著者
渡辺 登喜子 河岡 義裕
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.155-162, 2016-12-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

地球上には膨大な数のウイルスが存在しており,多くのウイルスが宿主において病気を起こすことなく共存している.これまで宿主にとって「害」であると見なされてきたウイルスの感染が,宿主のゲノム進化や生体機能に有利に働くことを示唆する最近の研究結果は,ウイルス学の既成概念を大きく覆そうとしている.これまでのウイルス学では,病原微生物であるウイルスを対象とした研究に偏重しており,自然界でのウイルスの存在意義を解明する自然科学的な研究はあまり行われてこなかった.新学術領域「ネオウイルス学」では,ウイルスを地球生態系の構成要素の一つとして捉え,生態系におけるウイルスのレゾンデーテル(存在意義)を探ることを目指す.
著者
森島 恒雄
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.59-66, 2009-06-25 (Released:2010-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
4 3

小児の急性脳炎・脳症は,毎年約1,000例と多数の報告がある.その一方,詳細な病因別頻度,予後,病態など不明な点が多く,単純ヘルペス脳炎やインフルエンザ脳症など一部の疾患を除いては治療法も確立していない.ここでは,厚生労働省「インフルエンザ脳症研究班」および文部科学省基盤A研究班のデーターを中心にこの領域における最近の知見をまとめてみたい.
著者
深井 孝之助 土佐 英輔 西 義美
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.135-140, 1951-07-01 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

Adsorption states of influenza virus, Lee strain, on chicken red cells were studied under electron microscope. Treating electronmicrographs quantitatively, adsorption end point was determined. From this end point, that the foundamental idea of CCA titration by Miller and Stanley had been fare, was proved. From some pictures, it was concluded that owing to agglutination of virus particles by antisera, the red cell agglutination inhibiton reaction would be caused. And virus particles adsorbed on chicken red cells were inversely eluted and agglutinated when anti-viral serum added after complete adsorption. This latter phenomenon was named as “robbing off reaction” by antisera.
著者
岡本 尚
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.89-92, 2013-06-25 (Released:2014-04-26)
参考文献数
8
著者
多屋 馨子
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.17-24, 2017-06-25 (Released:2018-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
4

2007年に10~20代を中心とする大規模な全国流行が発生した.麻疹に関する特定感染症予防指針を告示し,麻疹排除を目標に国を挙げた対策が開始された.2008年も引き続き1万人を超える大規模な全国流行となり,0~1歳の乳幼児と10~20代の若年成人が多数罹患した.多くは予防接種未接種,1回接種あるいは接種歴不明であった.2009年から患者数は激減し,日本の土着株と言われた遺伝子型D5の麻疹ウイルスは2010年5月を最後に検出されていない.海外からの輸入例を発端として,2011年と2014年には地域流行が認められたが,早期に終息した.2006年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンによる2回接種制度が始まっていたが,2008年度からの5年間で中学生と高校生に対する2回目のMRワクチンが定期接種化され10代への免疫強化がなされた結果,2歳以上のすべての年齢層で95%以上の抗体保有率が維持されている.2015年3月には,WHO西太平洋地域事務局から日本の麻疹排除が認定された.2017年はアジアあるいはヨーロッパからの輸入例を発端とした成人での集団発生が相次いだが,地域の保健所を中心とした積極的な対策により早期の終息宣言がなされている.麻疹排除認定後の年間患者報告数は200人未満である.
著者
倉根 一郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-20, 2002-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
56
被引用文献数
1
著者
河 敬世
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.257-260, 2002-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2 4
著者
堀田 進
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.105-107, 2001-06-01 (Released:2010-03-12)
著者
關 文緒 竹田 誠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.175-182, 2012-12-25 (Released:2013-10-22)
参考文献数
52

パラミクソウイルス科モルビリウイルス属は,医学,獣医学的に重要なウイルスを多く含む.モルビリウイルスは限られた宿主に感染し,しかも血清型が単一であるため,ワクチン接種やサーベイランスで,流行を効果的に制御できる.2011年には牛疫ウイルスが根絶され,また麻疹ウイルスの排除が世界的に進められている.近年,新たなウイルスレセプターNectin4が同定された.免疫系細胞に発現するSLAMと上皮系細胞に発現するNectin4,二つのレセプターがウイルスの感染性と病原性に重要であることが報告されている.
著者
清水 博之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.57-66, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
参考文献数
42
被引用文献数
5 8

ポリオワクチン関連麻痺(VAPP)およびワクチン由来ポリオウイルス伝播によるポリオ流行のリスクを避けるため,ポリオ流行のリスクが低い多くの国々では,不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)が定期予防接種に導入されている.我が国では,現在,単独IPVと二種類の百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ (セービン株由来IPV; sIPV) 混合ワクチンの製造承認申請が提出されており,2012年秋の導入が予定されている.一方,VAPPリスクへの強い懸念や近い将来のIPV導入により,経口生ポリオウイルスワクチン(OPV)接種率低下が顕在化している.OPVからIPVへの移行期における,集団免疫レベルの低下について注意深く監視するとともに,ポリオ疑い例のサーベイランス強化とポリオウイルス実験室診断の徹底が求められている.sIPVの開発は,より価格の安いIPVを途上国に導入するための,もっとも現実的なオプションのひとつである.そのため,sIPV導入後は,世界で初めて認可されたsIPV製剤として,有効性,安全性,および,互換性に関する臨床研究が必要とされる.
著者
湯 華民 定岡 知彦 森 康子
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.221-236, 2010-12-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
171
被引用文献数
6 6

ヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus 6 : HHV-6)は,小児期のポピュラーな疾患のひとつである突発性発疹の原因ウイルスであり,90%以上の成人の体内に潜伏感染している.近年は,移植後患者におけるHHV-6再活性化による脳炎が問題となっている.また,HHV-6と薬剤過敏症症候群との関連性も示唆されている. ヒトヘルペスウイルス7(human herpesvirus 7 : HHV-7)は,健康成人の末梢血単核球から分離されたウイルスであり,HHV-6感染後の突発性発疹を引き起こすことが知られている.両者は,βヘルペスウイルス亜科に属する近縁なウイルスであり,主にT細胞において感染増殖し,子孫ウイルスを形成する.
著者
竹原 孝一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.113-118, 1986-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
82
著者
中山 哲夫 山口 真也 森 孝之
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.5-13, 1997-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
35
著者
神谷 亘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.29-36, 2020 (Released:2021-05-08)
参考文献数
40

コロナウイルスは多くの動物種に感染し,特に,呼吸器あるいは消化器に感染することで病気を引き起こす.コロナウイルスはニドウイルス目に分類され,ヒトのコロナウイルスは一般的に風邪の原因ウイルスの一つである.しかしながら,コロナウイルスにより重篤な肺炎を示す2002年の重症急性呼吸器症候群と2012年の中東呼吸器症候群が発生した.そして,2019年には新型肺炎が中国を発生源として世界各国に感染拡大した.この新型肺炎はCOVID-19,その病原体はSARSコロナウイルス-2である.
著者
万年 和明
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.21-25, 2002
被引用文献数
2

いったん発症するとほぼ100%死亡する狂犬病はウイルス性の人獣共通感染症であり, 全ての温血動物が感受性を持っている. 人類文明の創生期からすでにその怖ろしさが記録に残っているこの疾病は, 野犬や野生動物が感染環を維持していて, 健康な人や動物が偶発的に発症前後の動物と接触することで感染がおこるが, 幸いにも日本では50年近くも発生が見られない. ここでは, 狂犬病ウイルスについて概略を説明する.
著者
小池 智
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.245-257, 1993-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1