著者
バゼル 山本登紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.356-365, 2005

2004年10月30日,米国ハワイ州オアフ島にあるマノア渓谷に観測史上最悪の集中豪雨が襲った。流木や瓦礫(がれき)でふさがれたマノア川の橋が流れをせき止め,鉄砲水がハワイ大学マノア校キャンパスを直撃し,40施設が多大な被害を被った。中でも太平洋地域最大の研究図書館であるハミルトン図書館の受けた被害は20億円以上という大惨事となった。図書館機能を担う中枢部が全壊し,1世紀近くの年月をかけ収集し,保存してきた政府刊行物,地図,航空写真は泥水の中に埋没した。本稿はハミルトン図書館が体験したこの大災害の記録である。災害の実態,対応,復旧の実体験を関係者のインタビュー,災害記録等を基に紹介する。
著者
村下 公一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.728-736, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)

弘前大学は,政府COI(センター・オブ・イノベーション)拠点の一角を担っている。日本が超高齢社会を迎え,医療費増大が社会的問題となる中,「寿命革命」を旗印に,「リスクコンサーン型医療」へと転換して健康長寿社会の実現に取り組んでいる。弘前大学COI拠点の最大の特徴は,地域住民との厚い信頼関係に基づき,10年以上に及ぶコホート研究(岩木健康増進プロジェクト)によって集積された膨大な超多項目健康ビッグデータ(約600項目)の存在である。現在,この健康ビッグデータを基盤に,GEヘルスケア・ジャパンをコアに,イオンや花王,ライオンなど30以上に及ぶ強力な産学官連携チームによって,認知症などの疾患予兆発見と予防法開発にチャレンジしている。また,本ビッグデータは住民の健診情報が基盤となることから,個人情報保護法改正やマイナンバー導入を見据えた慎重な対応を進めている。
著者
イーグリング ロバート 福田 佳子 浦上 裕光 ウィルソン エマ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.475-483, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)

本稿では,オープンアクセス(OA)の基本的なコンセプト,背景,主なOAのモデルとその特徴の概要,OAに関してRoyal Society of Chemistry(英国王立化学会,RSC)が果たすべき役割について取り上げる。研究助成機関の役割や方針が学術出版に大きな影響を与えている環境ではあるが,出版業界ではOA化が進んでいることもあり,化学分野においても,この環境の変化が顕著に反映されている。化学分野ではOAはまだ受け入れられているとは言えない状況だが,このようなOA移行期にRSCがどのように学術出版の発展や出版オプションを多数提供し,著者や図書館関係者といったOA出版関係者を支援しているのかについて述べる。
著者
川島 秀一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.232-240, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
23

生命科学分野の多種多様なデータベースは,それぞれが異なる語彙や形式によって記述されており,横断的にデータを統合して利用する際の妨げになっている。この問題を解決するため,JSTバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)と情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)は,生命科学データベースを開発している日本の研究グループに対しRDFの採用を推奨してきた。RDFを採用することで,データベース間の相互運用性が高まり,データの自動処理が進むと考えられている。また,NBDCは,日本で開発されている生命科学分野のRDFデータを一覧できるように,ポータルサイトの運用を開始した。本稿では,生命化学データベースをRDF化することの利点や,国内および世界における状況を述べ,NBDC RDFポータルについて紹介する。
著者
谷藤 幹子 田辺 浩介
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-116, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

2010年に物質・材料研究機構(NIMS)が公開を開始した研究者総覧「SAMURAI」は,広い材料科学分野にわたるNIMS研究者を対象として,分野やキーワード検索からプロフィール情報を参照するサービスである。NIMS内の関係部署が個別にもつ独自データベースから,所属や業績などの情報を機械的に取得し,CrossRefなどの外部データベースと照合してタイトルや著者情報を正確に修正し,論文のフルテキストや特許情報源にリンクするまでのデータフローは,当時としては先端的なデータ処理のアルゴリズムをもつ,日本初の本格的な研究者プロフィールサービスであった。本稿では‘次世代’と呼ぶことのできるプロフィールサービスとはどのようなものかという視点で,IDという情報の同定の仕組みからソーシャルネットワークとのシナジー効果までを,SAMURAIに次ぐ「Ninja」構想を例として,(1)SNSを利用した個人プロフィールのリアルタイムな拡散,(2)グループプロフィールへの拡張,(3)DOIやORCIDという識別子をベースにしたモビリティー機能への展開として述べる。併せて機関リポジトリ,学会会員サービスとしての可能性を提案する。