著者
高田 礼人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.117-124, 2006 (Released:2006-10-13)
参考文献数
16

フィロウイルス科に属するエボラウイルスは中央および西アフリカで散発的な流行を繰り返している感染症の原因ウイルスである.このウイルスはヒトを含む霊長類に重篤な出血熱を引き起こす.その致死率は極めて高く,時には90%に達する.この非常に強い病原性発現のメカニズムには不明な点が多いが,エボラウイルスの表面糖蛋白質が重要な役割を演じている事が示唆されている.
著者
山下 照夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.183-191, 1999-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
38
被引用文献数
1 3 2
著者
葛西 武雄
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.175-186, 1951-10-10 (Released:2010-03-16)
参考文献数
98
被引用文献数
1
著者
藤山 幹子 橋本 公二
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-30, 2009-06-25 (Released:2010-02-01)
参考文献数
31
被引用文献数
2 3

薬剤性過敏症症候群は,発熱と多臓器障害を伴い遷延する薬疹である.抗けいれん薬,アロプリノール,サラゾスルファピリジン,ジアフェニルスルフォン,メキシレチン,ミノサイクリンが原因となる.その大きな特徴は,発症後10日から30日の間のある時期に,HHV-6の再活性化を伴うことにある.HHV-6の再活性化は,血液,血清中のHHV-6 DNAの検出と著明なIgG抗体価の上昇で確認される.HHV-6の再活性化に際して,発熱と肝障害を認めることが多い.薬剤性過敏症症候群は,薬剤アレルギーとHHV-6感染症の複合した病態である.
著者
横田 強
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-29, 1955-05-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
43

1. An outbreak of epidemic myalgia prevailed among the employees in a company in Kawasaki in the summer of 1952. Many of the patients developed the clinical symptoms typical for epidemic myalgia but the remainders showed only fever and other uncharacterized symptoms.2. Precise clinical descriptions were made of some of the cases. They were almost typical for the usual epidemic myalgia.3. A strain of B group Coxsackie virus was isolated from a patient among them. This strain was serologically proved to belong to Bl of the classification by Dalldorf.4. It is very probable that this outbreak was caused by this type of Coxsackie virus.
著者
押谷 仁 齊藤 麻理子 岡本 道子 玉記 雷太 神垣 太郎 鈴木 陽
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.45-50, 2013-06-25 (Released:2014-04-26)
参考文献数
9

東北大学医学系研究科は,感染症研究国際ネットワーク推進プログラム(J-GRID)による感染症研究の拠点を,フィリピン・熱帯医学研究所(Research Institute for Tropical Medicine: RITM)に2008年より設置している.フィリピンの拠点では公衆衛生学的見地からフィリピンにおいて重要な感染症を対象とし,感染症対策に貢献できるような研究を目指すことを基本方針としている.このため研究プロジェクトの多くはフィリピン各地でのフィールドでの研究となっている.これまでに主に取り組んできた研究プロジェクトとしては,小児重症急性呼吸器感染症に関する研究,インフルエンザの疾病負荷に関する研究,狂犬病の分子疫学,小児下痢症患者でのウイルス検索などがある.このうちレイテ島での小児重症呼吸器感染症に関する研究では,重症肺炎で入院した小児のウイルスを中心とした病因の検討を行ってきている.この間,Enerovirus 68が小児重症急性呼吸器感染症の重要な原因であることを見いだした他,Respiratory Syncytial Virus(RSV)の分子疫学的解析,Human Rhinovirus(HRV)の病態の検討などを行ってきた.これらの研究の結果を基盤として,地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)での小児肺炎に関する包括的研究をフィリピンにおいて2010年より行っている.
著者
山本 浩之 俣野 哲朗
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.133-139, 2007 (Released:2008-06-05)
参考文献数
40
被引用文献数
1

