著者
大野 尚仁
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.527-537, 2000-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
7 8

βゲルカンは真菌, 細菌, 植物など自然界に広く分布している。βグルカンは各々の生物において生物学的な機能を発揮するのは勿論の事, 生物間のやり取りにおいても様々な役割を演じ, あるいは産業上も重要な素材であることから注目されている。ここではβ-1,3-グルカンの構造と生体防御系修飾作用について我々の実験成績を中心に要約した。真菌βグルカンは細胞壁成分として存在する不溶性βグルカン並びに, 菌体外に放出される可溶性βグルカンに大別される。βグルカンは特徴的な高次構造をとり, 可溶性高分子では一重並びに三重螺旋構造をとる。βグルカンは様々な生物活性を示すが, その中には高次構造依存的なもの, 例えば, マクロファージからの酸化窒素産生やリムルスG因子の活性化, 並びに非依存的なものがある。βグルカンが示す活性の多くは免疫薬理学的に有用なものが多いが, 喘息の増悪因子としての作用や非ステロイド性抗炎症薬の副作用増強作用などの有害作用も示す。更にβグルカンは体内に分解系が無いので蓄積する傾向を示し, その期間は数ヶ月以上にわたる。またこの間, 活性の一部は持続的に発揮する。一方で, βグルカンの生物活性を適切に評価できる in vitro 評価系は少なく, βグルカンの免疫修飾作用を分子レベルで解析するには, 新たな評価系の開発が望まれる。
著者
岩本 義久
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.523-531, 1993-05-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
72
被引用文献数
3 1
著者
垣内 力
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.491-501, 2014
被引用文献数
1

黄色ブドウ球菌は表在性膿瘍, 肺炎, 食中毒, 髄膜炎など様々な疾患をヒトに対して引き起こす病原性細菌である。特に, 幅広い抗生物質に対して耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は医療現場において問題になっている。本研究において私たちは, 黄色ブドウ球菌の病原性のふたつの新しい評価系を確立し, 黄色ブドウ球菌の新規の病原性制御因子の同定を行った。まず, 昆虫であるカイコを黄色ブドウ球菌の感染モデル動物として用いる方法を確立し, カイコに対する殺傷能力を指標として, 新規の病原性制御因子を複数同定した。これらの因子の一部は細菌細胞内においてRNA との相互作用に関わることが明らかとなった。次に, 黄色ブドウ球菌が軟寒天培地の表面を広がる現象(コロニースプレッディング)を見出し, この能力の違いを指標としてMRSA の病原性の評価を行った。近年, 高病原性株として問題となっている市中感染型MRSA は, 従来の医療関連MRSA に比べて, 高いコロニースプレッディング能力を示した。さらに, これらの菌株のコロニースプレッディング能力の違いが, 染色体カセット上の特定の遺伝子の有無によって導かれていることを明らかにした。この遺伝子の転写産物は機能性RNA として黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子のマスターレギュレーターの翻訳を抑制することにより, コロニースプレッディングと毒素産生を抑制し, 動物に対する病原性を抑制することが明らかとなった。
著者
島本 整
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.441-450, 2003-05-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
32

細菌の逆転写酵素は, 大腸菌などのグラム陰性細菌に広く分布しており, multicopy singlestranded DNA (msDNA) と呼ばれる特殊なRNA-DNA複合体の合成に必須の酵素である。大腸菌由来の逆転写酵素を精製し, in vitro でmsDNA合成を調べたところ, 細菌逆転写酵素は2',5'-ホスホジエステル結合を形成する活性を持つ特殊な酵素であることが明らかになった。また, ビブリオ属細菌を中心に病原細菌における逆転写酵素の有無を探索したところ, コレラ菌や腸炎ビブリオなどで逆転写酵素遺伝子 (ret) とmsDNAが発見された。新たに発見された病原細菌由来のmsDNAの構造解析を行ったところ, 従来のmsDNAにはない特徴的な構造をもっており, msDNAおよび逆転写酵素の機能と病原細菌特有の機能との関連性が示唆された。特に Vibrio cholerae では, いわゆるコレラ菌であるV. cholerae O1/O139株とnon-O1/non-O139株との間で逆転写酵素の有無と病原性との関連性が認められた。
著者
笹津 備規
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.755-765, 1996-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

