著者
長 環
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.331-337, 2009 (Released:2009-05-27)
参考文献数
53
被引用文献数
4 4

Candida albicansのバイオフィルムは,酵母形細胞,仮性菌糸,菌糸,さらに菌体外物質が複雑に絡み合った細胞集団である。その構造の強固さは本菌の多形性と細胞間の接着性によると考えられる。最近バイオフィルム内における細胞間の接着に接合が関与するという考え方が導入されつつある。また菌密度を感知するクオラムセンシング機構が,バイオフィルムの成熟期に働き,酵母細胞のバイオフィルムからの分散,そして新たな感染場所への転移に寄与している可能性が考えられている。

3 0 0 0 OA 破傷風毒素

著者
松田 守弘
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.631-665, 1979-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
317
被引用文献数
1 1
著者
横田 正春 岡澤 昭子 田中 智之
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.527-535, 2001-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
40
被引用文献数
5 5

セラチア (Serratia) は腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌である。通常土壌中, 水中, 空中に広く存在する常在菌である。ヒトからは敗血症などの原因菌として検出されることがあるが, 多くは Serratia marcescens によるものである。これらヒトへの感染は院内感染に関連した日和見感染症として生じる。院内感染病態は呼吸器系・尿路系感染が主で, その他小児・新生児感染, 創傷感染そして致死率の高い敗血症などがある。感染経路には輸液・輸血器具の汚染, 分娩室汚染, 消毒液, 石けんなどの汚染を含む医療環境の様々な場所・行為からの可能性がある。セラチアの感染予防には, 一般細菌に対するのと同様に, 基本的かつ効果的な消毒行為を遂行し, 加えてセラチアの薬剤耐性チェックなどが大切である。とりわけ院内感染の予防, 感染経路の遮断には院内感染対策委員会の実働が最も重要である。
著者
藪内 英子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.505-548, 2003-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
227

古来, 炭疽は畜産に甚大な被害を与えたのみならず, 農工業食品などを介してヒトの散発症例, 大・小規模の集団発生を記録してきた。近年先進国では恣意的でない炭疽症例は, ヒト・家畜ともに激減したが, 炭疽の病原菌 Bacillus anthracis はその病原性, 芽胞の耐久性と製造・運搬・撒布の容易さなどから生物兵器として密やかな脚光を浴びて来た。2001年9月のニューヨークでのハイジャック機自爆テロに引き続いて実行されたB. anthracis 芽胞を混じた白色粉末郵送による生物テロは, 改めて世界の耳目をこの菌に惹き付けた。今後の不測の事態に備えるため, 我々はこの菌種についてあらゆる意味での性格を熟知し対応策を立てておかねばならない。炭疽が疑われる患者の臨床検査から患者の迅速診断と迅速治療, 毒素の作用機序と分子生物学, 毒素の解毒方法, ワクチンならびに同種受動免疫抗体の開発・実用化など多岐にわたる知識と技術を具えた研究者群を確保していただきたい。この総説では1864年の Davaine の論文から始めて2003年の Colwell の論説まで引用した。Bacillus cereus group の菌種の分類学上の問題点が未解決である事, 公的統計として発表されていない明治以降の本邦炭疽症例, 旧ソ連軍事施設からの芽胞漏洩による大惨事とその隠蔽, 多様な臨床病型などを比較的詳述した。毒素に関する記述を簡単な引用に留めた部分も少なくないが, 炭疽毒素の抗腫瘍効果も含めて, この総説から何かを得て下されば幸甚である。
著者
寺脇 良郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.513-525, 1986-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
109
著者
今村 隆寿
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.499-516, 2000-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
103
被引用文献数
1 1

細菌プロテアーゼとして, 新たな構造と機能が見い出された歯周病の主要な原因菌 Porphyromonas gingivalis のトリプシン様システインプロテアーゼ gingipains を紹介する。Gingipains は3種の遺伝子 (rgpA, rgpB, Kgp) から産生される variants であり, そのペプチド結合切断特異性からは Arg-Xaa を切断する gingipains R (rgpAとrgpB由来) とLys-Xaaを切断する gingipain K (kgp 由来) に分類される。HRgpAとKgpは触媒ドメインと赤血球凝集/接着活性ドメインとの複合体である。他に, gingipains Rには触媒ドメインのみの型とこれに多糖体が結合した膜型がある。Gingipains は P. gingivalis のハウスキーピングだけでなく宿主への感染や宿主防御機構からの回避にも重要な役割を果たす。Gingipains は P. gingivalis の病原性と密接に関連し歯周病の発症・進展に関与しているので, 歯周病予防・治療法開発のターゲットとして有用である。
著者
佐々 学
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.139-149, 1953-04-30 (Released:2011-06-17)
参考文献数
41
著者
戸田 真佐子 大久保 幸枝 生貝 初 島村 忠勝
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.561-566, 1990-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
49 61

