著者
中村 清
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.198-203, 1954-09-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20

It is the well established fact that after the recovery from the typical course of the Tsutsugamushi disease the patients acquire the solid immunity against it which was proved to last at least for a decade or thereover. However, in regard to the aspect of the immunity development in the case in which the disease was suppressed with antibiotics as soon as the specific symptoms became manifest, there remains much to be made clear.The author, in order to make this aspect clear, made some trials on human beings. Namely the patients of general paralysis, which had to receive the fever treatment, were infected with the inoculation of the virus of the Tsutsugamushi disease, Pescadores strain, of certain titer of mouse LD 50, and received the drug therapy with antibiotics to recovery at the various stadium of the disease. The investigation of the immunity development just mentioned was performed upon them. A part of the results obtained is presented preliminary in this paper as the first report. Namely it can be described summarily as follows.1. The experimental minimal infectious dosis (M. I. D) of the virus of the Tsutsugamushi disease to human beings is of approximate value to mouse LD 50 titer of it.2. Below the M. I. D., the virus cannot elicit the immunity development at all in the human body, althogh it had certainly invaded into it.3. The specific symptoms of the disease become just manifest when the invaded virus multiplied somewhere in the body to such an extent to elicit the rickettsiemia of approximately 10-2 LD 50.4. The patient is far more sensitive to the drug therapy with antibiotics at the height of the disease or still later than at the beginning of it.5. The specific reaction of the site of the skin, where the virus had certainly been inoculated, can sometimes be failed, though the inoculated person contracted the disease typically.6. A certain correlation can be observed between the length of duration of the disease and the degree of rise of OXK agglutinin titer.
著者
小田切 孝人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.77-84, 2006-06-26
参考文献数
18

高病原性H5N1鳥インフルエンザは発生から2年が経過した現在では,東南アジア諸国のみならずユーラシア大陸を西に向けて拡大し,中近東,アフリカ,ヨーロッパ諸国にまで到達し,膨大な数の家禽が失われ大きな経済被害を出している.その間,ヒトへの感染例も増え続け200例を超える感染者が確認され,致死率は55%となっている.流行拡大の一因として渡り鳥が関与していることから,もはや封じ込めは不可能である.そのためH5N1ウイルスに起因したパンデミックが危惧され,ヒトーヒト感染が本格的に始まるフェーズ4になる前に,できる限りの準備が必要である.わが国においては新型インフルエンザ対策として迅速診断キットの開発,遺伝子診断系の改良,新型ワクチンの実用化などの研究開発が進められている.一方,H5N1鳥インフルエンザの発生している発展途上国に対しては,感染診断系の構築のための技術援助が必要で,先進諸国からの公衆衛生上の対応を優先させた国際支援が求められている.
著者
林 昌宏
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2019-05-18)
参考文献数
101
被引用文献数
1

ジカウイルスは1947年にウガンダのジカの森で囮動物であるアカゲザルから分離されたフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスであり,主にネッタイシマカやヒトスジシマカ等のシマカ属の蚊によって媒介される.主な症状は発熱,発疹,間接痛であり,その流行域および症状からデング熱およびチクングニア熱の重要な鑑別疾患である.ジカ熱はこれまでにアフリカから東南アジアにかけて散発していたがヒトの症例報告はわずかであった.しかしながら2007年にミクロネシアで再興しその流行は南太平洋諸島から米州に拡大した.近年のジカウイルス感染症の流行ではギラン・バレー症候群との関連および経胎盤感染による先天性ジカウイルス感染症が問題となっており,国内外でジカワクチンの開発が進められている.我が国では2013年末から輸入症例が報告されており,媒介蚊であるヒトスジシマカが本州以南に生息するため,その浸淫の可能性は否定できない.ジカウイルス感染症は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で4類感染症に指定されており,当該患者を診断した医師はただちに保健所を経由して都道府県知事に届け出ることが求められる.
著者
福原 敏行
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.209-218, 2015-12-25 (Released:2016-10-19)
参考文献数
52
被引用文献数
2 1

