著者
石原 理
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.334-338, 2016-04-10

「家族」をどのように考えるか,さらに言うならば,どのように定義するかと誰かに尋ねることには,十分に気を付ける必要がある.そもそも,そのような質問を発すること自体が,問題だと思われる可能性がある.なぜなら,個人の信条や信念,また価値観の投射として,さらに個人のアイデンティティを構成する根幹として,その人が「家族」のことを考えている可能性があるからだ. しかし,どのような意図で「家族」の仮想的現実を個人が描いているとしても,現実の「家族のかたち」を見ずして,現代の「家族」を定式化,抽象化することは適切でないであろう.
著者
川島 敏生
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.283-288, 2001-04-15

目的 下肢スポーツ傷害の理学療法評価において,下肢のアライメントや筋力の測定は重要である.アライメントは静的アライメントと動的アライメントに分けられるが,スポーツ傷害の発生を考えた場合,荷重下での動的アライメントの異常が問題となる1).一方,下肢の運動様式はSteindler2)によりOpen Kinetic Chain(以下OKC)とClosed Kinetic Chain(以下CKC)に分類された.現在はOKCは非荷重での単関節の運動様式,CKCは荷重位での多関節の運動様式とされている3)が,スポーツ場面を考えた場合,CKCの筋力がOKCより重要となる4). しかし,臨床場面で静的アライメントの測定やOKCの筋力測定は行えるが,動的アライメントの定量化やCKCの筋力測定は難しい.そこで今回,動的アライメントの定量化を試み,静的アライメントと動的アライメントの間に相関関係が認められるか否かを検討した. また,CKCとOKCの筋力測定を行い,両者の間に相関関係が認められるか否かを検討した.これにより相関関係が認められれば,日常臨床で行われている静的アライメントやOKCの筋力測定から動的アライメントやCKC筋力を推測することが可能ではないかと考えた.更に,その発生において個体要因が指摘されている膝前十字靱帯(以下ACL)を損傷5-8)した者に対して同じ評価を行い,健常者と比較することでACL損傷発生における個体側の機能的・器質的要因を検討した.
著者
斎藤 昭 菊地 臣一 矢吹 省司 武田 浩一郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.231-236, 2002-03-25

抄録: 変形性股関節症が仙腸関節に与える影響を明らかにすることを目的とした.対象は変形性股関節症の男性7例,女性130例の合計137例である.変形性股関節症の罹患側は,右側が46例,左側が50例,そして両側が41例であった.これらの症例に対し,仙腸関節痛,変形性股関節症の罹病期間,肥満度,出産回数,そして股関節可動域を調査した.さらに,単純X線像から仙腸関節部の骨硬化像,脚長差,および骨盤輪不安定性の有無を検討した.その結果,仙腸関節痛を認めた症例は27例(19.7%)であった.仙腸関節痛は,比較的若年者や骨盤輪不安定性を有する症例に出現しやすい.仙腸関節部の骨硬化像は78例(56.9%)に認めた.この所見は比較的若年者や変形性股関節症の罹病期間が長い症例に認めやすい.また,脚長差が大きい症例や下肢長の長い側に骨硬化像が出現しやすい.しかし,仙腸関節部の骨硬化像の存在が疼痛を直接反映するとはいえない.
著者
田中 尚喜
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.540-543, 2015-06-25

はじめに 履き物としての靴は,人間の歩くなどの活動を支持すること,足部や身体を保護することが最重要の事項と考えられるが,古代エジプトでは神官などの身分を示すものとして使用された.当然,機能的ではない華美な装飾も用いられた.したがって,歴史的な流れの中で,機能的な靴とファッショナブルな靴など,アンビバレントな状況で進化してきた.また,モータリゼーションの影響もあり,本邦のみならず世界的に歩行距離が減少してきている.本来,ファッショナブルな靴も履く側の足に合わせて使用されるものであったが,昨今の靴の選択要素として,短期間の履き心地が重要となっている.オーダーメイドの革靴では使用するまでには1カ月は必要とするのだが,非日常的な遠足や運動会などの直前に既製品を選ぶ際に,履き心地を重視するあまり,「芯のない靴」,言い換えるとソックスを履くのと変わらない靴を購入する方が増えている.確かそれらの行事のお知らせには,靴に対しては「履き慣れた」という言葉が付いていたと記憶している.科学技術の進歩と逆行して,足部は間違いなく退化の一途となっている. そこで,靴と履く側の人間の変化を考慮したうえで,現在の足部障害について検証してみる.
著者
福井 トシ子
出版者
医学書院
雑誌
看護管理 (ISSN:09171355)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.254-261, 2009-04-10

