著者
小林 隆志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.86-94, 2009

鳥取県立図書館は,ここ数年,利用者サービスの点で大きく変革している。その変革が意図しているのは,「もっと県民に図書館の基本的な機能を理解して欲しい」,「図書館を,地域や個人の課題解決に資する情報提供が可能な頼りになる機関として認識して欲しい」という2点である。この目標にたどり着くために行ったSWOT分析による現状分析の結果と,それに基づく事業内容について,(1)図書館の機能を県民・行政職員に知らせているか(強みを生かしているか),(2)チャンスだからこそ,今やっておかなければならないことはないか(機会),(3)弱みをカバーする方法はないのか,(4)脅威は本当に脅威か,の4つの視点から紹介した。また,より具体的な事例として,文部科学省の「地域の図書館サービス充実支援事業」を受託して実施した「図書館で夢を実現しました大賞」について報告する。
著者
丸山 宏
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.269-275, 2013
被引用文献数
3

ビッグデータが普及するにつれ,データの多くはデータセンターではなく,ネットワークの辺縁部(エッジ)に格納され,処理される「エッジ・ヘビー・データ」の時代がくるとわれわれは予測する。このためのコンピューター・アーキテクチャは,現在のクラウドコンピューティングとは大きく異なるものになるだろう。われわれはエッジ・ヘビー・データ向けのアーキテクチャKrillの開発を進めている。このアーキテクチャは,データ価値密度を定義するデータ価値場と,確率的プログラミングモデルからなる。われわれは,この大きな変化を千載一遇のチャンスと捉え,ITのリーダーシップを取っていかなければならない。
著者
山崎 茂明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.318-321, 2013-08-01 (Released:2013-08-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1
著者
児玉 晴男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.416-424, 2012-09-05 (Released:2012-09-01)
参考文献数
12

わが国の教育コンテンツのネット公表は,オープンコースウェア(OCW)やiTunes Uの仕組みの中で行われている。その仕組みは,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスやフェアユースなど著作権(copyright)の保護と制限の考え方,すなわち,米国の社会制度の面からの理解・解釈による。米国と日本の社会制度の違いから,教育コンテンツのネット公表を進める上では,わが国の社会制度の視点からの法的・倫理的な権利処理が明らかにされなければならない。本稿は,放送大学教材の公表にあたって実際に行われている法的・倫理的な対応を踏まえて,わが国における教育コンテンツのネット公表に伴って必要となる著作権と関連権からの権利処理について論説する。
著者
日高 真子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.183-191, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
11

国内学会発行の学術論文誌において,著者以外の利用者への著作権や利用に関する情報の公開・周知は十分ではなかった。そこで,電子ジャーナル論文や論文の補助資料の取り扱いについて,ジャーナルの利用規約とコンテンツ利用の現状に関する文献調査とヒアリング調査を行った。学会の状況,学術コンテンツの利用状況および利用者の実情の3点に着目し,調査結果を踏まえ作成した利用規約ガイドライン(案)を紹介,提案する。
著者
時実 象一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.534-542, 2009 (Released:2009-12-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Internet ArchiveはBrewster Kahleによって1996年に設立された非営利団体で,過去のインターネットWebサイトを保存しているWayback Machineで知られているほか,動画,音楽,音声の電子アーカイブを公開し,またGoogleと同様書籍の電子化を行っている。Wayback Machineは1996年からの5,000万サイトに対応する1,500億ページのデータを保存・公開している。書籍の電子化はScribeと呼ばれる独自開発の撮影機を用い,ボストン公共図書館などと協力して1日1,000冊のペースで電子化している。電子化したデータを用いて子供たちに本を配るBookmobileという活動も行っている。Kahle氏はGoogle Book Searchの和解に批判的な意見を述べているほか,孤児著作物の利用促進やOne Laptop Per Child(OLPC)運動への協力も行っている。
著者
バゼル 山本登紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.356-365, 2005 (Released:2005-09-01)

