著者
武藤 麻美 釘原 直樹 Muto Mami Kugihara Naoki ムトウ マミ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.12, pp.173-181, 2012

本研究は、(1)異なる価値観を有する内・外集団ターゲットへの心理的距離の延伸と、印象評価の切り下げとが連関するか否かについての検証、(2)その連関は、認知者が保有するターゲットに対する期待値と、現実値との乖離が大きい場合に、顕著に出現することの検証、を目的とした。実験デザインは、2(戦争反対意見, 戦争賛成意見) × 2(内集団: 日本人, 外集団: 米国人)の参加者間計画とした。結果は次のとおりである。(1)戦争反対条件で、ターゲットに対する距離の短縮化と印象評価の上昇がみられた、(2)戦争賛成反対の両条件とも、外集団ターゲットよりも内集団ターゲットで、距離の延伸と印象評価の低下がみられた、(3)心理的距離と印象評価の変動は類似の傾向を示した。これらの結果について考察を行う。
著者
曹 陽 高木 修 Cao Yang TAKAGI Osamu
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.3, pp.103-109, 2003

中国の出版制度においては、性的描写やポルノの書物・映像などが「精神汚染」と呼ばれ、それらを出版や販売することが一切禁止されている。ところが、そういう本や雑誌は、往々にして発禁しきれず、密かに闇のルートで販売している。日本や欧米と異なり、中国の特有な社会状況において、北京市の中学生と高校生らは、性の情報を獲得する公式ルートと非公式ルートの違いという観点から、マス・メディアの影響を検証する。そして、本研究は新しい分析方法を加えながら、学年、性別、地域の、それぞれの主効果と交互作用に着目して、新たな知見を期待する。まず、中学1年生から高校3年生までの合計6学年の1要因分散分析を行った。その結果、中学1年生は他の学年に比べて、公式ルートを通じて獲得した性の情報が最も少なく、中学生よりも高校2、3年生の方が、非公式ルートを通じて獲得した性の情報が最も多いことが明らかとなった。次に、中学校と高校を代表する中学2年生と高校2年生のデータを用いて、学校×性別×地域の3要因分散分析を行った。その結果、公式ルートを通じて獲得した性の情報は女子生徒の方が多いが、非公式ルートを通じて獲得した性の情報は男子生徒の方が多く、特に高校の男子生徒が、より一番多いことが明らかとなった。学校×地域の交互作用においては、市中心や近郊の中学生よりも遠郊の中学生の方が、非公式ルートを通じて獲得した性の情報が一層多いことが明らかとなった。上記した結果は、性的関心、性(的)行動、性に対する態度の学年、性別、地域による差の検討結果と一致するところが多く見られた。
著者
釘原 直樹 Kugihara Naoki クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-6, 2015

災害や緊急事態の人間行動に関する研究結果は人々の一般的イメージ(パニックや反社会的行動の発生)とは異なる。実証的研究データの多くが、人は緊急事態では人間関係や社会規範に基づいた順社会的行動をすることを示している。ここでは、実証的研究の結果に基づき危機事態の行動や意思決定について述べることにする
著者
後藤 学 大坊 郁夫 Goto Manabu Daibo Ikuo ゴトウ マナブ ダイボウ イクオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.5, pp.93-99, 2005-03

本研究では、参加者69名に対する短期間での社会的スキル訓練の試みと、そのトレーニング効果について検討した。社会的スキル・トレーニングの応用可能性を視野に入れ、参加者が自分自身のコミュニケーション・スタイルを見直し、円滑なコミュニケーションに必要な基本的なスキルを刺激するための簡便なトレーニング・プログラムを構成した。2 日間にわたる短期集中的なトレーニングの結果、参加者の非言語表出性と対人感受性が上昇し、自己抑制傾向が強まっていることが確認された。また、今回のプログラムが多くの参加者の非言語的表出性を高めていた一方、それと比較すると日本的対人スキルにはさほどの影響を及ぼせなかったことが明らかになった。今後、社会的スキル・トレーニングをより幅広い場面で応用していくためには、より多様な条件での実践とその効果に関する詳細な分析が求められる。
著者
坪田 雄二 Tsubota Yuji ツボタ ユウジ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.11, pp.101-108, 2011

本研究は妬みに関する実証的研究を展望したものである。妬みの定義や類似概念である嫉妬との関連性、妬み感情の構造、妬みの生起にかかわる要因、妬みの影響に関して概観した。そして妬みの生起に及ぼす予期の役割について指摘した。
著者
森 数馬 Mori Kazuma モリ カズマ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.10, pp.131-137, 2010

