著者
高橋 達也 藤盛 啓成 山下 俊一 齋藤 寛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid DiseaseStudy)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。マーシャル諸島住民では、甲状腺結節性病変の有病率が高かった。甲状腺結節の最も一般的な形態は、腺腫様甲状腺腫(adenomatous goiter)であった。しかしながら、本研究で発見された腺腫様甲状腺腫の患者の多くは、医学的治療を必要としなかった。幾多の他の研究と同じように、女性では、男性と比較して甲状腺結節の有病率が高かった。また、有病率は、年齢とともに高くなり、50歳代の女性で最も高率(約50%)であった。甲状腺結節例の約半数は、触診で診断できたが、残りの半数は、超音波診断によってのみ診断し得た(触診できなかった)。甲状腺機能低下症や甲状腺亢進症(バセドウ病)の様な甲状腺機能の異常は、マーシャル諸島では、比較的まれで、有病率は他国と比較して同程度、もしくは、低かった。太平洋地域(日本を含む)などに多く見られる橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、マーシャル諸島では、まれであった。甲状腺癌の疑いで43人の患者が、現地のマジェロ病院において、マーシャル諸島甲状腺研究の医療チームによってなされた手術を受けた。この43人中、25人については、病理学的に癌が確認された。外科手術で重篤な合併症は、1人も発生しなかった。マーシャル諸島全体での、一般住民の甲状腺結節や甲状腺癌の頻度は、従来報告されているよりもかなり高かった。しかし、我々は、ハミルトン博士(Dr.Hamilton)の仮説、すなわち、「甲状腺結節の頻度は、ブラボー実験の時に住んでいた場所とビキニ環礁からの距離に反比例する(ビキニから遠くなると、結節は減る)」、を確認できなかった。この点に関して、ブラボー実験で被曝した住民における甲状腺癌の頻度に関する予備的な分析では、概算した甲状腺放射線被曝量と甲状腺癌有病率は正の相関(被曝量が増えると甲状腺癌も増える)が有意に示された。
著者
森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.286, pp.87-92, 2008-11-06
被引用文献数
3

近年,インターネット上においてユーザがユーザ自身が作成した動画を投稿し,任意の時間に視聴することができる動画共有型VoDサービスが人気を博している.これらのサービスでは,ユーザ数の増加やコンテンツリクエスト数の急増にともない配信サーバへの負荷が非常に高くなる.そこで,動画共有サービスにおけるコンテンツのリクエストパターンの特性を分析することにより,動画共有サービスのシステム設計を適切に行うことが期待できる.本稿では実際の動画共有サイトの実測データを利用して,単位時間あたりの新規発生コンテンツ数,人気度の時系列推移について分析,評価を行った.また,本稿では分析に基づいた人気度変動モデルの構築についての議論を行った.
著者
高橋 達也
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid Disease Study)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。具体的には、甲状腺疾患に対する臨床理学的検査、超音波検査、穿刺吸引細胞診、癌が疑われる症例に対する外科手術、及び外科手術標本に対する病理組織学的検討が実施された。また、甲状腺機能検査として、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(T3、T4)、及び抗甲状腺自己抗体が測定された。さらに、随時尿のヨード排泄量も測定された。今回、その研究の結果を踏まえて放射線による甲状腺癌発生とヨード欠乏について検討した。ヨード欠乏は、甲状腺結節のリスクであることは広く知られている。そこで、尿中のヨード濃度を研究調査に参加した364人の成人と、69人の子供の随時尿について測定した。また、代表的な食物についてヨード含有量を測定した。マジェロ在住の309人では、正常だったのは25%で、他はすべてヨード欠乏状態だった。特に、3人(1%)は、重度の欠乏状態だった。この中での、甲状腺結節発生頻度を見るとヨード欠乏群は女性で、正常群の3倍の発生率だった。しかし、男性ではこの傾向はなかった。外洋に孤立するリキエップ環礁での成人55人では、正常はわずか5人(9%)で残り90%以上は、ヨード欠乏であった。このうち7人(13%)は、重度欠乏であった。甲状腺結節の発生は、女性では1.2倍であった。本研究によって、今までは予想もされていなかったほど高頻度(30%以上)の中等度-重度ヨード欠乏が認められた。この、マーシャル諸島での食生活上の問題の原因は、不明である。しかし、放射線被曝による甲状腺結節発生を修飾している可能性が大きく、今後の継続した研究が必要である。
著者
高橋 達也
巻号頁・発行日
no.2986, 1997 (Released:2008-04-17)
著者
並木 尚也 大用 庫智 高橋 達二
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

