著者
立石 晶子 山本 一彦
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.251-255, 2002

本来, 自己の抗原に対して応答しない (免疫学的寛容) という原則に基づき, 免疫系は成り立っている. この免疫学的寛容に破綻をきたし, 自己の抗原に反応し, さまざまな組織障害や代謝機能異常を引き起こすのが自己免疫疾患である. 自己免疫疾患の発症のメカニズムは明らかにされていないが, 一つの機序としてウイルスや細菌などの微生物感染による自己免疫反応の発現, さらには自己免疫疾患への進展の可能性が以前より想定されている. そのメカニズムとして微生物感染による組織障害が隔絶抗原の露出を引き起こし免疫系へ提示されるという機序や, スーパーアンチゲンによる自己反応性T細胞の活性化, また感染に伴う炎症性サイトカインによる自己反応性T細胞の活性化 (By-stander activation) などがあり, molecular mimicry (分子相同性) もその一つである. (表1)molecular mimicry とは, 本来無関係である感染微生物抗原と宿主抗原の間に一次構造, あるいは高次構造の類似性が存在することをいう. これにより両者の間に免疫学的に交差反応が生じ, 自己抗原に対して抗体が産生されたり, T細胞を介した免疫応答による自己組織の障害が生じ, 自己免疫反応が生じると考えられる. 一方で molecular mimicry とは関係なく微生物感染では多くの場合, 副刺激分子 (costimulatory molecular) の発現の増強やプロフェッショナル抗原提示細胞上の主要組織適合遺伝子複合体 (major histocompatibility complex: MHC) 発現の増強, また末梢からリンパ組織への樹状細胞のリクルートなどにより, T細胞活性は増強される. さらに実験的に組織にサイトカインを強制発現させることで微生物の感染なく自己免疫疾患を発症させることが可能であったり, 微生物の molecular mimicry による特異的自己反応性T細胞の活性化の必要なく, 慢性感染による組織障害や自己抗原の放出で自己免疫疾患を引き起こすとも言われている. 本稿では, 自己免疫疾患における molecular mimicry の関与について最近の知見を交えて概説する.
著者
白土 堀越 東子 武田 直和
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.181-190, 2007-12-22
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

ノロウイルス(NoV)は世界各地で発生しているウイルス性下痢症の主たる原因ウイルスである.少なくとも33遺伝子型を有し,極めて多様性を持った集団として存在する.近年,NoVのプロトタイプであるNorwalk/68(NV/68)株が血液型抗原であるH(O),A,Le<SUP>b</SUP>型抗原に吸着することが明らかになった.血液型抗原とは抗原構造をもった糖鎖の総称であり,ヒトの赤血球表面だけでなく,NoVが標的とするであろう腸管上皮細胞にも発現されている.血液型抗原の合成に関与するフコース転位酵素の一つであるFUT2(Se)酵素をコードする<I>FUT2</I>遺伝子が活性型のヒトでは血液型抗原が腸管上皮細胞に発現されている(分泌型個体).これに対しSe遺伝子が変異により不活化すると,血液型抗原は上皮細胞に発現されなくなる(非分泌型個体).NV/68株をボランティアに感染させると分泌型個体で感染が成立し非分泌型個体では成立しない.さらに血液型間で感染率を比較検討すると,O型のヒトでの感染率が高くB型では感染率が低いことが報告されている.しかし,その一方でNoVに属するすべてのウイルス株がNV/68と同じ血液型抗原を認識するわけではないことが明らかになってきた.GII/4遺伝子型は他の遺伝子型に比べ結合できる血液型抗原の種類が多く,またそれぞれの血液型抗原への結合力も強いことがin vitro binding assay,疫学研究の両面から証明されている.この遺伝子型は,日本も含め世界中で流行している株であるが,その伝播力についても答えが出ていない.直接的な証明はまだなされていないものの,GII/4遺伝子型株の血液型抗原への結合力の強さが伝播力の強さに結びついている可能性が大きい.血液型抗原への吸着をスタートとしたNoVの感染が,その後,どの様なメカニズムによって下痢症発症にまで結びつくのか,解明が待たれる.
著者
千葉 靖男 原 稔
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-23, 1997-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1
著者
工藤 宏一郎 間辺 利江
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.9-16, 2010-06-25 (Released:2011-02-15)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

