著者
小池 敏夫 石橋 毅
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.96, pp.433-"436-1", 1974-12-20

沖繩島の今帰仁層上部から, 多くのアンモナイトとともにコノドントが採集された。本層のアンモナイトについては, すでに石橋(1970)によって記載されており, コノドントを産する層準はJuvavites cf. kellyi帯に含められた。この化石帯は北米のカーニアン上部Tropites welleri帯に対比された。今回得られたコノドントはEpigondolella nodosa (HAYASHI)のほか3種である。Epigondolella nodosaの産出から, 本層準は北米のカーニアン最上部Klamathites macrolobatus帯;ハルスタツト石灰岩のAnatropites帯に対比される。以上のように, コノドントとアンモナイトによる本層準の時代決定はほぼ同じであるが, 現在の知識では, コノドントによるほうが, 若干新しい時代を示す。
著者
田代 正之
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.86, pp.325-339, 1972-06-30
被引用文献数
1

日本産のpennatae trigoniidsの特に九州姫浦層群産の種を中心に, その表面装飾及び成長に伴う形態変化を細かく観察した結果, これらの3属Apiotrigonia, Heterotrigonia, MicrotrigoniaはFrenguelliellaに酷似した幼殼を持ち, diskのL型肋は各々成長初期に突発的に形成され, areaの装飾は種により特徴ある形態を示す。Heterotrigonia特有とされたareaの放射状肋に似た細肋がApiotrigoniaやMicrotrigoniaの成長形にも弱いが出現することがある。又Heterotrigoniaのdiskにおける定向的な装飾変化はApiotrigonia, Microtrigoniaと酷似する。したがって, これら3属間には互いに密接な関係があり, 特にMicrotrigoniaはApiotrigoniaより分かれたことは明瞭である。このpennatae trigoniidsの起源はおそらくFrenguelliellaに端を発し, Trigoniinaeに加うべき過程を経たと思われるが, 成長後の形態は独特のL型肋を示すので, むしろこれらを一括して, 新亜科を設定すべきかと思われる。これらの属に加えられる姫浦層群産の3新種Ap. utoensis, Het. himenourensis, M. imutensisを記載した。またAp. minor var. nankoi NAKANOとAp. obliquecostata NAKANOは各々Ap. obsoleta NAKANOとAp. minor (YABE and NAGAO)の同種異名であろう。
著者
速水 格
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.150, pp.476-490, 1988-06-30
被引用文献数
3

三畳紀以降半深海の泥相に多いワタゾコツキヒガイ属(Propeamussium)は, ツキヒガイ属(Amusium)と見かけの上で内肋を共有するが, 系統的には全く異なり, 古生代後期に栄えたPernopectinidaeの特徴をとどめる「生きた化石」として注目される分類群である。PropeamussiumのほかPolynemamussium, CyclopectenがPropeamussiidaeの標徴を共有する。今回, 西太平洋地域の現生および化石イタヤガイ上科の数種について, 内肋の巨視的・微視的特徴を観察し, その機能的・分類学的意味を考察した。Amusiumを含むイタヤガイ科の内肋は, 腹縁近くの外層で外表の放射肋に応じて形成され, 本来は腹縁の噛み合わせを確実にする補助的役割を果たしている。これに対して, Propeamussiumの内肋は, 交差板構造の内層の中に繊維状構造を示すレンズ状のコアを伴って形成され, その末端部で付加成長する。このコアは発生的には, 右殻では稜柱層直下の"中層"から, 左殻では外層から分化したと考えられる。内肋の末端は両殻の間で対置し, 殻を閉じた時に互いに接するようにできている。おそらく, 遊泳のための強力な閉殻筋の緊縮が薄質の殻に与える破壊力を和らげるバットレスの役割を果たしていると考えることができる。
著者
北村 晃寿
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.63, pp.40-48, 1997-12-20
被引用文献数
1

