著者
野村 節三
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.393-416, 1997-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
194
被引用文献数
2 2

魚類の細菌性感染症は古くから欧米やわが国で主として病理学的, 細菌学的研究がなされ, 膨大な知見が蓄積されている。中でも, せっそう病菌, ビブリオ病菌, 鰭赤病菌, シュードモナス症菌およびカラムナリス病菌は広く世界的に分布し, 水産業にとって重要な病原菌である。近年, これら病原菌の病原因子の研究が始められ, 菌体内のリポ多糖や細胞表面タンパク質, 菌体外のプロテアーゼ, ロイコサイトリジン, ヘモリジン, エンテロトキシン, グリセロホスホリピド-コレステロール アシルトランスフェラーゼ (GCAT) あるいはホスホリパーゼその他の酵素の特性が解明されつつある。最近, とくにせっそう病菌では細胞表面タンパク質, リポ多糖, 菌体外細胞溶解毒素およびGCAT, ビブリオ病菌では外膜タンパク質, 菌体外プロテアーゼおよびヘモリジンがその病原性に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。ここではせっそう病菌, ビブリオ病菌およびカラムナリス病菌とそれらの病原因子についての研究の現状を述べた。
著者
大久保 幸枝 戸田 真佐子 原 征彦 島村 忠勝
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.509-514, 1991-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
41 48

茶および茶から精製した(-)エピガロカテキンガレート(EGCg),テアフラビンジガレート(TF3)の白癬菌および酵母様真菌に対する抗菌・殺菌作用を検討した。茶エキス1.25%でTrichophyton mentagrophytesおよびT.rubrumの発育が阻止された。一方,EGCg 2.5mg/mlでは両菌の発育は阻止されなかった。しかし,TF3 0.5mg/mlでは両菌とも発育が阻止された。茶エキスの殺菌作用は濃度,接触時間に依存し,高濃度(5∼10%)で長時間(48∼72h)作用させると両菌に対して殺菌効果が認められた。EGCg 1mg/mlはTrichophytonに対して殺菌作用を示さないのに対してTF3 1mg/mlの場合,接触時間を長くすると殺菌効果が認められた。Candida albicansは茶エキス10%でも発育阻止はみられなかったが,Cryptococcus neoformansは茶エキス10%で菌数を減少させると抗菌作用が認められた。茶エキスはC.albicans, C. neoformansに対して72時間接触でも殺菌作用は示さなかった。
著者
戸田 真佐子 大久保 幸枝 大西 玲子 島村 忠勝
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.669-672, 1989-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
55 53

We found that extracts of Japanese green tea leaves inhibited the growth of various bacteria causing diarrheal diseases. All tea samples tested showed antibacterial activity against Staphylococcus aureus, S. epidermidis, Vibrio cholerae O1, V. cholerae non O1. V. parahaemolyticus, V. mimicus, Campylobacter jejuni and Plesiomonas shigelloides. None of the tea samples had any effect on the growth of V. fluvialis, Aeromonas sobria, A. hydrophila, Pseudomonas aeruginosa, Salmonella enteritidis, enteroinvasive Escherichia coli, enterohemorrhagic E. coli, enteropathogenic E. coli, enterotoxigenic E. coli, Enterobacter cloacae or Yersinia enterocolitica. Salmonella and Shigella showed susceptibilities different depending on the kind of Japanese green tea. Japanese green tea showed also bactericidal activity over S. aureus, V. parahaemolyticus and even enteropathogenic E. coli which was not sensitive when tested by cup method. The bactericidal activity was shown even at the drinking concentration in daily life.
著者
松下 治
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.753-761, 1999-11-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
31

二種のガス壊疸起因菌Clostridium perfringens, C. histolyticumから計三種類のコラゲナーゼを精製した。それらの構造遺伝子を解析したところ,予想一次配列にセグメント構造(S1, S2, S3)が認められた。N末端側のS1には金属プロテアーゼに共通なモチーフ(HEXXH)が存在していた。C末端側のS2, S3には重複が認められ,酵素により重複パターンが異なっていた。C. histolyticumの酵素の一つColHを用いて構造活性相関の解析を試みた。N末端側のS1のみからなる組換え酵素が水解活性を示したので,S1は触媒ドメインを形成すると考えられた。単離C末端領域が不溶性コラーゲンに結合することから,この領域はコラーゲン結合ドメイン(CBD)を形成すると考えられた。CBDを用いて細胞成長因子をコラーゲンにアンカーリングし,局所で長時間作用させることができた。CBDの構造が新しい薬物送達システム(drug delivery system, DDS)の開発に応用できる可能性が示された。
著者
中川 善之
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.671-685, 1995-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
100