2010年4月,メキシコ発の新型インフルエンザウイルス(パンデミック(H1N1)2009)感染の発生が報告され瞬く間に地球規模で拡大,発生国メキシコでは多数の死亡例も報告された. 折しもアジア諸国を中心に発生している致死率の高い高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)がパンデミックに繋がるのでは,という懸念が世界的にも増大していた時であった.パンデミック H1N1 2009の発生を受け,発生国メキシコの臨床的実情を調査する機会も得,現地の医療機関と共同臨床研究を実施した.これらから,パンデミック H1N1 2009とH5N1,スペインインフルエンザ等のこれまでのインフルエンザパンデミックとの病態,重症化因子を対比したところ,インフルエンザの感染拡大,重症化,死亡には,ホスト,ウイルス間の相互関係が重要であること,社会・疫学的にはグローバルな疾患にも関わらずリージョナル(地域的)な側面が強いことを確認した. これらを踏まえ,パンデミック H1N1 2009の病態・臨床像と,重症・重篤・死亡に影響する医学的因子,社会的因子を述べる.
著者
平木 潔 太田 善介 三好 勇夫 原田 英雄 鈴木 信也 六車 昌士
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1-2, pp.6-12, 1966-04-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
21

Spontaneous mammary carcinoma of AKR mice and Xray-induced mammary carcinoma of C58 mice, both known as low-cancer strains, were investigated by electron microscopy.In AKR mammary carcinoma, intracytoplasmic type A and extracellular type B particles were present. In C58 mammary carcinoma, extracellular type C particles were observed. In both tumors, mature virus particles, i.e. type B and type C particles, were formed by the process of budding of cytoplasmic membrane of carcinoma cells and present in the lumina of the milk ducts. Aberrant form of type C particles, which contained a filamentous structure instead of a nucleoid was also seen in C58 mammary carcinoma.In serial in vivo transplantation of those carcinoma cells to the same strain mice, these virus particles were always present and formed from carcinoma cells, although the number of virus particles reduced almost successively with transplantations in AKR mammary carcinoma.In tissue culture of C58 mammary carcinoma cells, type C particles similar to those in the original tumor were observed extracellularly. On the contraty to the presence of type B particles in the original AKR mammary tumor, however, two tissue culture strains derived from in vivo transplanted AKR carcinoma cells contained type C particles. These type C particles were conceivable to be the leukemia virus that naturally harbored in AKR mice and happened to have been tranferred to the tissue culture probably through its latent infection in carcinoma cells.
著者
寺田 正中 柴崎 健三
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.89-95, 1958-04-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
32

In the present paper, some experiments are described on enzyme systems of Bacterial Viruses. The purified high concentrated S. gallinarum (Akita strain) phage (abbrebiated Sg Bp) was used as enzyme preparation, and the enzymatic activity of Bacterial Viruses was widely reserched by Warburg apparatus, Thurnberg tube, Absorption spectrum and other enzymatic methods. The findings obtained are summarized as follows.I) We have made clear with the absorption spectrum analysis the catalase activity of Sg phage is taken place by the Hematin like substance, but it is very difficult to prove the catalase activity is to be the activity of phages itself or hosts itself.2) It appears that Sg phage has no enzymatic activity e.g. Raspiratory enzymes, Enzymes in Carbonhydrate metabolism (contains Enzymes in TCA Cycle), Transacetylase, Transaminase, Desmolase, Amino Acid Oxydase, Amino Acid Decarnoxylase etc.
著者
岡本 宏明 真弓 忠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.259-271, 2000-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
53
被引用文献数
1 3
著者
鈴木 信弘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.11-24, 2014-06-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
119
被引用文献数
1 2

菌類は未同定,未報告の種も含めると百万種を超えると言われる.そこにはそれらを宿主とする多種多様なマイコウイルス(菌類ウイルス)の世界も広がっている.ここ20年に渡る一握りのマイコウイルスの研究から,精製したウイルスの粒子に感染性があることが証明されて人工接種法の開発に至り,ウイルス研究に必要な他の技術革新ももたらされた.植物病原糸状菌の一種であるクリ胴枯病菌は,マイコウイルス研究のモデル宿主菌としての地位を確立しつつある.本菌では,いまだ完全ではないがアノテーション付きのドラフトゲノム配列情報も公開され,関連する研究ツール・遺伝子改変技術もよく整備されている.また,最近になり,分類学上の目が異なる宿主菌(白紋羽病菌)に自然感染していた多くのウイルスが本菌で複製できることが判明し,マイコウイルス研究を進めるための実験宿主菌としての一面も併せ持つことも明らかになった.本稿では,マイコウイルスの一般的な性状,クリ胴枯病菌の実験ウイルス宿主としての優位性を概説し,さらにクリ胴枯病菌を舞台に得られた最近の興味深い解析例,「目立たないウイルスの複製を制御するDI-RNAとRNA サイレンシング」ならびに「RNAサイレンシングとウイルスRNAゲノムの組換え」,を紹介する.
著者
瀬谷 司 新開 大史 松本 美佐子
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-8, 2004 (Released:2005-06-17)
参考文献数
39
被引用文献数
4 7