The middle part of the early Pleistocene Omma Formation (1.5-1.0Ma) is composed of eleven depositional sequences caused by glacio-eustatic sea-level changes associated with Milankovitch cycles (41, 000-year orbital obliquity). Each depositional sequence contains inner shelf sediments of transgressive and high-stand systems tracts. Within each depositional sequence the molluscan fauna changes from cold-water associations to warm-water associations, followed again by cold-water associations. On the basis of detailed stratigraphic distributions of molluscs and planktonic foraminifers, the following events can be recognized during the warming interval from a glacial stage to an interglacial stage : 1. initiation of inflow of the warm Tsushima Current into the Japan Sea, 2. local extinction of cold-water molluscs, 3. absence of both cold-and warm-water molluscs, 4. successful migration of warm-water molluscs. The absence of both elements may have been caused by high seasonal fluctuations of water temperature associated with the unstable inflow of the Tsushima Current.
著者
岩崎 泰頴
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.77, pp.205-"228-1", 1970-04-10

1966年初頭にルソン島Tayabas地区の地質構造調査を行った木村敏雄・徳山明両氏は, 保存は良くないが種々検討する価値があると思われる貝化石標本を, 2ケ所から採集し持ち帰った。産出層は下部Gumaca層の上部で中新統の由であった。さて標本類は二枚貝20種, 巻貝16種が識別され, 不確定の11種を除いてすべて既知の化石種・現生種に同定されている。特徴的な種として, Vicarya callosa, Anadara multiformis, Joannisiella cumingi, Paphia exarataなどを含み, 且ってMARTIN, SMITH等によって指摘されたフィリッピン及びインドネシア方面に広く分布する中新統下部の夾炭層に伴う浅海棲貝化石群に属すると見做し得る。一方の産出地Pitogo付近の2層から得られた標本類については, 不充分な材料ではあるが露頭における産出状態から自生の種群構成を復元することができる。この結果, 現地生に近いDosinia-Anadara群集と運搬されたと思われるBatillaria群集の両要素の混合したものと推定される。更に, この仮称"Pitogo fauna"は日本の黒瀬谷層などにみられるVicaryaを含む貝化石群と古生態的にも極めてよく類似している。両者を種群構成の上から比較すると, 両地の緯度の違いを反映して個々の群集の構成種の入れ替りは, 門ノ沢型における奥尻島と種子ケ島両地産の差よりも大きいが, まったく同一の生物地理区に属するとみて矛盾はない。従っていわゆる"門ノ沢型動物群"と比較できる, はるか南方延長上に存在する貝化石群として古生物地理の観点から見落せない。少くとも中新統下部の日本の貝化石群の古生物地理学的吟味は, 東南アジア地域をも対象にする必要があろう。本報告では層序はKIMURA et al. (1968)に基いた。また貝化石群としてみた場合は, 終始日本のそれと比較するという立場で取扱っている。
著者
野田 雅之 村本 喜久雄
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.119, pp.388-"402-1", 1980-09-30

北海道の北西部を東西に流れる小平蘂川の中上流には上部白亜系チュロニアンの地層が広く露出しているが, この地域から採集された特異な形態をもつInoceramusについて述べる。本種は, 世界的に広く分布し, チュロニアン中部を代表するI. (I.) lamarckiに類似する点があり, とくに北シベリアYenisei河口低地のNasonovsk層(I. lamarcki帯)から産出したI. (I.) paralamarckiに似た点が多い。しかし, その不等殻性がそれほどいちじるしくなく, 両殻ともに成長軸の方向に極端に長くのびている点や, 膨らみがすこぶる大きく, さらに強く膨らんだ広い翼や強い装飾など相違する点が多いので, ここに新種としてInoceramus (Inoceramus) obiraensisの名のもとに記載した。研究にあたって, 従来の記載や研究の方法に加えて, 数量的に表わせる形質については補助的な手段として統計的な検討も試みた。この特異な種の日本での産出は珍しいので, 近縁種の分布などを手がかりとして, チュロニアン中期の古地理や, 本種の系統発生などについて若干の考察を付録で試みた。
著者
三本 健二
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.51, pp.15-23, 1991-11-30
被引用文献数
1