茶タンニンの主要成分であるカテキン類のうち(-)エピガロカテキン(EGC),(-)エピカテキンガレート(ECg),(-)エピガロカテキンガレート(EGCg)はStaphylococcus aureusに抗菌活性を示した。また,Vibrio cholerae O1 classical InabaおよびEl Tor Inabaにも抗菌活性を示した。カテキン構造類似物質では,ピロガロール,タンニン酸,没食子酸の順で上記3菌種に対して抗菌活性を示したが,ルチン,カフェインには抗菌活性はほとんど認められなかつた。また,ECgは黄色ブドウ球菌α-毒素およびコレラ溶血毒の溶血活性を100%阻止した。また,EGCgは黄色ブドウ球菌α-毒素,コレラ溶血毒のほか,腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒Vp-TDHの溶血活性をも100%阻止した。一方,タンニン酸はコレラ溶血毒の溶血活性を100%阻止した。これらの結果から,茶葉の抗菌活性および抗毒素作用にはカテキン類の関与が示唆された。
著者
山本 俊一 長谷川 斐子 呉 大順
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.600-605, 1967-10-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
29

1) The suspenion of E. coli was heated under the environment of oxygen with from 1 to 10 absolute atmospheric pressure (aap). At each temperature, the decimal reduction time showed a peak at 1aap, and then decreased as the pressure rose.2) When E. coli was cultivated under the hyperbaric oxygen, the lag time was delayed with the increase of pressure up to 4aap. At 5aap or more of oxygen, no bacterial growth was observed. Generation time increased linearly with the pressure of oxygen up to 3aap.3) The pretreatment with hyperbaric oxygen had not effect on the growth rate thereafter.4) When the culture was oxygenated during the growth phase, the following relationship was observed between the number of the microbes (N) and oxygen pressure (p)N=N0e(3.7-0.8p)t(t: time in hour)5) The amount of final growth showed the peak at 1aap. Exceeding 1aap, the amount diminished remarkably with the rise of the pressure.6) Hyperbaric nitrogen showed no effect on the growth of bacteria.7) Reducing agents added to the media had no protecting effect against the oxygen action on E. coli.8) Antimetabolites showed the synergic, antagonistic and indifferent attitude toward the effect of hyperbaric oxygen depending on the mode of action of the chemicals.
著者
田中 吉紀 余 明順
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.405-417, 1980-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
65
著者
柴田 健一郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.363-374, 2007-08-25 (Released:2007-12-21)
参考文献数
93

微生物の有するリポタンパク質 (LP) がグラム陰性菌のリポ多糖体 (LPS) と同様な種々の免疫生物学的活性を有し, その活性部位はN-末端リポペプチド (LPT) 部分であることは古くから知られていたが, Toll-like receptor (TLR) が発見されるまでその受容体は明らかにされていなかった。TLR発見以来, LPならびにLPSの認識機構が研究され, それぞれの認識にTLR2ならびにTLR4が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また, LPの有する新たな免疫生物学的活性ならびにLPによるマクロファージ, 樹状細胞等の活性化のメカニズムも分子レベルで明らかにされている。さらに, MHC分子に結合する抗原ペプチドをLPT化することにより, 免疫原性が顕著に増加することも明らかにされ, 新規ワクチンとしての研究もなされている。本稿では, 微生物由来LP・LPTの生物活性ならびに自然免疫系による認識機構について最近の知見をもとに概説している。
著者
櫻井 純
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.367-379, 2006-11-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
79
被引用文献数
2

