著者
松田 康子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.151-155, 1996-04-01 (Released:2019-07-01)

ヘミングウェイのIn Our Timeが出版されたのは1925年で, 世界大戦の間の世界中が混迷している時代であった.この作品は15編の短編から成っているが, そのなかの8編に登場するNick Adamsは物語をおうごとに少年から青年へと成長していく.なにもかも未経験のNickは父や母の影響ばかりでなく人間の生と死に直面し, なにか大きなものに導かれながらはっきりとした目的を持った大人になっていく.作者のHard-boiled非情な文体で描かれた我らの時代は, 戦争の悲惨さや無秩序な社会を読者に伝えている.たんたんと描かれたシーンであればあるほど読者の想像力を刺激する.この作品の中のとても短いイタリック体で書かれた部分は特に悲惨な戦争や闘牛士の場面が多いが, 作者は題名のないこの部分とNickの成長のようすを意図的にちりばめて短く鮮烈な印象を読者に伝えている.世界大戦後の先の見えない時代にNickの成長の姿が明るい希望となっている.
著者
小俣 謙二
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-16, 1992-04-01 (Released:2019-07-01)

本調査ではCook(1970)によって報告された座席選択行動をもとに,日本人の学生のさまざまな状況での座席選択行動を質問紙法を用いて検討することで,日本人の空間行動の特徴を明らかにした.質問紙ではさまざまな心理的に異なる状況で,親しさの異なる相手(異性または同性の見知らぬ人,友人,極めて親しい友人)と同席する際の座席選択を尋ねた.その結果,Cook(1970)の結果とは異なり,横並びの席と離れた席が主として選択され,その使い分けは状況には関わりなくもっぱら相手の親密度に応じてなされていることが示された.この座席選択の傾向はできるだけ相手との視線を少なくしようとする日本人学生の心理特性を反映したものと解釈された.
著者
松田 秀人
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.13-17, 2001-03-31 (Released:2019-07-01)

咀嚼筋(咬筋と側頭筋前部)の活動度と咀嚼能力の関係を調べた.女子大生(19〜20歳)126人を対象として, 咀嚼能力を咀嚼能力測定ガムで測定した結果, 咀嚼能力が強い群が18名, 咀嚼能力が標準の群が92名, 咀嚼能力が弱い群が16名であった.各群の咀嚼筋の活動度を皮膚温の上昇度として把握した.皮膚温はサーミスター温度計で測定した.皮膚温の測定部位は, 咬筋中央部(左右)と側頭筋前部(左右)の合計4ヶ所とした.皮膚温測定中の咀嚼は, 咀嚼ガムを用い, 各自の一定のリズムで10分間咀嚼させた.その結果咀嚼能力が強い群は, 普通群や弱い群に比べて皮膚温の上昇度が有意に高いことがわかった.したがって, 咀嚼能力が強い群ほど咀嚼筋の活動が高く, 咀嚼能力が低い群ほど咀嚼筋の活動が低いことが判明した.
著者
上田 實
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-54, 1995-04-01 (Released:2019-07-01)

百貨店「松坂屋」は, 平成5年度の売上高4,594億円, 従業員7,797名, 10店舗を有する業界第4位, 我が国の代表的な百貨店である.江戸時代に創業して今なお百貨店として発展を続けているのは三越(創業1673)大丸(1717)高島屋(1831)松坂屋の僅か4店に過ぎない.なかでも松坂屋の歴史は最も古い.初代伊藤源左衛門祐道が慶長16年(1611)ささやかな呉服店を創業.爾来伊藤次郎左衛門家の家業として, 仏教の精神を経営理念とし, 御用商人として尾張藩主の愛顧をうけ, 緊密な主従関係, 信用と名声を得て発展して来た.明治時代に入って伊藤銀行を設立して経営に成功.地方財閥としての姿を整えた.小論では伊藤次郎左衛門家の家業について, 生成から明治期の地方財閥の形成に到るまでの, 当主の企業者活動を展望し, 連綿として維持・継続させた来たその要因を明らかにするものである.
著者
近藤 みゆき 後藤 由貴
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-45, 2012-03-31 (Released:2019-07-01)

電子レンジは,近年もっとも一般的な家電のひとつとなっている.少量の温めをはじめとする加熱に適するため,一人暮らしの若者や高齢者には欠かせない調理機器である.著者らは,本学平成23年度課外ゼミナールの課題として学生とともに「電子レンジ調理」に取り組んだ.「電子レンジ調理」に関する書籍を参考にし,様々な食材での調理法を試みた.この中で「スポンジケーキ」について詳しく調べた.この結果,電子レンジ加熱ではオーブン加熱に比べ加熱後の褐変がほとんどなかった.また加熱直後より冷凍保存後の方がしっとり感が増した.
著者
日比野 久美子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-15, 2004-04-01 (Released:2019-07-01)

