著者
伊沢 寛志
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.116, no.12, pp.606-618, 2002-12

A total of 371 suicide notes were collected in 868 suicide cases investigated by the Niigata prefectural police during one year of 1999. The ratio of suicide completers (297 cases) who left their notes was 34.2%. The suicides were classified according to sex, age, suicide manner, motivation, history of mental illness and previous attempts or threats of suicide. The detailed form was investigated and their message of the notes was examined using 14 key words including apology, pain of sickness, thanks, requests after death and unwilling part. The psychological status of the note can be understood as a combination of the key word. The result of key word classification showed that many factors are comprised in a motive of suicide. The police made a classification of suicide motive into 8 classification and limited it to one, but it was difficult to select a main motive to only one
著者
星井 達彦 紙谷 義孝 喜多 学之 山口 征吾 大橋 さとみ 関口 博史 西山 勉
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.131, no.8, pp.501-508, 2017-08

前立腺癌疑い患者に対して前立腺生検が行われるが,全身麻酔または腰椎麻酔管理による前立腺生検では通常1~2泊の入院管理で行うことが多い.また日帰り前立腺生検では局所麻酔で行われることが多く,局所麻酔時や穿刺時に患者の苦痛が伴う.我々は2016年1月から全身麻酔管理による日帰り前立腺生検を行っている.全身麻酔管理による日帰り前立腺生検を行うにあたり「全身麻酔管理による日帰り前立腺生検クリニカルパス」を作成し行っている.前日夕食後は禁食とし,生検当日は水分を朝6時まで可とし,午前中に全身麻酔管理による日帰り前立腺生検を行う.前立腺生検はReal-time Virtual Sonography (RVS)を用いたMRI-経直腸的超音波検査同期狙撃生検3-6か所,系統生検左右各5か所の計13~16か所の経会陰的前立腺生検を行う.前立腺生検後3~4時間経過観察し,帰宅時チェックリストを用いてすべての項目で問題がないことを確認後帰宅する.2016年12月までの12ヶ月間に67例に全身麻酔管理による日帰り前立腺生検を施行した.1例で術後膀胱タンポナーデを,1例で術後尿閉を経験したが,再入院を必要とした症例はなく,そのほか周術期に問題となった症例はなかった.全身麻酔管理による日帰り前立腺生検は患者の苦痛が少なく,有用な方法と考えられる.
著者
相馬 行男
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.324-328, 2006-06

注意欠陥多動性障害(ADHD)の有病率の研究は多数行われている.しかし,ADHD診断マニュアルDSM-III-Rを使って,就学前の子どもを調査した論文は,著者の知る限りほとんど見当たらない.そこで本研究では,DSM-III-Rを用い,新潟市内の保育園児と幼稚園児を対象に,保育士と幼稚園教諭による自記式調査を行った.その結果,以下のことが明らかになった.1 ADHD有所見者数は,3歳児では3,223人中181人(5.6%),4歳児では3,333人中149人(4.5%),5歳児では3,400人中101人(3.0%)であった.ADHD有所見者数は,女子より男子が有意に多く,3歳児では男子が1,688人中148人(8.8%),女子が1,535人中33人(2.1%)(男子/女子=4.2),4歳児では男子が1,707人中126人(7.4%),女子が1,626人中23人(1.4%)男子/女子=5.3),5歳児では男子が1,719人中84人(4.9%),女子が1,681人中17人(1.0%)(男子/女子=4.9)であった.2 ADHD有所見者数は,保育園児が幼稚園児より有意に多く,3歳児では保育園児が1,950人中138人(7.1%),幼稚園児が1,273人中43人(3.4%)(保育園児/幼稚園児=2.1),4歳児では保育園児が1,971人中125人(6.3%),幼稚園児が1,362人中24人(1.8%)(保育園児/幼稚園児=3.5),5歳児では保育園児が1,959人中75人(3.8%),幼稚園児が1,441人中26人(1.8%)(保育園児/幼稚園児=2.1)であった.
著者
諸 和樹 皆川 昌広 高野 可赴 滝沢 一泰 三浦 宏平 永橋 昌幸 坂田 純 小林 隆 小杉 伸一 若井 俊文
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.129, no.7, pp.401-407, 2015-07