ウエルシュ菌が産生する多くの毒素の中で主要毒素と言われているα, β, εそして, L毒素は, いずれもユニークなタンパク毒素で, 本菌の感染症と密接に関係していると考えられている. そこで, ウエルシュ菌感染症の解明のため, 主要毒素の構造と機能を解析し, さらに, それぞれの毒素の作用機構について, 1) α毒素は, 毒素自身が有する酵素活性で組織を破壊するのでなく, 標的細胞の細胞内情報伝達系を活性化して恒常性の維持に混乱を与え, 細胞破壊, 致死活性を引き起こすこと, 2) β毒素は, 特異的に血球系細胞に結合し, ラフト上でオリゴマーを形成後, 細胞内情報伝達系に混乱を与え, 致死活性と細胞毒性を示すこと, 3) ε 毒素は, 脳細胞や腎細胞など標的細胞の膜上でオリゴマーを形成して膜障害作用を与えること, そして, 4) 酵素成分と膜結合成分からなる二成分毒素であるし毒素は, 膜結合成分が細胞膜に結合してオリゴマーを形成後, ラフトに集積し, これに酵素成分が結合してエンドサイトーシスで細胞内に侵入し, その後, 初期エンドソームから酵素成分が細胞質に遊離してアクチンをADPリボシル化して細胞毒性を示すことを証明した.
著者
島田 俊雄 荒川 英二 伊藤 健一郎 小迫 芳正 沖津 忠行 山井 志朗 西野 麻知子 中島 拓男
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.863-870, 1995-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
2

1994年7月,琵琶湖の生け簀で青白く光るスジエビ(所謂ホタルエビ)が大量に発見され新聞やテレビで報道されるなど注目された。採取後発光したスジエビは次第に衰弱し,その殆どがその日のうちに死亡した(所謂エビの伝染性光り病)。死んだエビの甲殼から発光細菌が分離された。同一のエビから分離された発光性4菌株は,TCBS寒天培地上で白糖非分解性の青色集落,PMT寒天培地上ではマンノース分解性の黄色集落を形成し,無塩ブイヨンおよび42°Cで発育した。トリプトソーヤ寒天およびブイヨンで,22°C培養で最も強い発光が見られたが,30°Cでは弱かった。これらの菌株はその形態・生理・生化学的性状がVibrio cholerae non-O1またはVibrio mimicusに類似していたが,その代表株(838-94)によるDNA相同性試験ではV.choleraeの基準株(ATCC14035)と高い相同性(79%)を示したが,V.mimicusのそれとは低い相関しか認められなかった。従って,これらの分離菌株はルミネセンス産生性V. cholerae non-O1と同定され,またその血清型はいずれもO28と型別された。一方,該菌株はコレラ毒素(CT)を産生せず,またCTおよびNAG-STのいずれの遺伝子も保有していなかった。
著者
牛嶋 彊 尾崎 良克
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.625-637, 1980-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
56
被引用文献数
1

Bacillus subtilisおよびBacillus nattoと同定されて保存されてきた菌株,および,新しく市販納豆より分離した菌株について詳細な性状検査を行つた。1) Bergey's Manual (8版)によれば,被検菌は,すべて,Bacillus subtilisと同定された。2) 100種の性状を比較検討した結果,被検菌は,その中の13種の性状によつて2群,A, Bに分かれた。A群は,B. subtilis (ATCC6051, ATCC6633, NIHJ-PCI-219)とB. natto(SC-530123)の4株,B群は,B. subtilis (IFO-3009, IFO-13169)および,市販納豆より新たに分離した12株であつた。3) 両群の鑑別性状は,グリコーゲンの分解による酸の産生,デンプンの完全加水分解,ヒスチジンの利用で,A群は,すべて陽性,B群は,すべて陰性である。4) A群のみが,グラム陽性菌に特異的に作用する抗菌性物質を産生した。
著者
長宗 秀明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.425-435, 2008 (Released:2008-08-25)
参考文献数
67
被引用文献数
1

連鎖球菌属を構成する6菌群の一つであるアンギノーサス群連鎖球菌(AGS)は,主に口腔内の常在細菌叢に存在する細菌である。AGSは日和見的に口腔内や深部臓器において化膿性疾患を引き起こすが,歯周病や上部消化器癌との関連性も疑われるなど,その臨床的な重要性が高まってきている。しかしAGSは菌種間での遺伝子伝搬が頻発する傾向があり分類に混乱があったことから,病原性の検討が遅れている菌群である。AGSも他の連鎖球菌と類似の宿主細胞への定着因子や免疫撹乱性物質などを生産することが知られており,特に近年になって,AGSの一種で中枢神経系に感染症を起こしやすいS. intermediusではヒトに高い特異性を示すという特徴的な溶血毒素インターメディリシンが見いだされた。本稿ではAGS感染症に関与する可能性が高いこれらの主要な病原因子について紹介したい。