酵母Candida albicansは,日和見感染の原因菌としてごく普通に見られる代表的真菌である。近年,C.albicansを材料とする従来の多くの研究課題に,遺伝子を中心とする分子生物学的手法が取り入れられようとしている。その遂行のために不可欠となる基礎的な事項をここでまとめてみた。C.albicansをはじめとする数種のCandida属酵母は,核の遺伝暗号で通常ロイシンに翻訳されるCUGを,セリンとして読むことがわかってきた。現在までに多くの遺伝子が単離されているが,中でも自律複製配列が単離されてベクターに組み込まれることにより,形質転換の系も整備されつつある。パルスフィールドゲル電気泳動と稀切断制限酵素Sfi Iの組み合せにより,大まかなゲノムマップが作成され,単離された遺伝子が存在する染色体の特定と物理的マッピングが可能になってきた。以上のような情報を載せたCandida albicans serverがインターネット上で構築され,公開されている,等について紹介する。また,我々をはじめとする幾つかの研究室で取り上げられているC.albicansゲノム内の反復配列群についても言及する。
著者
中根 明夫 差波 拓志 池島 進
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.479-484, 2005-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

レプチンは, 摂食時に脂肪細胞から産生され, 視床下部を介して摂食抑制, エネルギー消費の亢進など多彩な生理作用を示す。一方, レプチンは炎症など免疫学的刺激でも産生され, サイトカインを介して, T-helper 1型の免疫応答の誘導や炎症反応の惹起に関与するなど, 免疫応答にも深く関与することが明らかとなってきた。レプチン遺伝子あるいはレプチンレセプター遺伝子が変異を起こしているob/obマウスやdb/dbマウスは, レプチンによる摂食抑制が起こらず肥満から2型糖尿病を発病する。これらのマウスは肺炎桿菌やリステリアといった細菌感染に対する抵抗性が減弱しており, その原因としてマクロファージの機能やケモカイン産生性の低下が示唆された。レプチンに着目した研究は, 糖尿病など肥満を基盤とした生活習慣病の易感染性の機序の解明に貢献するものと考えられる。
著者
山本 友子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.1025-1036, 1996-10-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3
著者
染谷 四郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.745-748, 1984-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
29
著者
代田 稔
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.13, pp.2443-2460, 1929

本論文ノ要旨ハ昭和3年4月7日京都帝國大學ニ於イテ開カレタ第2回日本微生物學衛生學寄生虫學聯合學會ニ於イテ述ベタ.
著者
代田 稔 絹脇 俊熈
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.931-938, 1932

純粋培養及ビ白鼠ニ豫メ「と」ヲ感染サセタ血液ヨリ分離シタTrypano ma Lewisiヲ反應元トシテ酸凝集反應ヲ行ツタノニ廣イ範圍ニ汎ツテ凝集スルノヲ觀タ.反應元ハ加熱ニヨツテ凝集スルPHノ範圍ヲ狭メラレル.反應めぢうむニ及ボス温度ノ影響ハ反應原ダケニ及ボスノト同ジデアル.Trypanosoma Lewisiニハ熱ニ因テ分離サレル酸凝集物質ハ認メラレナイ.
著者
代田 稔 麻生 健治 岩淵 明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.917-927, 1962

It was revealed that GYB (glucose yeast broth) agar devoid of calcium carbonate was best fitted for counting the total number of viable bacteria in feces, regardless of their kinds. Widely used TGC (thioglycollate) broth was found far inferior to GYB-agar as regards fo: accuracy and sensitivity.<BR>Quantitative estimation and isolation of lactobacilli from human feces were performed most excellently when LBS (Lactobacillus selective medium) 1 agar was used under anaerobic condition. IBS 1 agar is a modified medium of Rogosa's medium (1951), developed by the authors in order for better isolation of lactobacilli. It contains, besides LBS medium, liver extract, lactose and cysteine.<BR>As for estimation of lactic acid bacteria (lactobacilli and streptococci), our tomato juice agar containing 0.1% furan-acrylic acid gave most excellent results.<BR>Concomitant studies on various selective media currently used for other microbes confirmed that for enteric bacteria, MacConkey, Desoxycholate agar, SF (Streptococcus faecalis) medium as well as Staphylococcus medium No.110; for yaests and Candida, potato glucose agar or CGS (Sabouraud's medium containing guanoflacine) agar; were excellent selective media, respectively.
著者
代田 稔
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本微生物學病理學雜誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2419-2430, 1929