TLRファミリーはロイシンリッチリピート (LRR) の細胞外領域と細胞内のTIR (Toll/IL-1 R homology) ドメインからなる. TLRはリガンドを認識すると細胞内のTIRドメインへアダプター分子MyD88などをリクルートし, NF-κBとMAP kinaseを活性化し, 最終的にサイトカインやケモカインなどを産生誘導する. 一方, 骨髄性樹状細胞 (mDC) ではTLRによるIFN-β産生やIFN誘導遺伝子の発現, 樹状細胞の成熟化などが誘起されるが, これらはアダプター分子, MyD88非依存性に起こる. TLRのIFN-β産生系としてはdsRNA刺激によるTLR3依存性経路, LPS刺激によるTLR4を介したIFN-β産生経路などがある. リンパ球様樹状細胞 (pDC) ではTLR7/TLR9刺激でIFN-αがMyD88依存性に誘導される. 我々は, 本稿でTLR3, TLR4を介したIFN-β産生に関与するアダプター分子の構造と機能を総説し, 新規のIFN-β誘導経路に言及する. 併せてウイルス成分認識性のTLRがtype I IFNを誘導するシグナル経路, これらの経路とウイルス感染が誘起する抗ウイルスの細胞応答の連携を概説する.
著者
萩原 健一 山河 芳夫 花田 賢太郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.155-166, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
106
被引用文献数
2 3

プリオン病(伝達性海綿状脳症)は,生前の確定診断法・治療法が確立していない致死性神経変性疾患である.ヒトの場合,1)全体の8~9割を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD),2)プリオン蛋白質の遺伝子変異による家族性プリオン病,3)病原体プリオンに汚染された医療用具,生物製剤あるいは食物を介した感染を原因とするプリオン病,が知られている.中枢神経系に蓄積する異常型プリオン蛋白質(PrPSc)は病原体と等価であると考えられており,感染型プリオン病患者に由来するPrPScのみならず,孤発性/家族性患者のPrPScも基本的に感染性をもつ.ウシ海綿状脳症(BSE)プリオンの経口摂取が原因の変異型CJD(vCJD)は1996年に英国で確認されて以来,世界で215名の患者が発生している(2009年9月現在,英国NCJDSUデータ).孤発性CJDと異なり,vCJDでは脾臓や扁桃にもPrPScが検出される.このことから,潜伏期のvCJD患者がドナーとなる輸血の安全性が以前から議論されていたが,輸血が原因と疑われる2次感染が英国で5例確認された.本稿では,感染症としてのプリオン病を再考察する.
著者
池上 徹郎 牧野 伸治
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.229-235, 2004 (Released:2005-06-17)
参考文献数
37
被引用文献数
5 7

リフトバレー熱ウイルスはブニヤウイルス科, フレボウイルス属に属するネガティブ鎖RNAウイルスである. このウイルスは蚊によって媒介され, 家畜, 人に感染, 疾病を引き起こす. 本ウイルスは3つの分節ゲノム (S, M, L) からなり, S分節はNおよびNSs遺伝子がそれぞれアンチウイルスセンス鎖, ウイルスセンス鎖にコードされたアンビセンス鎖である. 感染するとウイルス蛋白の合成, ウイルス粒子放出とともに, 宿主細胞の蛋白合成が停止する. NSsが宿主RNAポリメラーゼIIの転写因子TFIIHの機能を阻害することによってmRNAの合成を抑制することが宿主蛋白合成の停止の原因であると思われる. 本ウイルスのReverse genetics systemの確立はウイルスの病原性, ウイルスの複製及びウイルスと細胞の相互作用の解析のみならず, 今後のワクチン開発にも重要であると考えられる.
著者
岸 よし
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.110-117, 1958-04-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
39

