著者
菱沼 典子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.220-222, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
13
著者
江上 京里
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.4-11, 2008-09-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
28
被引用文献数
5

現在実践で行われている温罨法については, 方法や対象がさまざまであり, これまでの温罨法の知見を統合し, 包括的に捉えていく必要があると考える. よってCooperの方法論を参考に温罨法の統合的レビューを行った. 医学中央雑誌 web版1983~2007年で 「温罨法」, そしてCINAHL web版1982~2007年で 「heat application」 で検索を行った. 論文の質を評価し国内文献は28件, 海外文献は5件を対象とした. 結果, 温罨法はさまざまな対象 ・ 方法で行われていた. その成果は 「加温した局所のみではなく, より末梢の皮膚温や皮膚血流量にも影響」 すること, 「加温した部位はさまざまであっても腸蠕動が亢進」 すること, そして腰背部への温罨法は 「自律神経のバランスを整える」 ことが整理された. 心理的側面では 「温罨法の気持ちよさは, 身体的な感覚によるところが大きい」 ことが示された. 方法については, 「適用の温度が高ければ短時間」 実施する傾向があり, 成果指標は, 自律神経を主とする 「生理学的な指標」 が多くを占めていた.
著者
横山 友子 杉本 吉恵 中岡 亜希子 田中 結華 高辻 功一
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.24-33, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
30

洗浄剤を使用せずナノミストシャワーを用いた洗髪 (NMS) の有用性について,洗浄剤を用いた洗髪 (TS) と比較するため,健康な成人35名 (31±9歳) を対象に,NMSとTSの両方を実施した.有意水準は5%とした. ATP値では,NMSは洗髪前7381±7171RLUから洗髪後4317±3236RLUに,TSは7763±9977RLUから5921±1782RLUに有意に低下した.皮脂量では,NMSは洗髪前66±30から洗髪後11±9に,TSは93±2から4±2に有意に低下した.ATP値と皮脂量ともに両洗髪間に有意な差はなかった.洗浄感は,両洗髪間に有意な差はなかったが,NMSは「音」「爽快感」「におい」においてTSより有意に劣っていた.所要時間は,TSが8分45秒±1分22秒に対し,NMSは3分52秒±34秒で有意に短かった.使用湯量は,TSが18.5±2.2Lに対し,NMSは4.4±0.8Lで有意に少なかった. 以上より,NMSはTSと同程度の洗浄効果があり,少量の湯と短時間で洗髪できるため臨床での有用性が示唆された.
著者
加藤 京里
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.10-18, 2012-01-15 (Released:2016-08-01)
参考文献数
27

本研究は,入院患者に対する後頸部温罨法について,生理学的指標,主観的睡眠および快感情との関連を明らかにすることを目的とした.入院中の女性 (61.8 ± 22.2歳) 6名を対象者とし,連続した3日間,就寝前に 40℃ 10分間の後頸部温罨法を実施した. 後頸部温罨法を実施後,実施前に比較して手掌皮膚温が有意に上昇した (p=0.039)鼓膜温は有意な変化は認められなかった.対象者は後頸部温罨法によって温かさと気持ちよさを感じていた.温罨法施行中の快には,唾液アミラーゼが低下するような休息的快と,唾液アミラーゼが上昇する活動的快が含まれた.夜間の主観的睡眠状況については,研究前と研究3日目の比較において OSA睡眠調査票得点における総得点 (p=0.011),疲労回復得点 (p=0.008) が上昇し,睡眠の改善をみせた. 後頸部温罨法は,唾液アミラーゼの上昇を伴う活動的快と唾液アミラーゼの低下を伴う休息的快が生じ,手掌の皮膚温上昇をもたらし,睡眠を促す可能性があることが示された.
著者
後藤 大地 田中 裕二 藤田 水穂
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.19-27, 2013-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
10