2004年10月30日,米国ハワイ州オアフ島にあるマノア渓谷に観測史上最悪の集中豪雨が襲った。流木や瓦礫(がれき)でふさがれたマノア川の橋が流れをせき止め,鉄砲水がハワイ大学マノア校キャンパスを直撃し,40施設が多大な被害を被った。中でも太平洋地域最大の研究図書館であるハミルトン図書館の受けた被害は20億円以上という大惨事となった。図書館機能を担う中枢部が全壊し,1世紀近くの年月をかけ収集し,保存してきた政府刊行物,地図,航空写真は泥水の中に埋没した。本稿はハミルトン図書館が体験したこの大災害の記録である。災害の実態,対応,復旧の実体験を関係者のインタビュー,災害記録等を基に紹介する。
著者
浜田 雅美 佐久間 せつ子 三沢 一成
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.642-652, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

「医中誌Web」は,国内で発行される医学およびその関連分野の定期刊行物2,500誌以上に掲載される文献情報を収録するデータベースであり,2000年よりサービスが開始された。収録文献数は,年間30万件以上で,現在650万件を超えている。各文献には,専門の索引者が「医学用語シソーラス」に基づき,主題にふさわしいディスクリプタ(見出し語)を付与している。「医学用語シソーラス」は,「医中誌Web」の索引および検索のツールであり,米国医学図書館が作成するMedical Subject Headings (MeSH) に準拠して作成されている。1983年発行の第1版から何度かの改訂をへて,MeSH2005年版に準拠した第6版が,2007年1月に発行された。第6版には,25,317語のディスクリプタが収録され,それに関連づけられた30万語以上の同義語が,用語管理システム内に登録されている。これにより,索引の際の的確なディスクリプタの選択が容易になっている。さらに,「医中誌Web」において,シソーラスを意識せず的確な検索結果を得るための,ディスクリプタへの自動マッピング機能に活用されている。本稿では,「医学用語シソーラス」に基づく索引ルールや,医中誌データベース作成システムのうちの,索引支援システムについて紹介した。
著者
小林 龍生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-156, 2012 (Released:2012-06-01)
被引用文献数
1 1

本稿では,日本における国際符号化文字集合を含む文字符号標準の変遷を,国語施策との関わりを軸に概観すると共に,人名の表記に用いる漢字の特殊性と情報通信機器に実装する際の問題点について述べる。
著者
河野 崇
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.461-470, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
19

シリコン神経ネットワークは,神経細胞に対応するシリコンニューロン回路,シナプスに対応するシリコンシナプス回路を組み合わせることによって作られた電子回路版神経ネットワークである。脳神経系の電気生理学的活動をリアルタイムあるいはそれ以上の速度で模倣することにより,超低消費電力や少ないデータからの学習など脳神経系のもつ優れた特性を受け継ぐことができると期待されている。しかし,神経ネットワークにおける情報処理の原理が完全に解明されておらず,脳神経系に匹敵するシステムの実現のために,シリコン神経ネットワークの研究者も「構築による解析」の立場からこの問題に寄与することが求められている。このため,現代のシリコン神経ネットワークにおいてはモデルの設計方法がより重要であり,いくつかのアプローチが存在するが,それらについて簡単に解説する。
著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.753-763, 2009 (Released:2009-01-01)
参考文献数
18

創刊10年を迎えたメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)のビジョンやミッション,これまで果たしてきた役割を振り返る。同時に過去10年の学術ウェブの動向を個人によるブログ活用と機関リポジトリ等の組織の取り組みを中心に総括する。以上を踏まえて,今後の学術ウェブのあるべき姿を論じる。特に研究者や実務家,プロフェッショナルやアマチュアが相互に与え,与えられる双方的な関係を築けるような学術ウェブの必要性を説く。そして,その実現のためには学術ウェブ向けに設計された新しいプラットフォームが必要であることを主張し,ARGの役割を述べる。
著者
宮廻 正明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.845-854, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2

人類の共通財産である文化財は,保存と公開のバランスや紛争による破壊,流出の問題に直面している。文化財は唯一無二の存在であり,その真正性は本来,複製が不可能であるが,東京藝術大学ではアナログ技術とデジタル技術を混在させることで,オリジナルの質感,形状,素材,色彩,文化的背景までをも再現する「クローン文化財」の技術を開発し,特許権を取得した。本稿ではクローン文化財の開発目的と意義,今後の展望について,(1)日本文化の特質,(2)芸術のDNA,(3)クローン文化財の制作手法と展示例,(4)平和外交への活用,という4点から述べる。