It was already presumed on the basis of epidemiological survey on poliomyelitis as well as immune state of inhabitan's against polimyelitis that Japan might be under so poor sanitary conditions that any new born could be infected with poliomyelitis virus during the childhood (Paul, Kitaoka and others). In order to give positive evidence for such a conception attempt was made to isolate poliomyelitis virus from stools of healthy looking infants, The stool samples were collected for poliomyelitis virus isolation by using skin muscle of human embryo from 306 healthy children aged one day to 3 years old in the 4 Infant Homes, 2 located in Tokyo Prefecture and each one in Yamagata and Aomori Prefectures respectively, and 58 children of nonpoliomyelitis in the Aomori Prefectural Hospital As a result 6 (7.8%) out of 77 children in the Setagaya Infant Home, Tokyo Prefecture, were proven to be poliomyelitis virus positive. All of them were identified as type II virus. These positive samples were collected during the period from August to September 1955 but not during the other seaon. In 1955, no case was recognized among the infants at the same Infant Home. The youngest positive child was 2 months 28 days old and the other positive were under 2 years old. Five of 6 new isolates produced the poliomyelits syndrome in mice following intracerebral inoculation but not the other one which gave rise to paralysis after intraspinal inoculation. In other words they were not proven to be avirulent for mice. The neutralizing antibodies ranging from 1:16 to 1:64 of titer were found against type II poliomyelitis virus in the serum collected two months later after the date of stool collection from each poliomyelitis positive child.During the poliomeylitis virus isolation procedure 16 nonpoliomyelitis viruses were encountered which gave rise to cytopathogenic effect on human embryo tissue.Compared with the cytopathogenic effect of the new isolates including poliomyelitis and nonpoliomeylitis viruses on mokey kidney, cells, human embryo skin muscle, HeLa and human amnion cells it was reconfirmed that the monkey kidney cells would be the most suitable for isolation of poliomyelitis virus.
著者
甲野 礼作 芦原 義守 榎本 知以子 松宮 恒夫 川上 勝朗 平山 宗宏
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.223-233, 1957-08-20 (Released:2010-03-16)
参考文献数
41

(1) From 1954 to 1956 the authors isolated 51 strains of cytopathogenic agents mostly from feces of patients with paralytic poliomyelitis using human embryonic skin-muscle tissue culture. As a result of typing we found 31 strains of type I (70%), 7 strains of type II (15%), 7 strains of type III (15%) and 6 untypable agents. 70 to 80 per cents of causative agents of paralytic poliomyelitis belonged to type I in Japan in the above period.(2) Neutralization test using 100 TCD 50 of three types of poliovirus vs. undiluted and diluted (1:10) sera from healthy individuals was done on 209 specimens from Tokyo. The percentage positive was lowest at 6-11 months after birth, increasing rapidly, and the adult level (80-100%) was reached about 4 to 6 years of age. This pattern of the age distribution of antibody is almost equal to those obtained in Cairo, Egypt, and French Morocco. In the case of diluted sera the final level attained was 60-80 per cent, so that about 20 per cent of immune adults were considered having antibody titer less than 1:10.(3) 46 per cent of paralytic polio occurred in the first year of life in Tokyo 1955, and steep increase of neutralizing antibody was seen among examinees belonging to the same age group. It means that paralytic sequelae are very likely to occur in the primary infection without protection of antibody.(4) Analysis of antibody for one or more types of poliovirus in various age groups shows that infection by any one type interfere with heterotypic infections, in other words there exists some degree of cross immunity between heterotypes.(5) Antibody titers of the pooled sera which were composed of an equal quantity of sera from individuals belonging to the same age group were minimum (antibody titer against type II and III were zero, but that of type I was 1:3 to 1:8) under one year of age, rose up to maximum (1:64 to 1:128) at 4 to 6 years of age, then declined a little and kept at a level (1:16 to 1:32) thereafter in Tokyo.
著者
牛島 廣治
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.75-90, 2009
被引用文献数
3 4

