著者
内村 泰 小島 陽一 小崎 道雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.881-887, 1990-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2 10

1. 構成微生物により次の3グループに分けられた。A: Saccharomycopsis属酵母優勢型B: Rhizopms属中心の糸状菌優勢型C: 菌糸状酵母と糸状菌共存均衡型これら3グループに分類されたチャン・ボーも希釈平板を行うことにより, 全試料中からSaccharomycopsis属酵母とRhizopus属中心の糸状菌が共存することが確認された。2. 糸状菌優勢型の餅麹を用いて蒸煮米の糖化を行ってみたが, 他の餅麹試料を用いて糖化を行ったものに比べて非常に弱いものであった。3.糸状菌およびチャン・ボーのアミラーゼ活性を試験した結果, 分離した15株の菌株のうち, アミラーゼを生産していたものはRhixopus sp.の5株とAspergillussp.1株の計6菌株のみであった。他の菌株のアミラーゼ活性はきわめて弱かったことから, チャン・ボーより分離される糸状菌はそのすべてが必ずしもアミラーゼ生産に関与しているとは考えられず, チャン・ボーの主糖化菌はSacCharomycopsis fibuligeraであり, Rhizopus sp.や, 若干のASpergillus sp.などの糸状菌が, 補足的に糖化に関与しているものと考えられた。以上のことから, これまで報告してきたSaccharomycopsis属酵母がアミラーゼ生産を行うの主糖化菌であることを支持する結果となった。同行を許可された田部井淳子氏を隊長とするブータン遠征女子登山隊に感謝します。
著者
小泉 幸道 村 清司 内村 泰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.901-905, 1996-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

Dominant lactic acid bacteria in 26 kinds of Chinese starter “Murcha” from 25 different parts of Kingdom of Nepal were investigated. Lactic acid bacteria were isolated from all 26 of Kinds of “Murcha”, each of which had about 103 colony forming units of lactic acid bacteria per gram “Murcha”. Pediococci accounted for 92% of 248 lactic acid bacteria isolated and were identified as Pediococcus pentosaceus.It showed homolatic fermentation with formation of DL-lactic acid.Other lactic acid bacteria were identified as Lactobacillus plantarum in 5 kinds of “Murcha”, Lactobacillusbrevis in 2 kinds, and Lactobacillus casei subsp. rhamnosus in one kind.The results indicate thatdominant lactic acid bacteria in “Murcha” from Nepal is Pediococcus pentosaceus which would be responsible for lactic acid formation in “Murcha”. The findings support the results of our previous studies on lactic acid bacteria in Chinese startes, “Bubod” from Philipines, “Ragi” from Indonesia, “Luck pang” from Thailand and “Chang poo” from Bhutan.
著者
内村 泰 岡田 早苗 小崎 道雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.55-61, 1991-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2 6

(1) ラギ中より分離された乳酸球菌としては, 四連球菌であるP.pentosaceus, 桿菌としてL.fermentum, L. plantarumの3菌種が分離された。(2) しかしこれらの菌の中でもP.pentosaceusが圧倒的な菌数を占めることから, この菌がラギ中の乳酸菌の主要菌であり, ラギを用いて酒の醸造を行う場合の主発酵菌であることが示唆された。(3) ラギから, 四連球菌であるP.pentosaceusが, 非常に高い頻度で分離されてくる原因として, 天然開放で製造されている餅麹中で当然その存在が予想された各種乳酸菌のうち, 増殖速度の違いにより生育の早い球菌が, 製造されたラギ中で先に増殖すること, また分離菌を用いて桿・球両菌を用いて比較してみると, 球菌は桿菌に較べ乾燥耐性が大であることなどから, ラギ製造過程において四連球菌が選択的に, 生き残ったのではないかと推察した。
著者
内村 泰 新村 洋一 小原 直弘 小崎 道雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.62-67, 1991-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 7

1.得られた乳酸菌のうち桿菌は非常に少なく, また球菌の大部分は四連球菌であった。この結果から食酢醸造用餅麹ルクパン中の乳酸菌は, 東南アジア諸国で広く用いられている酒醸造用餅麹と同様に, 四連球菌が主要菌であり, 他の形状のものは非常に少ないとした知見を支持する結果となった。2.得られた酵母は分離した全株が菌糸状酵母であり, 当然その存在が考えられた球状酵母は, 全く分離されないという興味二ある結果となった。3.各ルクパンを5日毎に順番に添加する方法により食酢を仕込み, 生産される酢酸量は市販されている日本産タイ国産の食酢製品と比較するとその量は半分以下であった。4.この酢酸量が少なかった原因として, ルクパンが雑菌を含め多種の菌株が存在していることから, 純粋培養された優秀な菌株を用いて醸造を行っているのではなく, それぞれの菌が生産している発酵生産物をさらに資化しているとも考えられた。5またルクパン中に, 当然存在が考えられるアルコール発酵酵母が分離されず, 菌糸状酵母のみであったことは, 菌糸状酵母が糖化生産した糖を直接酸化して, 酢酸発酵を行わざるを得ないことから, 代謝上非常に効率の悪い発酵を行っているのではないかとi推察した。
著者
鈴木 了 佐武 憲二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.551-554, 1969-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

ピール, サイダー, 水についての気温による最適飲用温度を調査した。Thurstone's case V型構造に基づく一対比較法による官能検査を実施し, 解析後, その好みの度合を尺度化した。その結果, 気温が高くなるにつれて最適飲用温度は逆に低下する傾向, および品温に対する好みの度合が強くなる (好き嫌いがはっきりしてくる) 傾向が認められた。湿度を極端に高くすると強い不快感のために判別能力を失い, うまさが判らなくなることも認められた。
著者
島津 善美 上原 三喜夫 渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.117-122, 1982-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
36

健全ブドウ果汁 (7品種), 通常ワイン (白;10点, 赤;10点) および貴腐ワイン (11点) のウロン酸 (グルコン酸ガラクチュロン酸, グルクロン酸) について, 定量を行うとともに, ワイン酵母Sacch. cerevisiae IAM4274と乳酸菌Leu. mesenteroides var. lactosum234によるウロン酸および主要有機酸成分の分解について検討した。1. 健全ブドウ果汁および通常白ワインの総ウロン酸含量は, 少ないが, 貴腐ワインには, グルコン酸およびガラクチュロン酸が, 赤ワインには, ガラクチュロン酸が多量に認められた。2. Sacch. cerevisiae のアルコール発酵により, 果汁中のウロン酸は, ほとんど分解されずにワイン中に残存した。また, 本株により, クエン酸は僅かしか分解されなかった。3. ウロン酸は, ワインの酸味を強めるとともに, 収れん味と味の良い濃厚味を与えることが認められた。4. Leu. mesenteroides var. lactosumは, マロラクチック発酵の発生とともに, グルクロン酸を約46%, グルコン酸を約35%およびクエン酸をほぼ完全に分解した。本菌により, グルコン酸からD-乳酸および酢酸が生成されることが示唆される。終わりにのぞみ, 発表の許可をされたキッコーマン (株) 役員各位, また御高配を賜わった当研究所井口信義所長, 吉田文彦副所長ならびに乳酸菌を恵与された山梨大学工学部野々村英夫教授に深謝する。さらにまた, 本研究に御協力いただいた盛進製薬 (株) 小沢善徳博士およびマンズワイン (株) の各位に感謝する。本研究の大要は, 昭和55年度日本醗酵工学会 (大阪) で発表した。