- 著者
-
清水 博之
- 出版者
- 日本ウイルス学会
- 雑誌
- ウイルス (ISSN:00426857)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.1, pp.57-66, 2012-06-25 (Released:2013-05-09)
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
-
5
8
ポリオワクチン関連麻痺(VAPP)およびワクチン由来ポリオウイルス伝播によるポリオ流行のリスクを避けるため,ポリオ流行のリスクが低い多くの国々では,不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)が定期予防接種に導入されている.我が国では,現在,単独IPVと二種類の百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ (セービン株由来IPV; sIPV) 混合ワクチンの製造承認申請が提出されており,2012年秋の導入が予定されている.一方,VAPPリスクへの強い懸念や近い将来のIPV導入により,経口生ポリオウイルスワクチン(OPV)接種率低下が顕在化している.OPVからIPVへの移行期における,集団免疫レベルの低下について注意深く監視するとともに,ポリオ疑い例のサーベイランス強化とポリオウイルス実験室診断の徹底が求められている.sIPVの開発は,より価格の安いIPVを途上国に導入するための,もっとも現実的なオプションのひとつである.そのため,sIPV導入後は,世界で初めて認可されたsIPV製剤として,有効性,安全性,および,互換性に関する臨床研究が必要とされる.