本研究は,心臓外科手術前後における適切な呼吸訓練のあり方についての知見を深めるため,スーフル®による呼吸訓練に着目し,その訓練が循環動態,自律神経活動,中枢神経活動に及ぼす影響を検討したものである.年齢や既往歴,治療方針の影響を防ぐため健康な成人10名を被験者とし,安静時,呼吸訓練時 (5分間),その後の回復時について循環動態,自律神経活動 (訓練時をのぞく),脳波等を連続的にモニターした.その結果心拍数,血圧変動,大脳皮質活動は,呼吸訓練時において,安静時および回復時,もしくは一方と比して有意に上昇,活性化し,副交感神経活動は訓練終了5分後に比して20分後で有意に低下した (p<0.05).また,心拍数は訓練開始後3分で最大値に達し,回復するのに15~20分を要した.この結果より,今回の呼吸訓練は心負荷を生じること,交感神経活動の興奮および副交感神経活動の抑制を引き起こすこと,大脳皮質を賦活化し,特にα波の発現になんらかの影響を及ぼすこと,さらに術前訓練においては訓練方法を1回につき3分以内にし,15~20分以上の間隔をとったのちに訓練を再開するという方法が適切であると示唆された.
著者
小島 悦子 藤長 すが子 草薙 美穂
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.43-50, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究の目的は, 温タオル清拭, 石鹸清拭, 清拭料清拭, 重曹清拭の4方法について, 皮膚表面pH, 油分量, ATP値の減少率, 皮膚表面温度および主観を比較し, 清拭方法による影響を評価することである. 調査方法は, 準実験デザインとし, 健康な成人男女15名全員に4方法の清拭を無作為の順番で実施した. 結果, すべての清拭方法において, 清拭前とくらべて清拭直後に末梢である第3指腹部の皮膚表面温度が上昇し, ATP量が減少したが, 重曹清拭は温タオル清拭や石鹸清拭とくらべ有意にATP減少率が低かった. 皮膚表面pHは, 温タオル清拭, 泡立て石鹸清拭, 清拭料清拭において入浴後と同じような経過をたどった. 主観的評価において, すべての清拭において爽快感, 快適感が得られた. 臨床では, 温タオル清拭を日常的に行いながら, 皮膚の汚れに応じて石鹸清拭を選択する必要があるが, いずれの方法においても清拭後の皮膚ケアが重要と考えられた.
著者
米山 美智代 八塚 美樹
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.16-24, 2009-12-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
24
被引用文献数
6

本研究の目的は,健康成人女性におけるフットマッサージは生理的ストレスを反映する血漿アドレナリン,血漿ノルアドレナリンを減少させ,心理的ストレス指標に影響を与える血漿ドーパミン,血漿セロトニンを増加させるという仮説を検証することである.12名の健康な成人女性 (23~44歳) を対象に,20分間のフットマッサージを行う方法と 20分間の安静臥床を行う方法の両方法を実施し,血漿カテコールアミン,血漿セロトニン,血圧,脈拍,VAS,POMS を測定した.その結果,フットマッサージによって血漿ノルアドレナリン,血圧 ・ 脈拍は減少し,血漿セロトニンは増加した.同時に測定したVAS ・ POMSでは「快」「リラックス」「活気」の感覚を増加させ,「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「疲労」「混乱」を減少させていた.以上から,フットマッサージはストレスを反映する生理的および心理的ストレス指標に影響を与えることが明らかとなり,健康成人女性が有する程度の生理的 ・ 心理的ストレス反応の改善手段として有効であることが示唆された.
著者
松村 千鶴 深井 喜代子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.243-246, 2014-12-20 (Released:2016-06-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究の目的は,感染予防の観点から綿タオルと化繊タオルのどちらが清拭素材に適しているかを比較することである.タオル素材には,市販の使用前の綿タオル (未使用綿タオル),清拭で使用したあとに洗浄・消毒した綿タオル (再生綿タオル),市販の未使用の化繊タオル (湿性不織布),そして湿性不織布から水分と含有成分を除去した化繊タオル (乾燥不織布) の4種類を選んだ.これら4素材の一般生菌,大腸菌,黄色ブドウ球菌の生存数を,ペトリフィルム法を用いて調べた.その結果,一般生菌は,湿性および乾燥不織布ではほぼ陰性であったが,未使用綿タオルからは約260cfu/100cm2 (衛生上問題なし),再生綿タオルからは未使用時の10倍もの約2,360cfu/100cm2がそれぞれ検出された.一方,大腸菌と黄色ブドウ球菌は4素材いずれからも検出されなかった.本研究の結果から,わが国の臨床の場で多用されている再生綿タオルには感染予防上,無視できない量の一般生菌が棲息する可能性が示唆された.未使用・再生にかかわらず綿タオルに一般生菌が検出されたことから,再生綿タオルは感染予防の観点から安全な清拭素材でないことが明らかとなった.
著者
上妻 尚子 藤田 美貴
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.93-97, 2009-04-10 (Released:2016-08-25)
参考文献数
8