不確実な環境下における意思決定には,新たな知識の探索と既知の知識の利用という相反する2つの行動が要求され,ジレンマが起こる.先行研究では相対評価を行う緩対称性推論モデルがジレンマを緩和して優れた成績を有しており,人間の因果的直感との相関も高いことが明らかになっている.本研究では,人間の意思決定に対する詳細な形式化を行うため,人間の意思決定課題における実際の系列データと既存モデルとの比較を行った.

3 0 0 0 OA 英国叢談

著者
高橋達 著
出版者
博文堂
巻号頁・発行日
1889
著者
並木 尚也 田中 洸樹 大用 庫智 高橋 達二
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

新パラダイム推論心理学によれば、人間の論理が真偽のみを許す二値論理ではモデリングできず不確実性を許容する体系が必要である。特に「PならばQ」といった条件文は、「PでないかQ」という実質含意ではなく、条件付き確率に対応する(Pが偽なら真でも偽でもない)と考えられている。本研究では、三値論理の枠組みでさまざまな条件文の種類に対して3x3の真理値表を構築する実験を行い、新パラダイムの適用範囲を拡張する。
著者
高橋 達也 藤盛 啓成
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、マーシャル諸島で1993年から調査して独自に設定した5821人のコホートの10年間における甲状腺がん、乳がん、肺がん及び白血病の罹患と放射線被曝との関連(放射線被曝線量-がん罹患反応関係)を明らかにすることである。現在まで、現地保健関係者らの協力でNuclear Claim Tribunal(NCT:がん登録)と病院記録でコホート構成員の甲状腺がん、乳がん、肺がん、及び白血病罹患状況の調査を継続している。NCTはマーシャル諸島の被曝者が放射線被曝の影響によると推定される病気になったときの医療費や補償金を支払うための機関で、米国とマーシャル政府の条約に基づいて設置されている。主ながん34種類が登録・補償対象になるのでほぼすべてのがん症例を把握している。また、登録・補償の権利はマーシャル住民が国外に移住しても失わないので多くの住民が国外から登録している。また、がんで死亡した場合は遺族が代理で登録し補償を受ける。マーシャル諸島には2つの国立病院、すなわち、マジュロ及びイーバイ国立病院がある。この病院は同国で唯一のがんなどを診断治療する施設である。これらのファイルから、がん症例をコホートの構成員かどうか確認している。現在までにコホートに甲状腺がん76例、乳がん17例、肺がん29例、白血病12例が発生したことが確認された。さらに、がん罹患の情報を継続的に収集する。コホート構成員のうち93年に6人、94年に32人、95年に72人が死亡している。さらに、死亡等によるコホートからの脱落数を現在調査中である。
著者
堀田 愛 高橋 達己 齊藤 まゆみ 澤江 幸則
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.103-116, 2023 (Released:2023-03-09)
参考文献数
63

This study aimed to identify effective instructional methods for improvement of motor competence in children who do not excel at physical activity. For this purpose, a meta- analysis was conducted to integrate intervention studies designed to measure motor competence, and the effect size was calculated. The results suggested that children who do not excel at physical activity (i.e. under-achievers) were able to improve their motor competence to a particularly high degree. Among various sub-factors, the effect size of “acceptance” was the highest. We further examined instructional methods that might improve “acceptance”, and this revealed that “step-by-step instruction” and “interactions among learners” were considerably effective. These results suggest that an effective instruction method for children should include “step-by-step instruction”, which can motivate children to exercise on their own by offering tasks and an environment suitable for them in a stepby-step manner. “Interaction among learners” can be facilitated by providing opportunities to share information among students and to engage in group activities. Interactions can allow the group of under-achievers, who rarely receive attention in regular physical education (P.E.) classes, to feel recognized by learners. In conclusion, it is considered important in P.E. to work with a group that includes under-achievers and to foster a receptive atmosphere, instead of focusing on problems that emphasize the weakness of children. Practitioners should consider applying an ecological model of adaptive P.E. that emphasizes the relationship between the individual, the environment, and the task at hand.
著者
北堂 真子 荒木 和典 高橋 達也 井邊 浩行 梁瀬 度子
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.229-239, 1999-08-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
42
被引用文献数
5 6

