著者
森 功次 林 志直 野口 やよい 甲斐 明美 大江 香子 酒井 沙知 原 元宣 諸角 聖
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.496-500, 2006-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3 11

ノロウイルス (NV) による集団胃腸炎は事例数患者数ともに毎年上位をしめ, その予防対策の構築が求められている. しかしNVは現在培養系が確立されていないため, その不活化の条件などに不明な点も多い. そこでノロウイルスと同じカリシウイルス科に属するネコカリシウイルス (FCV) が培養可能であることに着目し, 手洗いによるウイルス除去効果についてウイルス感染価と遺伝子量を指標にアルコール, クルルヘキシジン, 第四級アンモニウム塩, 成分としてヨード化合物, トリクロサン, フェノール誘導体を含むハンドソープを用いて検討を行った. その結果, 流水によるすすぎのみでもウイルス量が100分の1程度に減少することが明らかとなった. 手洗い時にハンドソープを使用することにより, さらにウイルス量の減少傾向が強まったことから, 手洗いはウイルス性胃腸炎の発生予防および拡大防止に非常に有効な手段であることが示唆された.
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.37-48, 2012-06-30

In the last section of Saint Genet (1952), Jean-Paul Sartre attempts to vindicate Jean Genet's immoral works. Sartre tries to save Genet from severe moral criticism in French literary world at the time. In this paper, I will organize Sartre's argument and examine his complex defense. According to Sartre, the immorality of Genet's works consists in the veriter's devious intention to invert our values and the bad influence he has on his readers. On the other hand, Sartre claims that Genet's works have some moral merits: to give readers some understanding of what Sartre calls 'solitary' positions such as Genet's, and to impress upon readers an identical possibility for themselves. Moreover, these moral merits are supported by the aesthetic appreciation of his works. The fact that readers could fully appreciate Genet's immoral works irresistibly points out to the readers the relation between themselves and the immorality of the works. It is not, however, clear how these moral merits are able to overcome the criticism against Genet. Moreover, because Sartre's argument presupposes an appreciation that deviates from Genet's own intention, which Sartre himself recognizes, it is not clear whether or not Sartre's attempted vindication can be viewed as a legitimate evaluation of Genet's works.
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.16-29, 2009

Dans la pensee de l'art chez le premier Sartre, l'image et le reel sont-ils distinctement separes? Sartre a-t-il meconnu la materialite de l'oeuvre d'art? Il serait excessif d'affirmer cela. Premierement, si l'on examine les concepts de <<spontaneite pre-volontaire>>, de <<degradation>>, et de <<motivation>> dans la theorie de l'image de Sartre, il apparait clairement que dans l'experience de l'oeuvre, le reel se maintient derriere l'imaginaire. La negation de l'existence de l'objet d'appreciations esthetiques ne signifie pas ne pas voir l'oeuvre. Deuxiemement, par comparaison avec le reve, l'experience de l'oeuvre d'art maintient des relations plus etroites avec le reel. Certes, le reve et l'experience esthetique constituent pareillement une experience de la conscience captive et concernent l'imaginaire, et Sartre lui-meme a d'ailleurs souvent decrit la ressemblance entre les deux. Mais dans L'imaginaire, a certains egards-notamment la distance vis-a-vis du reel, la facilite de la reflexion, et la nature du sentiment-, Sartre a clairement distingue l'experience esthetique de celle du reve. De ce point de vue, dans la theorie sartrienne, la realite de l'oeuvre, elle aussi, joue un role efficace.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.409-419, 2021-01-01 (Released:2021-12-10)

近年「アートをビジネスに活かそう」というメッセージを掲げた本が多数出版されている.本報告では,近年のこの動向をまとめつつ以下の4点を指摘する.この動向の書籍では,(1)「アート」という語は基本的に価値語として用いられている.(2)「解釈は自由だ」とされる一方で,アートの文脈の豊かさも強調されている.(3)「アート」「アーティスト」に関する主張が不適切に一般化されたり,逆にことさらアートのことでもない話がアートの特徴として語られたりしている.(4)想定されている芸術形式や芸術的価値に偏りがある.最後に,この動向を大学教育に導入するさいの注意点を,対話型鑑賞教育,授業履修者数,アーティスト・イン・レジデンスの3つに関して述べる.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.457-473, 2020-01-01 (Released:2020-07-15)