健全な(病徴のない)イネやピーマンなどの植物(作物)から約15 kbp(千塩基対)の直鎖状2本鎖RNAが頻繁に検出される.これらの2本鎖RNAは,宿主植物のゲノムDNAからの転写物ではなく,巨大な単一のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードし,プラス鎖に切れ目(ニック)を有するユニークな2本鎖RNAウイルスであることが塩基配列および分子系統解析により判明し,新たなウイルスとしてEndornaviridae科Endornavirus属に分類された.これらのエンドルナウイルスは,一般的な1本鎖RNAウイルスとは異なり,全ての組織で一定の低コピー数(細胞あたり約100コピー)で検出され,宿主に明確な病徴を与えない.また,日本晴品種などの栽培イネから検出されるエンドルナウイルスでは,花粉や卵から95%以上の高率で次世代に伝播する.すなわち,一般的なウイルスが爆発的に増殖し宿主に病気を引き起こし水平感染するのに対し,エンドルナウイルスは,宿主植物と共生関係を保ち,宿主に病徴を与えず,花粉や卵から効率よく次世代に垂直伝播する究極の共生ウイルスといえる.
著者
高田 礼人
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.61-70, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひきおこす病原体として知られている.ワクチンおよび抗ウイルス薬は実用化されていない.しかし,2014年に西アフリカで起きた大規模なエボラ出血熱の流行によって,予防・治療法の実用化に向けた動きは加速されるとともに,未承認ながら幾つかの治療薬が感染者に投与された.本稿では,エボラウイルスに対するワクチンおよび治療法開発のための研究と現状を紹介する.
著者
庵原 俊昭
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.69-78, 2010
被引用文献数
2

H5N1パンデミックに備え,世界各国でプライミング効果に優れたプロトタイプワクチンが開発された.本邦の沈降インフルエンザワクチンH5N1は,水酸化アルミニウムをアジュバントとする全粒子ワクチンで,初回の2回接種により優れたプライミング効果を認め,2年後に行った異なる株の追加接種により良好なブーステイングと幅広い交差免疫が誘導され,副反応は容認される範囲であった.しかし,2009年4月以来パンデミックをおこしたのは,Aソ連型と抗原性が大きく異なるH1N1であった.スプリットタイプのA(H1N1)2009ウイルス単味ワクチンの1回接種により効果的なブーステイングが認められ,多くの成人はこのウイルスに対する免疫記憶があることが示された.この結果から世界各国では季節性インフルエンザワクチンと同じ接種方式でこのワクチンの接種が行われた.なお今後の流行予測から2010/11シーズンの季節性インフルエンザワクチンに,A(H1N1)2009ウイルス由来株が含まれることになった.
著者
山田 保雄
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.154-156, 1960-06-20 (Released:2010-03-16)
参考文献数
7

(1) By treating influenza A virus suspended in 0.1M phosphate buffer (pH 7) with 5×10-4M p-chloromercuribenzoate (PCMB) for 24 hours at 37°C, the infectivity which was measured by the membrane piece technique could be destroyed without affecting hemagglutinating capacity.(2) When an equal volume of an aqueous solution (pH 7) of the reactivating agent, cysteine or sodium thioglycolate, within the initial 30 minutes of the inactivation period, was added to the PCMB-treated virus, the reactivation was obtained. When cysteine or sodium thioglycolate solution was added after 60 minutes of the inactivation period, essentially no reactivation was obtained.From these results, it seemed that SH group of virus protein was necessary to manifest the infectivity, and it was concluded that the infectivity and the hemagglutinating capacity were the independent attributes respectively.
著者
櫻木 淳一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.175-186, 2013-12-25 (Released:2014-10-31)
参考文献数
26

後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体としてヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されてから30年が過ぎた.その間,地球規模の脅威であるこの疾患に関して精力的な研究が全世界で遂行され,たくさんの成果が疾患との戦いの重要な糧となってきた.感染者に対する治療法は日々進化し続けており,もはやAIDSは死の病ではなく,慢性疾患であると言われるまでに状況は改善されてきている.しかしウイルスそのものに目を向けると一見明白となったかのように映る複製のストーリーにはいくつもの穴が開いており,根本的な理解には遠く及ばないのが現状である.本稿では特にHIVの主役をゲノム核酸と捉え,最新の知見を交えながらウイルス複製の何がわかり何がわかっていないのかをその様々なステップについて紹介する.
著者
荒瀬 尚 白鳥 行大
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.153-160, 2004 (Released:2005-06-17)
参考文献数
22