血圧値は, 被験者の生理的条件や測定者の測定方法によって変動しやすい. 特に水銀血圧計による血圧測定は, 血圧計の操作に加え, 測定値を得る際には視覚 ・ 聴覚 ・ 触覚を同時に活用させる必要があり, 初めて血圧測定技術を学習する者にとっては習得が難しい技術である. 本研究は, 血圧測定技術を学習後 1年経過した学生を対象に, 学生の履修状況に応じた教員の血圧測定個別指導前後における学生自己評価と教員評価を比較することによって看護学生が血圧測定技術を習得する際に陥りやすい傾向を考察し, 今後の血圧測定技術教育における示唆を得ることを目的とした. その結果, 血圧測定技術を学習後 1年経過した学生の血圧測定技術の自己評価は過大評価の傾向がみられた. また, 血圧測定技術の項目によって学生が忘却しやすいもの, 誤った技術を習得する危険性のあるもの, 習得そのものが難しいものという特徴がみられた. さらに, 血圧測定技術を学習後 1年経過した学生に対する習得状況に応じた個別指導は, 効果があることが示唆された.
著者
柿原 奈保子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.247-250, 2014-12-20 (Released:2016-06-06)
参考文献数
30

近年,メディカルアロマセラピーは,補完・代替医療の有望な治療法の一つとして,医療経済の観点からも注目されている.日本では,英国式アロマセラピーが普及しており,種々の疾病における精油の一定の治療効果に対するエビデンスの蓄積が不十分である.それ故に,日本にメディカルアロマセラピーを補完・代替医療として普及させるためには,精油の投与法やその効果に対するエビデンスを確立することが必要である. 本論文では,わが国のメディカルアロマセラピー研究の最近の動向を検討するために,データベースソフト医学中央雑誌を使用して2011年から2013年11月までの精油を用いた研究を調査した.キーワードは「精油」,「効果」,検索文献は「原著」,「総説」,「会議録」である.研究総数は136件であり,基礎医学実験85件 (約62.5%),臨床症例研究42件 (約30.1%),文献調査や意識調査9件 (約6.6%) であったが,生体内で精油が,どのような機序で作用して効能を発揮しているかを分析的,詳細に検証した研究はほとんどみられなかった.この結果は,精油の効能に関する分析的研究を推進する必要があることを示唆している.本論文では以上の背景を踏まえて,メディカルアロマセラピーの将来展望について述べた.
著者
青木 紀子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.50-57, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
20