予防HIV-1ワクチン開発における最も本質的な問題は,ウイルス抗原の易変異性への対処ではなく,宿主防御免疫系の働きによる自然寛解を許容せず慢性持続感染を成立させるウイルスをそもそもどのように制御するかという点である.この考え方は,自然寛解が得られる急性ウイルス感染症に対する予防ワクチン開発戦略とは本質的に異なるアプローチである.ヒトHIV-1感染症及びサル免疫不全ウイルス(SIV)感染サルモデルの解析により,宿主適応免疫系はエイズウイルス複製の抑制においても中心的な役割を果たしていることが明らかになってきたが,自然寛解が一般に得られないことからもわかるとおり,その機能の発揮は自然感染においては完全でない.したがって,何が障壁となるのかを明らかにしその条件を取り除くアプローチ,あるいはウイルス複製制御に元来寄与しうる条件を強化するアプローチが,HIV-1ワクチン開発には求められる.それはすなわち,エイズウイルス慢性持続感染が成立する過程が,どの段階で,どのような機序で,どの程度可逆であり,可逆性を得るためにどのような宿主防御免疫を誘導すればよいのかを理解することと一体である. 本稿では,サルエイズモデルについて言及したうえで,宿主レベルでのエイズウイルス感染防御免疫について概説する.特にin vivoでのエイズウイルス複製抑制に中心的な役割を果たしていることが知られているウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL),および持続感染成立阻止への寄与が明らかになりつつあるウイルス特異的中和抗体について,我々の研究で得られた知見を含め,重点的に解説する.同時にそれらに基づく予防HIV-1ワクチン開発の進展を概観し,今後解決すべき問題点を考察する.
著者
谷口 孝喜
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.87-96, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
参考文献数
53

2006年に2種のヒトロタウイルスワクチン(RotarixとRotaTeq)のすぐれた有効性と安全性を示す臨床試験成績が報告されて以来,ロタウイルスワクチンに対する関心は大いに高まった.これらのワクチンは100ヵ国以上で認可され,約30ヵ国で定期接種されている.防御能は期待以上であり,重症ロタウイルス下痢症乳児の大幅な減少につながった.わが国においても,昨年11月にRotarixの投与が開始され,RotaTeqについても間もなく開始される.これら2種のヒトロタウイルスワクチンの組成,特徴,実際の効果について記載し,腸重積,感染防御の機構,ワクチン株の排泄の意味など,問題点を含めた今後の展望についてまとめた.
著者
伊藤 公人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-14, 2011-06-25 (Released:2012-03-20)
参考文献数
69
被引用文献数
1 1

毎年世界中で季節性インフルエンザが流行し,高熱,急性肺炎等の重篤な疾病を引き起こしている.インフルエンザの予防にはワクチン接種が有効であるが,人の免疫圧による選択淘汰を受け,ウイルスの抗原性が変化し続けるため,流行しているウイルスの抗原性に合わせてワクチン株を更新しなければならない.本総説では,最新の知見を含め,バイオインフォマティクスをワクチン株選定や抗原変異予測に活用する研究事例を概説する.
著者
渡士 幸一 下遠野 邦忠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.105-110, 2005 (Released:2005-11-22)
参考文献数
35
被引用文献数
4 4

現在C型肝炎ウイルスに対する治療としては主にインターフェロン(IFN)の単独投与あるいはIFNとリバビリンの併用療法が適用されている.しかしこれらによる著効率は平均して3-6割というのが実状であり,これらに代わる抗HCV療法の開発が求められている.近年HCVが培養細胞内で自律的に複製増殖するHCVサブゲノムレプリコンシステムが確立され,培養細胞で抗HCV剤候補をスクリーニングすることが可能となった.我々はこの系を用いてさまざまな化合物のHCVゲノム複製への影響を調べることにより,免疫抑制剤シクロスポリン(CsA)が少なくとも培養細胞の系においてHCV複製を抑制することを見い出した.このCsAの抗HCV効果には免疫抑制作用は必要ないことがわかった.さらにCsAの抗HCV作用のメカニズムを解析することによって,CsAの細胞性標的因子の一つであるシクロフィリン(CyP)BがHCVのゲノム複製に重要な役割を果たすことが示唆された.このように抗HCV剤候補の探索は未知のHCV複製機構を解明する手がかりとなるかもしれない.