- 著者
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岡 真理
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.3, pp.28-36, 2010-03-10 (Released:2017-08-01)
昨年暮れから3週間にわたり、ガザ地区はイスラエルによる一方的な破壊と殺戮に見舞われた。この攻撃は、61年前、イスラエル建国によってパレスチナ人を襲った「ナクバ」(大いなる破局)の暴力が、この間、ひとたびも終わってはいないことをあらためて証明した出来事だった。その爆撃の只中で、一人の英文学者が「今、そこ」で起きている事態を日々、メールで世界に向けて発信し続けた。その記録は日本で『ガザ通信』という一冊の書物にまとめられる。これらは何を意味するのか?戦火の中からインターネットを使って現地の声が発信されることは、もはや珍しくない。イラク戦争については、そうした「声」がいくつも書籍化されている。その意味では、「イラク」という記号が「ガザ」という記号に置き換わっただけだ。そこにどんな意味を-しかも、文学的な-を見出そうというのか?『ガザ通信』を素材に、このテクストをめぐる思想的、文学的コンテクストについて考察したい。