ベッド上で便器や尿器を用いたときの排泄時の姿勢は,腹圧がかけやすくなるなどの理由から上半身を挙上するとされている.適切な挙上角度は身体的な安楽なども考慮され60°くらいとされている.しかし,看護技術書にはさまざまな挙上角度の記載があり,明確にはされていない.そこで,ベッド上で便器を挿入し上半身の挙上角度を変化させたときの腹圧のかかり方について,自覚的な腹圧のかけやすさと腹部表面筋電図から検討していくことを目的とした.18~22歳の健康な若年成人女性14名 (平均BMI,21±3.08) を対象に,ベッドの上半身の角度を0°,15°,30°,45°,60°,75°に変化させたときの安静呼吸時と最大腹圧を3秒かけたときの腹部表面筋電図を連続的に測定した.その結果,腹部表面筋電図は自覚的に腹圧がかけやすい拳上角度の順位別でも挙上角度別でも有意差はみられなかった.つまり,自覚的な腹圧のかけやすさと腹部表面筋電図との関連はみられず,腹圧のかかりやすい挙上角度は特定されず個別的である可能性が示された.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した.<br/> その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001).<br/> また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった.<br/> 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.
著者
野呂 志津子 山口 智子 佐藤 奈津美 猪股 里美 成田 全 松江 聖乃 川崎 くみ子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.59-63, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究は,ボックスシーツのずれやしわの発生状況を従来のシーツ (以下,基準シーツ) と比較検証することにより,ボックスシーツのほうがしわやずれが少なく使用していくことができるかを明らかにすることを目的とした.健康成人女性22名 (平均年齢24.0±3.0歳) を対象に,ずれ測定部位に印をつけたボックスシーツと基準シーツを用い,60分臥床と30分ヘッドアップを行い,おのおのずれとしわを測定した.結果,両シーツともベッドに対し横方向にくらべ,縦方向のずれが大きく,シーツ中央のしわは他のエリアよりも有意に多かった (p <0.05).ヘッドアップ時はシーツ下方より上方のしわが有意に多く (p <0.05),上方より下方のずれが有意に多かった (p <0.05).臥床時のしわはシーツ中央と下方でボックスシーツが有意に少なかった (p <0.05).以上より,頭側が袋状になりベッドメーキング時足元を適度な力で牽引できるボックスシーツは基準シーツにくらべ,外観上しわが少なく,ずれは同様であり,患者が療養生活を行ううえでボックスシーツも活用できると確認できた.
著者
高橋 有里 村上 繁子 長澤 敦子 三浦 奈都子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.50-58, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,筋肉内注射における注射部位反応の状況,および具体的な注射方法の影響を明らかにすることを目的とした.一施設の精神科外来で患者と看護師を対象とし,独自に作成した記録表を用いて調査し,持効性注射製剤とそれ以外の注射薬に分けて分析した.その結果,持効性注射製剤では,太い針で,殿部が選択され,微量の空気を注入する方法が実施され,マッサージはされない傾向にあった.注射液の皮膚表面上への漏れ,出血,圧痛,硬結が19.2%に観察され,持効性注射製剤か否かで差はなかった.注射液の皮膚表面上への漏れは,注射針の太さ,注射部位,空気注入,マッサージに有意な関連はなかった.硬結は10.9%で確認され,頻回に注射をしている者に多かった.硬結形成した事例は,前回注射時に,注射液の皮膚表面上への漏れや内出血,突然のしびれがあり,皮膚の色素沈着や萎縮,硬結部位に注射すると痛み,出血,注射液の皮膚表面上への漏れを生じていた.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009-12-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した. その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001). また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった. 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.
著者
八板 慈
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.48-54, 2010-08-20 (Released:2016-08-25)
参考文献数
4

上部消化管内視鏡検査において効果的な咽頭麻酔を行うことは検査する患者の安全 ・ 安楽につながり,確実な診断を行ううえでとても重要となる.日ごろの看護のなかで,苦痛の訴えを聞くことやなかなか挿入できないなどを目にして来た.内視鏡技師研究会などにおいても,効果的な咽頭麻酔について数々の検討がなされている.アイス麻酔剤の形状やフレーバーでの味つけ,咽頭麻酔時の好ましい体位 ・ 時間などを考慮 ・ 工夫した.上部消化管内視鏡検査を受けた211名を対象にアンケートにより効果の検証を行った.その結果,アイス麻酔剤を使用した効果的な咽頭麻酔の方法が確認できた.
著者
萩野谷 浩美 佐伯 由香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.19-28, 2012-01-15 (Released:2016-08-01)
参考文献数
24
被引用文献数
4

本研究は,ストレス評価に唾液 αアミラーゼ活性 (sAA) が有用であるか否かを調べることを目的とした. 健康な成人女性 7名 (27.9 ± 8.7歳,21~47歳 ) を対象として,暗算と足浴を各10分間行った際の sAAの変化を心拍数,スキンコンダクタンス,Visual Analogue Scale の変化と比較検討した.その結果,暗算開始前と比較して開始後でいずれの測定項目も有意に上昇し (p <0.05),sAAと各測定項目との間に有意な相関があることが明らかとなった (rs=0.631~0.798).sAAは,心拍数やスキンコンダクタンスなどの自律神経機能と同様に交感神経活動を反映しており,客観的にストレスを評価するための指標となりうると考えられた. 今回使用した携帯型 sAA測定機器は簡便で侵襲性もなく測定できることから,今後は患者のストレス評価だけでなく,臨床でのアセスメントやケアの客観的評価,看護研究にも応用できると考えられた.
著者
小池 祥太郎 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.223-230, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
18