機能性食品という名称と概念は世界に先駆け日本から発信されたものである.機能性食品の研究と開発の進展に伴い,食品中のフラボノイド・テルペノイド・揮発性物質などの非栄養性成分が疾病予防の上に有する機能を科学的に解明する研究が増加している.文部科学技術省は世界に先駆け非栄養性機能物質の体系化を目指し,食品成分表に記載されている植物について,フラボノイド・ポリフェノール類,テルペノイド・カロテノイド類,含硫化合物・揮発性成分・香辛物質等の含量と機能を分析・体系化して,現在試験的に"機能性食品因子データベース"としてホームページで公開している.これらの機能性成分は植物の二次代謝物質であり,様々な環境ストレスに対する植物の防御物質として機能していることが明らかにされつつあり,これらの物質については今後学際的な研究の広がりが期待される.
著者
芳本 信子 吉川 祐子 吉田 久江 菅沼 大行 山根 理学 稲熊 隆博 内藤 敬子 内藤 耕太郎
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-7, 2007-03-31 (Released:2019-07-01)

トマトやすいかに含まれ, 強い抗酸化作用を有するリコピンの摂取が, 2型糖尿病患者の酸化障害を軽減する可能性を考慮して血糖値, 特に糖化ヘモグロビン(HbA1c)の変動に及ぼす影響を検討した.リコピン摂取前平均7.9%であったHbA1cは, 摂取1年後には6.8%に低下し改善が認められた.2型糖尿病患者の高血糖による弊害をコントロールする1つの方法としてリコピンの含まれている食品を継続摂取することの有用性が示唆された.
著者
内多 允
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-102, 2007-03-31 (Released:2019-07-01)

大豆は日本では味噌や醤油,豆腐や納豆等の加工食品の原料として消費量の多い,農作物である.また,大豆は食用油や家畜の飼料原料としても重要な農作物である.大豆の生産や貿易の動向が世界の食料供給に与える影響力は極めて大きい.特に近年は中国がさまざまな一次産品の輸入量を増やしているなかで,大豆の輸入も増加している.中国の大豆輸入増加には,ブラジル等の南米からの供給が米国を上回る実績をあげるなどその貿易構造を変える影響を与えた.本稿では,近年における大豆と大豆油の生産・貿易動向を取り上げる.また,これに関して世界の大豆貿易に与える影響が大きいブラジル・中国間の農産物貿易に言及する.
著者
長谷川 孝子 沼沢 忠祐
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.65-69, 1990-04-01 (Released:2019-07-01)

パンの水,砂糖の配合差及び乳化剤の添加が及ぼす影響をパン生地,調製パン,1日保存パンについてレオメーターによる弾性率の物性値と水分量を測定した.またパンについては水分活性も測定し,パンにおける配合差を物性値と水分量から明らかにした.1)調製パンの水分量は水添加の高いものが高く,砂糖添加3%と6%の差は焙焼,保存時とも6%添加が水分の蒸散を抑える傾向がみられた.2)乳化剤によって,焙焼,保存時とも水分の蒸散を抑える効果があった.中でも1%モノステアリン酸グリセロール添加の効果が高かった.3)パン生地の弾性率は水添加量と反比例した.4)調製パンの弾性率は砂糖添加量に大きく関係し,6%砂糖添加が3%添加より弾性率は低く,軟らかいパンであった.また6%砂糖参加では1日保存で弾性率の上昇を抑える効果が著しかった.5)乳化剤添加のパン弾性率は無添加パンに比べ,焙焼,保存時とも低かった.中でも1%添加がその効果が大きかった.6)パンの水分活性は1日保存によっパン中の水分量は減少したにもかかわらず,上昇傾向を示した.終りに本研究はエリザベス・アーノルド富士財団の研究費助成によった.また本研究に対し,ご好意下さいましたフジパン株式会社ならびに同財団及びご指導頂いた諸先生に深く感謝の意を表します.
著者
近藤 みゆき 後藤 由貴
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-45, 2012

電子レンジは,近年もっとも一般的な家電のひとつとなっている.少量の温めをはじめとする加熱に適するため,一人暮らしの若者や高齢者には欠かせない調理機器である.著者らは,本学平成23年度課外ゼミナールの課題として学生とともに「電子レンジ調理」に取り組んだ.「電子レンジ調理」に関する書籍を参考にし,様々な食材での調理法を試みた.この中で「スポンジケーキ」について詳しく調べた.この結果,電子レンジ加熱ではオーブン加熱に比べ加熱後の褐変がほとんどなかった.また加熱直後より冷凍保存後の方がしっとり感が増した.
著者
平林 泰 長谷川 旭 長谷川 聡
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.57-64, 2007-03-31 (Released:2019-07-01)

安全で安心な大学を目指すうえで,大学キャンパス内の災害時・緊急時の避難経路に関する情報が,学生や教職員に十分に周知されることが不可欠である.本稿では,名古屋文理大学のWebサイトで携帯電話向けのキャンパス避難経路情報を提供するための,アニメーションによるビジュアルな避難経路情報コンテンツについて報告し,あわせて,災害・防災情報の携帯電話での提供の可能性と問題点について検討する.
著者
吉田 友敬 武田 昌一
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.113-119, 2012