各實驗例ノ剖槍的並ニ検鏡的所見ヲ総括シグ見ノン.圭ニ浩化管ニ張イ饗化ガ有ルカラ浦化管ト他ノ臓器ニ分ケル.<BR>1.消化管<BR>胃.粘膜ノ表面ハ汚イ色ヲ呈シラ・粘稠ナ粘液デ被ハレテ居ル義膜ヲ見ルモノ毛アル.粟粒大一米粒大ノ出血斑ヲ見ノ疇モアノン, 一般ニ腫腕脳シ据ル槍鏡スルト粘膜上皮細胞ハ腫脹シ時ニ剥離シプ居ルモノモアル, 原形質ハ掴濁シプ核ニ退行性墾化ガ見エル, 血管ル一般エ籏張シプ居ル.<BR>小腸小腸粘膜ハ粘稠ナ稽黄色ヲ帯ビタ粘液デ被ハレプ居ノン粟粒大一米粒大ノ出血斑ヲ見タモノモアル, 上部即十二指腸室腸ノ部が攣化ガ強カッター般ニ腫脹掴濁ヲ見タ, 槍鏡スルト粘膜上皮細胞ノ剥離シテ居ルノガアル.核ル染色不同, 崩壊等退行牲墾化ガ見エ固有膜及糊莫下ニ細胞浸潤ヲ見ル圭ニ小圓形細胞デアル血管ル儂張シプ充血シテ居ル, BR>大腸盲腸以下デル一般ユ攣化ル認.メラレナイ塒ニ加答見ヲ僅ニ認メタ位ノモノデアル.ばいえる氏斑ハ時ニ腫大シプ居ツタ事モアツタ槍鏡シプ見テモ上皮細胞ノ攣化モ少イシ絨毛ノ先端ノ部ガ腫大シプ居ノンダケデアツタ.<BR>2.消化管以外ノ臓器<BR>骨髄脂肪間隙ノ鞘失シプ趨曙ル籏張シ, 實質細胞ル著域問質ル増殖旦態細胞ノ減少, 有核赤血球モ減少シプ居ノン.<BR>脾臓.芽心ル一般ニ不明, 脾髄ル血液細胞ユ富ミ, 静脈賢ハ横張シプ出血ヲ見ルモノモアル, 濾胞ニ攣化ル少イ之ル佐藤1ガ細菌敗血症ノ塒ノ櫨胞ノ墾化ル少ク髄質及静賑賢内ノ血量増多, 髄質ノ増殖ガ張イト云フノニー致スル, 西谷簡モ先年余等ガ分難シタ菌ヲ幼若家兎ニ食ハシテ同様ノ析見ヲ得タト報ジナ居ル.<BR>肝臓肝上皮細胞壇国濁腫脹殊ユソレガ小葉ノ周邊部ニ著明デアル, 上皮細胞ノ配列不規則デぢすうかちおんヲ起シタモノモ多イ殊ニ申心静脈ノ周ニ多イ, 中心静娠及ゼ血管ル一般ニ儂張シク居ル, 肝小葉静版賢内ニル圓形細胞ノ浸潤ヲ見タ, 粟粒壌死竈ル割合ニ少カツタ.脂肪沈着ノ僅ニ認メタ.星芒細包ル饗化少ク増殖シナ組織球ヲ作ツプ居ルモノモアノン.恒遠 (2) モ星芒細胞ル他ノ細胞ヨリモ毒素ニ樹スル抵抗力ガ張ク維過ガ永イト反プ増殖シナ居ルヤウデアルト添ツクル.<BR>以上ノ所見ハCurschmann (3), Fraenkel u. Schmonds (4) モ認メテ居ル.<BR>淋巴線.濾胞バー般ニ嬢大シプ境界不明, 芽心不明デアル.淋巴母細胞ハ増殖シプ居ル核ノ崩壊シタモノモアノン保田 (5) モ赤痢, 疫痢デ之等ノ所見ヲ認メプ居ル.綱状織内皮細胞組織球ノ肥大増殖ヲ認メル, 髄索ノ淋巴母細胞ノ増殖ハ著明デアル.<BR>腎臓.懸毬騰血管充盈, 圓形細胞浸潤ガドノ例ニモ見エタ蹄係細胞ノ壊死ヲ見叉出血ヲ見タ.青木ωモ赤痢並ニ疫痢ノ腎臓ヲ組織學的ニ研究シプ, ソノ68%ニ縣毬騰腎炎ヲ見タト報ジテ居ノン.ぼうまん氏嚢ニル異常ヲ見ナィ.細尿管圭要部ノ上皮掴濁腫脹シテ居ル上皮細胞ノ原形質ハ顎粒状ニナリ核ル染色不同退行性墾化ヲ示シテ居ル.問質ニル憂化ヲ見ナイ.<BR>副腎.實質細胞ノ攣化峯シプル孫毬層ル薄クナツラ核染色不同, 索歌層モ細胞配列不規則トナツプ居ル, 淋巴球又ハ圓形細胞ノ浸潤ヲ認メル脂肪ル初期轟多ク見ル.内皮細胞ノ肥大ハ皮質ニ多ク見ル.<BR>胸腺皮髄ノ界不明.一般ニ毛細管充血シプ居ル時ニ出血ヲ見タ, 髄質小形胸腺細胞ハ核染色不同, 退行性攣化ヲ見タ.綱状織内皮細胞デ腫脹ノ強イモノヲ見タ.之等ニ出血ヲ認メタ.竹内 (6) ル傳染病ノ塒ニ胸腺ヲ初炎症ニヨツプ腫脹シテ後萎縮スルト云ヅプ居ル.は氏小騰ノ増多ル認メナカツタ.<BR>心筋, 筋繊維ノ横紋縦紋不明ノモノ多ク塒々顎粒状ニ見エタ核染色不同, 濃染萎縮, ざるニぷらすまル不明瞭,.血管ハ鑛張, 筋繊維内ニル小圓形細胞ノ浸潤ヲ見タ.