ウイルス性胃腸炎の研究の流れ,概要,診断法,分子疫学について述べた.ロタウイルス,アデノウイルス,ノロウイルス,サポウイルス,アストロウイルス,ヒトパレコウイルス,アイチウイルス,ヒトボカウイルスを取り上げた.それぞれに遺伝子群(genogroup),遺伝子型(genotype),亜型(subgenotype)/クラスター(cluster)/リニージ(lineage)などがあり,地域・年によって変異が起きていることがわかった.これらの変異には点変異のみならず,ヒト-ヒトおよびヒト-動物ウイルス間の組み換えもみられた.ウイルス性胃腸炎は食物だけではなく,ヒト-ヒト感染が重要であり,また環境との関係も注目される.研究の進歩で少しずつ自然生態系の中での各ウイルスの有り様がわかってきた.すでに究明されたウイルスに対しては免疫学的方法あるいは遺伝子学的方法で検査が可能となった.しかし更なる検査法の開発および未知のウイルスの発見が今後期待される.疫学は長く行ってはじめて現象が理解されることが多く地道な努力が必要である.新しい技術を用いながら研究を進めるとともに,流行時など社会の要求に対処する必要がある.
著者
山本 卓 坂本 尚昭 佐久間 哲史
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.75-82, 2014-06-25 (Released:2015-03-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1

ゲノム編集は,TALENやCRISPR/Cas9などの部位特異的ヌクレアーゼを用いて,細胞内で標的遺伝子を改変する技術である.ゲノム編集を用いることによって,これまで遺伝子改変が難しかった生物種においても遺伝子ノックアウトや遺伝子ノックインが可能となったことから,現在,疾患モデルの培養細胞や動物の作製が競って進められている.本稿では,部位特異的ヌクレアーゼを基盤とするゲノム編集技術の基本原理と研究の現状を紹介する.
著者
竹原 孝一 三井 正朗 中村 〓治
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.261-268, 1975-12-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
23

Stillbirth and abortion can be induced in hamsters at a high frequency by peripheral intracardiac inoculation with Japanese encephalitis virus. In the present experiment hamsters were conferred with immunity of varying degrees beforehand to examine the relationship between the degree of immunity and the frequency of occurrence of stillbirth and abortion. The results obtained are summarized as follows.1. Hamsters immunized with live virus. (1) When inoculated with live virus, all the animals produced such a high titer of hemagglutination-inhibition antibody as 1:160-1:320. (2) In the immunized group, no animals (0/9) were involved in stillbirth or abortion when challenged by virus inoculation. The average number of young per litter was 8.6 In the unimmunized control group, stillborn and aborted young were seen in all the animals (9/9). The average number of young, including stillborn and aborted ones, per litter was 2.8.2. Hamsters immunized with inactivated virus. (1) When three different concentrations of vaccine, high, moderate, and low, were used for immunization, antibody was produced positively in 12/12, 11/16, and 1/14 animals of the three groups, respectively. (2) The rate of occurrence of fetal infection by challenge inoculation was 0% (0/8), 55.6 (5/9), 100% (6/6), and 100% (6/6) in these three immunized groups and the control group, respectively.3. Relationship between antibody titer and obstetrical disorders. Throughout the present experiment the rate of occurrence of stillbirth and abortion or fetal infection was 0% (0/11) in animals in which the neutralizing antibody titer (the rate of reduction of plaques formed in 1:20 dilution of serum) before challenge inoculation was more than 77, 50% (1/2) in animals in which the titer was 55, and 100% (10/10) in animals in which the titer was less than 47.These results made it clear that no fetal infection could be established in an animal which had antibody in the blood to some extent.
著者
波多野 基一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.187-194, 1952 (Released:2010-03-16)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

(1) 日本脳炎ウィールスの新分離株 (計6株) は一定の条件下で孵化後24時間から3-4週迄の鶏雛血球を凝集させる.(2) 抽出された血球凝集素は易熱性であるが, 3,000 r.p.m. 20分遠沈上清として4℃保存で殆ど10,000 r.p.m. 60-90分遠沈上清と同じ程度安定に存し必ずしも高速遠心を必要としない.(3) 感染力を有するウィールス粒子と血球凝集素の関係につき吸收, Seitz濾過, 超遠心法, 不活化試験, メタノール精製法等で検討したが, 血球凝集素対LD50比の如きものに一定の関係は見出せず, 血球凝集素は少くもウィールス粒子自身ではない事をほぼ推定出来た.(猶本報告の要旨は昭和26年11月第5回日本細菌学会関東支部総会に於て報告した。)終りに貴重なウイールス株の御分与を忝うした予防衛生研究所安東清博士の御好意を深謝する。更に川喜田教授の御指導御鞭撻に謝意を表する。