症例は35歳男性. 検診腹部エコーで脾門部に2cm大の腫瘤を指摘された. 2年後検診で腫瘤の増大傾向を認め, 腹部造影CT検査で膵尾部に44mm大の多房性分葉状腫瘤を認めた. 血算・生化学・凝固系, 腫瘍マーカー, 各種ホルモン値は正常範囲内であった. SPIO造影MRIを施行したが, 腫瘍より尾側におけるT2強調画像信号低下を確認したのみで, 確定診断を下すことができなかった. 腹腔鏡下膵尾部切除を施行し, 術後病理診断で膵内副脾に生じた類上皮嚢胞と診断された. 診断に苦渋した1例を報告する.
著者
鈴木 宏 Suzuki Hiroshi
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.181-186, 2010-04

10年前からパンデミック発生が危惧されてきたが, 2009年春に豚インフルエンザH1N1からのパンデミックとなった. 発生後既に1年を経過しようとしているが, 今回の流行は, これまでの想定とはまったく異なり, 多くの点でシナリオの変更を余儀なくされる程の混乱を招いた. 今回の混乱を来たした最大の点は, パンデミック対策の基本とすべき罹患率と致死率などのよる重症度分類が今でも提示されないことにある. 今回のパンデミックは, 季節性インフルエンザの規模と近いくらいであり, 対応としてやり過ぎの面はあるが, 第二波や将来の次のパンデミックに備える一つの試練ととらえ, 各部署での今回の総括を早期に行うべきと思われる.
著者
上原 沙織 石黒 宏美 初谷 周子 大橋 恵美 尾山 真理 土屋 康雄 中村 和利 Uehara Saori Ishiguro Hiromi Hatsugai Shuko Ohashi Emi Oyama Mari Tsuchiya Yasuo Nakamura Kazutoshi
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.311-317, 2009-06

紫外線は, 様々な皮膚症状や眼症状, 免疫機能低下などの健康影響を引き起こすことが示されている. これらの健康影響を防止するためには, 紫外線環境を正しく把握する必要がある. そこで, 2008年10月22日, ハワイ, ワイキキビーチにおいて, 日照地点と目陰地点の紫外線強度の日内変動, 及び各種商品による紫外線カット率を調べた. 日照地点の直射方向, 水平方向, 日陰地点の垂直方向, 水平方向, 地面方向からの紫外線は12時に最高値を示し, 日照地点の垂直方向, 地面方向は15時に最高値を示した. すべての方向で山型のグラフを示すことが明らかとなった. 各種商品の紫外線カット率は, 縁Tシャツ, 日傘, 日焼け止めクリーム, 雨傘はほぼ90%を示したが, 白Tシャツは68%程度であることが示された. 日照地点では9時から15時の間はUV indexが3以上を示したことから, 日焼け止めクリーム, 濃い色のTシャツ, 日傘, 雨傘などの有効な紫外線対策が必要であると考えられた. 今後, 紫外線の影響を防止する観点から, 日焼け止めクリームの紫外線カット率の経時変化などについて焦点を当てて調査する必要があると考える.
著者
佐久間 真由美 遠藤 直人 Sakuma Mayumi Endo Naoto
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.130, no.10, pp.559-563, 2016-10

ロコモテイブシンドロームは運動器の障害に伴う移動能力の低下として2007年に日本整形外科学会から提唱された.フレイルは高齢期の生理的予備能低下により脆弱性が亢進する.身体的問題のみならず, 精神・心理的問題,社会的問題を含む概念とされ,老年医学の分野から生まれた.サルコペニアは筋肉減少症として1989年Rosenbergが提唱した概念である.それぞれの用語は異なる母体から相次いで提唱されたが, 互いに重複する部分もある.現状での各用語と関連についてまとめた.
著者
滝沢 一泰 亀山 仁史 若井 俊文 土田 正則 木下 義晶
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.113-117, 2020-04