NK細胞はウィルス感染細胞や腫瘍細胞に細胞障害性を持つ細胞として, 生体防御において重要な機能を担っていると考えられている. NK細胞の標的細胞認識機構は長年不明であったが, 最近, ようやくある種のNK細胞レセプターが特異的にウイルス産物を認識することが明らかになってきた. さらに, NK細胞レセプターは, 活性化と抑制化からなるペア型レセプターを形成するが, それらによるウィルス感染細胞の認識パターンがウィルスに対する感染抵抗性を決定していることが判明した. そこで, 本稿ではNK細胞によるウィルス感染細胞の認識機構を中心に, 最近の知見をふまえ紹介する.
著者
小杉 伊三夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.209-220, 2010-12-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
125
被引用文献数
2 3

ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV,HHV-5)はヘルペスウイルス科のサイトメガロウイルス属を代表する2本鎖DNAウイルスである.ゲノムサイズは235 kbで,予想されるORFは250に上りヒトヘルペスウイルス中で最大である.幼小児期に不顕性感染し,その後,潜伏・持続感染によって人体に終生寄生する.免疫が脆弱な胎児や臓器移植・AIDS患者などではウイルス増殖による細胞・臓器傷害で生命を脅かし,胎内感染では小頭症,難聴,精神発達遅滞を生ずる.ゲノムには多数のアクセサリー遺伝子が存在し,この多くが免疫回避や細胞死抑制作用に関り,ウイルスはこれらの遺伝子産物を用いて宿主と共生する.潜伏感染が確認されている細胞は骨髄球系前駆細胞である.潜伏感染と再活性化の機構は解明されつつあるが,その分子メカニズムの全貌は未だ明らかではない.本邦では母体の抗体保有率の低下による母子感染の増加が危惧され,経胎盤感染に対する予防策の確立が急務となっている.最近HCMV臨床株特有の血管内皮・上皮細胞への侵入機構が明らかとなり,これを阻止する中和抗体やワクチンの開発が期待されている.さらに,加齢に伴ったHCMV反応性T細胞の増大が,免疫の老化を進行させる最も大きな要因と考えられている.
著者
土肥 可奈世 竹内 康裕
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.27-36, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
60
被引用文献数
4 16

レトロウイルスベクターは自身のゲノムを宿主ゲノムに挿入できることから,治療遺伝子を患者の体内に運ぶ有効な手段として注目されてきた.レトロウイルスベクターが標的とする遺伝子疾患は,疾患の原因である変異遺伝子の正常型を患者細胞に直接導入することで治療が行われる.従来のガンマレトロウイルスベクターは標的細胞における治療遺伝子の発現,患者の疾患症状改善という点からこれまでの臨床治験において数々の成功例を報告してきた.しかし,遺伝子治療後の副作用としてベクターを介した遺伝子挿入を由来とする白血病が発生した.このinsertional mutagenesis(IM)の報告により,ベクターコンストラクト自身の安全性が見直されただけでなく,患者細胞内のウイルスベクター挿入位置をモニタリングすることが重要であることも確認された.一方,非分裂細胞へも治療遺伝子を導入できるレンチウイルスベクターは,神経性の遺伝子疾患の治療にも利用されてきた.また,これら2種のウイルス間の宿主ゲノム内の挿入傾向も比較して調べられた結果,レンチウイルスベクターのがん原遺伝子への挿入傾向がガンマレトロウイルスベクターよりも集中していないこと,またレンチウイルウイルスベクターを用いた臨床治験ではIMによる白血病のケースがこれまで報告されていないことから,より安全なベクターとしての認識が広まった.しかし,レンチウイルスベクターが自身の挿入により宿主遺伝子のスプライシングパターンを変化させることから,IMによる副作用を発生させる可能性は残っている.最近では,レンチウイルスベクターを用いて患者体内のT細胞に癌や感染した細胞を死滅させるレセプターを発現させ,間接的に治療を行うことも始まった.これら疾患数,患者数の多い病気への応用が始まったことから,レンチウイルスベクターが今後広く臨床応用されることが期待される.
著者
加藤 哲久
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.83-90, 2016-06-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

単純ヘルペスウイルス1型(Herpes simplex virus type-1;HSV-1)は,軽度で合併症を伴わない粘膜感染から致死的な感染により,広範囲のヒト病態を引き起こす.HSV-1 Us3遺伝子は,α-ヘルペスウイルスに広く保存されるセリン・スレオニンリン酸化酵素をコードしている.次々と蓄積される知見が,Us3はHSV-1感染の極めて重要な制御因子であることを示唆している.しかしながら,Us3が司るHSV-1病態発現能の分子メカニズムは不明なままであった.本稿では,特に生体レベルにおけるUs3の重要性に注目し,HSV-1 Us3の役割に関する現在の知見を概略する.
著者
川名 敬
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-42, 2014