はじめに 医療技術の進歩,患者の高齢化,重症化に伴い,看護師の役割はますます複雑多様化してきている。さらに,看護基礎教育の変容なども関連し,新人看護師の能力はすでに報告されているように医療環境の変化に対応するニーズに応えられなくなってきている。 各施設では,新卒看護師の教育に多くの時間を費やし,努力している一方で,経験年数の比較的短いプリセプターに新卒看護師教育への責任や実際の業務が任され,教える側も教わる側も余裕のない状況で新卒看護師教育が行なわれているのが現状である。また,実際に新卒看護師あるいは経験の少ないスタッフによるインシデントやアクシデントが起きていることからも,安全が確保され,かつスタッフの負担の軽減ができるような,教育システムをつくることが急務であろう。 厚生労働省も,こうした臨床現場における卒後教育・看護基礎教育における現状と課題をうけて,新人看護師到達目標と指導指針を提示し,新卒看護師研修制度の必修化に向けて動き出している。 しかし,臨床の現場では,マンパワーの確保や教育体制の質的な問題から,研修制度を取り入れている施設はごくわずかである。また,新卒看護師の教育に関する報告は,厚生労働省などの調査や,各施設・教育機関からの報告など多数みられ,新卒看護師の教育方法・内容の実態や,新卒看護師の実践能力(技術の習得状況)の経時的な変化,基礎教育での教育のあり方などが述べられてきた。しかし,施設の教育方法・内容,新卒看護師の背景,実践能力の経時的な変化を合わせて検討したものは見当たらない。つまり,どのような教育体制でどのような教育方法をとれば,厚生労働省の提示した指針,研修制度を実践できるのか,具体的な方法はまだ明らかにされてはいないということである。 そこで,教育体制,教育方法・内容,新卒看護師の背景,技術習得の経時的な変化を明らかにすることを目的に,日本私立医科大学協会看護部長会議で実態調査を行なったので報告する。

1 0 0 0 臨床眼科

出版者
医学書院
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, 1977-03
著者
池岡 義孝
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.700-704, 2015-12-15

日本家族社会学会と機関誌『家族社会学研究』の歴史 日本家族社会学会(以下,本学会)の機関誌『家族社会学研究』は1989年の創刊で,2015年10月末時点で第27巻第2号まで刊行されている。本学会は,家族に関する理論的・実証的および実践的な研究を推進し,個人と社会の発展に寄与することを目的として1991年に設立された学術団体であり,日本学術会議協力学術研究団体となっている。現在の会員数は約700名で,家族に関わるさまざまな分野を専攻する大学・短大・専門学校などの教員,研究機関の研究員,家庭裁判所の調査官,ジャーナリスト,大学院生などの会員によって構成されている。学会の活動は,年1回の学会大会,機関誌『家族社会学研究』の年2回の発行を中心としており,これらを通じて,会員の研究成果の公表を行なっている。 このように,『家族社会学研究』は学会設立に先行して刊行された。学会は,1968年から毎年20年以上,夏に合宿形式で行なわれていた「家族社会学セミナー」を前身としており,1980年代半ば以降から,学会化が模索されていた。そのための一連の改革の中で,機関誌の定期刊行が大きな柱の一つになっていた。そこで,まず機関誌の定期刊行を学会の発足に先行させたのである。したがって,学会が発足するまでの4号の編集委員会体制は暫定的なものだった。1992年からは,選出理事の任期の3年ごとに理事会が交代し,現在は2013年から第8期の理事会によって運営されており,そのもとにある編集委員会も第8期となっている。当初は年1回の刊行だったが,2000年からは年2回刊行する2号体制となった。
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.540-543, 2015-06
著者
能智 正博
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.597-601, 2005-11
著者
吉田 穂波
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.471-478, 2015-06-25

新人産婦人科医師として,分娩介助だけでなく母子の愛着形成のサポートの大切さを助産師から学び,母親として,妊娠中から産後まで助産師から大切に支援された経験のある筆者。 その経験と内閣府の少子化対策策定委員としての立場から,助産師だからこそできる少子化社会対策を述べていただきました。
著者
河合 蘭
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.938-945, 2015-11-25

妊娠・出産の世界では「晩産化を食い止めなければ」という声が高まる一方だ。しかし,女性たちになかなか産まない理由を聞くと,「早く産んだほうがいいのはわかっているのですが,こればかりは相手がいることなので」と言う人が実に多い。 国の統計でも,たしかに,未婚率はどんどん上がっている(図1)。30〜34歳の未婚者は,1970年代までは男女とも10人に1人程度だったが,今や男性は約半分,女性は3人に1人となった。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によれば,「いずれ結婚するつもり」と回答する未婚者は今なお約9割を占めているが,実際には,相手が見つからないのだ。
著者
高木 俊輔 正木 秀和 大島 一成 車地 暁生 西川 徹
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.179-182, 2010-02-15

はじめに Cytochrome P450(CYP450)は肝臓において薬物の酸化的代謝を触媒する酵素群で,約20種類のサブタイプがあり,一般臨床において用いられる治療薬の多くがこの酵素群により代謝および分解される。また,こういった治療薬はCYP450酵素群に対してその酵素活性を抑制あるいは誘導することが知られており,複数の薬物が同時に用いられる場合はおのおのの薬物の代謝動態が複雑な相互作用によって影響される5)。たとえば,本症例のように関節リウマチ治療薬として抗ヒトtumor necrosis factor(TNF)αモノクローナル抗体製剤(infliximab)が使用される場合,この投与によって免疫力が低下するため,抗結核薬の予防的投与が必須となる。その場合,抗結核薬の1つであるrifampicinはCYP450酵素群を誘導し4),定型的抗精神病薬のhaloperidolの代謝を顕著に促進することが報告されている2,6)。 今回,関節リウマチを合併し,infliximab投与のためrifampicinを併用したところ,それまで投与されていたhaloperidolの血中濃度が多大な影響を受けた統合失調症の1例を経験したので,以下に報告する。 なお,個人情報保護の観点から,症例の細部においてはいくつかの変更を施した。また,本文中の薬剤量は1日投与量を記載した。