2017年度の医学部定員は過去最多となったが,新潟県は都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万対外科専門性資格保持医師数はワースト2位であり,将来必要とされる外科医師数を達成するためには年間40人の外科医を育成しなければならない.この度,日本専門医機構により新専門医制度が確立され,2018年度から外科新専門医制度は開始されたが,専攻医の募集定員は全国204プログラムで計2,061人でありそのうち採用されたのは805人であった.新潟県では2プログラムで計8名を採用した.新潟大学外科専門医プログラムでは2018年4月から6名の専攻医が,2019年4月から8名の専攻医が研修を開始した.卒後臨床研修2年間と専攻医としての3年間(1~3年次)規定の手術数を経験する必要があるが,すでに1年次の段階で各分野別の必須手術経験数のほとんどを経験することができた.手術総数350例および術者数120例以外は,すべて新潟大学外科専門医プログラム1年次で経験できる見込みであり,2年次および3年次は大学病院以外の関連病院で術者として手術を経験することになる.サブスペシャルティ領域がすでに決まっているのであれば,2年次3年次の研修はサブスペシャルティ領域を意識してその領域を専門的に研修できる.我々のプログラムにおける連携施設は新潟県でのhigh volume centerが中心となったが,これはプログラムの整備基準により手術症例数や指導医数に応じて,募集できる専攻医数が決まってしまうことによる.これにより集約化がさらに進んでいくものと考えられるが,新潟県は広い医療圏を持つため集約できない地域も存在するので,そういった地域での医療をどのように行っていくかが喫緊の課題である.また,いわゆる「地域枠」あるいは新潟県の修学賓金を受けていた卒後医師は,地域での指定勤務が義務付けられるのであるが,そのために専門医取得が不利にならないように留意して制度づくりを行った.これまで新潟大学外科学教室は「3科1つ屋根の下に」という理念の下,教育指導を行ってきた.今後とも3科で協力体制をとりながら,教育指導にあたっていきたい.
著者
北村 秀明
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.258-260, 2007-05

新潟大学臨床研修病院群プログラムにおける精神科研修では,研修医は基本的に全員,8つの精神科協力病院(以下協力病院),すなわち黒川病院,松浜病院,新潟信愛病院,三島病院,県立精神医療センター,田宮病院,五日町病院,さいがた病院のいずれかで研修する.ただし週に1日,新潟大学医歯学総合病院(以下大学病院)で研修する.大学病院と協力病院の機能分化を考え,プライマリー・ケアでしばしば遭遇するうつ病や不安障害から,機能レベルの低下が重篤な統合失調症や痴呆性疾患まで広くカバーして,頻度の高い精神疾患について基本的な技能を獲得できるように,この二重体制が採用された.しかしながら,大学病院および協力病院の研修指導医へのアンケートから,いくつかの問題点が浮き彫りになった.その多くはこの二重体制に関係するものであり,遠くの協力病院から大学病院へ週1回通うことの身体的・精神的負担,研修の継続性の阻害,指導内容の分担に関する両病院間の連絡不足などが指摘された.そもそも二重体制を敷くほど両病院は機能分化しているのか,といった根本的な疑念を述べた指導医もいた.ただし大学病院での研修のメリットも多く存在するのもまた事実である.欧米では当たり前の操作的診断基準を用いた厳密な精神科診断プロセスなどは,十分な指導時間がとれる大学病院でないとその教育は難しいのも現状である.今後はプログラムのユーザーである研修医の意見も参考に,来シーズンの状況も加味しながら,プログラムは改良され続けるべきと考える.
著者
大黒 倫也
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.635-643, 2007-11

