著者
内山 竹彦
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.563-579, 2002-11-29 (Released:2009-02-19)
参考文献数
78
被引用文献数
2 2

私は, 細菌, 免疫, 細菌毒素, 臨床感染症等, 多くの研究分野の共同研究者とともに, 1980代半ばから, 病原性細菌が産生するスーパー抗原活性を持つ細菌毒素について解析を続け, 下記の事柄を明らかにしてきた。1) 黄色ブドウ球菌が産生するトキシック症候群 (toxic shock syndrome, TSS) 毒素 (TSS toxin-1, TSST-1) は強いT細胞活性化因子であり, 主要組織適合 (MHC) クラスII分子に結合してT細胞を活性化する。2) TSSの発症機序にTSST-1のT細胞活性化が関与する。3) 新生児TSS様発疹症 (NTED) がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による新興感染症として出現した。4) 新生児T細胞のTSST-1応答性は, 成人T細胞と比較して極めて未熟性を示す。5) A群レンサ球菌毒素 SpeA (streptococcal pyrogenic exotoxinA) はスーパー抗原活性を持つ。6) Yersinia pseudotuberculosis 感染症の原因毒素として, スーパー抗原活性をもつ毒素 Y. pseudotuberculosis-derived mitogen (YPM) を産生する。
著者
山本 新吾
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.431-439, 2003-05-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
2

大腸菌は単純性尿路感染症のなかでもっとも頻繁に同定される病原菌である。本研究は尿路病原性大腸菌における病原因子を研究することで, 尿路感染症の発症のメカニズムを解明し, 尿路感染症を起因とする敗血症や反復性尿路感染症の治療へ手がかりを見い出すこと, またこれら尿路感染症の診断に有用なツールの開発を目標とし, 以下の事項を報告した。1) P線毛, S線毛, Afa I, エアロバクチン, ヘモリジン, CNF1の各病原因子は健常人由来大腸菌と比較して有意に各疾患由来の尿路病原性大腸菌に高頻度に認めた。2) これらの病原因子を一度に調べる Multiplex PCRの開発により, 大量の尿路病原性大腸菌株の病原因子の保有の有無が高精度かつ簡便に調べることができるようになった。3)「直腸-会陰-尿道仮説」を証明し, 多くの病原因子を保有した尿路病原性大腸菌株が直腸に優位に存在することが尿路感染症の危険因子のひとつであることを示した。4) 新しい尿路病原因子 uropathogenic specific protein (USP) を発見し, USPが尿路感染症の成立に強く関与していることを示唆した。また, USPおよびその下流でモザイクを構成するOrfU1-3遺伝子を含む pathogenic island に5つの variants が存在することを明らかにした。
著者
秋葉 朝一郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.91-95, 1948-12-30 (Released:2011-06-17)
著者
尾崎 茂樹
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌 (ISSN:1883695X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.692-713, 1939-06-01 (Released:2009-09-16)

弧菌, 桿菌及ビ球菌ヲ使用シ, 之レニ超音波ノミヲ作用セルモノヲ對照トシテ, 作用ト同時ニ水素, 酸素, 窒素及ビ炭酸瓦斯ヲ通ゼルモノト, 容量變化ヲ比較研究セリ.
著者
中瀬 安清
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.631-643, 2003-11-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
86
著者
金ヶ崎 士朗
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.671-678, 1992-09-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
41
著者
永井 宏樹
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.379-386, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
59

病原細菌がヒトを初めとする宿主に病気を引き起こすためには,細菌から宿主細胞へ輸送される病原因子群と,そのための輸送システムが中心的な役割を果たす。そのような輸送システムのうち,毒素分泌・エフェクター輸送の両方に関わるIV型分泌系の研究は,近年飛躍的な進展を遂げている。本稿では,IV型分泌研究の最前線を紹介させていただきたい。
著者
柴田 健一郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.363-374, 2007-12-21

微生物の有するリポタンパク質(LP)がグラム陰性菌のリポ多糖体(LPS)と同様な種々の免疫生物学的活性を有し,その活性部位はN- 末端リポペプチド(LPT)部分であることは古くから知られていたが,Toll-like receptor(TLR)が発見されるまでその受容体は明らかにされていなかった。TLR 発見以来,LP ならびにLPS の認識機構が研究され,それぞれの認識にTLR2 ならびにTLR4 が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また,LP の有する新たな免疫生物学的活性ならびにLP によるマクロファージ,樹状細胞等の活性化のメカニズムも分子レベルで明らかにされている。さらに,MHC分子に結合する抗原ペプチドをLPT化することにより,免疫原性が顕著に増加することも明らかにされ,新規ワクチンとしての研究もなされている。本稿では,微生物由来LP・LPTの生物活性ならびに自然免疫系による認識機構について最近の知見をもとに概説している。
著者
志賀 潔
出版者
日本細菌学会
雑誌
細菌學雜誌 (ISSN:18836925)
巻号頁・発行日
vol.1897, no.25, pp.787-810, 1897-12-15 (Released:2009-07-09)
著者
菅井 基行 杉中 秀壽
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.461-473, 1997-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
61

細菌は細胞壁の主要成分ペプチドグリカンを代謝する複数の溶菌酵素を産生している。これらの溶菌酵素はペプチドグリカンの代謝を介して細菌の分裂, 分離, 形態の維持など様々な細菌の生理に関わっていると考えられている。従来, 溶菌酵素研究は一種類の細菌が複数の酵素を産生し, また溶菌酵素の比活性が高く, 精製が難しい等の難点があった。しかし, 近年, 新しいアッセイ法の開発, 分子生物学的手法の進歩によって新たな展開が見られている。ブドウ球菌はペニシリンGをはじめとするβ-ラクタム剤によって溶菌することから, 比較的古くから溶菌酵素研究の材料に用いられてきた。本稿では特にブドウ球菌の溶菌酵素に絞り, 現在までに得られた知識について整理し解説を試みた。
著者
林 哲也
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.145-160, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
74

地球上には膨大な数の多様な細菌が存在し,各菌種は様々なレベルの菌種内多様性を示す。このような多様性が出現する背景には,細菌のもつ外来性遺伝子獲得能力の高さと多様な可動性遺伝因子の存在がある。私は最初に緑膿菌サイトトキシンの生化学・遺伝学的解析と本毒素遺伝子をコードするファージのゲノム解析に取り組むなかで,細菌の遺伝的多様性とファージなどの可動性遺伝因子に対する興味が大きく膨らむとともに,ゲノム解析の威力を実感し,これを契機に腸管出血性大腸菌をはじめとする様々な病原細菌,さらには人や動物の常在菌(叢),環境中の微生物集団などをゲノム解析の勃興から次世代シーケンサなどの開発による革命的なゲノム研究の進展という刺激的な流れの中で研究を進めてきた。本稿では,私が行なってきた様々な細菌のゲノム解析の中から,まず緑膿菌ファージに関連した解析と腸管出血性大腸菌関連の解析を紹介し,次に大腸菌などとは極めて対照的なリケッチア科のゲノムの解析,また非常に限られたゲノム変化を捉える必要のある院内感染のゲノム疫学や同一宿主内でのゲノム多様化の解析についても簡単に紹介する。