著者
速水 洋
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-27, 1993 (Released:2018-12-06)
参考文献数
23

New born infants have not only id which is the reservoir of inpulsive energy, but also the sense of the self which needs acceptance of care-giver. Child development is not the process from dependence to autonomy or from undifferentiation to separation-individuation, but the process of self-objectification by expanding child’s subjective world through deepening the connection with the other.But as the consequence of the self-objectification that is conscious of the self seen from the other, the vulnerability of the self and the sense of shame occur inevitably. As the consequence of it, the self introjects the other and must begin to cure his wound. It is the self-object which Kohut insists that has such functions. Main self-object’s functions are mainly mirroring, idealizing and twinships. Deviant behavior occurs as a consequence of deepening of painful vulnerability or the lack of the supportiveness of self-objects for it.
著者
財津 亘
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.1-14, 2010-02-28 (Released:2017-09-30)
参考文献数
27

本研究では,連続放火事件のベイジアンネットワーク(BN)モデルを構築し,犯罪者フロファイリングを想定したモデルの精度を検討した。モデル精度の検証は,窃盗歴と就業状態の推定を通じて行った。BNは,現象の因果関係を条件付き確率の連鎖ネットワークによって表し,未知の現象に関する可能性を確率で算出することができる。詳細な手続きや結果は次のとおりである。まず,探索アルゴリズムの一つであるK2アルゴリズムおよび情報量基準の一種であるMDL (minimum description length) を用いて,学習用データ(518名)を基にBNモデルを構築した。その結果,放火犯の窃盗歴は放火後の通報という行動や駐車場などの放火現場といった変数と関連性がみられた。さらに,就業状態は車両の使用と関連性がみられた。第2に,検証用データ(未解決事件と想定した30名のデータ)を用いてモデルの精度を検証した。その結果,窃盗歴に関する精度は80%と高かった。しかし,就業状態に関する推定精度は50%であった。より精度を高めるためには,より正確な情報のデータペースを使用し,さまざまな探索アルゴリズムや情報量基準を用いることで,モデルを試行錯誤して構築していく必要がある。
著者
緒方 康介
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.89-104, 2018-08-27 (Released:2018-09-19)
参考文献数
29

犯罪心理学においては,少年非行と再犯に関してメタ分析より得られたエビデンスが蓄積されている。14歳未満で刑罰法令に触れた少年に対する児童相談所の指導効果を検証することが本研究の目的である。児童相談所のケース記録から,82名の再犯ケースを含め344の非行ケースを抽出した。生存時間モデルを採用した本研究では,最長観察期間を5年とした。Kaplan–Meier推定法による生存時間分析の結果,3つの交互作用が検出された。①実父母家庭,②共犯,③特別法犯のケースに継続面接を(特に4回以上)実施することに効果があった。さらに,被虐待歴のある少年では極端に再犯リスクが高いこと,児童自立支援施設の再犯抑止効果は施設退所後に失われがちであることが示された。以上の結果に基づいて,児童相談所の非行対応には少しの有効性と多くの課題が残されているものと結論した。
著者
平間 一樹 大塚 祐輔 横田 賀英子 和智 妙子 渡邉 和美
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.1-14, 2019

<p>本研究の目的は(1)潜在クラス分析を用いて,犯行前の意思決定行動に基づいて連続強姦事件の犯人を分類すること,(2)類似した犯行様式を表出する犯人は類似した犯人特徴を有するという相同仮説を検証すること,であった。「被害者就寝時侵入接近型」,「屋外襲撃型」,「非暴力的接近型」,「被害者非就寝時侵入接近型」の4つの類型が見出された。類型と強姦事件の犯人の特徴との間に有意な関連が認められた。「被害者就寝時侵入接近型」に分類された強姦事件の犯人は,犯行前の犯行場所の下見や,金品窃取の意図といったような,侵入盗犯に類似した特徴がみられた。「屋外襲撃型」に分類された強姦事件の犯人は,他の類型と比較して,若年であることや,居住地直近では犯行を行わない傾向が認められた。「非暴力的接近型」に分類された強姦事件の犯人は,機会的な対象選択の傾向を有し,他の類型と比較して,より遠くまで移動している傾向にあった。「被害者非就寝時侵入接近型」に分類された強姦事件の犯人は,「被害者就寝時侵入接近型」よりも金品窃取の意図を有する傾向は少なかった。本研究の結果は相同仮説を支持するが,強姦事件の犯人の犯行前の意思決定行動と,犯人の特徴との関連の強さは,小から中程度であった。</p>
著者
緒方 康介
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.15-25, 2019