ヒトパピローマウイルス(HPV)のうち発癌性HPVでは,持続感染によって子宮頸癌をはじめとする癌を発症することがある.HPVを標的とした子宮頸癌治療には,E6, E7が標的分子として期待される.HPVを標的した分子標的治療として我々は2つ考えた.・ウイルス癌遺伝子の発現をsiRNAで抑える核酸医学と,・ウイルス癌蛋白質を癌抗原とした癌免疫療法,である.・ウイルス癌遺伝子の発現を抑える核酸医学は多く検討されてきたが,そのdrug-delivery system(DDS)が問題であった.我々は高分子ナノミセルを用いたDDSをE6/E7 siRNAに組み合わせた創薬基礎研究を行った.・HPV分子に対する細胞性免疫を誘導することによって免疫学的排除を目指した癌免疫療法(HPV治療ワクチンとも言う)は子宮頸癌やその前癌病変に対する臨床試験も多く実施されてきた.しかし,いずれも実用化されていない.我々はHPV16型E7に対する粘膜免疫を誘導する癌免疫療法としてE7発現乳酸菌を製剤化し,経口投与することを考えた.子宮頸癌前癌病変(CIN3)患者を対象とした臨床試験では,腸管粘膜で誘導された抗E7-IFN-gamma産生細胞が子宮頸部粘膜にホーミングし,CIN3を退縮させることを見いだした.HPV発癌を逆手に取ったHPV分子標的治療について,新しい戦略を用いた創薬とその臨床応用の可能性が示唆された.
著者
大谷 明
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.85-87, 2000-06-01 (Released:2010-03-12)
著者
小西 俊造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
VIRUS (ISSN:18843425)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.278-280, 1952-12-15 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

We tired to prevent measles with attenuated measles virus, which was obtained from patients and weakend by intratesticular passage through guinea pigs.The immunization was made by intranasal spraying for susceptible children.The results obtained were as follows:Classification of response Number ControlWith evidence 130 (33.8%) 156 (59.%)typical 12mild 81minimal 31no count 6No evidence 256 (66.2%) 106 (40.5%)with chance to be infectedfrom patients with measles 111no chance to be infectedfrom patients with measles 85not clear 60total 365 262A-significicant differece could be found between the results of the prevented and control groups.
著者
金井 昭夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-34, 2011-06-25 (Released:2012-03-20)
参考文献数
48
被引用文献数
2

真核生物のマイクロRNA (miRNA)にはウイルスゲノムを標的にするものがあり,ウイルスゲノムの中にもmiRNAがコードされるような例が蓄積して来た.これら低分子のRNAはウイルスの感染や増殖に重要な役割を担っている.また,生殖細胞ではpiRNAとよばれる低分子RNAが内在的なトランスポゾンの発現を抑制している.さらに,古細菌や真性細菌ではCRISPR RNAとよばれる低分子RNAがウイルスやファージのゲノムを標的にしていることが明らかになって来た.すなわち,低分子RNAには宿主の生体防御機構と大きく関わっているものがある.低分子RNAを使って,ウイルスやファージばかりでなく,病原性細菌などの増殖をコントロール出来る可能性についても考察する.

1 0 0 0 OA 抗HIV治療薬

著者
鯉渕 智彦
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.199-208, 2013-12-25 (Released:2014-10-31)
参考文献数
25

抗HIV治療薬は,逆転写酵素阻害薬,プロテアーゼ阻害薬(PI: protease inhibitor),インテグラーゼ阻害薬(INSTI: integrase strand transfer inhibitor),侵入阻害薬(CCR5阻害薬)に大別され,さらに逆転写酵素阻害薬はヌクレオシド系(NRTI: nucleoside/nucleotide reverse transcriptase inhibitor)と非ヌクレオシド系(NNRTI: non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor) に分けられる.異なる作用機序の薬剤を適切に組み合わせれば長期的にHIVの増殖を抑制できる.近年の抗HIV薬は強力かつ副作用も少ないため,CD4数に関わらず無症候期の早い時期から治療を開始することが世界的に推奨されている.しかし,現在の治療薬では潜伏感染状態にあるHIVを排除することはできず,生涯に渡る治療継続が必要である.HIV reservoirと呼ばれるこれらの潜伏感染細胞を標的とした治療法など,新たな治療戦略が求められている.