【背景】現在,脊椎・脊髄手術や胸腹部大動脈瘤手術中の脊髄機能モニタリングとして運動誘発電位(motor evoked potential;MEP)測定が広く行われているが,MEPは各種麻酔薬や筋弛緩薬の影響を受けやすく,術中のMEP導出やその解釈には麻酔に使用する薬物の影響を熟知する必要がある.ミダゾラムは周術期に前投薬や麻酔導入薬として頻用されている比較的新しいベンゾジアゼピン系薬剤であるが,MEPに対する影響については確立されていない.単発経頭蓋的電気刺激で誘発されるMEPに対するミダゾラムの影響については報告間で結果が一定しない.また,連発経頭蓋的刺激によるMEPに対する影響については報告がない.今回,申請者らはMEPにほとんど影響がないとされているケタミン麻酔下にミダゾラムを投与し,経頭蓋的5連電気刺激により前脛骨筋とひらめ筋に誘発される筋電図(MEP)に対する作用を調べた.また,膝窩部脛骨神経刺激でひらめ筋に誘発される筋電図(H波・M波)を記録することにより,ミダゾラムの運動路における作用部位についても検討した.【方法】特発性側湾症に対する後方固定手術に際し,術中脊髄機能モニタリングが必要とされ,本研究に対してインフォームドコンセントが得られた患者6名を対象とした.麻酔前投薬は投与せず,ケタミン2mg/kg,亜酸化窒素(60%)とスキサメトニウム1mg/kgにて麻酔導入し,その後は亜酸化窒素を中止してデータ取得終了まではケタミンを2mg/kg/hrで持続静注した.呼気中亜酸化窒素濃度が5%未満になったところで,MEP,H波,M波の記録およびミダゾラムの静脈内投与を開始した.経頭蓋的電気刺激および脛骨神経刺激はそれぞれDigitimer社製MultiPulse Stimulator D185と日本光電社製ニューロパックΣを用い,誘発筋電図の記録はともに日本光電社製ニューロパックΣを用いた.経頭蓋的電気刺激用皿電極は国際10-20法のC3,C4の位置に貼付し,刺激設定は刺激強度600V,0.05ms矩形波,刺激間隔2ms,5連刺激とした.脛骨神経刺激は皿電極を用いて膝窩部で行い,1msの矩形波を用いて頻度0.3Hzで刺激した.M波記録時は最大上刺激で刺激を行い,H波記録時は最大振幅が得られる刺激強度で刺激を行った.MEPの導出は両側前脛骨筋と片側ひらめ筋の体表上から,H波・M波の導出は片側ひらめ筋の体表上からシールド付皿電極を用いて行った.データ取得時の周波数帯域は20Hz〜3kHzとした.MEP,H波,M波の記録は(1)ケタミン麻酔下ミダゾラム投与前(コントロール),(2)ミダゾラム0.1mg/kg投与5分後,(3)ミダゾラム0.1mg/kg追加投与5分後,(4)フルマゼニル(ベンゾジアゼピンレセプター拮抗薬)0.2mg投与5分後の4時点にて行い,それぞれ立ち上がり潜時と振幅を測定した.全てのデータはmean±S.E.で表した.統計処理はpaired t-testを用い,p<0.05をもって有意差ありとした.データ取得後はケタミンを中止し,プロポフォールの持続静注とフェンタニル静注で麻酔を維持した.【結果】患者の年齢は14.0±0.8歳,身長は159.0±2.9cm,体重は45.2±1.9kg,男女3人ずつであった.MEPの立ち上がり潜時はミダゾラム,フルマゼニル投与の前後で有意差は認められなかったが,振幅はミダゾラム0.1mg/kg,0.2mg/kg投与後ではそれぞれコントロールの47.2±7.1%,36,6±6.3%に有意に減少した.フルマゼニル0.2mg投与後ではコントロール値の68.8±10.3%に回復した.一方,M波とH波に関しては,立ち上がり潜時・振幅ともミダゾラム,フルマゼニルによって有意な変化は認められなかった.【考察】ミダゾラムは経頭蓋的5連電気刺激で前脛骨筋及びひらめ筋に誘発されるMEPの立ち上がり潜時を遅延させることなく,振幅のみを抑制した.その影響はフルマゼニルによって拮抗されることからベンゾジアゼピン受容体を介する作用であることが確認された.また,ミダゾラムはM波には影響しないことから,2次運動ニューロンの伝導,神経筋接合部や筋肉には影響しないことが明らかとなった.さらにミダゾラムは今回の投与量ではH波にも有意な影響を及ぼさないことから,脊髄前角細胞の活動性を含む脊髄反射弓全体の活動性には影響は少ないものと考えられる.以上のことから,ミダゾラムは2次運動ニューロンではなく,1次運動ニューロンの興奮性あるいは1次運動ニューロンから2次運動ニューロンへのシナプス伝達を抑制することによってMEPの振幅を減少させることが示唆された.