<p>The aim of the current analyses was to examine the possibilities of sustainable contributions in Japanese criminal psychologists after detached from their practices. This study analyzed bibliometric data of Japanese criminal psychologists who had worked at practical fields as scientist-practitioners. Final data were identified under the three conditions: the researchers have (1) attributed to the Japanese Association of Criminal Psychology, (2) published scientific papers in Japanese Journal of Criminal Psychology, and (3) changed their job to academicians. The number of their published papers was the target variable. Wilcoxon signed-rank tests showed that the Japanese criminal psychologists increased the number of the published papers after detached from their practical fields. Multidimensional scaling for the journals in which the papers accepted and text-mining methods for the title of the papers revealed that research theme after job change diverged from the original one as induced in their practical fields. In conclusion, findings suggest that Japanese criminal psychologists can continue their researches after detached from their practices although their research theme could not be sustainable.</p>
著者
渕上 康幸
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.15-23, 2008-12-31 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
田口 真二 桐生 正幸 伊藤 可奈子 池田 稔 平 伸二
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯心研 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-13, 2018-06-30

<p>A projective questionnaire for measuring male sexual desire was developed. In Study 1, the original Sexual Desire Scale for Males (SDS-M) was developed by referring to information on sexual activities on the Internet, as well as to prior studies on sexual offenders and their victims. The original SDS-M requested participants to judge whether they agreed or disagreed with sentences regarding various sexual behaviors and objects of sexual desire. SDS-M did not inquire about the frequency of sexual activities or the strength of sexual desire. The original SDS-M was administered to 140 males. The factor analysis of their responses revealed that the SDS-M had a 5-factor structure: daily sexual desire, h omo-hetero sexual desire, penis oriented sexual desire, intercourse oriented sexual desire and abnormal sexual desire. Cronback's alpha indicated satisfactory internal consistency and reliability. Study 2, investigated the stability and the validity of the SDS-M. It was administrated to 274 males, and based on the results of confirmatory factor analysis using Structural Equation Modeling, the SDS-M was divided into two subscales: a general sexual desire subscale consisting of the four factors with the exception of the Abnormal factor, and an Abnormal sexual desire subscale. The goodness of fit index of each subscale indicated satisfactory factor validity. Moreover, the SDS-M had reasonable test-retest reliability and satisfactory correlations with the Sexual Attitudes Scale and the Beck Depression Inventory.</p>
著者
財津 亘
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.1-14, 2010

<p>本研究では,連続放火事件のベイジアンネットワーク(BN)モデルを構築し,犯罪者フロファイリングを想定したモデルの精度を検討した。モデル精度の検証は,窃盗歴と就業状態の推定を通じて行った。BNは,現象の因果関係を条件付き確率の連鎖ネットワークによって表し,未知の現象に関する可能性を確率で算出することができる。詳細な手続きや結果は次のとおりである。まず,探索アルゴリズムの一つであるK2アルゴリズムおよび情報量基準の一種であるMDL (minimum description length) を用いて,学習用データ(518名)を基にBNモデルを構築した。その結果,放火犯の窃盗歴は放火後の通報という行動や駐車場などの放火現場といった変数と関連性がみられた。さらに,就業状態は車両の使用と関連性がみられた。第2に,検証用データ(未解決事件と想定した30名のデータ)を用いてモデルの精度を検証した。その結果,窃盗歴に関する精度は80%と高かった。しかし,就業状態に関する推定精度は50%であった。より精度を高めるためには,より正確な情報のデータペースを使用し,さまざまな探索アルゴリズムや情報量基準を用いることで,モデルを試行錯誤して構築していく必要がある。</p>
著者
國吉 真弥
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.21-36, 2015-08-05 (Released:2017-03-23)
参考文献数
25

本研究では,集団場面における粗暴行為に影響を与える変数として,自己呈示目標,自己呈示を向ける対象及び印象操作への動機づけに焦点を当て,場面想定法を用いた質問紙により検討を行った。調査対象者は,非行少年(少年鑑別所収容中の男子少年194名)と無非行少年(非行歴のない男子高校生204名)であった。その結果,不良集団所属歴のある非行少年は,無非行少年に比べ,自分を強く見せようと虚勢を張るような自己呈示目標を抱きがちであること,自己呈示を向ける対象として「仲間」や「相手」を意識しがちであること,本研究で用いられたタイプの印象危機場面で印象操作へ強く動機づけられることなどが明らかになった。次に,想定場面で印象操作を動機づけられた少年を抽出し,そのうち,想定場面で粗暴行為を実行しようとする少年(高粗暴群)と実行しようとしない少年(低粗暴群)とを比較したところ,高粗暴群は,自分を強く見せようと虚勢を張るような自己呈示目標を抱きがちである一方,低粗暴群は,社会的に受け入れられやすい穏当な自己呈示目標を抱きがちであること,高粗暴群は,自己呈示を向ける対象として「仲間」や「相手」を意識しがちである一方,低粗暴群は「周囲の人」を意識していることなどが明らかになった。
著者
國吉 真弥
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-14, 2017-08-15 (Released:2017-09-14)
参考文献数
18