近年、音楽の社会心理学的研究が比較的盛んに行われている。しかしながら、それらの研究のほとんどは、日常聴取される多くの音楽に含まれている歌詞について十分に考慮していない。本研究は、日常の音楽聴取における歌詞の役割について検討を行った。131 名の学生・社会人が質問紙に回答した。質問紙は、歌詞に関する音楽聴取傾向の項目、Juslin & Laukka(2004)を参考にした音楽と感情に関わる項目およびRentfrow & Gosling(2003)のSTOMP による音楽の好みについての項目から構成された。調査の結果、歌詞は多くの人に重要視されており、その理由は歌詞に感情移入するためであることが示された。また、歌詞は情動を喚起するのに重要な役割を担うこと、聞きやすく軽快な音楽を好んで聴取する人に重要視されていることが示唆された。これらの結果から、音楽聴取において歌詞は欠かすことのできない要素であると考えられた。
著者
藤本 学 Fujimoto Manabu フジモト マナブ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.4, pp.77-85, 2004

本論では、集団内の全ての二者関係の親密さを基に、ノ亅・集団の構造を明らかにするソシオプロフィール法の紹介を行なった。従来、集団構造の分析方法として、ソシオメトリーが広く用いられてきた。しかし、この調査方法は、潜在的に倫理面やプライバシーに関する問題を抱えているため、現代社会において実施が困難になっている。一方、ソシオプロフィール法では、現時点での二者関係がどの程度親密な状態かを評定させることによって、相手への好悪感情を間接的に聞くなど、調査の実施に伴う問題の低減が図られている。また本論では、ソシオプロフィール法の活用例として、同輩集団の構造の時系列的変化について事例的検討を行なった。その結果、同輩集団は初期段階で急激に親密になった後、親密さを維持したまま集団構造を力動的に変化させていったことが明らかとなった。この調査により、ソシオプロフィール法が集団構造を把握する上で有用な方法であることの一端が示された。
著者
小川 晃子 Ogawa Akiko オガワ アキコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-30, 2004

本研究は、電子コミュニティの援助的な機能に着目し、自助グループにおける援助的な機能の成立状況を明らかにすることを目的としている。高齢者の家族介護者に対する支援を意図して開設されたWWW掲示板を事例とし、44ヶ月に及ぶ7,162件の書き込み記録を分析した。その結果、電子コミュニティにおいては、構成員の同質性に基づく共感的な書き込みにより、帰属意識の強いコミュニティが形成されることが明らかになった。電子コミュニティにおける援助行動は、仮想チームともいえる協働関係で提供されることが多く、情緒的援助にとどまらず対面的な関係を伴う手段的援助に及ぶ場合もあり、自助グループを電子コミュニティで形成することの効果が明らかになった。しかし、オフ会という対面的なコミュニケーション機会が、CMCで成立している電子コミュニティの異質性を高め、このコミュニティの崩壊をもたらす危険性をもっていることも、電子コミュニティの崩壊過程の分析により示唆された。
著者
丸山 利弥 今川 民雄 Fujiyama Toshiya Imagawa Tamio マルヤマ トシヤ イマガワ タミオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.2, pp.83-91, 2002

本研究は、ストレス対処方略としての自己開示が、自己開示以外のストレス対処方略とどのような効果の違いがあるのかを、ストレッサー間の比較と合わせて、調査、検討するものである。このために、2つの要因を取り上げる。第1 の要因は4つに分類したストレスイベントのタイプである。第2に、ストレス対処方略の選択に影響する要因として「自力解決可能性」、「自己責任性」、「(ストレスの)深刻さ」の3つを検討に加えた。結果から、1) ストレスイベントに関わらず、自己開示は他のストレス対処方略よりもストレスを低減させること、2) ストレス対処方略の選択に関わる3要因の効果はストレスイベントによって異なることが確かめられた。
著者
正高 杜夫 釘原 直樹 Masataka Morio Kugihara Naoki マサタカ モリオ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.95-99, 2015-03

本研究は、集団形成の過程の違いが、内集団バイアスに与える効果について吟味する。具体的には、実験室において形成された最小条件集団から、同様の手続きを用いてさらに集団を分割する事により、集団の形成過程を再現した。実験の結果、内集団バイアスにおける否定的認知傾向(外集団蔑視)が集団形成の過程で生起することは示されなかった。一方、集団形成の過程において、内集団への好意的行動傾向(内集団ひいき)が変化することが明らかになった。以上の結果より、集団間の境界の明確さが内集団ひいき行動に影響を与えることが示唆された。