本論文では,音楽と音声言語におけるリズム的特徴の普遍性について検討する.音楽のリズムに関しては,特にグレゴリオ聖歌についての議論に注目した.グレゴリオ聖歌は後世の西洋音楽に大きな影響を与えているものである.一方,言語におけるリズムについては,音韻論の立場から検討を加える."foot",あるいは "Ictus"という概念を音楽と音声リズムの共通性を論じる上で中心的概念として導入する.その後,これらの音響的特徴について,試行的検討を行った.
著者
井上 治子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.43-49, 2013

本稿は,神奈川県逗子市池子米軍住宅建設反対運動,いわゆる「池子の森を守る運動」に関し,1986年から1991年にかけて実施された調査研究結果に基づき,1991年に執筆された未刊報告書に修正を加えたものの第一部分である.調査結果をアーカイブとして公開するとともに,日本社会における「新しい社会運動」の発生を現時点から再考することが本稿の目的である.調査全体は,成員間の連帯と参加動機の関係に焦点を当てることにより,運動の発生を明らかにすることを目指し実施された.収集されたデータは,1986年から1990年にかけて実施された参与観察および対面調査により得られた知見,1990年に実施された質問紙調査により得られたデータ,全調査期間中に得られた運動団体の会報・ビラ,成員と筆者との間の私信等である.考察は,当運動に関する先行研究と,資源動員論,および,「新しい社会運動」論の内から成員間の連帯や価値観をめぐる論点を中心として参照しつつ進められ,最終的に考察は運動におけるアイデンティティ志向のもたらす問題点へと導かれた.それらを検討し直し,当誌に順次投稿していく予定である。一連の調査の冒頭部分に当たる本稿では,紛争の経緯と運動の発生が,参与観察・対面調査と文献から得られた知見とによって再構成され,1980年代の日本における新しいタイプの運動の発生と発展,分裂と衰退の過程が明らかにされる.
著者
芳本 信子 村上 洋子 菅沼 大行 稲熊 隆博 永田 豊 宮地 栄一
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.23-28, 2003

抗酸化能が認められているリコピンをMndマウスに経口投与して発育に伴う中枢神経組織内のSODおよびCO活性の変動を測定した.そして,非Mnd対照マウスの測定結果と対応させながら,Mndマウスにおける運動傷害の原因因子の検討を行った.1.遺伝的神経変性疾患モデル動物であるMndマウスの脳および脊髄組織内SOD活性値は,発育に伴い徐々に減少したが,リコピンを経口投与したMndマウスは,酵素活性の回復傾向がみられた.これは,抗酸化能が認められているリコピンが,Mndマウス脳の成長段階で産生される細胞毒性の酸素フリーラジカルを消去することが示唆された.2.Mndマウス大脳皮質組織内で,好気的エネルギー産生に関与するCO活性はマウスの発育にともなって次第に減少したが,リコピンを連続経口投与することによって細胞傷害性のO<sub>2</sub>-基を中和して,正常なエネルギー産生代謝の回復が認められた.従って,神経変性が持続的に進行するMndマウスの中枢神経組織内では,リコピンの連続投与は細胞毒性を示す活性酸素基を消去する抗酸化作用を助けて,エネルギー産生代謝系に作用して神経変性の進行を阻害し,症状の発現を遅延させる効果を有することが確認された.
著者
石井 貴子 江上 いすず 三浦 英雄 村上 洋子 後藤 千穂 野路 公子 小倉 れい
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.63-71, 2003

平成12年度より本学では,給食管理実習を1年次後期から2年次前期まで通年で行っている.この試みは,県内の2年過程の栄養士養成校でも希少と思われる.また授業は3時限連続(昼休みも授業に含む)で行われ,特に1年次では1クラスに3人の教員が担当し,特色ある授業を展開している.我々実習担当者は,栄養指導だけでなく大量調理も意欲的にこなす,即戦力となる栄養士をいかに養成するか.を目的の一つに掲げている.今回この特色ある授業を受講した学生の意識調査を行うことにより,どれだけ教育効果が得られるかを見極めるため,本学食物栄養学科及び栄養士科の1・2年次生各々654名を対象に,調査を行った.その結果1年次では,実習を楽しく行うことができ,さらに大量調理と小量調理の違いに興味を持った学生が多いことが分かった.2年次では実習を継続して行うことにより,調理技術が上手になり,体もよく動き,さらに,現代学生気質として低めの傾向にあると思われる,積極性,協調性,忍耐力についても意識の向上が見られ,教育効果が上がっていることが確認された.しかし,食事作りに対する意欲や食糧事情に関する興味については,学生の意識が低いこともあわせて確認された.また,1・2年次ともに肉体的に「疲れた」という意識が非常に高く,今後は疲労度改善の方策をたてる必要性があることが示唆された.