黄色ブドウ球菌の消毒剤耐性株はMRSAの出現とともに報告された。消毒剤耐性の機構はいづれも膜蛋白による細胞からの薬剤の排出であり, 化学構造の異なる各種消毒剤に対し多剤耐性を示すことが特徴である。現在, 消毒剤耐性遺伝子としてはqacA, qacB, qacC (ebr, smr), qacC', qacDがブドウ球菌から, qacFがバチラス属の細菌から, qacE, qacEΔ1, EBRがグラム陰性桿菌から分離されている。qacA/B遺伝子は非常に類似した12回膜貫通型の膜蛋白をコードしており, 高度耐性を示す。他の遺伝子がコードしている蛋白は, 4回膜貫通型の小さな膜蛋白で, 低度耐性を示す。また, これらの消毒剤耐性遺伝子をもった菌株とは異なる, トリクロサン耐性黄色ブドウ球菌株が出現してきている。MRSAに対する消毒剤の使用量が増加するのに伴い, 新たな耐性遺伝子の出現が予想される。
著者
大村 智
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.795-813, 1999-11-30
参考文献数
41
被引用文献数
5 15

サルファ剤やペニシリンの導入以来,化学療法は絶えることなく耐性菌問題を引きずって,今日に至っている。最近では,薬剤耐性結核菌やバンコマイシン耐性腸球菌などの出現が社会問題となりつつある。また,過去20年間で新たな感染症は30種類以上とも報告されているが,治療法もいまだに確立されていないものも多く,化学療法剤の前途は厳しいと言わざるを得ない。一方,最近では個々の病原性遺伝子の役割がより詳細に知られるようになり,付着,侵入などの病原性に関わる遺伝子も薬剤の標的として考えられる。従って,従来の化学療法剤のように抗菌,静菌作用を有するものに加え,今後はbacterial adaptation/survivalまたは病原性をコントロールできる薬剤や宿主の免疫力を高める薬剤等を含め“抗感染症薬(antiinfective drugs)”と表現される,より拡大された概念をもった薬剤の開発が期待される。本稿では“抗感染症薬”という新しい概念の下で研究される(1)新規な標的を有する化学療法剤,(2)細菌毒素の毒性軽減物質,(3)毒素分泌機構に作用する薬剤,(4)病原細菌の感染機序から発想された標的,(5)宿主の感染防御機構に学ぶ抗感染症薬の開発を取り上げ,その可能性を論じる。
著者
山村 浩
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌 (ISSN:1883695X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.443-459, 1937-03-01 (Released:2009-09-16)
参考文献数
16

ぢふてりーノ活動性及ビ被動性免疫ヲ施サレタル動物ノ血中ニ産生乃至移行セル抗毒素量ト該動物ノ毒素耐過力トハ果シテ連行一致スルモノナリヤ否ヤニ關スル研究ニシテ, Formovaccinヲ以テ海〓ノ免疫ヲ行フニ當リ, 1回注射ニヨルモノ, 2回注射ニヨルモノ, 3回注射ノ如ク異リタル注射方法ヲ行ヒ, 又被動性免疫ニ於テハ抗毒血清ノ種々ナル量ヲ注射シタル後, 之等海〓ニ毒素ノ致死的分量ノ種々ナル倍量ヲ注射シテ毒素耐過力ヲ觀察シ, 之ヲ豫メ測定シ置ギタル海〓ノ血中抗毒素量ト對比實驗スルコトニヨリ, 血中抗毒素量ト毒素耐過力トガ如何ナル關係ニ在ルヤヲ知ラント欲セリ, 尚ホ活動性及被動性兩免疫法ニ於ケル血中抗毒素量ノ消長, 毒素耐過力ノ優劣, 其他ニ關スル實驗成績ヲモ包含セリ.

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出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.53-105, 1989-01-25 (Released:2009-02-19)