以上示したように, これは四国からの化石蔓脚類の最初の報告である.それらは17種で, 1種のエボシガイ亜目のほかはフジツボ亜目である.また, 化石として日本で最初の報告となるもの, これまでに知られた更新統の地理的分布をさらに南に拡げるものを含んでいる.
著者
Kimura Tatsuaki Kim Bong-Kyun
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.152, pp.603-624, 1988-12-30
被引用文献数
1

From the Late Triassic 'Daedong System' of non-marine origin distributed in the southern part of the Korean Peninsula, we recognized a flora consisting of 79 species belonging to 38 genera. Of these, eleven species belonging to nine genera are new to science and many plant taxa are newly found. This paper deals with the description of the following taxa recognized by us in the Daedong flora : Annulariopsis bunkeiensis (Kobatake), n. comb., Dictyophyllum exile (Brauns) Nathorst, Hausmannia ussuriensis Kryshtofovich, Cladophlebis mungyeongensis, sp. nov., Chiropteis coreanica, sp. nov., Anomozamites mungyeongensis, sp. nov. Otozamites micrauritus, sp. nov. and Pterophyllum micraequale, sp. nov. In addition taxonomic description is further refined in this paper on Coreanophyllum variisegmentum Kimura et Kim, a bennettitalean with bipinnate habit of leaf.
著者
阿部 勝巳
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.52, pp.26-27, 1992-06-30
著者
天野 和孝 ゲーラト フェルメイ 成田 健
出版者
日本古生物学会
雑誌
Transactions and proceedings of the Palaeontological Society of Japan. New series = 日本古生物学会報告・紀事. 新篇 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.171, pp.237-248, 1993-09-30
被引用文献数
4

北海道の中新統から産出したアクキガイ科の腹足類, Nucellaの保存の良い標本はN. tokudai (Yokoyama)とN. freycineti saitoi Hatai et Kotakaに同定される。N. tokudaiは中新世前期にカリフォルニアに出現し, 中期中新世初期までに, 西方へ日本およびカムチャッカに分布を広げた。N. freycineti saitoiは中新世中期に日本に出現し, 本亜種から中新世末期または鮮新世前期に現生のN. freycineti (Deshayes)が進化した。初期の地理的分布や初期のすべての種に小歯をともなう厚い外唇が見られることから, Nucella属は北東太平洋の温暖水起源であることが推定される。北米西岸の温暖水に起源をもち, その後東アジアに分散したNucellaの分布の変遷は, 北太平洋の温帯浅海域の他の多くの貝類やフジツボの分布の変遷史に類似している。
著者
岡田 豊
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.115, pp.143-173, 1979-09-30
被引用文献数
6

〔層序〕男鹿半島上部新生界の層序を要約して記載した。この中で, 不整合に基づいて, 安田層と潟西層を再定義した。また, 安田層の広範な分布がピンクタフ鍵層(北里, 1975)の追跡により明らかにされた。鮪川層, 安田層, 潟西層を通じて, 岩相および化石の産状はサイクリックに繰返して変化している。各サイクルをunit-A, B, C, Dに区分し, 記載した。〔介形虫〕介形虫の産出密度はサイクルに対応して変化し, その産出はunit-Cにほとんど限られているが, その中でも密度の低いunit-C最上部及び最下部に保存の悪い殻が見られる。これらの殻と微細構造の類似した殻が, 保存の良い殻をEDTAで脱灰することにより得られた。フォーナとしては, 男鹿半島沖の現生種ソリネットサンプルとの比較により, 50m以浅の浅海性フォーナと推定した。また, 下部のサイクルには北極海周辺にも分布する寒流系の種が多く含まれるが, これらの占める割合は上部へ向けて減少する。一方, 日本近海の暖流域で生息が知られている種の占める割合が上部のサイクルで増加している。これらの変化は海水温の上昇によると思われ, 海進海退をサイクリックに繰返しながらも浅海域の海水がしだいに暖かくなったことを示していると思われる。現生群集, 遺骸混合群集および化石混合群集の構造の比較解析により, 群集の混合度を論じ, これにより下部のサイクルから上部のサイクルへ向けて環境がしだいに安定化したと推論した。最後に, 代表的な属であるFinmarchinellaの2新種F. hanaiiとF. nealeiを記載した。