電車の特徴的な振動を基に合成した振動に1/fゆらぎの特性を併せ持つ低加速度レベルの全身振動を人体に与え, 入眠に及ぼす影響について主に生理的反応から検討を行った. 健常な成人16名を対象に, 電車の固有振動数を応用し, かつ, 1/fゆらぎ特性を示すような時間間隔で変化させた垂直振動 (1.5Hz; 0.06m/s2rms及び2.0Hz; 0.11m/s2を交互, かつ12Hz; 0.09m/s2をON/OFF) 及び左右振動 (0.4Hz; 0.05m/s2及び0.6Hz; 0.09m/s2を交互, かつ12Hz; 0.13m/s2をON/OFF) を10分間負荷し, 振動のない場合と比較検討した. その結果, 全身振動の場合, 睡眠潜時が短縮される傾向が認められ睡眠量も増加した. また, 心拍周期の増加率が高くなる傾向が見られ, 心拍変動係数も高くなることが示された. 即ち, 全身振動により副交感神経優位の状態に誘導でき, 入眠促進の有効性を確認することができた. しかし, 振動による筋活動の低下状態や入眠への影響, あるいはリクライニング角度による影響等について, さらに研究を行う必要があると考えられる.
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.

2 0 0 0 OA 認知的満足化

著者
高橋 達二 甲野 佑 浦上 大輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.AI30-M_1-11, 2016-11-01 (Released:2016-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
3

As the scope of reinforcement learning broadens, the number of possible states and of executable actions, and hence the product of the two sets explode. Often, there are more feasible options than allowed trials, because of physical and computational constraints imposed on the agents. In such an occasion, optimization procedures that require first trying all the options once do not work. The situation is what the theory of bounded rationality was proposed to deal with. We formalize the central heuristics of bounded rationality theory named satisficing. Instead of the traditional formulation of satisficing at the policy level in terms of reinforcement learning, we introduce a value function that implements the asymmetric risk attitudes characteristic of human cognition. Operated under the simple greedy policy, the RS (reference satisficing) value function enables an efficient satisficing in K-armed bandit problems, and when the reference level for satisficing is set at an appropriate value, it leads to effective optimization. RS is also tested in a robotic motion learning task in which a robot learns to perform giant-swings (acrobot). While the standard algorithms fail because of the coarse-grained state space, RS shows a stable performance and autonomous exploration that goes without randomized exploration and its gradual annealing necessary for the standard methods.
著者
高橋 達 椎野 渡 鳥養 正和 布施 安隆 善養寺 幸子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.73, no.623, pp.39-45, 2008-01-30 (Released:2008-10-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

This paper describes the results of a field measurement of a residential plumbing system recycling rainwater and greywater and its exergy analysis. The followings were found. The amount of rainwater harvested is 48∼98% of rainfall on the rooftop. Quality of greywater is temporally improved by monitoring of the plumbing system and the residents' operating a combined treatment septic tank. The amount of exergy of rainwater or city water is very small, so that they might be similar to environmental water rather than resource. Chemical exergy of fossil fuel of 1086 MJ/month is consumed by a power plant in order to make micro organisms in the combined treatment septic tank consume chemical exergy of wastewater of 365.6MJ/month. Exergy of faeces or garbage is very large and consumed at all. Therefore, it is important to convert the way to consume exergy of these organic matter from just consuming into consuming with producing farm products such as compost or vegetable.