著者
仲村 永徳
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.445-449, 1998-04-15

はじめに 精神科臨床で憑依現象を見ることは珍しくない。憑依状態の基礎疾患は,心因反応,祈?性精神病,非定型精神病,精神分裂病など心因性疾患から内因性精神病に至るまで精神障害のすべてにわたって広範囲に発生しうるが,その表現形態は文化によっても大きな影響を受け,日本各地で様々な憑依現象が報告されてきた。文化人類学から精神病理現象にわたる多面的な憑依現象を臨床事例を通して検討してみた。以下は多分に,私見を交えた沖縄からの報告である。
著者
苗村 育郎
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.413-421, 2014-05-15

はじめに 本稿のテーマは大学生と大学教職員のメンタルヘルス問題の展望ということである。しかし現状をふまえた詳細な将来展望を期待されているならば,これはなかなか難しい。その訳は第1に,大学の数はすでに800校近くもあり,学生数だけで310万人を超えている5)(高等教育全体の学生・教職員を合わせると関係者の数は400万人前後になるのではないか)。それぞれが設立母体や歴史や規模や性格を異にする複雑な対象である。第2に,教育改革・大学改革とならび憲法改正やグローバル化が叫ばれているわが国の現状では,大学の使命や将来像もその細部は刻々変わっていくだろう。この状況変化に適応できる学生と不適応を生じる学生の性格や特性も変化していくに違いない。第3に,メンタルヘルスは何よりもまず個人の心の問題であるが,個性や人格は百人百様であり,これを精緻に論じることはなお困難である(性格学や人格学が成立していない)8,9)。したがってこれらの問題を限られた原稿で十分論じるのは難しく,本稿もある程度おおざっぱで,筆者の主観でまとめた見解も多いことを,あらかじめお断りしておかねばならない。 第1の状況を補足すると,国公私立の諸大学のうち国立大学法人は85校前後であり,この部分に関しては,(国立大学法人)保健管理施設協議会で緊密な連携と情報交流があるし,休退学や自殺者の実数も把握されている3,4)。しかしさまざまな私学や公立大,さらに国立高等専門学校や各種の専門学校,また各種の予備校や資格取得のための教育期間(企業も含む)などについては,その細部を把握しきれない。引きこもりや不適応の学生を集めて支援教育活動を行っている各種施設などについても,筆者は断片的な情報しか持たない。大学という名称ではなくとも,これらも重要な高等教育機関であり,時代の中で若者達が示す同じような問題に直面していると推定される。若者のメンタルヘルスは,これらも含めて議論されるべきであるが,詳細はそれぞれの組織に身を置いて問題に取り組んでいる方から別の機会に述べていただくべきだろう。 本稿では,中規模の国立大学を中心とした視点から問題を取り上げており,私学の経営や旧帝国大学の国際戦略などに関わる観点は抜けていることもお断りしておく。以下ではまず,(1)大学メンタルヘルスの領域拡大について述べ,次に(2)この問題を担当する学内組織の要点を述べる。さらに(3)最近重視されているいくつかの各論を簡単に解説し,最後に(4)今後の大学教育とメンタルヘルス支援の課題について述べることにしたい。
著者
関 なおみ
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.462-464, 2003-06
著者
森田 正
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.582-585, 1975-11-25

1.はじめに 第1子が誕生して喜んだのもつかのま,2昼夜ほどして母乳分泌が始まると,乳管の流通障害のため,妻は激しいうつ乳に,子は補乳困難でともに泣いた。授乳しようとしても,吸乳器にかけても,楽になるどころかうつ乳がひどくなるばかり。子は空腹のためにミルクを与えない限り泣きやまない。それでも病院では乳房に対する処置を,何ひとつしてくれなかった。それに,病院には同じ苦しみにあっている人がたくさんいた。 以来わたしは,乳房マッサージの研究を続け,その成果の一部は,本誌の昭和41年11月号,42年11月号,44年の2月号と5月号などで報告してきた。現在も乳房マッサージの研究を続けているが,産婦と接しているといろいろなことに気づいたり,疑問にぶつかったりする。そして気づいたことの裏づけをとるため,また問題を解決するために,岐阜市内の高橋産婦人科医院院長高橋政郎医博のご指導とご協力のもとに,いろいろアンケート調査を試みた。以下その中から2,3を紹介してみたいと思う。
著者
山上 孝司
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.826-831, 2001-11
著者
石垣 琢麿
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.939-947, 2012-09-15

はじめに 認知行動的アプローチの発展により,特に英国において1980年代以降,統合失調症の症状に関する認知心理学的メカニズムの実証的解明と介入・援助法の開発が盛んになった1)。たとえば,妄想を抱きやすい患者に特有の認知バイアスは,自己奉仕バイアス(原因帰属のありかた),「結論への飛躍」バイアス,「心の理論」の欠如,否定的な自己イメージ,などだと考えられている2)。 ハンブルク大学のMoritz教授らは,こうした現状をふまえて,妄想の認知バイアスに対する新たな心理教育・介入法を開発し,メタ認知トレーニング(Metacognitive Training:MCT)と名付けた2)。筆者は原著者の許可を得てMCT日本語版を作成した(http://www.uke.de/mktから無料ダウンロード可能だが,最新の日本語版と日本語版マニュアルについては筆者までご連絡いただきたい)。本稿ではマニュアルに沿ってMCTを紹介する。
著者
横山 尚洋
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.p839-842, 1992-08
著者
湯澤 直美
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.496-501, 2016-07-15

先進諸国における「子どもの貧困」が社会問題化するなか,日本においても政府による対応が着手された.2013年6月には「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平成25年法律第64号)が成立し,2014年1月に施行されている(以下,子どもの貧困対策推進法).これを受け,2014年8月には「子供の貧困対策に関する大綱」(以下,大綱)が閣議決定された.また,生活困窮者への対応として,2013年12月には「生活困窮者自立支援法」(平成25年法律第105号)が成立し,2014年4月に施行されている.本稿では,これらの法律・大綱の内容を解説するとともに,施策の動向や課題について概観する.