看護師が輸液中の患者から採血する場合,輸液をしている側の上肢を採血部位として選択することは少ない.これは輸液が血液データに影響することを避けるためである.しかし,輸液を実施している側の上肢から採血した場合,輸液がどのように採血データに影響するかは明らかとなっていない.そこで,本研究では輸液実施側の中枢側・末梢側と輸液の影響がない反対側の採血データを比較し検討することを目的とした.実験動物として,日本白色種雄性ウサギを選択し,ウサギの耳介をヒトの上肢に見立てて,左耳介静脈からソリタ®T3Gを投与し輸液実施部位の中枢側・末梢側,そして反対側にあたる右耳介静脈から採血を行った.その結果,総蛋白・アルブミン・ナトリウム・クロール・カルシウム・マグネシウムの中枢側データは反対側にくらべて有意に低く,血糖・カリウムは有意に高かった.また,すべての項目で末梢側データと反対側で有意な差は認められなかったが,一部のデータで限局的に影響がみられた.よって,輸液実施部位より中枢側は採血部位として不適切であるが,末梢側は適切な採血部位としての可能性が示唆された.
著者
河津 浩子 木村 英子 田中 康子 藤井 博英
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.32-34, 2006

意識障害がある患者は, 唾液腺に対する物理的刺激が低下し, 唾液分泌低下をきたしている. 先行研究では, 酸味刺激による唾液分泌を図った口腔ケアが主流であった. しかし今回, 従来の口腔ケアに歯ブラシを利用し, 舌体の奥から舌尖, 舌小帯後方から舌尖へ舌を上下させる運動 (以下, 舌の上下ブラッシング法) を機械的に加えることで唾液腺を刺激し, 唾液分泌の促進が図れるのではないかと考えた. そこで, 意識障害があり, 歯磨きおよび経口摂取が不可能な患者10名に対して, 従来の口腔ケア (歯ブラシを用いたブラッシングでの口腔清拭 ; 対照群) と, 従来の口腔ケア後に舌の上下ブラッシング10回を加えた口腔ケア (介入群) を行い, 比較検討した. 口腔ケアの実施直前, 直後に唾液量を唾液浸潤度検査紙 KS─3エルサリボで測定した結果, 対照群と介入群の比較では, 舌下粘膜での唾液量に有意差を認めた. また, 口腔ケア前後の舌上 ・ 舌下粘膜での測定の結果, 対照群と介入群の比較でも有意差を認めた. このことから, 従来の口腔ケアにおいても唾液分泌が促されていたが, 舌の上下ブラッシング法を加えたことによってさらに唾液分泌が促されたと考えられる. 今回の舌の上下ブラッシング法は, 物理的刺激を加えることで従来の口腔ケアを生かし, 唾液分泌を促進させることができたと考えられる.
著者
大久保 暢子 牛山 杏子 鈴木 恵理 佐竹 澄子 小板橋 喜久代
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.121-130, 2011-04-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
65

日本看護技術学会技術成果検討委員会の一組織であるポジショニング班では,看護職が行うポジショニング技術を既存の研究成果と臨床知から言語化し,臨床看護師に広く公表していく活動をしている.本研究では,活動の第一段階として看護職が行うポジショニングの定義を明確にすることを目的とした.また看護学同様,理学療法学におけるポジショニングの定義を調査し,看護学の定義と比較検討した.調査対象は,国内の大学に所蔵される看護学分野および理学療法学の国内外の教科書および参考書計 253冊で,方法は,ポジショニングの言葉が記載されている箇所を定義,目的の観点から抽出し,看護学,理学療法学ごとに共通性を分析し,定義と目的と導いた.倫理的配慮は,対象書物に偏りがないよう関東にある大学の最新版を採用した.結果,看護学における定義を「対象の状態に合わせた体位や姿勢の工夫や管理をすること」とし,目的は,安楽,合併症 ・ 廃用症候群の予防,気分転換などがあがった.理学療法学の定義は,対象者以外に介助者との関係も含んだ内容であり,看護学とは異なる点があった.今後は,上記の定義を仮定義として扱い,さらに臨床看護師のポジショニング技術の実践内容を分析したうえで,看護におけるポジショニング技術の言語化を進めていく予定である.