2015年のVOCA展に,コンセプチュアル・アーティストの奥村雄樹が作品を提出しようとしたところ,事務局側から出品を拒否された.本論はこの出品拒否事件をめぐってなされた奥村と事務局とのやりとりを読み解きながら,芸術作品のカテゴリーと作者性との関係を考察する試みである.作品の作者はどのようにして特定されるのか,また,作品の見方によって作者が変わることはありうるのか.こうした問いに対して本論は,作者性をめぐる近年の分析美学の議論を援用しながら「意図」や「責任」という観点から答え,最終的に作者の芸術的達成や責任を限定する一つの原理を提案する.それはすなわち,作品制作に複数の者が関わっている場合,あるカテゴリーにおいて一方の者に芸術的達成の責任を認めつつ,同時に同一カテゴリーにおいて別の者のみに作者性を付与することはできない,という原理である.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.365-381, 2021-01-01 (Released:2021-12-09)
参考文献数
33

近年の分析美学の領域では,理想的批評家や美的価値についての伝統的理論を再考しようという動きが高まっている.本論では,伝統的理論を批判的に再検討するその近年の動向を紹介し,その理論進展をふまえるとわれわれは専門家の意見にどのように耳を傾けるべきなのか,という問題を考察する. 本論はまず,伝統的な議論として,ヒュームが「趣味の標準について」で提示した論点を紹介し,次に最近の議論として,理想的批評家について検討しているジェロルド・レヴィンソンの議論を紹介する.その後,美的価値の快楽主義に対する近年の批判について検討する.本論ではとりわけ,ドミニク・ロペスが提示しているネットワーク説に焦点を当て,その利点と動機を明らかにする.最後に,そこまでの考察を元に,われわれ凡人は芸術批評をどのように読むべきか,という問題に答える.われわれは,批評家がそこで何を達成しているか,そして批評家がそこでどのような能力を発揮しているか,といった点に着目しながら批評文を読むべきである.
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.16-29, 2009-12-31 (Released:2017-05-22)

Dans la pensee de l'art chez le premier Sartre, l'image et le reel sont-ils distinctement separes? Sartre a-t-il meconnu la materialite de l'oeuvre d'art? Il serait excessif d'affirmer cela. Premierement, si l'on examine les concepts de <<spontaneite pre-volontaire>>, de <<degradation>>, et de <<motivation>> dans la theorie de l'image de Sartre, il apparait clairement que dans l'experience de l'oeuvre, le reel se maintient derriere l'imaginaire. La negation de l'existence de l'objet d'appreciations esthetiques ne signifie pas ne pas voir l'oeuvre. Deuxiemement, par comparaison avec le reve, l'experience de l'oeuvre d'art maintient des relations plus etroites avec le reel. Certes, le reve et l'experience esthetique constituent pareillement une experience de la conscience captive et concernent l'imaginaire, et Sartre lui-meme a d'ailleurs souvent decrit la ressemblance entre les deux. Mais dans L'imaginaire, a certains egards-notamment la distance vis-a-vis du reel, la facilite de la reflexion, et la nature du sentiment-, Sartre a clairement distingue l'experience esthetique de celle du reve. De ce point de vue, dans la theorie sartrienne, la realite de l'oeuvre, elle aussi, joue un role efficace.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.457-473, 2020

<p> 2015年のVOCA展に,コンセプチュアル・アーティストの奥村雄樹が作品を提出しようとしたところ,事務局側から出品を拒否された.本論はこの出品拒否事件をめぐってなされた奥村と事務局とのやりとりを読み解きながら,芸術作品のカテゴリーと作者性との関係を考察する試みである.作品の作者はどのようにして特定されるのか,また,作品の見方によって作者が変わることはありうるのか.こうした問いに対して本論は,作者性をめぐる近年の分析美学の議論を援用しながら「意図」や「責任」という観点から答え,最終的に作者の芸術的達成や責任を限定する一つの原理を提案する.それはすなわち,作品制作に複数の者が関わっている場合,あるカテゴリーにおいて一方の者に芸術的達成の責任を認めつつ,同時に同一カテゴリーにおいて別の者のみに作者性を付与することはできない,という原理である.</p>
著者
森 功次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.37-48, 2012-06-30 (Released:2017-05-22)

