptから100pptの範囲で同定・定量された.