本研究では,印象操作への動機づけ,自己呈示目標,社会的視野の広狭といった自己呈示に関連する諸要因が集団場面での粗暴行為に及ぼす影響を検討した。調査対象者は,少年鑑別所収容中の男子少年194名(非行群)及び非行歴のない男子高校生204名(無非行群)であった。共分散構造分析を用いて検証した結果,無非行群では(a)虚勢的自己呈示目標は,粗暴行為に正の影響を与える,(b)順社会的自己呈示目標は,粗暴行為に負の影響を与える,(c)印象操作への動機づけは,虚勢的自己呈示目標に正の影響を与える,(d)印象操作への動機づけは,順社会的自己呈示目標に正の影響を与える,(e)独善・仲間内主義傾向は,虚勢的自己呈示目標に正の影響を与える,(f)他者視点の取得傾向は,順社会的自己呈示目標に正の影響を与えるという関連が確認された。一方,非行群においては(d)の関連は見られなかった。
著者
芹田 卓身
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.15-27, 2018-02-28 (Released:2018-04-18)
参考文献数
24

埼玉県警察では,授業抜け出しや校内暴力などの問題行動が継続している中学校に,警察職員であるスクール・サポーター(以下「SS」と記す)を派遣し,巡回,教師への助言,生徒への声かけや指導を行っている。今回の研究では,「SSと教師,生徒の関係の変化のプロセス」「教師の指導体制の変化のプロセス」「問題行動の変化のプロセス」を明らかにすることを目的として,SS計14人を対象として,主にSSの活動内容をインタビューテーマとした半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M−GTA)を用いて分析した。その結果,変化のプロセスは,「SS導入時に見られる学校の個別性」「SSへの抵抗と問題行動の継続」「SSとの連携形成と指導体制のエンパワー」「問題行動が緩和された学校」の四つにまとめられた。
著者
押切 久遠
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1-15, 2017-03-01 (Released:2017-04-22)
参考文献数
28

近年,日本においては認知行動療法を基盤とした犯罪者処遇プログラムの導入が相次ぐなど,犯罪者の認知傾向をターゲットとする処遇に関心が集まっている。そこで,我が国における犯罪者の認知傾向を明らかにし,より有効な犯罪者処遇の実践の参考とするため,認知行動療法の一つである論理療法の中心概念「イラショナル・ビリーフ」に焦点を当てた調査研究の結果を紹介する。調査Iは,犯罪傾向の進んだ受刑者128人を対象に行い,その結果に基づき,調査IIにおいて使用するイラショナル・ビリーフのチェックリストを作成した。調査IIは,犯罪傾向の進んだ受刑者241人を対象に行い,①言語化されたイラショナル・ビリーフを収集し,②言語化されたイラショナル・ビリーフを分析・検討して,共通性の高い「抽象化されたイラショナル・ビリーフ」を抽出し,③調査対象者の属性とイラショナル・ビリーフとの関係を調べた。その結果,調査対象者は,自己責任を否定・回避・転嫁することによって,本人の内省を妨げ更生を阻害する可能性のあるイラショナル・ビリーフや,無力感や運命感を抱くことによって,自棄的になり再犯を促進する可能性のあるイラショナル・ビリーフを持つ傾向があることが示唆された。
著者
河合 直樹 窪田 由紀 河野 荘子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-12, 2016-09-27 (Released:2017-03-22)
参考文献数
34

社会的養護にある児童の高校進学率が年々高まっているなか,高校中退率を見てみると,一般家庭よりも社会的養護出身者のほうが高く,とりわけ,児童自立支援施設退所者に至っては,全国的に調査されたデータはなく,その要因についてほとんど研究がなされていない。そこで本研究では,児童自立支援施設退所後,高校進学した者の社会適応過程について,複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。調査協力者4名へのインタビューから作成したTEM図をもとに分析を行った結果,高校を卒業した者と中退した者とでは,(1)高校へ入学した初期の段階で,部活へ入るなどの新しい活動の場=自分の居場所を見いだせること,(2)授業でわからないことがあったときに友人や教師に助けを求められること,(3)担任教師に対する信頼感があることが,高校を継続していくために重要な要因であることがわかった。