In the last section of Saint Genet (1952), Jean-Paul Sartre attempts to vindicate Jean Genet's immoral works. Sartre tries to save Genet from severe moral criticism in French literary world at the time. In this paper, I will organize Sartre's argument and examine his complex defense. According to Sartre, the immorality of Genet's works consists in the veriter's devious intention to invert our values and the bad influence he has on his readers. On the other hand, Sartre claims that Genet's works have some moral merits: to give readers some understanding of what Sartre calls 'solitary' positions such as Genet's, and to impress upon readers an identical possibility for themselves. Moreover, these moral merits are supported by the aesthetic appreciation of his works. The fact that readers could fully appreciate Genet's immoral works irresistibly points out to the readers the relation between themselves and the immorality of the works. It is not, however, clear how these moral merits are able to overcome the criticism against Genet. Moreover, because Sartre's argument presupposes an appreciation that deviates from Genet's own intention, which Sartre himself recognizes, it is not clear whether or not Sartre's attempted vindication can be viewed as a legitimate evaluation of Genet's works.
著者
森 功次 林 志直 秋場 哲哉 野口 やよい 吉田 靖子 甲斐 明美 山田 澄夫 酒井 沙知 原 元宣
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.249-255, 2007-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

ノロウイルス (NV) による集団胃腸炎の予防対策に資するため, ノロウイルスと同じカリシウイルス科に属し, 培養可能であるネコカリシウイルス (FCV) を用い, ウイルス感染価と遺伝子量を指標に, 速乾性消毒剤 (クロルヘキシジン, 第四級アンモニウム塩ヨード化合物), ウェットティッシュ (クロルヘキシジン, 第四級アンモニウム塩安息香酸PHMB), 機能水 (強酸性電解水, オゾンのナノバブル水) の手指衛生効果の比較を行った.速乾性消毒剤にはいずれもウイルス除去効果はなく, ヨード化合物を含むものにのみ有意なウイルス不活化効果がみられた. ウェットティッシュでは界面活性剤を含む安息香酸およびPHMB含有品に強い除去効果と不活化がみられた. 機能水によるすすぎ洗いの効果が確認され, さらに石けんを用いることにより除去効果も強まる傾向がみられた.これらの検討から有効な手洗い方法の選択がウイルス性胃腸炎の発生予防および拡大防止策となることが示唆された.
著者
森 功次
出版者
山形大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、主に現象学的アプローチから研究を進めるとともに、批評実践の場面に積極的に関わることで批評家や芸術家たちと議論を行なった。論文としては、2015年3月刊行の『サルトル読本』に「芸術は道徳に寄与するのか――中期サルトルにおける芸術論と道徳論との関係」という論文を寄せた。また、2015年3月に「前期サルトルの芸術哲学――想像力・道徳・独自性」という題目で東京大学に博士論文を提出した。学会発表としては、7月に日本サルトル学会にて「サルトル研究における哲学研究者の役割」というタイトルで発表した。9月には、露光研究発表会にて「芸術作品は非現実的なものである」というテーゼについて:初期サルトルにおける芸術作品の存在論的身分と美的経験論」というタイトルで発表した。この発表の内容は、さらに議論を改訂・追加したかたちで、1月の科研会議、「表象媒体の哲学的研究――画像の像性と媒体性の分析を中心に」(基盤C、研究代表者:小熊正久)でも発表した(この内容はのちに科研の報告書として出版される論文集に採録予定となっている)。12月には、第9回KoSACにて『美術手帖』の第15回芸術評論で第1席を受賞したgnckの評論文「画像の問題系 演算性の美学」の合評会で評者を務めた。また3月には第11回KoSACにて岡沢亮修士論文「人々の実践としての芸術/非芸術の区別:法・倫理・批評領域に焦点を当てて」合評会の評者をつとめた。雑誌記事としては、6月に「失礼な観賞」、『エステティーク』、p. 72-76.を執筆した。さらにアウトリーチ活動として、11月に名古屋のアートサークル「ロプロプ」が主催するArts Audience Tables 、オーディエンス筋トレテーブル#06にて、「多元化するアートワールドを考える:関係性の美学、地域アート、芸術的価値」というタイトルでレクチャーを行った。また2月には、展覧会「オントロジカル・スニップ」(HIGURE17-15cas)のトークイベントに登壇した。
著者
森 功次
出版者
青土社
雑誌
現代思想
巻号頁・発行日
vol.45, no.21, pp.154-168, 2017-12